ガンホー株がPTSで一時10%近く下落 3Q決算で四半期業績の成長一服、市場は失望か 

ガンホー・オンライン・エンターテイメント <3765>は本日(10月29日)、第3四半期(1~9月期)の連結決算を発表した(関連記事)。3カ月間(四半期)の比較でみると、7~9月期の売上高は416億円と4~6月期に比べて約5%減り、営業利益は233億円と12%減った。ユーザー1人当たりのゲーム内課金額が減少したことが理由のようだ。3カ月で400億円強の売上高をたたき出す収益力はゲーム業界内でも屈指だが、株式投資家は四半期比較で業績が伸びなかったことに失望する可能性が高い。決算発表後、一部証券会社の運営するPTS(私設取引システム)の夜間取引では、ジャスダック市場の29日終値と比べて7600円(9.5%)安の7万2100円まで売られる場面があった。
 

ガンホー四半期業績の推移(単位は億円)

 

■伸び悩む各種指標に市場は警戒

PTSは日中の取引所取引に比べて商いが少なく、すべての市場参加者の売買が反映されているわけではないため、必ずしも明日以降の株価の方向を決めるものではない。それでも売買が成立している以上、市場参加者の何らかの思惑が表れていると考えることができる。

1~9月の累計でみれば営業利益は28倍に伸び、ガンホーの業績は大きく成長したが、株式市場関係者の視線は違う。「いくら稼いでいるか」ではなく「足もとでどれだけ伸びたか」「これからどれだけ伸びるか」だ。そのため、市場の視線は四半期業績、月次業績と、より短い期間の業績の変化率に向かう。

それだけに、「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)の配信開始以来、四半期業績が前四半期比で初めて減収減益に転じたことは、「株式市場にとっては失望といっていい」(国内投信のファンドマネジャー)。月次の単体売上高も会社公表数値をみると、1月85億円、4月120億円、7月135億円、10月130億円と、頭打ち感が出てきている。ソーシャルゲームインフォが会社公表資料から試算した、パズドラの100万ダウンロードごとの1日当たりダウンロード数も漸減傾向にある。
 

■市場は、上半期以上の業績を期待していた

では、株式市場がどれだけの成長を見込んでいたか。2013年12月期1年間の売上高について、日本経済新聞社グループのQUICKが算出するコンセンサス(6 社の予想平均)は売上高が1752億円、営業利益で1114億円だ。上半期(1~6月期)の実績である売上高746億円、営業利益451億円をそのまま2 倍しただけでは足らず、下半期が上半期から3割ほど増収増益になって、ようやく達成できる水準だ。QUICKのコンセンサスに基づけば、ガンホーの株価は 13年12月期の一株あたり純利益予想の13~14倍で評価されている。ディー・エヌ・エー<2432>やグリー<3632>の 8~10倍まで倍率が調整する(=株価が下がる)可能性もある。

 

■再成長への道は

ここから業績が再加速する可能性はあるか。600万ダウンロードを突破した『ケリ姫スイーツ』と、立ち上がりの順調な新作『ディバインゲート』、そして12月発売予定の『パズドラZ』が業績を再加速させるエンジンになりうるか、がポイントとなる。

参考までに、国内App Storeでの売上ランキングを見てみよう。
『ケリ姫スイーツ』は7月に一時60位以下に落ち込んだランキングが、10月には20位前後で安定的に推移するなど、持ち直した。10月リリースの 『ディバインゲート』も20~30位で安定的に推移しており、立ち上がりはまずまずだ。それでも10月のガンホー単体の月次売上高が7月比で減少したことは、この2作品の堅調さを持ってしても、課金収入減少を埋めきれなかったと考えることができる。
 

▲『ケリ姫スイーツ』の国内App Store売上ランキング(出所:AppAnnie
 

▲『ディバインゲート』の国内App Store売上ランキング(出所:AppAnnie


この2作品の売上ランキングが一段と上昇するか、パズドラへの課金収入が持ち直すか、それともパズドラZなど今後の新作が大きく伸びるか。いずれかが実現するかどうか、見極めが必要となる。ただ目先の収益を狙うために、一人当たりの課金額を増やすような施策を打てば、ユーザーの心が離れる可能性もあり、難しいところだ。パズドラ級のヒットは狙って出せるものではない。パズドラで獲得したユーザーを別のコンテンツに誘導するなどの施策も考えられる。スーパーセルとの連携によるパズドラの海外展開の進展も期待材料だ。

 

■「ガンホーショック」は株式市場に広がるか?

国内のApp StoreやGoogle Playの売上ランキングで首位をキープし続けてきた『パズドラ』擁するガンホーの業績が失速したことは、モバイルゲーム業界全体の不安にもつながりかねない。早くもネット上では「ガンホーショック」という言葉が見られたが、ガンホー株の下げが、ほかのモバイルゲーム関連株に波及する可能性は考慮しておいたほうがよいだろう。
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
http://www.gungho.co.jp/

会社情報

会社名
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
設立
1998年7月
代表者
代表取締役社長CEO 森下 一喜
決算期
12月
直近業績
売上高1253億1500万円、営業利益278億8000万円、経常利益293億800万円、最終利益164億3300万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3765
企業データを見る