ミクシィ<2121>は2月13日、2014年3月期第3四半期(3Q、13年10~12月)の連結決算を発表し、都内の本社で記者向けの決算説明会を開催した。昨年10月にリリースした新作ゲーム『モンスターストライク』(モンスト)の好調さを受け、14年3月期通期の業績予想を上方修正し、営業損益はこれまでの16億円の赤字から2億円の黒字に転換する見通しを示した。
朝倉祐介社長は決算と同時に、mixi事業本部長兼モンストスタジオのエグゼクティブプロデューサーである森田仁基(ひろき)執行役員への社長交代を発表した。説明会で朝倉社長は、ミクシィが「事業再生段階」から「再成長段階」へ移行したと繰り返し、社長交代は「中長期の成長に向けた最適な布陣を考えた結果」と話した。(写真左が森田執行役員、右が朝倉社長)
朝倉社長は現在のミクシィについて「構造的な赤字から脱却しており、モンスト一本足ではない」と主張。森田執行役員は今後のミクシィについて「目指すものはコミュニケーションとつながりを加速させるサービス。必ずしもゲームに軸足を置くわけではない」と語った。
3Qの売上高は前四半期(7~9月)比30%増の23.77億円と増勢に転じ、営業赤字幅も1.1億円に縮小。月次ベースでは昨年12月時点で黒字に転換しているという。12月に加わった新規事業、10月にリリースした『モンスト』のヒット、地道に進めてきた構造赤字脱却の施策が功を奏したという。(写真は決算内容について話す朝倉社長)
売上高の増加については「その他」の部分は12月から「結婚支援事業」を連結したことで大きく増加、「課金」収入の部分はモンストなどネイティブアプリゲームが押し上げ要因となっている。「広告」事業も「アドネットワーク」を含む「その他広告」が拡大してきており、前四半期比で微増と底入れの兆しが出てきている。
営業損益については、モンストと先行投資を除いた部分で黒字になっているといい、朝倉社長は「構造的な赤字からは脱却できている」と主張した。
上方修正した今期予想は、この3月から『モンスターストライク』のテレビCMを実施するため広告宣伝費を6億円増額するにもかかわらず、2億円の営業黒字を確保できる計画だ。モンストの月商は非開示だが、これまで大々的なプロモーションを実施せずに250万ダウンロードを達成し、売上ランキングも好調に推移していることから、朝倉社長は「成功を確信している」と話す。
従来の今期業績予想は、10月にリリースしたモンストの収益は含まず、すでに買収を見込んでいた結婚支援事業の収益は含んでいたとのこと。今期業績予想の上方修正における売上高の増額分35億円の大半は、モンストによるもの。ただ結婚支援事業も買収時点と比べて好調に推移しているという。
なお、3Qで売上高が増えた「その他」分野は、「ノハナ」事業なども含むが、結婚支援事業の比率が大きいという。3Qにおいて結婚支援事業は連結を開始した12月1か月分しか計上されておらず、4Qから3カ月分の計上となる。
そのため会場からは、その他分野の売上高について、3Qの4.5億円を3倍した数字が4Qの数字になるのか、という質問が出た。会社側は、結婚支援事業の季節性(12月が大きくなりやすい)やそれ以外の事業の寄与などがあるため、必ずしも3Qを3倍にすれば4Qの売上高になるわけではないと説明した。
また、結婚支援事業を構成する複数のメディアやマッチングサービスの内訳についても質問が出たが、詳細な数字は開示していないとのこと。「Find Job!」事業の今後の方針についても、「明確な役割は模索中」と回答するにとどめた。
今後の経費については広告宣伝費と手数料が拡大傾向という。モンストと結婚支援事業はアプリで提供しているので、ストア決済手数料が売上に連動して増えていく。
朝倉社長は説明会で、身売り検討がささやかれた厳しい時期や自らの社長時代の実績を振り返りながら「ミクシィは事業再生フェーズ(段階)から再成長フェーズに移ってきた」「言ってみれば集中治療室から出てきた患者」と表現し、企業の状況が明るい方向に変化していることを主張した。
朝倉社長は「やるべきことを先送りせずコスト削減策を進めた」「『つながり』という概念・価値観だけを大切にして、極端な話、それ以外はすべて捨てていいという気持ちで取り組みを進めてきた」ことなどが奏功したといい、「結果を提示できてうれしい」と安堵の声を漏らす場面もあった。
再成長の段階に移ったミクシィはどういった体制がいいのか、という検討を経営陣で進めた結果、今回の森田氏への社長交代を決めたという。朝倉氏は、森田氏について「ゲーム事業でミクシィの売上を支えてきたほか、ネイティブアプリ事業の立ち上がりをけん引した人間」と説明。「今後のミクシィの成長を考えるうえで、サービス寄り・事業寄りの人間に任せるのが最適だろうと、経営陣一同で考えた」ことが森田氏を選んだ理由という。朝倉氏は来年度からは顧問として、一歩引いた立場から再成長を支援していくとのこと。
▲森田次期社長の主な経歴
決算説明の最後に、次期社長に内定している森田執行役員から自己紹介があった。入社後、「mixiアプリ」の立ち上げに参画、サイバーエージェントとの合弁会社グレンジの立ち上げ、mixiゲームの立ち上げ、モンストの立ち上げとゲーム関連事業を歩み、現在はmixi事業本部長を務める。「完全に事業畑の人間。新たな経営陣と一枚岩となって事業のかじ取りをやっていきたい」と抱負を述べた。(写真は自己紹介する森田氏)
会場からは「ミクシィはゲーム会社になるのか」との質問が出たが、森田氏は「経歴は確かにゲーム事業に関わっているイメージが強いが、私自身が目指しているものは人々のコミュニケーションとつながりを加速させるサービスを作ること。モンストのプロジェクトも、みんなでわいわいとコミュニケーションを活性化させるサービスは何か、というところから始まった。必ずしもゲームに軸足を置くわけではない」と述べた。
なお、今後のゲーム開発体制やスケジュールについては、5月の通期決算発表時にミクシィの戦略とともに公表するという。
退任を決めた朝倉社長の心中を探ろうと、会場から質問が相次いだ。
自身に対する評価を聞かれた朝倉社長は「社外に存在感を示し始めたのは2013年5月、会社の変革に携わったのは2012年4月に社長室の室長となったころから」と振り返り、ゲーム事業での提携やリサーチ事業の買収などを主導した実績を取り上げながら、「2012年春は『身売り検討説』がささやかれたりと、ミクシィに向けられる視線は厳しく、なんとか上向きに持っていかなければと考えていた。ノーアウト満塁からマウンドに立たされたピッチャーというイメージだった」と明かした。
朝倉社長は「ミクシィの再生は(2015年まで)3年はかかると考えていたが、非常に早く進み、1年前倒しで達成できた。スタッフの奮起はもちろん、大変な幸運も重なった。結婚支援事業の買収のように良い案件が巡ってきたことや、モンストのヒットなどだ。体制・環境作りなど幸運をつかむための布石は打つことができたと自負している」と続け、「ノーアウト満塁からマウンドに立たされたピッチャーとして、やるべき仕事は全うしたと感じている」と話した。
▲「ノーアウト満塁のピッチャーとして仕事は全うした」と話す朝倉社長(中央)
社長交代を決断するにはまだまだ「モンスト一本足」で不安定な状況ではないか、という質問には「12月の状況を見る限り、モンストを除いても、利益を出せるような体質改善が実現した。(モンスト)一本足ではない」「経営陣の非公式の朝会で、12月の状況を踏まえどういう体制が良いのかを考えた。中長期での成長を実現することが重要と考え、(モンストという)ヒット事業を作った森田を代表とするのがよいとの結論に至った」(朝倉社長)と回答した。
事業の体質改善はできたが、社内の体質改善は道半ばではないかという懸念の声も出てきた。朝倉社長は「(6月までの)任期中は、引き継ぎも含めて再成長に向けてまだやることはある。もちろん(ミクシィにおいて)やりたいことは色々あるが、ミクシィの中長期的な成長に向けて最適な布陣を敷いた」と話した。
顧問という立場について問われると、「顧問という立ち位置は今後、6月までに新経営陣と議論していきたい」と述べた。「非常事態からのターンアラウンド(再生)をやりきることが、(社長としての)第一義的なミッション(使命)だった」「現時点では、中長期の成長に最適な人間が(社長を)担うべき。私自身は、プロフェッショナルな経営者を自認しているので、もう一度マウンドに立てと言われればいくらでも投げるし、バトンをつなげと言われればつなぐ」と語った。
▲握手を交わす森田次期社長(左)と朝倉社長(右)
・ミクシィグループは「事業再生フェーズ」から「再成長フェーズ」に(プレスリリース)
朝倉祐介社長は決算と同時に、mixi事業本部長兼モンストスタジオのエグゼクティブプロデューサーである森田仁基(ひろき)執行役員への社長交代を発表した。説明会で朝倉社長は、ミクシィが「事業再生段階」から「再成長段階」へ移行したと繰り返し、社長交代は「中長期の成長に向けた最適な布陣を考えた結果」と話した。(写真左が森田執行役員、右が朝倉社長)
朝倉社長は現在のミクシィについて「構造的な赤字から脱却しており、モンスト一本足ではない」と主張。森田執行役員は今後のミクシィについて「目指すものはコミュニケーションとつながりを加速させるサービス。必ずしもゲームに軸足を置くわけではない」と語った。
■「構造的な赤字からは脱却」…『モンスト』無しでも黒字体質と主張
3Qの売上高は前四半期(7~9月)比30%増の23.77億円と増勢に転じ、営業赤字幅も1.1億円に縮小。月次ベースでは昨年12月時点で黒字に転換しているという。12月に加わった新規事業、10月にリリースした『モンスト』のヒット、地道に進めてきた構造赤字脱却の施策が功を奏したという。(写真は決算内容について話す朝倉社長)
売上高の増加については「その他」の部分は12月から「結婚支援事業」を連結したことで大きく増加、「課金」収入の部分はモンストなどネイティブアプリゲームが押し上げ要因となっている。「広告」事業も「アドネットワーク」を含む「その他広告」が拡大してきており、前四半期比で微増と底入れの兆しが出てきている。
営業損益については、モンストと先行投資を除いた部分で黒字になっているといい、朝倉社長は「構造的な赤字からは脱却できている」と主張した。
■『モンスト』急成長で上方修正…テレビCMに6億円投入でも黒字
上方修正した今期予想は、この3月から『モンスターストライク』のテレビCMを実施するため広告宣伝費を6億円増額するにもかかわらず、2億円の営業黒字を確保できる計画だ。モンストの月商は非開示だが、これまで大々的なプロモーションを実施せずに250万ダウンロードを達成し、売上ランキングも好調に推移していることから、朝倉社長は「成功を確信している」と話す。
従来の今期業績予想は、10月にリリースしたモンストの収益は含まず、すでに買収を見込んでいた結婚支援事業の収益は含んでいたとのこと。今期業績予想の上方修正における売上高の増額分35億円の大半は、モンストによるもの。ただ結婚支援事業も買収時点と比べて好調に推移しているという。
▲4Q(1~3月)は急激な回復シナリオとなっている
なお、3Qで売上高が増えた「その他」分野は、「ノハナ」事業なども含むが、結婚支援事業の比率が大きいという。3Qにおいて結婚支援事業は連結を開始した12月1か月分しか計上されておらず、4Qから3カ月分の計上となる。
そのため会場からは、その他分野の売上高について、3Qの4.5億円を3倍した数字が4Qの数字になるのか、という質問が出た。会社側は、結婚支援事業の季節性(12月が大きくなりやすい)やそれ以外の事業の寄与などがあるため、必ずしも3Qを3倍にすれば4Qの売上高になるわけではないと説明した。
また、結婚支援事業を構成する複数のメディアやマッチングサービスの内訳についても質問が出たが、詳細な数字は開示していないとのこと。「Find Job!」事業の今後の方針についても、「明確な役割は模索中」と回答するにとどめた。
今後の経費については広告宣伝費と手数料が拡大傾向という。モンストと結婚支援事業はアプリで提供しているので、ストア決済手数料が売上に連動して増えていく。
■事業再生から再成長の段階へ…「事業寄り」の森田氏にバトンタッチ
朝倉社長は説明会で、身売り検討がささやかれた厳しい時期や自らの社長時代の実績を振り返りながら「ミクシィは事業再生フェーズ(段階)から再成長フェーズに移ってきた」「言ってみれば集中治療室から出てきた患者」と表現し、企業の状況が明るい方向に変化していることを主張した。
朝倉社長は「やるべきことを先送りせずコスト削減策を進めた」「『つながり』という概念・価値観だけを大切にして、極端な話、それ以外はすべて捨てていいという気持ちで取り組みを進めてきた」ことなどが奏功したといい、「結果を提示できてうれしい」と安堵の声を漏らす場面もあった。
再成長の段階に移ったミクシィはどういった体制がいいのか、という検討を経営陣で進めた結果、今回の森田氏への社長交代を決めたという。朝倉氏は、森田氏について「ゲーム事業でミクシィの売上を支えてきたほか、ネイティブアプリ事業の立ち上がりをけん引した人間」と説明。「今後のミクシィの成長を考えるうえで、サービス寄り・事業寄りの人間に任せるのが最適だろうと、経営陣一同で考えた」ことが森田氏を選んだ理由という。朝倉氏は来年度からは顧問として、一歩引いた立場から再成長を支援していくとのこと。
▲森田次期社長の主な経歴
■森田氏「つながりを加速させるサービス目指す」「ゲームに軸足ではない」
決算説明の最後に、次期社長に内定している森田執行役員から自己紹介があった。入社後、「mixiアプリ」の立ち上げに参画、サイバーエージェントとの合弁会社グレンジの立ち上げ、mixiゲームの立ち上げ、モンストの立ち上げとゲーム関連事業を歩み、現在はmixi事業本部長を務める。「完全に事業畑の人間。新たな経営陣と一枚岩となって事業のかじ取りをやっていきたい」と抱負を述べた。(写真は自己紹介する森田氏)
会場からは「ミクシィはゲーム会社になるのか」との質問が出たが、森田氏は「経歴は確かにゲーム事業に関わっているイメージが強いが、私自身が目指しているものは人々のコミュニケーションとつながりを加速させるサービスを作ること。モンストのプロジェクトも、みんなでわいわいとコミュニケーションを活性化させるサービスは何か、というところから始まった。必ずしもゲームに軸足を置くわけではない」と述べた。
なお、今後のゲーム開発体制やスケジュールについては、5月の通期決算発表時にミクシィの戦略とともに公表するという。
■朝倉社長「ノーアウト満塁からマウンドに立たされたピッチャー」
退任を決めた朝倉社長の心中を探ろうと、会場から質問が相次いだ。
自身に対する評価を聞かれた朝倉社長は「社外に存在感を示し始めたのは2013年5月、会社の変革に携わったのは2012年4月に社長室の室長となったころから」と振り返り、ゲーム事業での提携やリサーチ事業の買収などを主導した実績を取り上げながら、「2012年春は『身売り検討説』がささやかれたりと、ミクシィに向けられる視線は厳しく、なんとか上向きに持っていかなければと考えていた。ノーアウト満塁からマウンドに立たされたピッチャーというイメージだった」と明かした。
朝倉社長は「ミクシィの再生は(2015年まで)3年はかかると考えていたが、非常に早く進み、1年前倒しで達成できた。スタッフの奮起はもちろん、大変な幸運も重なった。結婚支援事業の買収のように良い案件が巡ってきたことや、モンストのヒットなどだ。体制・環境作りなど幸運をつかむための布石は打つことができたと自負している」と続け、「ノーアウト満塁からマウンドに立たされたピッチャーとして、やるべき仕事は全うしたと感じている」と話した。
▲「ノーアウト満塁のピッチャーとして仕事は全うした」と話す朝倉社長(中央)
社長交代を決断するにはまだまだ「モンスト一本足」で不安定な状況ではないか、という質問には「12月の状況を見る限り、モンストを除いても、利益を出せるような体質改善が実現した。(モンスト)一本足ではない」「経営陣の非公式の朝会で、12月の状況を踏まえどういう体制が良いのかを考えた。中長期での成長を実現することが重要と考え、(モンストという)ヒット事業を作った森田を代表とするのがよいとの結論に至った」(朝倉社長)と回答した。
事業の体質改善はできたが、社内の体質改善は道半ばではないかという懸念の声も出てきた。朝倉社長は「(6月までの)任期中は、引き継ぎも含めて再成長に向けてまだやることはある。もちろん(ミクシィにおいて)やりたいことは色々あるが、ミクシィの中長期的な成長に向けて最適な布陣を敷いた」と話した。
顧問という立場について問われると、「顧問という立ち位置は今後、6月までに新経営陣と議論していきたい」と述べた。「非常事態からのターンアラウンド(再生)をやりきることが、(社長としての)第一義的なミッション(使命)だった」「現時点では、中長期の成長に最適な人間が(社長を)担うべき。私自身は、プロフェッショナルな経営者を自認しているので、もう一度マウンドに立てと言われればいくらでも投げるし、バトンをつなげと言われればつなぐ」と語った。
▲握手を交わす森田次期社長(左)と朝倉社長(右)
・ミクシィグループは「事業再生フェーズ」から「再成長フェーズ」に(プレスリリース)
会社情報
- 会社名
- 株式会社MIXI
- 設立
- 1997年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 木村 弘毅
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1468億6800万円、営業利益:191億7700万円、経常利益156億6900万円、最終利益70億8200万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 2121