ハンティングアクションゲーム『DEER HUNTER 2014』などで知られる北米の大手モバイルゲームデベロッパー・Glu Mobile<NASDAQ: GLUU>は、先日、2013年度第4四半期の決算を発表し、売上高が前年同期比62%増の約43億円であることを明らかにした。
また、同社は昨年末にコロプラ<3668>と業務提携を行うことを発表し、現在は日本向けにオリジナルタイトルを開発中など、本格的に日本への参入を仕掛けてきている注目の海外企業だ。
そこで本稿では、Glu Mobileのキーマンたちに、同社の取り組みや既存タイトルの現況、日本における今後の展開などを伺ってきた。
■世界戦略を見据えた妥協のない立ち回り
Japan Country Manager
森信介氏
Vice President, Asia & 3rd Party Publishing
Greg Chang(グレッグ・チャン)氏
Director of Business Development &
Global Communications
Jason B. Enriquez(ジェイソン・エンリケ)氏
Associate PR Manager
Claudia Oropeza(クラウディア・オロペザ)氏
(※インタビューでは同席のみ)
――:本日はよろしくお願いします。まずGlu Mobileの企業概要について、お聞かせいただけますか。
ジェイソン・エンリケ氏(以下、ジェイソン):Glu Mobile は、2001年に設立したモバイル端末向けのゲームアプリを手掛けるデベロッパー企業です。本社のサンフランシスコをはじめ、モスクワ、北京、カナダ、シアトルなど、世界中に拠点を持っています。これまでにシリーズ累計1億ダウンロードを超える『DEER HUNTER』や『Contract Killer』などのタイトルを開発してきました。
――:おもにゲーム開発は、本社で行われているのでしょうか。
ジェイソン:いえ、開発は各拠点で行っております。本社・サンフランシスコでは、エクゼクティブプロデューサーたちが各拠点に指示を出して、進捗などをグローバル会社に共有しながら開発を進めています。なお、現在のスタッフ数は、全体で500名以上おり、そのうちの80%以上が開発者になります。
――:2013年第4四半期の決算資料(pdfファイル)を拝見したのですが、御社はアクション寄りのタイトルが多いようですね。なにか経緯があるのでしょうか。
ジェイソン:これまでも弊社では、FPS(ファーストパーソン・シューティング)やTPS(サードパーソン・シューティング)などのタイトルを得意として手掛けてきましたが、いまやコアアクションを好む家庭用ゲームユーザーたちも、とてつもないスピードでモバイルゲーム市場に流れてきています。
そのためGlu Mobileでは、コアアクションを好むコンソールユーザーでも満足できるようなタイトルを、モバイルデバイスで実現することが弊社の強みになるのではないかと思っています。開発ゲームにおいては、今後もコアなアクションゲームやシューティングゲームを手掛けていくでしょう。
――:ゲームを開発する際に、何か心に据えているコンセプトなどはあるのでしょうか。
グレッグ・チャン氏(以下、チャン):月並みな言葉かもしれないですが、やはりハイクオリティなグラフィックと斬新なゲームシステムを盛り込み、他社と差別化していくことですね。また、ゲームを遊んでいて“面白い”と思えるまで、試行錯誤を繰り返しています。我々も面白くなるまで、何度もリジェクトして突っ返します。
――:そういえばGlu Mobileでは、ほとんどの新作は世界同時配信ですよね。ローカライズに関しては、さぞご苦労があると思います。
ジェイソン:そうですね(苦笑)。加えてiOS/Androidが同時配信になるよう動いているため、なかなか苦労しています。しかしながら、やはりグローバルで成功するためには、それぞれの地域のローカライズは非常に重要と考えており、業務の優先順位も高く設定しています。また、ただローカライズするだけではなく、各プラットフォームのレビューやメディアからのフィードバックを受けて、逐一、改善も行っています。
チャン:それぞれの拠点においてもローカライズに関しては、スタッフ全員でチェックしています。ほかの業務もありますが、ローカライズも非常に重要な仕事として、各拠点で繰り返しレビューを行い、クオリティアップに努めています。
――:グローバル全体で各タイトルの運営・管理をされていると思いますが、ゲーム内イベントなどは、各国によって内容や難易度は変えたりしているのでしょうか。
ジェイソン:じつは、ひとつ変えてしまうとグローバル全体に影響してしまうため、こちらに関しては行っておりません。しかし弊社では、現在「Glu-On」という独自サーバーシステムを建てており、そこに今後各タイトルを移行することによって、地域ごとに特色のあるイベントやセールなども実施できるように進めています。また、少しずつですが各国のメディアとも組んで、アイテムコードなどを活用したプロモーション施策も展開していきます。
【Gluタイトル紹介(1)】『DEER HUNTER 2014』
本作は、FPS型のハンティングアクションゲームで、全世界2000万ダウンロードを記録した『Deer Hunter Reloaded』の続編にあたる。プレイヤーは、中央アフリカのサバンナや北米の太平洋北西部など世界各地を旅しながら、弾倉やスコープ、銃身などを強化して、100種類以上の動物たちをハンティングしていく。
ミッションは、所定の数の動物をハントしたり、頭や肺などを撃ちぬくなどの条件が設定されている。また、ハンティング中、オオカミやクマ、チーターなどから逆に襲われる可能性があるので、銃を使って応戦していく必要がある。このほか、「クラブハント」と呼ばれるゲームモードもあり、他のプレイヤーと協力して、ミッションの達成を目指すことも可能だ。
【Gluタイトル紹介(2)】『エターニティーウォーリアー3』
クエストでは、バーチャルパッドでステージ上を移動しながら、通常攻撃、ブロック、スキルを駆使して魔物を倒していく。ステージの最後にボスが登場し、倒すとステージクリアーとなる。巨大ボスとのバトルも楽しめる。
なお、2013年12月31日のリリース当時は、45カ国・地域のベスト新着ゲームとしてフィーチャーされており、14カ国・地域でメインバナー、1カ国・地域で過去のスタッフのおすすめにも入った。ランキングの推移を見ると、2014年1月6日18時調べApp Storeの無料ランキングでは、16カ国・地域でゲームカテゴリートップ10に、11カ国・地域でトップ5、1カ国・地域(カンボジア)で1位を獲得。
■Glu Mobileのノウハウを用いて日本向け新作ゲームを開発
――:本格的に日本参入を決めた経緯を教えてください。
チャン:大きな理由としては、過去、日本のマーケットがゲームアプリ売上高で、世界一になったことが挙げられます(関連記事)。グローバルに事業を展開する弊社としては、もはや日本で成功することは必須と考えています。
ジェイソン:これまでもGlu Mobileでは、日本でいくつかのゲームをリリースしてきました。しかし、それはあくまでも“リリースしただけ”に過ぎません。
日本で成功するためには、きちんと日本のユーザーに受け入れられる仕様にコンテンツなどを調整する必要がありました。そうして、本格的に日本向けのコンテンツを手掛けていくために、日本支社を立ち上げることにしたのです。
――:とはいえ、日本ユーザーの趣味嗜好など、世界基準で見ても非常に変わっていると各国の開発者たちからよく伺います。日本市場にどのような印象を持っていますか。
チャン:日本は、どの国と比べても本当に変わったマーケットですね。テレビゲームの歴史も長いうえに、大規模な漫画・アニメ市場もあるなかで、日本ユーザーが求める要素も刻一刻と変化を遂げているように思えます。そんな日本に他国が仕掛けようとしても、文化や歴史を理解できないようであれば、なかなか事業を展開するのも難しいところですね。
――:さて、そんな日本市場に向けて、今後どのように事業を展開されていくのでしょう。Glu Mobile日本法人の代表を務める森さん、いかがですか。
森信介氏(以下、森):第一に、弊社が開発した良質なアクションゲームを、もっと多くの日本のユーザーに遊んでもらい、Glu Mobileブランドを広めることが、私にとっての大事な役割だと思っております。
また、やはり日本ユーザーの好みも異なるため、これまでGlu Mobileが築き上げてきたノウハウを利用して、日本向けに新作ゲームを開発することも進めています。
――:そもそも森さんは、どのような経緯でGlu Mobileの日本法人の代表を務めることになったのでしょうか。
森:じつはGlu Mobileに入る前は、ヨーロッパで仕事をしながらゲームを開発していました。その当時から、日本はもちろん、海外全体のモバイル市場にも目を向けていたのですが、日々デバイスの性能が上がるにつれて、ユーザーが求めるゲームのクオリティにも変化が生じることに気付き始めました。
つまりは、コンソールの大手ゲーム企業であれば開発資金や技術力もあるため、いつかはモバイルデバイス中心で開発してきた小規模なデベロッパーたちが、非常に苦しい局面を迎えていくという危機感を抱くようになったのです。
そんなときに、Glu Mobileが本格的に日本へ参入していくことを耳にしました。Glu Mobileが手掛けてきたタイトルに触れたとき、これからの時代のニーズに相応しいハイクオリティなゲームであることを感じました。そこに対して、日本特有のイベントやガチャなどのノウハウを盛り込むことで、全く異なるタイプのコアアクションゲームを、日本のモバイル市場のなかでリリースできるのではないかと考えるようになりました。そんな潜在意識のもと、Glu Mobileの門を叩くことになったのです。
――:込み入った話にも関わらず、ありがとうございました。さて、そんなGlu Mobileでは、昨年末にコロプラ社との業務提携を発表しました(関連記事)。こちらの経緯について教えてください。
森:私が日本支社の担当となって、はじめに目標に据えていたことが、日本の企業と組んでゲームを開発することでした。なかでも0の状態から作るよりかは、Glu Mobileのゲームエンジンを用いて、コンセプトやグラフィックを日本向けに変更することで、これまでの日本にはないアクションゲームを生み出せるのではないか、と考えたのです。また、この手法は当然コストも安く済みます。
そして、共に業務提携してくれるパートナーの条件として、日本のマーケットを熟知しており、かつゲームの運営にも長けている企業を探していきました。そんな折、ちょうどコロプラさんが、セカンドパーティーのパートナーを探しているというお話を人づてで伺い、今回のお話をさせていただいた次第です。現在は、すでに具体的なタイトル名も出てきて、制作も進んでいる段階です。発表できるその日まで、ぜひ、お待ちください。
――:チャンさんとジェイソンさんは、コロプラ社と提携することを聞いていかがでしたか。
チャン:I'm so happy.(笑)
一同:(笑)。
ジェイソン:私も非常に興奮しました。『クイズRPG』(『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』)を筆頭に、日本で様々なタイトルをリリースして成功を収めている企業であることは、我々も知っていました。きちんとゲームを運営できる企業と組むことは、Glu Mobileにとっても初めてのことですので、これからの展開が楽しみです。
――:ちなみに、ほかに注目している日本企業などは。
ジェイソン:やはりガンホーさんです。アメリカでも注目を浴びている企業ですね。業界の人たちだけではなくて、一般のゲームユーザーたちも企業の名前は知らなくとも、『パズル&ドラゴンズ』は知っています。今後どれほどの伸びを見せるのかを、注目しています。
【Gluタイトル紹介(3)】『コンタクトキラー2』
プレイヤーは、賞金稼ぎやギャング、犯罪者のあふれる世界のなかで、依頼者と常に連絡を取り合い特殊任務をこなしていくシューティングゲーム。狙撃銃やアサルトライフル、マシンガンなど、多彩な武器を選んで、ターゲットを定め、ズームイン、照準を合わせ……対象を仕留めていく。ターゲットを殺した後、運が良ければその場から逃げられるかもしれないが、逆に待ち伏せされることもある。
【Gluタイトル紹介(4)】『フロントラインコマンド』
プレイヤーは冷酷な独裁者に対する反乱者の唯一の存続コマンドーとして、戦死した仲間の兵士のために敵軍に猛攻撃を仕掛けていく三人称視点(サードパーソン)のシューティングゲーム。アサルトライフル、スナイパーライフル、ショットガン、ロケットランチャーなど、特殊重火器を戦場の最前線でぶち抜く快感を味わえる。
■日本を筆頭としたアジア地域での大成に向けて――
――:近々の新作について伺ってもよろしいでしょうか。
ジェイソン:ええ、大丈夫です。現在は、大きな新作タイトルとして『Frontline Commando2』と『Contract Killer 3』の2本が動いています。どちらもGlu Mobileのタイトルのなかで、大ヒットした人気シリーズとなり、ここ何ヶ月かで順々にリリースしていく予定です。2014年のGlu Mobileは、これまで手掛けてきた人気シリーズを改良して、新しい形でユーザーに届けていく戦略のもとで動いています。そんな戦略の第1弾が今回のタイトルたちになります。
――:ということは、今年『DEER HUNTER』シリーズにも大きな動きがあるのでしょうか。
ジェイソン:もちろん『DEER HUNTER』シリーズの続編も開発に取り掛かっています。まだ具体的なリリース日は決まっていませんが、早くて今年の年末ぐらいには発表できるかと思っています。とはいえ、現在配信中の『DEER HUNTER 2014』においても非常に多くの方々に遊んでいただいているので、こちらも随時様々な新しいコンテンツを増やしていき、細かいところまでも改良していきます。引き続き、お楽しみください。
――:そういえば、日本では『DEER HUNTER 2014』がヒットしました(関連記事)。ヒットの要因は、どこにあると考えていますか。
森:正直なところ、当時は人気が出たことに驚きました。野生の動物を狩るというリアリティな演出は、これまでの日本にも無かったタイプのゲームですし、これが受け入れられるのか……と。
ダウンロード数の伸びも予想がつかない状態でした。しかし、実際にリリース後は、日に日にダウンロード数も伸びていき、マーケットのレビューも★4~5と高評価を得ることができました。
そして『DEER HUNTER 2014』が日本のユーザーにも楽しんでもらえることを確認した瞬間、積極的にプロモーションを展開して無料ランキング1位というヒットに結びつけていきました。いま思い返しても本当に予想外でしたね。
――:Glu Mobileにおける今後の目標を教えてください。
ジェイソン:幸いにも2013年度第4四半期は、大成とも言うべき結果を残せました。この成長を持続させるためにも、コロプラ社との業務提携をはじめとした、新しいフランチャイズのゲームタイトルも増やしていき、Glu Mobileの良質なゲームをコンスタントに配信していきます。また、なかでも今後はアジア地域における成長に対して、大きく力を入れていきたいと思っています。そのためにも各地域に優秀な人員を加えていき、多様な取り組みを展開していきます。
――:それでは、最後に「Social Game Info」読者にメッセージをお願いします。
ジェイソン:これまでもGlu Mobileは、日本展開を真剣に取り組んできました。現在では、森が代表を務めることになって、さらなる動きが見せられると思います。ぜひ、今後ともよろしくお願いします。
チャン:日本に向けた施策は、本当に意識してやっていきたいと思っています。そのためにも日本企業と仲良くさせていただければ幸いです。我々Glu Mobileとしても、日本企業における海外進出のお手伝いをいたしますし、逆に弊社の日本進出を少しでもご協力いただけると非常に助かります。
森:マーケットにクオリティの高い多種多様なゲームがリリースされている昨今、まずは「海外で作ったゲームにもこういうのがあるんだ…」と知ってもらいたいですね。Glu Mobileでしか生み出せない独自性のあるゲームを手掛けているため、ぜひ、遊んでもらいたいと思っています。
また、Glu Mobileでは、日本企業における海外進出のお手伝いもさせていただきます。いままでのゲーム業界の歴史を見てきても、様々な海外企業が日本進出を試みてきましたが、なかなか上手くことが運びません。各々の企業によって何かと原因はあるかと思いますが、それほど日本市場への参入は難しいと考えています。そのためにもパートナーとして、お互いの事業展開におけるメリットに繋げていければ幸いです。
――:ありがとうございました。
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