エイチーム<3662>は3月14日、2014年7月期第2四半期(2Q、13年11月~14年1月)の連結決算を発表した。売上高は前四半期(13年8~10月)比14%増の30.85億円と過去最高となり、営業利益も3.3倍の3.69億円と増収増益。エンターテインメント(ソーシャルゲーム)事業の伸び悩みを、引っ越し比較サイトなどを手掛けるライフスタイルサポート事業の好調さが補った格好だ。
エンターテインメント事業の伸び悩みを理由に、14年7月期通年の業績見通しを下方修正した。決算説明会で林高生社長は、第3四半期(3Q、2~4月)にライフスタイル事業の売上がエンターテインメント事業を上回る可能性を示唆。エンターテインメント事業は、コスト削減や開発費の圧縮に注力しながら、「フルネイティブとメッセンジャー向けの強化という方針は変えず、収益拡大を目指す」「海外展開の早期化を図る」方針を語った。(以下、断りが無ければ、かぎ括弧内は林社長の発言)
エンターテインメント事業の2Qの売上高は16.5億円、営業利益は3.57億円。前四半期比では売上高12%増、営業益2.2倍と好調だが、1年前と比べると売上高5%減、営業益10%減と減収減益となった。
同事業の売上高は、前年度の1Q(12年8~10月)以降、なだらかに減少。昨年中に開発した新作『レギオンウォー』と『ダービーインパクト』が寄与し、いったん下げ止まったものの、ピークである前年度1Qには届かないという状況だ。
タイトルの状況としては、『レギオンウォー』と『ダービーインパクト』が継続的に月商1億円規模を維持しており、それぞれ1月は過去最高の売上を達成した。『レギオンウォー』と「北斗の拳」を導入した『麻雀 雷神 -Rising-』については、「利用者、売上ともに伸びている」と、成長を強調した。
なお、足もとの3Qでは、『ダービーインパクト』が提携先のNHNエンタテインメント経由で韓国にてリリースされた。『ダークラビリンス』も中国で配信を開始した。一方、『NARUTO-ナルト- 忍マスターズ』は2014年春をもってサービスを終了する。
生理日予測・排卵日予測サイト『ラルーン』については「もうすぐ200万ダウンロードを達成しそう。アクティブユーザー多いサービスで、黒字化している」と述べた。
四半期売上高を過去最高まで押し上げた要因は、ライフスタイルサポート事業の好調さだ。2Qの売上高は過去最高の14.35億円、営業利益は1.92億円。前四半期比では売上高17%増、営業益42%増、1年前比でも売上高37%増、営業益32%増と成長している。(写真は説明会での林社長)
好調の理由について「ひとことで言えば繁忙期」。引っ越しが季節的に繁忙期だったことに加え、消費税増税前の駆け込み需要で新車販売台数が伸び、中古車買取需要が大幅に増えたため、車査定・買い取りサイトの『ナビクル』が過去最高の売上を達成したという。
『引越し侍』は、繁忙期なら月商1億円規模から2億円規模に伸びるという。『ナビくる』も駆け込み需要で利用者数が過去最大となり、月商もこれまでの2億円台から3億円台に伸びたという。ブライダル支援の『すぐ婚navi』もテレビCMを実施したほか、増税前の駆け込み需要があり、1月は過去最高の売上高だったという。
『引越し侍』は利益面でも「状況は今までよりいい方向に向かっている」という。これまで「競合とのプロモーション競争やリスティング単価競争が激化しており、利益は伸び悩んでいる」状況だったが、送客ではなく利益重視の広告をかけたほか、需要増で競合他社が集客コストを下げており、結果として顧客獲得単価(CPA)が安くなっているという。
ライフスタイルサポート事業は3Qも過去最高の売上高を達成見込みで、「エンタテインメント事業を上回る可能性が出てきている」という。
一方、3Qには不安要素も出てきている。「引越し会社の能力をオーバーするほど増税前の駆け込み需要が強く、『引越し侍』では情報をこれ以上を送れない状況になっている」という。『ナビクル』も2月中旬をピークに利用者数が減少傾向とのこと。
2Qには新規事業としてカードローンの検索サイトと、自転車通販サイト『CYMA』を開始した。エイチームと同様に名古屋に本社を置くアプリ開発企業スーパーアプリも1月に中古自転車の買い取り販売サイトを開始した(関連記事)が、名古屋では自転車ブームでも来ているのだろうか。
2Q終盤の1月からエンタメ事業の経費削減に力を入れ始めたという。同事業の広告宣伝費は直近1年半でもっとも小さいが「前年同期と売り上げ規模がそれほど変わらなかった」と評価していた。一方、ライフスタイル事業は繁忙期なので、広告宣伝費を増額したという。
以下の数表で確認できる通り、広告宣伝費は1Qから2Qにかけて全体で1億円程度増加。内訳をみると、エンタメ事業で3000万円減らし、ライフサポート事業で1.3億円増額している。
会場からはモバイルゲームの広告状況をどう見ているかという質問が出た。中内之公・取締役エンターテインメント事業本部長は「前四半期は(新作)リリースのタイミングということもあって、通常よりも多めに広告を実施した。現在は採算がとれる範囲で出稿し、採算が見込めないものは止めている。採算や環境などを厳しめに見ており、短期間で回収するようにしている」と回答した。
14年7月期通期の連結業績予想を下方修正した。2Qまでの累計業績(13年8月~14年1月)はほぼ予算通りだが、『レギオンウォー』と『ダークラビリンス』など既存タイトルが想定していたほど伸びないと判断したためだ。新作ゲームの業績寄与については「いつ出るかは不透明なため、修正後の業績予想には加味していない」という。
なお、下半期(2~7月)について、エンタメ事業とライフ事業で、ほぼ同じ売上高を見込んでいるという。エンタメ事業は新規タイトルの売上を見込んでいない半面、ライフ事業は3Qの繁忙期で伸びてくることが想定されるためだ。
林社長は今後の方針として、エンタメ事業については「2Qに打ち出したフルネイティブへの注力とメッセンジャー向けの強化という方針は変えない」と説明。「メッセンジャー向けで売上規模が大きな新作を出せるのでは」との期待をにじませた。
また、3Q以降に「1タイトルあたりの開発費を圧縮していく」と話した。
開発費の圧縮については、会場から質問が相次いだ。開発費と広告費を絞れば、ヒットの確率が減るのでは、との懸念につながるためだ。
林社長は「ゲーム開発の規模を縮小するのではなく、開発手法の見直しで、開発費を圧縮する」という。実際のコストの下げ方について、中内取締役は「アプリ開発は、毎回ほぼフルスクラッチ(既存のものを一切流用せずに新規に開発すること)でやってきたが、今後は、共通部分を事前に見極めてから効率的に開発していく。ただ、(同じゲームシステムを)完全に横展開するわけではない」と話していた。
また、エンタメ事業では「海外展開の早期化」も掲げた。「これまでは、ひとつのタイトルを日米で同時にリリースし、その結果をみてからアジアで動いていた。本来であれば(アジアも)同時リリースで盛り上がるはずが、ピークを逃してしまった。今後はより近いタイミングでアジアでリリースできるようにしていく」という。
好調のライフスタイル事業は既存サービスの拡大、周辺サービスの拡充、新規サービスの立ち上げを、今後も続けていく方針だ。
会場からは、人員資源の配分などについて、質問が出た。エイチームは、ライフスタイル事業を中心に社員が増え、2Qには500人を超えている。
プラットフォーム別のリソース配分はどうなっているか、という質問には「ほとんど同じで、メッセンジャー向けはやや少なめ」と回答した。
人員増が利益を圧迫しているのでは、という質問には、「エンタメ事業はヒット作が出ていないことが一番の要因。一方、ライフスタイルは増員が売上増につながっている」と回答した。また、「これからはなるべく少ない人数で運用できるゲームスタイルに変えていきたい」とも語った。
■関連リンク
・決算説明会資料
エンターテインメント事業の伸び悩みを理由に、14年7月期通年の業績見通しを下方修正した。決算説明会で林高生社長は、第3四半期(3Q、2~4月)にライフスタイル事業の売上がエンターテインメント事業を上回る可能性を示唆。エンターテインメント事業は、コスト削減や開発費の圧縮に注力しながら、「フルネイティブとメッセンジャー向けの強化という方針は変えず、収益拡大を目指す」「海外展開の早期化を図る」方針を語った。(以下、断りが無ければ、かぎ括弧内は林社長の発言)
▼エイチーム全体の直近の業績動向
■エンタメ事業:ピーク水準には届かず…『レギオンウォー』『ダービーインパクト』が月商1億
エンターテインメント事業の2Qの売上高は16.5億円、営業利益は3.57億円。前四半期比では売上高12%増、営業益2.2倍と好調だが、1年前と比べると売上高5%減、営業益10%減と減収減益となった。
同事業の売上高は、前年度の1Q(12年8~10月)以降、なだらかに減少。昨年中に開発した新作『レギオンウォー』と『ダービーインパクト』が寄与し、いったん下げ止まったものの、ピークである前年度1Qには届かないという状況だ。
タイトルの状況としては、『レギオンウォー』と『ダービーインパクト』が継続的に月商1億円規模を維持しており、それぞれ1月は過去最高の売上を達成した。『レギオンウォー』と「北斗の拳」を導入した『麻雀 雷神 -Rising-』については、「利用者、売上ともに伸びている」と、成長を強調した。
なお、足もとの3Qでは、『ダービーインパクト』が提携先のNHNエンタテインメント経由で韓国にてリリースされた。『ダークラビリンス』も中国で配信を開始した。一方、『NARUTO-ナルト- 忍マスターズ』は2014年春をもってサービスを終了する。
生理日予測・排卵日予測サイト『ラルーン』については「もうすぐ200万ダウンロードを達成しそう。アクティブユーザー多いサービスで、黒字化している」と述べた。
■ライフ事業:増税前の駆け込み・繁忙期で好調…3Qでエンタメ事業超えか
四半期売上高を過去最高まで押し上げた要因は、ライフスタイルサポート事業の好調さだ。2Qの売上高は過去最高の14.35億円、営業利益は1.92億円。前四半期比では売上高17%増、営業益42%増、1年前比でも売上高37%増、営業益32%増と成長している。(写真は説明会での林社長)
好調の理由について「ひとことで言えば繁忙期」。引っ越しが季節的に繁忙期だったことに加え、消費税増税前の駆け込み需要で新車販売台数が伸び、中古車買取需要が大幅に増えたため、車査定・買い取りサイトの『ナビクル』が過去最高の売上を達成したという。
『引越し侍』は、繁忙期なら月商1億円規模から2億円規模に伸びるという。『ナビくる』も駆け込み需要で利用者数が過去最大となり、月商もこれまでの2億円台から3億円台に伸びたという。ブライダル支援の『すぐ婚navi』もテレビCMを実施したほか、増税前の駆け込み需要があり、1月は過去最高の売上高だったという。
『引越し侍』は利益面でも「状況は今までよりいい方向に向かっている」という。これまで「競合とのプロモーション競争やリスティング単価競争が激化しており、利益は伸び悩んでいる」状況だったが、送客ではなく利益重視の広告をかけたほか、需要増で競合他社が集客コストを下げており、結果として顧客獲得単価(CPA)が安くなっているという。
ライフスタイルサポート事業は3Qも過去最高の売上高を達成見込みで、「エンタテインメント事業を上回る可能性が出てきている」という。
一方、3Qには不安要素も出てきている。「引越し会社の能力をオーバーするほど増税前の駆け込み需要が強く、『引越し侍』では情報をこれ以上を送れない状況になっている」という。『ナビクル』も2月中旬をピークに利用者数が減少傾向とのこと。
2Qには新規事業としてカードローンの検索サイトと、自転車通販サイト『CYMA』を開始した。エイチームと同様に名古屋に本社を置くアプリ開発企業スーパーアプリも1月に中古自転車の買い取り販売サイトを開始した(関連記事)が、名古屋では自転車ブームでも来ているのだろうか。
■エンタメ事業のコスト削減に動く
2Q終盤の1月からエンタメ事業の経費削減に力を入れ始めたという。同事業の広告宣伝費は直近1年半でもっとも小さいが「前年同期と売り上げ規模がそれほど変わらなかった」と評価していた。一方、ライフスタイル事業は繁忙期なので、広告宣伝費を増額したという。
以下の数表で確認できる通り、広告宣伝費は1Qから2Qにかけて全体で1億円程度増加。内訳をみると、エンタメ事業で3000万円減らし、ライフサポート事業で1.3億円増額している。
会場からはモバイルゲームの広告状況をどう見ているかという質問が出た。中内之公・取締役エンターテインメント事業本部長は「前四半期は(新作)リリースのタイミングということもあって、通常よりも多めに広告を実施した。現在は採算がとれる範囲で出稿し、採算が見込めないものは止めている。採算や環境などを厳しめに見ており、短期間で回収するようにしている」と回答した。
■通期見通しを下方修正…エンタメ事業の伸び悩みを考慮
14年7月期通期の連結業績予想を下方修正した。2Qまでの累計業績(13年8月~14年1月)はほぼ予算通りだが、『レギオンウォー』と『ダークラビリンス』など既存タイトルが想定していたほど伸びないと判断したためだ。新作ゲームの業績寄与については「いつ出るかは不透明なため、修正後の業績予想には加味していない」という。
■3Q以降:エンタメ事業で「開発費圧縮」と「海外展開早期化」を狙う
林社長は今後の方針として、エンタメ事業については「2Qに打ち出したフルネイティブへの注力とメッセンジャー向けの強化という方針は変えない」と説明。「メッセンジャー向けで売上規模が大きな新作を出せるのでは」との期待をにじませた。
また、3Q以降に「1タイトルあたりの開発費を圧縮していく」と話した。
開発費の圧縮については、会場から質問が相次いだ。開発費と広告費を絞れば、ヒットの確率が減るのでは、との懸念につながるためだ。
林社長は「ゲーム開発の規模を縮小するのではなく、開発手法の見直しで、開発費を圧縮する」という。実際のコストの下げ方について、中内取締役は「アプリ開発は、毎回ほぼフルスクラッチ(既存のものを一切流用せずに新規に開発すること)でやってきたが、今後は、共通部分を事前に見極めてから効率的に開発していく。ただ、(同じゲームシステムを)完全に横展開するわけではない」と話していた。
また、エンタメ事業では「海外展開の早期化」も掲げた。「これまでは、ひとつのタイトルを日米で同時にリリースし、その結果をみてからアジアで動いていた。本来であれば(アジアも)同時リリースで盛り上がるはずが、ピークを逃してしまった。今後はより近いタイミングでアジアでリリースできるようにしていく」という。
好調のライフスタイル事業は既存サービスの拡大、周辺サービスの拡充、新規サービスの立ち上げを、今後も続けていく方針だ。
■社員数が500人超え…人員増の利益圧迫に懸念も
会場からは、人員資源の配分などについて、質問が出た。エイチームは、ライフスタイル事業を中心に社員が増え、2Qには500人を超えている。
プラットフォーム別のリソース配分はどうなっているか、という質問には「ほとんど同じで、メッセンジャー向けはやや少なめ」と回答した。
人員増が利益を圧迫しているのでは、という質問には、「エンタメ事業はヒット作が出ていないことが一番の要因。一方、ライフスタイルは増員が売上増につながっている」と回答した。また、「これからはなるべく少ない人数で運用できるゲームスタイルに変えていきたい」とも語った。
■関連リンク
・決算説明会資料
会社情報
- 会社名
- 株式会社エイチーム
- 設立
- 2000年2月
- 代表者
- 代表取締役社長 林 高生
- 決算期
- 7月
- 直近業績
- 売上高239億1700万円、営業利益5億6200万円、経常利益6億900万円、最終利益9億5300万円(2024年7月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3662