【インタビュー】サムザップ『戦国炎舞』の大ヒット要因に迫る…企画・開発担当者に聞く開発秘話



サムザップの『戦国炎舞 -KIZNA-(以下、『戦国炎舞』)』のヒット要因について、これまでマーケティングの側面からインタビューを行ってきたが、今回は企画・開発担当者にインタビューを行った。

『戦国炎舞』は、戦国をモチーフにしたリアルタイムバトルゲームとしてリリースされ、売上ランキングでもすぐに上位に食い込んだ。こうした躍進は、マーケティングの成功もさることながら、ゲーム内容がユーザーから支持されたことが何より大きい。

インタビューでは、ゲームの企画立案時から現在までを振り返ってもらい、ユーザーに継続的に、楽しく遊んでもらえるようにするため、開発チームが行った取り組みや工夫を中心に話してもらった。



———:『戦国炎舞』をリリースされたのは2013年の4月15日だったかと思いますが、企画された経緯を教えていただけますか。

ゲームの企画を考え始めたのは、そこからさらに半年ほど前です。その当時、「Mobage」などのブラウザゲームでは、リアルタイムバトルが注目されていました。他方、ネイティブアプリ市場をみると、リアルタイムバトルを採用したタイトルがそれほど多くなく、ファンタジーRPGが主流でした。そこで、ネイティブアプリとして、「戦国」をテーマにしたリアルタイムバトルを作りたいと考えたことがきっかけです。

———:リリース後、するすると売上ランキングで順位を上げていきました。すごい伸びでしたね。

予想以上に多くの方に遊んでいただけました。ゲームとしてはあくまで「合戦」(リアルタイムバトル)を軸にして作りこんだことが良かったと思います。具体的には「合戦」らしい臨場感や演出が出るように心がけたことと、ユーザー間でのコミュニケーションを取りやすい仕組み、仲間と一緒に戦って勝つと達成感が生まれるようにしたことなどがあげられます。その結果、リリース当初から多くのユーザーに継続して「合戦」に参加していただくことができました。

また、「合戦」に関しては、「シンプルだけど奥が深いゲーム」にするように心がけました。操作方法をシンプルにして遊びやすくする一方、「奥義」や「計略」などスキルを作り込んで戦略性を高めました。既存のリアルタイムバトルを徹底的に遊び、その面白さを知っているメンバーが開発チームに集まったことが大きかったと思います。


———:他社のお話を聞くと、リアルタイムバトルへの参加率が意外と低いという話を聞きます。具体的なデータがあるわけではないので、比較できないわけですが、参加率を高めるための工夫としてどういったことをされたのでしょうか。

リアルタイムバトルで遊んだ経験を持つ方が少ないと考えまして、初めて遊ぶ方でも継続的に遊べる施策を意識的に取り入れました。例えば、ゲームを進めたり、「合戦」に参加したりすると、アイテムをプレゼントする仕組みなどです。

———:こうしたインセンティブはログインして遊ぶモチベーションにはつながったでしょうね。もうひとつ、ユーザー数もすごい勢いで伸びたかと思いますが、比較的、安定したサービスだったのではないでしょうか。

そうですね。リアルタイムバトルで重要なのはレスポンスと考えています。サービス開始前から入念に準備を整え、ユーザーに満足してプレイしていただけるように取り組みました。特にインフラについては、トラフィックが急増したときに対応できる体制とノウハウが社内でできていたことが大きかったと考えています。当社は「mixi」などのプラットフォームがオープン化した時からソーシャルゲームを提供していますので、何度となく強烈なトラフィックの増え方を経験していました。

———:リアルタイムバトルのマッチングロジックもリリース当初からかなり完成度が高かったように思いました。「合戦」は、同じくらいの力を持つチーム同士で対戦することが多く、白熱したものになったと思います。

そういってもらえると嬉しいです。マッチングロジックは、リリース前から何度も何度も調整を重ねてきて、いまでも改善を続けています。現在では、専門の分析チームが分析した結果をもとに改善提案を行い、開発チームの担当者はそれに基づいて改善に取り組んでいます。

 

 
———:「戦国」はアプリストアでも人気のあるジャンルですが、気をつけていた点はありますか?

本格的な戦国ゲームを目指したことですね。「戦国」の世界観から外れた要素は入れず、本当に「戦国」が好きというユーザーに楽しんでもらえるようにしました。

———:リリース後の反響はいかがでしたか?

「合戦」が面白いというご意見が多かったですし、イラストが良いといったお褒めの言葉もいただきました。その一方で、ゲームの仕様やイベントなどに関して様々なご意見・ご提案をいただき、ゲームの運営・改善を行っていくうえで非常に参考になりました。

———:Android版は10月にリリースされました。サイバーエージェントグループではAndroidで苦戦していた印象がありましたが、またたくまにユーザーから支持を集めました。マーケティング面での工夫については以前、お聞きしたとおりだと思いますが、開発面ではどういった工夫をされたのでしょうか。

開発に関しては、Android特有の問題として、端末依存があります。当社では、できるだけ多くの端末でスムーズに遊べるようにするため、外部の会社の力を借りながらできるだけ多くの端末でチェックを行い、この問題の解消に努めました。結果として、初期段階から多くの端末に対応したことで、より多くのユーザーに遊んでいただけたのではないかと考えています。
 
———:テレビCMを開始しましたが、その後の状況はいかがでしょうか。

テレビCMの効果もあって好調ですね。新規ユーザーが増えましたし、一度やめてしまっていたユーザーの復帰にもつながりました。

———:テレビCMに関してはわずか3週間ほどで制作してしまったというお話を聞いたのですが、開発側の準備も大変だったのではないでしょうか。

そうですね。テレビCMを放映すると、サーバーの負荷が急激に増えます。それは主に新たに開始するユーザーが増えたことと、一度やめてしまったユーザーが復帰することによるものですが、開発サイドとしては、負荷対策とともに、新規・復帰双方のユーザーが気持ちよく遊べるようにするための改善策を考える必要があります。

お話をいただいた段階で、何をすべきなのかをリストアップして項目化し、各セクションで期限を区切って対応していきました。テレビCM開始前が勝負ですのでそれまでが一番慌ただしく、テレビCMの放映が始まるとむしろ落ち着いていたように思います。


———:この際、新しく開始するユーザー向けの対策として何か特別なことはやったのでしょうか。

新しく始めるユーザーがゲームで接するのはチュートリアルですが、すでに改善がかなり進んでいたので大きくは変更しませんでした。今回は、チュートリアルが終わったユーザーが定期的に・継続的に遊べるような改善を施しました。細かいところですが、UIの改修からインセンティブの修正まで全体的に手直ししました。

———:テレビCMの反響はいかがでしたか。

ポジティブなご意見が多かったように思います。テレビCMに出演していただいた新井浩文さんが好きで『戦国炎舞』を始めたという方や、山本美月さんをモチーフにしたキャラクター「美月姫」が欲しくて始めたという方など好意的な声が多くて嬉しかったですね。

———:これまでを振り返って大変だったことや面白かったことはありますか

大変だったのはレスポンスをよりよく改善するための対策です。楽しかったところでは、「合戦」でスキルがたくさん出てくるのですが、演出の作成をギリギリまでこだわって作ったことです。作っている時はアニメーションでしかみていなかったのですが、リリース前のテストプレイ時にゲームにきちんと組み込まれ、「合戦」の中で企画したとおりに機能しているのを見た時、すごく感動しました。

———:今後やりたいことや目標を教えて下さい。

一言で言えば、新しいことをやりたいです。ユーザーが求めていること、楽しんでもらうことが前提条件となりますが、戦国のモチーフから外れず、いままでの『戦国炎舞』になかったものを取り入れていきたいです。そして、ユーザーに愛されるアプリになり、このゲームは楽しいねと思ってもらえるようにしたいですね。

———:ありがとうございました。
株式会社サムザップ
https://www.sumzap.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サムザップ
設立
2009年5月
代表者
代表取締役 日高 裕介
決算期
9月
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