ドリコム<3793>は5月8日、2014年3月期の連結決算を発表し、同日都内で決算説明会を開催した。売上高は前の期比18%減の 69.89億円、営業損益は5憶円の赤字(前の期は4.74億円の黒字)に転落した。連結で営業赤字になるのは7期ぶり。『ファンタジスタドール ガールズロワイヤル』の計画未達、新作のリリース遅れ、既存ゲームの売上減少が重なった。
説明会で内藤裕紀社長は「スマートフォン向けにシフトするのが想定よりも遅れ、結果として赤字につながってしまった」と振り返りつつ、前期にリリースしたネイティブアプリゲームについて「1勝1敗1分け」と表現。「それなりにネイティブゲームでやっていけるのではないかという手ごたえがある」と語った。2015年3月期の第1四半期(1Q、4~6月)については引き続き赤字の見通しだが、大型IP(知的財産)ゲームの収益寄与が本格化してくる2Q(7~9月)ごろに利益が改善していくとの想定を示した。
ソーシャルゲーム事業の業績変動を、同事業の工夫・改善だけで抑制するのは難しいとして、広告/メディア事業にも注力し、ソーシャルゲームの業績依存度を下げていく方針という。その一環として、自社媒体アプリの開発も進めていることも明かした。(以下、カギ括弧内は内藤社長の発言)
内藤社長(写真)は14年3月期を「ネイティブアプリに挑戦した年」といい、ネイティブアプリ開発など「学ぶことの多い1年だった」と振り返った。
同社初のネイティブアプリとなった『ガールズロワイヤル』は「数字上は計画に未達」、事前登録手法が話題になった『フルボッコヒーローズ』は「(損益)トントン」で、バンダイナムコゲームスから開発と運営を受託した『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ』は「想定を上回っている」とそれぞれ評価。「14年3月期中にリリースした3本については、1勝1敗1分けという感覚」と述べた。
3月にリリースしたばかり『ジョジョ』の業績寄与はまだ少ないが、この1年の挑戦で「それなりにネイティブゲームやっていけるのではないかという手ごたえがある」とのこと。「1Qをスマホネイティブシフトの最後の時期として、2Qくらいから利益も改善していくと想定している」と語った。
ネイティブ開発は、とりわけ「ゲームバランスの調整が大変」だと語った。「リリース前に1~2カ月程度かけてバランス調整をやったが、出してみないとわからないという感覚が強くなっている」という。特に『フルボッコ』は事前登録などマーケティング面では上手く立ち上がったものの、シューティング型という新しいゲームシステムに取り組んだこともあり、「バランス調整に注力している段階」という。
一方、売上が順調に立ち上がっている『ジョジョ』には、説明会会場から「ストアレビューでの評判が良くないのでは」という質問が出てきた。
内藤社長は「ストアのレビューの星が少ない状況がここ1か月くらい続いている」と認め、運営面の反省点を語った。「4月末のアップデートまで、アプリが落ちた際にゲーム進行が保存されない点に対する批判が多かった。途中から再開できるようにアップデートしたが、依然、批判が多い。ひとつひとつ地道に改善していくしかない」とのこと。
また、ネイティブ開発では「インターネット屋として、これまでぶつからなかった課題」に直面したという。それは「アプリのダウンロード時間の短縮、ゲーム起動中の電池消費、メモリ使用による動作の重さなど、コンシューマー(家庭用)ゲーム企業が培ってきたノウハウの部分」だ。コンシューマー経験のあるエンジニアを採用し、ブラウザの技術と融合させながら、開発を進めているとのこと。
ブラウザゲームは依然、縮小傾向にあるというが、『陰陽師』『ちょこっとファーム』が想定よりも堅調で、自社開発ゲームの四半期売上高は横ばいを維持している。なお、下記の図は自社ゲームのみであるため、バンダイナムコゲームスが配信している『ジョジョ』などは含まれていない。
費用面では、新規アプリのリリースに向けて、一部項目が増加した。一方、ネイティブ売上比率の上昇とバンダイナムコゲームスからの受託で、「支払手数料と著作権料が今後、もう少し減ってくる」という。「従来型のプラットフォームの手数料が40%で、App StoreやGoogle Playは30%と低い。またバンダイナムコさんからの受託開発運営による売上はグロス(総額)ではなくネット(ドリコムへの収益分配分)計上になる。ネットには手数料と著作権料は含まれていない」ことが理由だ。
内藤社長は広告事業の説明にも時間を割いた。昨年後半に立ち上げたスマホ向けリワード(成果報酬型)広告商材「HeatAppReward」が、顧客の出稿先がスマホにシフトしていることもあって、順調に推移しているとのこと。また、『フルボッコヒーローズ』で導入した事前登録時のガチャの仕組みを、広告商材「フライングガチャ」としてリリースした。
「HeatAppReward」の状況は以下の通り。1月が下落しているが、広告事業を急いで立ち上げたため体制が混乱していたほか、iOSのストアランキングのロジックが大きく変わったことで顧客が出稿を控えたことなどが理由という。
フライングガチャは、「ガチャを回すことで、リリース前にゲームに時間を使ったユーザーが、リリース後は熱量の高いユーザーとなる」という効果があるようだ。同商材を経由したユーザーは、3日後継続率が82%、伝播力(招待数)が13倍とのこと。
また、内藤社長はフライングガチャをリリースした背景として、「顧客の志向が、リリース時にリワードでランキングを上げる従来の手法に加え、事前登録にも集まってきた」との印象を語った。事前登録でリリース前にユーザーの期待度を高め、リリース直後に盛り上げるという流れだ。また、知り合いと一緒に遊ぶことで継続性が高まるという傾向から、「バイラル(口コミ)メディアを絡めつつプロモーション全体を設計する難易度の高いマーケティングが求められている」とも語った。
アプリマーケティング全般の話として、「リリース時のリワード広告が(ユーザーの)流入を一番取れるという状況は変わってはいないが、足元では事前登録とリリース時のリワードのセット販売になってきている、というのが現場の感覚。事前登録数を一番取れるメディアをつくろうということでリリースされたのがフライングガチャ」とのこと。
なお、「顧客からは、いくつか出稿しているなかでドリコムが一番(ユーザー流入を)取れているし、流入ユーザーの継続率も高い、という話を頂いている」とのこと。フライングガチャも「事前登録数としては最大級の商材になってきていると考えている」という。
広告事業の現状を説明するなか、「広告はもちろん、パブリッシング面の協力の話も含め、中国や韓国などアジアから、日本市場への展開についての問い合わせが増えている」と明かした。
日本のモバイルゲームを非常に注視しており、「『フルボッコ』をリリースしたタイミングで、複数のアジア企業から、自国に出すためにライセンスを提供してもらいたいという依頼が来た」という。
以下、1Qと2Qの業績見通しとなる。1Qは売上高が前四半期(1~3月)比10%増の19億円、営業損益は5000万円の赤字となる見込み。2Qは売上高で20億円台前半、営業利益は数億円の黒字を目指す方向性を示した。大型IP(知的財産)2作品が業績に寄与してくる「この1Q、2Qで赤字の長いトンネルを抜け出せるだろう」との期待を述べた。
なお、1Qの業績予想では、『フルボッコ』は大きな伸びを見込んでおらず、まだ配信されていない『ONE PIECE』の寄与は限定的とした。既存ブラウザゲームの減少トレンドは続く見通しだ。広告事業は売上の増加基調が続く見込み。ソーシャルラーニングは、依然、事業開発段階とのこと。
他社IPを使ったゲーム展開については、すでに『ジョジョ』『ONE PIECE』という「大型コンテンツが2つあるので、ここから何本も抱えていくというよりは、良い巡り合わせがあったら検討するという形にしたい」と述べた。今後の新規開発ラインは、「すでに発表しているものを除いて2、3本を見込んでいる。本数を出すよりは、一本一本着実に作っていきたい」と話した。
海外展開については、「自社で日本向けに面白い作品を出せたら海外でも、という順番でやっていきたい。海外では中国や韓国などアジアの優先順位を上げている。作品のテイストは、欧米に合わせるよりも、アジアに合わせる方が近いと感じている」という。
■関連リンク
・決算説明会資料
説明会で内藤裕紀社長は「スマートフォン向けにシフトするのが想定よりも遅れ、結果として赤字につながってしまった」と振り返りつつ、前期にリリースしたネイティブアプリゲームについて「1勝1敗1分け」と表現。「それなりにネイティブゲームでやっていけるのではないかという手ごたえがある」と語った。2015年3月期の第1四半期(1Q、4~6月)については引き続き赤字の見通しだが、大型IP(知的財産)ゲームの収益寄与が本格化してくる2Q(7~9月)ごろに利益が改善していくとの想定を示した。
ソーシャルゲーム事業の業績変動を、同事業の工夫・改善だけで抑制するのは難しいとして、広告/メディア事業にも注力し、ソーシャルゲームの業績依存度を下げていく方針という。その一環として、自社媒体アプリの開発も進めていることも明かした。(以下、カギ括弧内は内藤社長の発言)
■「1勝1敗1分け」…ネイティブアプリに挑戦し、学ぶことの多かった1年
内藤社長(写真)は14年3月期を「ネイティブアプリに挑戦した年」といい、ネイティブアプリ開発など「学ぶことの多い1年だった」と振り返った。
同社初のネイティブアプリとなった『ガールズロワイヤル』は「数字上は計画に未達」、事前登録手法が話題になった『フルボッコヒーローズ』は「(損益)トントン」で、バンダイナムコゲームスから開発と運営を受託した『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ』は「想定を上回っている」とそれぞれ評価。「14年3月期中にリリースした3本については、1勝1敗1分けという感覚」と述べた。
3月にリリースしたばかり『ジョジョ』の業績寄与はまだ少ないが、この1年の挑戦で「それなりにネイティブゲームやっていけるのではないかという手ごたえがある」とのこと。「1Qをスマホネイティブシフトの最後の時期として、2Qくらいから利益も改善していくと想定している」と語った。
実際、ゲーム事業の健闘と、広告事業の立ち上がりで、第4四半期(1~3月)の売上高は前四半期(昨年10~12月)比で微増となっている。
■ネイティブ開発は「ゲームバランス調整」「コンシューマー企業のノウハウ」が課題
ネイティブ開発は、とりわけ「ゲームバランスの調整が大変」だと語った。「リリース前に1~2カ月程度かけてバランス調整をやったが、出してみないとわからないという感覚が強くなっている」という。特に『フルボッコ』は事前登録などマーケティング面では上手く立ち上がったものの、シューティング型という新しいゲームシステムに取り組んだこともあり、「バランス調整に注力している段階」という。
一方、売上が順調に立ち上がっている『ジョジョ』には、説明会会場から「ストアレビューでの評判が良くないのでは」という質問が出てきた。
▼『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ』のゲーム画面
内藤社長は「ストアのレビューの星が少ない状況がここ1か月くらい続いている」と認め、運営面の反省点を語った。「4月末のアップデートまで、アプリが落ちた際にゲーム進行が保存されない点に対する批判が多かった。途中から再開できるようにアップデートしたが、依然、批判が多い。ひとつひとつ地道に改善していくしかない」とのこと。
また、ネイティブ開発では「インターネット屋として、これまでぶつからなかった課題」に直面したという。それは「アプリのダウンロード時間の短縮、ゲーム起動中の電池消費、メモリ使用による動作の重さなど、コンシューマー(家庭用)ゲーム企業が培ってきたノウハウの部分」だ。コンシューマー経験のあるエンジニアを採用し、ブラウザの技術と融合させながら、開発を進めているとのこと。
■ブラウザは『陰陽師』『ちょこっとファーム』が想定より堅調
ブラウザゲームは依然、縮小傾向にあるというが、『陰陽師』『ちょこっとファーム』が想定よりも堅調で、自社開発ゲームの四半期売上高は横ばいを維持している。なお、下記の図は自社ゲームのみであるため、バンダイナムコゲームスが配信している『ジョジョ』などは含まれていない。
費用面では、新規アプリのリリースに向けて、一部項目が増加した。一方、ネイティブ売上比率の上昇とバンダイナムコゲームスからの受託で、「支払手数料と著作権料が今後、もう少し減ってくる」という。「従来型のプラットフォームの手数料が40%で、App StoreやGoogle Playは30%と低い。またバンダイナムコさんからの受託開発運営による売上はグロス(総額)ではなくネット(ドリコムへの収益分配分)計上になる。ネットには手数料と著作権料は含まれていない」ことが理由だ。
■立ち上がる広告事業…顧客の関心は「口コミ×事前登録」にじわりシフト
内藤社長は広告事業の説明にも時間を割いた。昨年後半に立ち上げたスマホ向けリワード(成果報酬型)広告商材「HeatAppReward」が、顧客の出稿先がスマホにシフトしていることもあって、順調に推移しているとのこと。また、『フルボッコヒーローズ』で導入した事前登録時のガチャの仕組みを、広告商材「フライングガチャ」としてリリースした。
「HeatAppReward」の状況は以下の通り。1月が下落しているが、広告事業を急いで立ち上げたため体制が混乱していたほか、iOSのストアランキングのロジックが大きく変わったことで顧客が出稿を控えたことなどが理由という。
フライングガチャは、「ガチャを回すことで、リリース前にゲームに時間を使ったユーザーが、リリース後は熱量の高いユーザーとなる」という効果があるようだ。同商材を経由したユーザーは、3日後継続率が82%、伝播力(招待数)が13倍とのこと。
また、内藤社長はフライングガチャをリリースした背景として、「顧客の志向が、リリース時にリワードでランキングを上げる従来の手法に加え、事前登録にも集まってきた」との印象を語った。事前登録でリリース前にユーザーの期待度を高め、リリース直後に盛り上げるという流れだ。また、知り合いと一緒に遊ぶことで継続性が高まるという傾向から、「バイラル(口コミ)メディアを絡めつつプロモーション全体を設計する難易度の高いマーケティングが求められている」とも語った。
アプリマーケティング全般の話として、「リリース時のリワード広告が(ユーザーの)流入を一番取れるという状況は変わってはいないが、足元では事前登録とリリース時のリワードのセット販売になってきている、というのが現場の感覚。事前登録数を一番取れるメディアをつくろうということでリリースされたのがフライングガチャ」とのこと。
なお、「顧客からは、いくつか出稿しているなかでドリコムが一番(ユーザー流入を)取れているし、流入ユーザーの継続率も高い、という話を頂いている」とのこと。フライングガチャも「事前登録数としては最大級の商材になってきていると考えている」という。
■強く感じる「アジアからの視線」
広告事業の現状を説明するなか、「広告はもちろん、パブリッシング面の協力の話も含め、中国や韓国などアジアから、日本市場への展開についての問い合わせが増えている」と明かした。
日本のモバイルゲームを非常に注視しており、「『フルボッコ』をリリースしたタイミングで、複数のアジア企業から、自国に出すためにライセンスを提供してもらいたいという依頼が来た」という。
■「この1Q、2Qで赤字の長いトンネルを抜け出せるだろう」
なお、1Qの業績予想では、『フルボッコ』は大きな伸びを見込んでおらず、まだ配信されていない『ONE PIECE』の寄与は限定的とした。既存ブラウザゲームの減少トレンドは続く見通しだ。広告事業は売上の増加基調が続く見込み。ソーシャルラーニングは、依然、事業開発段階とのこと。
他社IPを使ったゲーム展開については、すでに『ジョジョ』『ONE PIECE』という「大型コンテンツが2つあるので、ここから何本も抱えていくというよりは、良い巡り合わせがあったら検討するという形にしたい」と述べた。今後の新規開発ラインは、「すでに発表しているものを除いて2、3本を見込んでいる。本数を出すよりは、一本一本着実に作っていきたい」と話した。
海外展開については、「自社で日本向けに面白い作品を出せたら海外でも、という順番でやっていきたい。海外では中国や韓国などアジアの優先順位を上げている。作品のテイストは、欧米に合わせるよりも、アジアに合わせる方が近いと感じている」という。
■関連リンク
・決算説明会資料
会社情報
- 会社名
- 株式会社ドリコム
- 設立
- 2001年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 内藤 裕紀
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高97億7900万円、営業利益9億300万円、経常利益7億9300万円、最終利益1億400万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3793