enish<3667>は7月31日、都内で決算説明会を開催した。7月30日に発表した2014年12月期第2四半期(4~6月)の売上高は前四半期比15%減の14.9億円、営業・経常利益は95%減の1000万円程度で減収減益。
先日の通期業績予想の下方修正で開示された通り、第2四半期は既存タイトルの売上高が想定以上に落ち込み、厳しい状況で推移した。安徳孝平社長は、既存タイトル落ち込みの理由を「一部運用ミス」と説明。また、2014年度の新規リリースを5→3タイトル(上期2本、下期1本)に集中すると述べた。2014年秋にリリース予定の『千年の巨神』は、同ジャンルの課題点を解消した期待作であるという。一方、海外子会社の展開が順調に進行していることを語った(以下、カギ括弧内は安徳社長の発言)。
説明会の冒頭で、7月18日に発表した下方修正に関して安徳社長は「これから成長軌道に乗せるために努力していく」とお詫びの言葉を述べた。第2四半期の業績は、新規ネイティブアプリのリリース遅延はもとより、それ以上に既存ブラウザアプリの落ち込みが減収減益の原因になったようだ。
落ち込んだ原因には、「既存ブラウザアプリの一部運用でミスが生じたこと」を挙げた。おもに同社のシミュレーションゲームのアート責任者をネイティブアプリに移管した際に、ノウハウの引き継ぎがうまく出来ておらず、ユーザーに支持されるデザインのクオリティに至らなかったのが、ガチャの売上にも響いたというのだ。また、カードバトルゲームでは、スキルのレベルデザインの調整に時間を要したことにも言及。いずれも今後はノウハウの共有とチェック体制などの開発体制を見直して、売上の回復を目指していくとのこと。
コストは大きな変化はなく、「現状はだいたい月商5億円が損益の分岐点」と語った。
広告宣伝費は、上期にリリースした新規タイトルの『ぼくのレストラン3』と『バハムートクライシス』で調整を優先したため、費用の投入を停止している。なお、今後の広告宣伝費は新規タイトルに集中していくようだ。支払手数料の増加は、海外関連のコストが増加したためとしている。また、優秀者な人材確保のため、引き続き厳選かつ積極的な採用を行い労務費・人件費などが微増。なお、来期に向けたゲーム開発費用については、開発期間中に計上しているとのことだ。
前述しているように、同社は2014年12月通期の売上高及び利益を下方修正した。計算の根拠は、引き続き既存タイトルの売上高が減少するものとして試算。さらに第3四半期以降の新規リリース(下期)は3本の予定だったが、ひとつひとつの作品に注力するため1本に変更したことも理由のひとつ。
コスト面は、不要な経費を削減しつつも開発に必要であれば順次投資していく予定とのこと。安徳社長は「業績予想は、全体を通して保守的な結果」と語った。ちなみに2014年7月の足元の状況では、6月よりも回復の傾向が見えつつあるという。
海外子会社の展開は順調に進行しているという。
韓国に拠点を置くenish Koreaでは、開発パートナーとの連携を通して、日本向けにリアルタイム通信の対戦型アクションゲーム及び、農園系のシミュレーションゲームを開発中。日本国内の新規タイトルも韓国配信に向けてローカライズ中とのこと。
中国のenish Chinaは、もともとアートスタジオとして設立しているため、積極的に現地のアーティストを採用しており、ゲーム開発におけるイラスト・デザイン費用の発注を同社に切り替えているようだ。また、香港・マカオを皮切りに日本国内の新規タイトルをローカライズ後にリリースを予定しているほか、中国マーケット向けにも新規タイトルを開発中。
会場では、“日本国内の新作タイトルは今後の配信国別にゲーム仕様を変更するのか”という質問が出た。これについて安徳社長は「システム的には全世界共通だが、アイテムやイラストの部分は必要に応じて変えていこうと考えている」とコメント。なお、enish Koreaとenish Chinaは、開発中のタイトルが配信開始後、重要性の判断で将来連結するかを検討していくという。
最後にカスタマーサポートやデバッグ・QAの拠点として、最近設立されたタイの「enish Thailand」。こちらはまだ体制を構築中とのことで、完了次第日本で外注しているカスタマーサポートやQAなどを、順次同社に切り替えてコスト削減や品質向上に繋げていくようだ。
改めて下期以降の新規リリースタイトルをまとめよう。日本国内向けのリリースを5→3タイトルに集中、さらに韓国で2タイトル、中国で1タイトルを開発中。
『ぼくのレストラン3』は、同社初のフルネイティブアプリとして2014年5月23日にiOS版がリリースされた人気シリーズの第3作目。KPI(重要業績評価指標)は、ブラウザ版のシリーズ過去作品と遜色のない数字が出ているようで、「プロモーションすれば収益に貢献すると考えている」とのことだ。ただし、宣伝のタイミングは大型アップデートとAndroid版のリリースに併せて展開していくという。
ミッドコア向けの『バハムートクライシス』は、2014年6月30日にdゲーム・GREEを皮切りに配信開始。今後はmixiやMobage、mobcastなどマルチプラットフォームで展開後、ネイティブ版もリリースする予定とのこと。なお、はじめにブラウザ版からリリースするのは、同社のブラウザゲームの開発力を活かすためとしている。
そして、2014年秋にiOS端末向けでリリース予定の『千年の巨神』。本作は、女性/ライトユーザー向けのタワーディフェンスゲームで、かわいいキャラクターと分かりやすい遊び方にフォーカスしている。安徳社長は、すでに人気のタワーディフェンスゲームが市場に出回っていることを理解しつつも、「従来タイトルの課題点の解消やマネタイズの改修などを行っている。期待できるタイトルだ」と意気込みを語った。
今後の成長戦略の方向性としては、引き続き採用・教育による開発体制の強化によって、ブラウザからネイティブアプリに主軸を移していく。直近では海外の開発体制を充実してグローバル展開、そして行く行くはユーザー規模の活性化を確保したうえで、O2O(Online to Offline)事業の本格展開を開始していくとのこと。
しかし質疑応答では、O2O事業の進捗に“上場時から掲げているのに、ややスローペースではないか”と心配する声があがった。これについて安徳社長は、「『ぼくのレストラン2』では店舗送客も含めて効果が出ている。ただ現状のネイティブアプリでは、ユーザー規模が非常に少ないため、本格的な展開には時期尚早」とコメント。今後は、ネイティブゲームを通してユーザーを獲得していくとのこと。
■関連リンク
決算説明会資料
先日の通期業績予想の下方修正で開示された通り、第2四半期は既存タイトルの売上高が想定以上に落ち込み、厳しい状況で推移した。安徳孝平社長は、既存タイトル落ち込みの理由を「一部運用ミス」と説明。また、2014年度の新規リリースを5→3タイトル(上期2本、下期1本)に集中すると述べた。2014年秋にリリース予定の『千年の巨神』は、同ジャンルの課題点を解消した期待作であるという。一方、海外子会社の展開が順調に進行していることを語った(以下、カギ括弧内は安徳社長の発言)。
■既存タイトルの不振などにより減収減益…「一部運用でミスが生じた」
説明会の冒頭で、7月18日に発表した下方修正に関して安徳社長は「これから成長軌道に乗せるために努力していく」とお詫びの言葉を述べた。第2四半期の業績は、新規ネイティブアプリのリリース遅延はもとより、それ以上に既存ブラウザアプリの落ち込みが減収減益の原因になったようだ。
落ち込んだ原因には、「既存ブラウザアプリの一部運用でミスが生じたこと」を挙げた。おもに同社のシミュレーションゲームのアート責任者をネイティブアプリに移管した際に、ノウハウの引き継ぎがうまく出来ておらず、ユーザーに支持されるデザインのクオリティに至らなかったのが、ガチャの売上にも響いたというのだ。また、カードバトルゲームでは、スキルのレベルデザインの調整に時間を要したことにも言及。いずれも今後はノウハウの共有とチェック体制などの開発体制を見直して、売上の回復を目指していくとのこと。
コストは大きな変化はなく、「現状はだいたい月商5億円が損益の分岐点」と語った。
広告宣伝費は、上期にリリースした新規タイトルの『ぼくのレストラン3』と『バハムートクライシス』で調整を優先したため、費用の投入を停止している。なお、今後の広告宣伝費は新規タイトルに集中していくようだ。支払手数料の増加は、海外関連のコストが増加したためとしている。また、優秀者な人材確保のため、引き続き厳選かつ積極的な採用を行い労務費・人件費などが微増。なお、来期に向けたゲーム開発費用については、開発期間中に計上しているとのことだ。
■下方修正後の通期業績予想は「保守的」
前述しているように、同社は2014年12月通期の売上高及び利益を下方修正した。計算の根拠は、引き続き既存タイトルの売上高が減少するものとして試算。さらに第3四半期以降の新規リリース(下期)は3本の予定だったが、ひとつひとつの作品に注力するため1本に変更したことも理由のひとつ。
コスト面は、不要な経費を削減しつつも開発に必要であれば順次投資していく予定とのこと。安徳社長は「業績予想は、全体を通して保守的な結果」と語った。ちなみに2014年7月の足元の状況では、6月よりも回復の傾向が見えつつあるという。
■3ヵ国で展開している海外子会社…開発中のゲームジャンルも判明
海外子会社の展開は順調に進行しているという。
韓国に拠点を置くenish Koreaでは、開発パートナーとの連携を通して、日本向けにリアルタイム通信の対戦型アクションゲーム及び、農園系のシミュレーションゲームを開発中。日本国内の新規タイトルも韓国配信に向けてローカライズ中とのこと。
中国のenish Chinaは、もともとアートスタジオとして設立しているため、積極的に現地のアーティストを採用しており、ゲーム開発におけるイラスト・デザイン費用の発注を同社に切り替えているようだ。また、香港・マカオを皮切りに日本国内の新規タイトルをローカライズ後にリリースを予定しているほか、中国マーケット向けにも新規タイトルを開発中。
会場では、“日本国内の新作タイトルは今後の配信国別にゲーム仕様を変更するのか”という質問が出た。これについて安徳社長は「システム的には全世界共通だが、アイテムやイラストの部分は必要に応じて変えていこうと考えている」とコメント。なお、enish Koreaとenish Chinaは、開発中のタイトルが配信開始後、重要性の判断で将来連結するかを検討していくという。
最後にカスタマーサポートやデバッグ・QAの拠点として、最近設立されたタイの「enish Thailand」。こちらはまだ体制を構築中とのことで、完了次第日本で外注しているカスタマーサポートやQAなどを、順次同社に切り替えてコスト削減や品質向上に繋げていくようだ。
■『千年の巨神』は同ジャンルの課題点を解消した期待作
改めて下期以降の新規リリースタイトルをまとめよう。日本国内向けのリリースを5→3タイトルに集中、さらに韓国で2タイトル、中国で1タイトルを開発中。
タイトル | ターゲット | 開発拠点 |
ぼくのレストラン3 | 女性/ライト | 東京 |
バハムートクライシス | 男性/ミッドコア | 東京 |
千年の巨神 | 女性/ライト | 東京 |
Project4(来期) | 男性/ミッドコア | 東京 |
Project5(来期)アクションゲーム | 男性/ミッドコア | ソウル |
Project6(来期)農園系SLG | 女性/ライト | ソウル |
Project7(来期)中国マーケット向け | 男性/ミッドコア | 上海 |
『ぼくのレストラン3』は、同社初のフルネイティブアプリとして2014年5月23日にiOS版がリリースされた人気シリーズの第3作目。KPI(重要業績評価指標)は、ブラウザ版のシリーズ過去作品と遜色のない数字が出ているようで、「プロモーションすれば収益に貢献すると考えている」とのことだ。ただし、宣伝のタイミングは大型アップデートとAndroid版のリリースに併せて展開していくという。
ミッドコア向けの『バハムートクライシス』は、2014年6月30日にdゲーム・GREEを皮切りに配信開始。今後はmixiやMobage、mobcastなどマルチプラットフォームで展開後、ネイティブ版もリリースする予定とのこと。なお、はじめにブラウザ版からリリースするのは、同社のブラウザゲームの開発力を活かすためとしている。
そして、2014年秋にiOS端末向けでリリース予定の『千年の巨神』。本作は、女性/ライトユーザー向けのタワーディフェンスゲームで、かわいいキャラクターと分かりやすい遊び方にフォーカスしている。安徳社長は、すでに人気のタワーディフェンスゲームが市場に出回っていることを理解しつつも、「従来タイトルの課題点の解消やマネタイズの改修などを行っている。期待できるタイトルだ」と意気込みを語った。
■O2O事業の本格展開に向けて、「ユーザー規模の確保の段階」
今後の成長戦略の方向性としては、引き続き採用・教育による開発体制の強化によって、ブラウザからネイティブアプリに主軸を移していく。直近では海外の開発体制を充実してグローバル展開、そして行く行くはユーザー規模の活性化を確保したうえで、O2O(Online to Offline)事業の本格展開を開始していくとのこと。
しかし質疑応答では、O2O事業の進捗に“上場時から掲げているのに、ややスローペースではないか”と心配する声があがった。これについて安徳社長は、「『ぼくのレストラン2』では店舗送客も含めて効果が出ている。ただ現状のネイティブアプリでは、ユーザー規模が非常に少ないため、本格的な展開には時期尚早」とコメント。今後は、ネイティブゲームを通してユーザーを獲得していくとのこと。
■関連リンク
決算説明会資料
会社情報
- 会社名
- 株式会社enish
- 設立
- 2009年2月
- 代表者
- 代表取締役社長 安徳 孝平
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高35億800万円、営業損益12億600万円の赤字、経常損益12億6500万円の赤字、最終損益13億7400万円の赤字(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3667