【セミナー】PartyTech 2014[夏](後編)…GoogleとFacebookが掲げるアプリマーケティングとは。5Rocksが語る「本来注目すべきアプリデータの見方」にも迫る

アドウェイズ<2489>は、2014年7月16日にベルサール六本木において、同社が主催のセミナー「PartyTech 2014[夏]~答えは「ユーザー」が持っている~」を開催した。

セミナーでは、アドウェイズをはじめ、IT業界を牽引し世界的にイノベーションを起こす「Twitter Japan」「グーグル」「フェイスブック」「5Rocks」4社のキープレイヤーによる、「ユーザー」にフォーカスした内容で講演が行われた。

多様化する「ユーザー」に合わせたサービス運用やデータ解析、マーケットリサーチなど緻密なマーケティングが求められている昨今、どのようにユーザーデータを活用し、ROI(Return On Investment=費用対効果)やLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)最大化へと導くのか……。

後編となる本稿では、「グーグル」「フェイスブック」「5Rocks」の3社が、自社サービスを用いたマーケティング・プロモーション手法に加え、ユーザーデータの見方について講演した模様をレポートしていく。

■マーケターも指標をLTV(顧客生涯価値)に切り替えよう


グーグル株式会社
モバイルアプリソリューション
シニア アカウントエグゼクティブ前田 知憲氏

グーグルからは、アプリデベロッパーに向けた「Google の新たなプロモーション力」について講演。そもそもグーグルは、コンテンツ開発をはじめ、マネタイズ、プロモーション、エンゲージメント強化、そしてプラットフォームの Google Play など、多種多様なサービスを備えている。プロモーションの領域に関しては、今年だけでリリースした β 版の数が 15 にも及ぶという。

さて、はじめに「Google Play」におけるユーザーを取り巻く環境と実情について話してくれた。Google Play は全世界で 500 億ダウンロード以上、アプリの数が 100 万以上、そして 190ヵ国以上で展開しているプラットフォーム。またユーザー動向は、ひとりあたりインストールしているアプリの平均数は約36とのことだが、なんと過去30日間に使用したアプリは約80% の人が1度しか使わないようだ。

これを受けて、アプリデベロッパーの現状はどうなっているのか。旧来までは、「ユーザー獲得(CPI)にフォーカスしたプロモーション」、それに伴い「ダウンロード数の伸び悩み」がアプリプロモーションの課題として挙げられていた。そもそも企業においては、「各担当者の目標としている指標が異なる」と前田氏は指摘。

というのも経営者は企業成長のために profit(利益)を指標にする。対してエンジニアは、どれだけ長く遊んでもらうかを考えるために LTV(顧客生涯価値)を、そしてマーケターはCPI(クリック単価)といったように、すべて大事な要素ではあるが、各々が重きを置いている指標は異なるという。

これに関して前田氏は、「マーケターも指標を LTV に切り替える。インストールした後のユーザー動向が重要」と各担当者で指標を統一することが大切とコメント。さらに、「いまはユーザー獲得の単価のみに左右されないプロモーションが求められている」と言葉を付け加えた。言わばどのようにユーザーを獲得するか、また獲得した良質なユーザーをどのように育てるかが、今後プロモーションとして必要だと語った。そこでグーグルから提供できるものついて、前田氏は「場所から人へのプロモーション」と語った。たとえば、同社がサービスを行う広告プラットフォーム「Google AdWords」を駆使することで、興味関心のあるユーザーにだけ訴求できるとのこと。

また、これからのモバイルアプリ マーケティングには、適切な人にアプリの世界観を伝える「動画広告」を活用することで、より良質なユーザーを獲得できるとも話した。なかでもYouTube の動画広告は認知からダウンロードまでを繋げるプロモーションとして新たにリリースし、今後のプロモーションにとって大きな意味を持つと述べた。最後に本講演における3 つのポイントを提示して、講演を締めた。

1. 獲得が目標のアプリプロモーションはユーザー動向と乖離
2. 重要なことはユーザーを育てるプロモーション
3. Google AdWords を使えば、適切なタイミングで適切なユーザーに情報を届けられる

 

■コンテンツと最適なユーザーを繋げるためのツール


フェイスブック株式会社
シニアセールスマネージャー 田中 俊之氏

フェイスブックからは、シニアセールスマネージャーの田中氏が登壇して、同社の主力事業となるモバイルアプリ広告について解説してくれた。同サービスは、現在ふたつの側面からプッシュさせているとのこと。 

ひとつ目は、ダウンロード数が業界に与えるインパクトが非常に大きい点。現状Facebookの世界でのMAUは13億人以上となり、同サービスはそれらユーザーひとりひとりに対して適切な広告、メッセージが届けられる。なお、モバイルアプリ広告は、提供開始から現在まで、Google Play及びApp Storeで約3億5000万以上のインストールを誘導する結果となり、「この数は毎月加速度的に増えている」と田中氏は言葉を添えた。 
 

ふたつ目はターゲッティング能力が高い点。「現状においては、コンテンツと最適な人を繋げなければいけない」と田中氏は語った。たとえばFacebookでは、ユーザー自身が気に入らない投稿や広告を非表示にすると、対象広告にはネガティブなフィードバックが与えられると話す。さらに、キーワードに関連する人たちをFacebook側が見つけて、的確なユーザーに対して広告を配信していくが可能とのことだ。 

なかでも田中氏が今回のセミナーで紹介したいツールが、カスタムオーディエンス(CUSTOM AUDIENCE、以下、CA)と類似オーディエンス(LOOKALIKE AUDIENCE、以下、LA)」である。「かれこれ1年以上日本の方にご案内しているツールだが、やはり色々なハードルがあり導入が進んでこなかった」と田中氏は指摘。
 

しかし、直近では様々な結果が出てきているようだ。CA(カスタムオーディエンス)とは、ターゲティング設定のオプションのひとつで、広告主が持っている顧客データをもとに、Facebook上にいるユーザーとマッチングし、探し出す機能で、顧客データとFacebookユーザーを結びつける、極めて強力なターゲティング手法とも田中氏は置き換えた。

たとえば、顧客データを活用することで、広告主はタイトル毎/インストール済みユーザー情報をはじめ、課金ユーザー情報や継続ユーザー/離脱ユーザー情報、高課金・高継続者/高課金・低継続者など、こと細かい情報を特定できる。そこから広告主は、Facebookにマッチングをかけるためのデータを作り、指定した該当ユーザーがFacebookを閲覧しているときに広告を配信したり、メッセージを届けたりすることが可能というのだ。

ちなみにマッチングキーとして使われるのは、Eメール、Facebook User ID、iOS IDFA/Google Advertising ID、ウェブサイト リターゲティングタグなど。とくに日本では、個人情報のセキュリティ面でも心配する声が挙がると思うが、顧客データとFacebookのデータをマッチングする際に双方のデータはハッシュ化されるので、お互いのデータはシェアされない仕組みとなっている。

LAは、顧客データで発見した最適なユーザーと極めて類似する人々をFacebookが抽出しターゲティングするツール。マッチングしたユーザーを解析して、高継続者・高課金者・離脱者などのセグメントに集合させ、さらに類似ユーザーがターゲットとしている国や地域から類推し、引っ張ってくることができる。 ここで田中氏は、具体的にデベロッパーはどのような効果を出しているのかを、実際にLAが用いられたゲームデベロッパー『Proficient City』の例を引き合いに解説してくれた。

本作では、LA利用時のROASが+25%、RPIが2.2倍、課金ユーザー獲得率が3倍になったというケースだ。 また、LAは広告主側で特定したユーザーから、どれぐらいの幅で類似ユーザーを引っ張ってくるかを調整できる。その際に顧客データと最も類似するTop1%の課金ユーザーと、それに準ずる2%~6%の課金ユーザーで調整してみたところ、獲得するCPIに関してはほとんど変わらなかったが、その後の課金額に差がでているとのこと。

また、昨今注目されている事前予約サイトにも上記のふたつのツールが活用できるようだ。たとえば一度作成したCAでは、1タイトルだけではなく、別のタイトルや新作のプロモーションにも利用可能で、新規インストールユーザーの獲得に非常に有益なデータベースを自社で保持できる。
 

さらに、Facebookの広告でも表示される「インストールする」というボタンを、「予約する」といった形にボタンを変更することも可能という。また、Facebookのリマーケティングピクセルを 事前予約サイトのモバイル版とPC版に設置すると、たとえばサイト訪問後、メールアドレスを登録しないで離脱したユーザーに対してFacebook上でリターゲティングを行うことなどができるようだ。 

これらのことから一度作成したCAは、事前予約サイトのプロモーションだけではなくて、この後に出てくる別のタイトル、または新作プロモーションに対してもアプリAでのプロモーションで効果が良かった人たちに対し、今後アプリBが出たときにも配信をすることが可能になるという。 

講演の最後に田中氏は、Facebookのモバイル広告をより活かす取り組みについて、「海外にキャンペーンを拡大してほしい」と語った。現状トップパートナーは、40ヵ国以上の国でFacebookを使ってプロモーションしているとのこと。 

日本と海外ではFacebookの浸透率も異なり、たとえばFacebookのユーザー数が多い台湾では、あるタイトルをリリースした際に、台湾のFacebookにおけるCPIが日本の1/9で、30倍ものインストール数を叩き出したという。さらに別の広告主がオーストラリアで日本のタイトルを配信した際には、特定のジャンルで無料ランキング1位となり、そのインストール数のうち新規獲得9割がFacebookの広告から獲得したユーザーとのことだった。

このように、日本の 企業が海外に配信して成功する例は、アジアだけではなくて世界中で広がりを見せているようだ。田中氏は、「日本の良質なコンテンツが海外でNo.1として成功できるように、ぜひ後押しさせていただきたい」という言葉で講演を締めた。

 

■データの中身を知る…。本来注目すべきアプリデータの見方


■5Rocks株式会社
代表取締役社長 イ・チャンス氏

セミナーの最後に登壇した5Rocks代表取締役社長のイ・チャンス氏は、モバイルゲーム/アプリにおける分析機能と運営ソリューションを提供する同社同名のツール「5Rocks」を活用した、本来注目すべき“アプリデータの見方”について講演した。

2014年4月から一般公開している「5Rocks」は、韓国をはじめ、日本や東南アジア、北米を含めて、現在700社以上ものモバイルゲーム会社で使われているツールだ。2013年6月以降、日本と韓国でクローズドベータ版を提供してきた同ツールだが、期間中に取得した80社・200アプリからのフィードバックを取得した経緯もあり、現在はデータ分析における多数のノウハウを保有しているようだ。

今回の講演では、“長年運営されるゲーム”と“短命で終わるゲーム”において、データの見方でどのような特徴が出てくるのかを解説してくれた。

そもそも企業では、Install、DAU、Daily Session Count、Revenue、ARPU、Retentionなど、データとして必要な要素を常々確認しているかと思うが、これらの指標を単独で確認し、トレンドだけをみて意識決定をしていくことは、誤った選択に繋がりかねないとのことだ。たとえば、データ分析が苦手な企業は、恐らく下部のようなDAUの推移であれば、上がれば◎、下がれば×という判断をしているかと思う。

しかし、データ分析に長けた企業であれば、レベル20以上のユーザーや1週間で1万円以上課金するユーザーなど、DAUのデータと共に重要なユーザーの動きと共に確認するとイ・チャンス氏は指摘する。もちろん全体的にDAUが上昇することは良いことだが、そこで知らぬうちに重要なユーザーの離脱が始まっていれば元もこうもない。

続いて「5Rocks」を活用したFrequencyデータについて解説。下部の写真は、過去7日間で該当ゲームを何日間遊んだかを計測したデータである(例:FQ3…過去7日間において、3日間を該当ゲームで遊んだ)。データ分析が上手い企業では、まず各数字を分解して、それらがどのように構成されていたのかを確認するという。ちなみに下部の写真では、FQ3~7のユーザーがDAUの半分になっているが、ここでもっとも重要視するのはFQ7にあると考えられる。
 

重要な理由としては、7日間連続で該当ゲームを遊ぶユーザーともなれば、当然売上貢献度が高いことが挙げられ、実際に良いゲームであるほど、その数字が平均的に75%ぐらいになるとイ・チャンス氏は語った。こうしてユーザーの特性を分析していくことで、ミスリードも次第に減っていくようだ。もし、FQ7のユーザーなどアクティブなユーザーの増加がないのであれば、やみくもに新規ユーザーの獲得に広告費用を使うのではなく、既存ユーザーをターゲットにリテンションを向上させるために広告費用を使うなど、然るべき選択ができるというわけだ。

次は課金について。ARUPは誰しも重要視するデータであるが、全体の平均値ではなくて、レベル別に分けて確認することが必要とイ・チャンス氏は話す。たとえば、レベル1のユーザーのARUPが30円で、レベル10のユーザーが10円とする。見て分かる通り、レベル10のユーザーが新規ユーザーよりもARUPが低いため、運営側もレベル10付近のユーザーに向けた「ARUPを上げる」施策をとることにつながるという。
 

「ユーザーを絶対にひとつのボックスで見てはいけない」とイ・チャンス氏。課金、ログイン継続など、ひとりのユーザーの特徴を細かく切り分けることで、自ずと成長要素と離脱傾向が見えてくるようだ。世の中には、質の高い分析サービスが出ているが、目先のまとまった数字だけを見るのでは、ただの統計になってしまう。言葉通り分析というのは、ユーザーの特徴を切り分けて解析することで、何らかの問題と解決案を見出さなければならない。

流れの早いモバイルゲーム市場では、数ヵ月前のデータが意味を成すのかは頭を悩ますポイントでもあるため、直近2~ 3週間のデータを用いて未来を予測し、最適な経営判断をする必要があるようだ。
 


「Social Game Info」では、アドウェイズと5Rocksに本セミナーの後日談を聞いたインタビュー記事を掲載予定。より詳細なアプリマーケティング手法や現状の問題点など、様々な切り口から質問を投げかけた。インタビュー記事は、後日掲載予定。

【前編記事】
“休眠ユーザー”の実態やTwitterを活用したプロモーション術が明らかに
 
株式会社アドウェイズ
http://www.adways.net/

会社情報

会社名
株式会社アドウェイズ
設立
2001年2月
代表者
代表取締役社長 山田 翔
決算期
12月
上場区分
東証プライム
証券コード
2489
企業データを見る
Meta(Facebook)

会社情報

会社名
Meta(Facebook)
企業データを見る
5Rocks株式会社

会社情報

会社名
5Rocks株式会社
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