【TGS2014】エイリム・コロプラ・セガネ・バンナム・Kingのトップが登壇…「グローバル化するゲーム=成功の道筋」をテーマにした座談会を取材


2014年9月18日~21日に、千葉県・幕張メッセで「東京ゲームショウ2014」(以下、TGS 2014)が開催。初日には、「TGSフォーラム2014」の基調講演として、「多角化するゲームプラットフォーム× グローバル化するゲーム= 成功の道筋」と題したステージイベントが開催された。

昨今、家庭用ゲーム機やPCだけでなく、スマートフォンやクラウドなどネットワーク接続を前提としたプラットフォームが全世界で幅広く行き渡りつつある。今回のステージでは、老舗ゲーム企業はもちろん、スマートフォン向けゲーム市場でヒットタイトルを開発・運営する企業トップが登壇し、グローバルビジネス成功の糸口を探る内容を展開した。

 

■過去1年間のゲーム市場の変化を辿る




【登壇者】
※左からモデレータ 日経BP社 取締役 浅見直樹氏
◆高橋 英士氏 (エイリム 代表取締役COO)
◆馬場 功淳氏 (コロプラ 代表取締役社長)
◆里見 治紀氏 (セガネットワークス 代表取締役社長 CEO)
◆浅沼 誠氏 (バンダイナムコゲームス 取締役)
◆Alex Dale氏 (King Chief Marketing Officer)
◆鵜之澤 伸氏 (コンピュータエンターテインメント協会 会長)

開演に先立ち、はじめに鵜之澤氏が、ここ1年のゲーム業界を総括した。拡大していくスマホゲーム市場を引き合いに出して「毎年主役が変わっている印象。とにかくゲーム業界はスピードが早い」と述べた。また、次世代機・プレイステーション4が早々に全世界で1000万台を売り上げたことも挙げて、コンシューマの賑わいにも触れた。

さて、見て分かる通り今回の登壇者には、老舗ゲームメーカーや今をときめくSAP企業、世界中で多くのファンを持つ海外デベロッパーなど、本当に豪華な顔ぶれが集まった。モデレータを務めた日系BP社の浅見氏は「こうしたパネル座談会は、TGSの基調講演でも異例。実施の経緯としては、国内外プラットフォーム問わず、各ゲーム企業のみなさんと、次なるゲーム産業の姿を占っていきたい」と語った。

はじめにゲーム産業の過去1年間を振り替えつつ、今年の総括を登壇者が自己紹介を含めて語っていた。

『ブレイブ フロンティア』でヒットを飛ばすエイリムの高橋氏は、直近で気になったニュースとして「動画サービス」を挙げた。同氏は「スマホが普及したなかで、動画を見る機会も増えてきた。メディアが地殻変動を起こすほか、プロモーションとしてはゲーム実況の人気も見逃せない」と続けた。

コロプラの馬場氏は、過去1年間のなかで気になった出来事として「ソフトバンクによるsupercellの買収劇」を挙げた。また、キャリアの通信制限(通信速度制限)についても指摘。「先日、弊社のタイトル『白猫プロジェクト』を出先で遊んでいた際に、通信制限の問題で急に繋がらなくなった。今後は動画の閲覧も増えていくなかで、開発者はどう折り合いをつけていくのかは課題になる」と自身の体験談をもとにこの話題をピックアップした。

セガネットワークスの里見氏は、日本がアプリの売上で世界1位になったことを挙げた。また、長く売上ランキングで首位に輝いていたガンホーの『パズル&ドラゴンズ』を、ミクシィの『モンスターストライク』が抜いたことも取り上げて「全体を通して市場が伸びている」ことも指摘した。さらに様々なプラットフォームを持つ同社は「今後もコンシューマ、アーケードなどからスマホゲームに連動した要素を行っていく。それがセガネットワークスの強みかもしれない」ともコメントした。

バンダイナムコゲームスの浅沼氏は、里見氏と同様に日本におけるゲームアプリの売上・課金率の高さについて挙げた。そして、モバイルビジネスが加速してきている中国についても取り上げて「今後日本のゲームメーカーが中国にどう対応していくのかは課題である」ことも指摘。同社は多彩なIPを保有しているため、それらのスマートフォン向けゲームのアジア展開も注目されていくことだろう。

そして、全世界で5億ダウンロード以上を記録する『キャンディークラッシュ』の開発会社・Kingのアレックス氏は、年々増加するスマートフォン・タブレットの普及率をピックアップした。「スマートデバイスは老若男女問わず持っている。これは5年前、10年前までは考えられなかったこと。ストアを通じて新しいゲームの立ち上げも簡単のため、本当に多くのチャンスがある」とアレックス氏。

 

■グローバル化するゲームは、果たして本当に成功の道筋なのか


続いて話題はゲームタイトルのグローバル化へ。モデレーターの浅見氏が、アレックス氏に「日本は少子高齢化の問題で、今後ゲーム産業が熟れていくかもしれない。日本展開をどのように見ているか」と質問した。この解答にアレックス氏は、都度対応していくことを挙げつつ、各国ごとに異なるマーケティング展開を説明してくれた。

たとえば、韓国の『キャンディークラッシュ』はカカオトークで配信し、中国は大手IT企業のテンセントが配信を担っている。日本ではKingの支社が設立されて、さらに周知の通り積極的なテレビCMも打ち出している。このように、現段階でも幅広い層に訴求した形を同社が取っていることが伺える。

また、イベントでは各国のアプリ売上ランキングがステージ上に映し出されて、登壇者が率直な印象を述べる一幕もあった。そのランキングは9月17日付けの一時的なスクリーンショットとはいえ、『キャランディークラッシュ』が世界中の売上ランキングの上位に位置していた。しかし、日本ではランキング振るわず……。

これについてアレックス氏は「Kingの日本展開にとって重要なことは、まずはマネタイズではなくて、オーディエンスを作っていくこと」とコメントした。

それでは、日本のタイトルはどのようにグローバル化していくべきなのか。自社の事例をもとに各社語ってくれた。

馬場氏は、国内タイトルのグローバル化においては“カルチャライズの重要性”を説いたが「日本とは異なり広く深い市場で、なかなかグローバル化は難しい」とコメントした。

しかし、同社の『白猫プロジェクト』は現在国内のみにリリースしているのだが、ある一定のルートより香港・台湾ユーザーからもダウンロードされており「自社のどの海外コンテンツよりも売上を出している」とのこと。「工夫すれば我々が手掛けた日本産のタイトルでも海外で通用するのではないか」と言葉を添えた。

エイリムの高橋氏は、親会社gumiグループの各拠点から海外配信を実施しているとのこと。「去年の今頃は“アジアファースト”で進めていた。その後英語圏も出したが、いまや北米を中心に売上を伸ばしている」と語った。

コンテンツごとに異なるため一概に言えないが、エイリムは「まず日本国内で訴求できる作品を開発。そこから各国にローカライズをしていくのだが、単純に言葉を修正するのではなく、ゲームの中身からローカライズする」ことを続けて指摘した。

里見氏からは「スマホゲーム業界は全世界で足踏み揃えて成長している」とコメントした。というのも昔は各国の趣味趣向が大きく異なることはなく全世界でヒット作が出ていたが、いまはハードの成長により表現力が上がったことで各国の特色が出て、求めるニュアンスにも差異が生じたという。

「しかし、スマホではまだその趣向はあまり変わらない。世界同時リリースして、そのまま全世界でヒットするタイトルが出てくることもある」と語った。
 
 
 

イベントの最後には、各登壇者が「2015年へ向けたビジョン」を語ってくれた。

馬場氏「事業は長く続けていくもので、今後も継続的に良くしていきたい。また、日本市場においても手を緩めることは無く、面白い新作を出し続けていく」。

アレックス氏「2015年は新作ゲームを積極的にリリースしたい。ちょうど本日は新作アプリ『ペットレスキュー』を配信開始。個人的に大好きなゲームで現在のレベル(ステージ)は665。ここまでアイテムを使用していないため、引き続き2015年もFree to Playが重要となるだろう」。

浅沼氏「現在中国展開において、DeNA社と『ワンピース』、テンセント社と『ナルト』のリリースを予定している。もちろん北米・欧州の展開も積極的に考えているが、グループ全体で言えば玩具系もあるため、総合的に自社の事業を活用してグローバル化を考えていきたい」。

高橋氏「我々は小規模な開発スタジオに等しいため、今後も『ブレイブ フロンティ』をより良くしていく。また、進行中の新プロジェクトでは話題性で勝負したい。年内には色々発表を予定しているため、それらが世界中に広まることを狙っていきたい」。

里見氏「弊社はグローバルTOP3を目指すが、そのためには1000億円以上の業績を見込まなければならない。世界中のゲーム企業から日本が注目されているいま、2015年は日本発のタイトルが世界を席巻していく、いやしなければならないと思う」。


各社グローバル化に向けて積極的な事業展開を進めているが、世界のゲーム市場は広く、そして深い……。マーケティングやローカライズ、カルチャライズでその攻略方法に難航を示しているが、決してぶれないことは「面白いコンテンツを開発する」こと。日本発のゲームが世界を席巻していく姿を、我々メディアとしても注目して取り上げていきたい。

 
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
https://www.bandainamcoent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
設立
1955年6月
代表者
代表取締役社長 宇田川 南欧
決算期
3月
直近業績
売上高2896億5700万円、営業利益442億3600万円、経常利益489億5100万円、最終利益352億5600万円(2023年3月期)
企業データを見る
株式会社コロプラ
https://colopl.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社コロプラ
設立
2008年10月
代表者
代表取締役会長 チーフクリエイター 馬場 功淳/代表取締役社長 宮本 貴志
決算期
9月
直近業績
売上高309億2600万円、営業利益28億5800万円、経常利益32億7600万円、最終利益18億9300万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3668
企業データを見る
株式会社セガ
https://www.sega.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社セガ
設立
1960年6月
代表者
代表取締役会長CEO 里見 治紀/代表取締役社長COO 杉野 行雄/代表取締役副社長 内海 州史
決算期
3月
直近業績
売上高1916億7800万円、営業利益175億3900万円、経常利益171億9000万円、最終利益114億8800万円(2023年3月期)
企業データを見る
株式会社エイリム
http://www.a-lim.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社エイリム
設立
2013年3月
代表者
代表取締役社長 髙橋 英士
決算期
4月
企業データを見る