【大手ゲーム決算まとめ】バンダイナムコが他社を圧倒 スクエニはスマホゲームの台頭で収益の安定化進む

ゲームソフト大手6社の中間期(2014年4~9月期)の決算が出そろった。本業のもうけを示す営業利益が前年同期を上回ったのは6社中、4社だった。コーエーテクモ、バンダイナムコ、スクウェア・エニックス、コナミが増益となった一方、セガサミーとカプコンが減益となった(持株会社のホールディングスの記載は省略している)。

 
【大手ゲーム各社の2014年3月期第3四半期の業績】
(※)コナミは米国会計基準のため経常利益はない。


このなかでも目立った会社として、前四半期に続いてスクウェア・エニックスをあげておきたい。『ドラゴンクエストX』や『ファイナルファンタジー14』などオンラインゲームに加え、『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』や『スクールガールストライカーズ』などが寄与した。下のグラフは、四半期ベースの営業利益の推移をみたものだが、2013年7-9月期以降、一度も営業赤字となったことがなく、安定した利益を生み出している。経営体制の刷新以降、成果が着実に出ていることが伺える。
 
【スクウェア・エニックスの四半期別の営業利益の推移(億円)】


スクウェア・エニックスは、年末商戦などに年間の収益の多くを稼ぐ、従来の家庭用ゲームソフトの収益モデルから、年間を通じて安定した収益を稼ぐモデルに移行しつつある。もちろん、家庭用ゲームソフトも引き続き重要な位置を占めるため、下半期に多くの収益を稼ぐことには変わりはないだろうが、以前に比べて年間を通じて安定した収益獲得が可能になっている。



■ゲーム関連事業の売上高・営業利益比較

ゲーム大手は、いずれも遊技機や出版、玩具など、ゲームソフト以外の事業を抱えているため、今回もさらに各社のゲーム関連事業の売上高・営業利益を以下の表にまとめてみた(※1)。これをみると6社中、4社が営業増益だった。増益だったのは、コーエーテクモ、バンダイナムコ、スクウェア・エニックス、コナミだった。他方、前年同期に黒字となったセガは、2ケタの増収を達成したものの、16%の営業減益となった。

 
【大手ゲーム各社の2014年3月期におけるゲーム関連事業の売上高・営業利益】
(※)セガサミーHDには玩具やアニメ関連の売上高も含まれる。
(※)バンダイナムコHDには業務用ゲームやアニメ関連の売上高も含まれる。
(※)コナミには業務用ゲーム機やトレーディングカードの売上高も含まれる。


さらに、ゲームソフト事業に占めるモバイルコンテンツの売り上げをピックアップしたのが以下の表である(※2)。データの確認できたコーエーテクモ、セガサミー、バンダイナムコ、カプコン、スクウェア・エニックスでは、いずれも売り上げに占めるモバイルゲームの比率が上がった。上半期は家庭用ゲームソフトの新作リリースが少なく、モバイルコンテンツの比率が高くなることは考慮に入れる必要はあるが、全体としてはスマートフォンアプリなどモバイルコンテンツの存在感が高まっていることが伺える。
 
【ゲーム大手6社のオンラインコンテンツの売上高とゲーム事業に占めシェア】
(※)スクウェア・エニックスの前年実績は、2014年3月通期の数字となる。このため、比率の変化はあくまで参考程度となる。
(※)バンダイナムコは、家庭用ゲームソフトとネットワークコンテンツにおける比率。



■売上高・営業利益の比較

ゲーム大手6社のゲーム関連事業の売上高と営業利益を比較したものが以下のグラフとなる。青が2014年4~9月期、赤が2013年4~9月期の数字を示している。すでに掲載した表でもわかるが、グラフにすると、バンダイナムコが売り上げと営業利益双方で他社を圧倒していることがあらためてわかる。そして、スクウェア・エニックスが売り上げ・利益ともに前年から大きく拡大し、バンダイナムコに続く2位となった。逆に前年に営業利益で2位だったセガサミーが5位に順位を落としたほか、カプコンも3位から4位となった。
 
【大手ゲーム6社のゲーム関連事業の売上高比較(単位:億円)】
 
【大手ゲーム6社のゲーム関連事業の営業利益比較(単位:億円)】



上記グラフにガンホー・オンライン・エンターテイメント<3765>とミクシィ<2121>を加えたものが以下のグラフとなる。ゲーム大手の収益は下半期に集中する傾向にあるため、この比較でどうこういうのはフェアではないだろう。あくまで参考程度とみてほしい。ミクシィがバンダイナムコホールディングスに続く営業利益をたたき出している点は注目である。『モンスターストライク』の大ヒットのインパクトの大きさが伺えよう。

 
【大手ゲーム6社のゲーム関連事業+ガンホー、ミクシィの売上高比較(単位:億円)】
 
【大手ゲーム6社のゲーム関連事業+ガンホー、ミクシィの営業利益比較(単位:億円)】



最後に各社の決算の状況を見て行きたい。


■コーエーテクモ
【全体】
売上高161億1000万円(前年同期比4.2%増)、営業利益32億9300万円(同99.6%増)と増収増益を達成した。第2四半期連結業績としては、4期連続の増収増益であり、経営統合以来最高の業績だった。
 

【ゲームソフト事業】
売上高は98億円(前年同期比1.0%増)、セグメント利益23億円(同89.5%増)と増収増益。「ゼルダ無双」がワールドワイドで好調な販売となっているほか、「討鬼伝」の続編となるハンティングアクションゲーム「討鬼伝 極」や、新ハード向けに「戦国無双4」、「無双OROCHI2 Ultimate」の2タイトルをリリースした。
 

【オンライン・モバイル事業】
売上高32億円(同7.1%増)、セグメント利益6億円(同31.0%増)と増収増益で、第2四半期としては経営統合以来、最高の売り上げと利益になった。ソーシャルゲームが『100万人のWinning Post』をはじめとする「100万人」シリーズにおけるイベントやコラボレーション施策が実を結んだことに加え、『のぶニャがの野望』などタイトルによる海外展開が計画を上回って推移。『100万人の三國志 Special』アプリ版の配信開始などでコミュニティサイト「my GAMECITY」も会員数を伸ばした。
 


■セガサミー
【全体】
売上高1542億円(前年同期比4.9%減)、営業利益34億円(同72.2%減)だった。パチスロ機機の販売が落ち込んだことに加え、コンシューマ事業で営業減益、アミューズメント施設の赤字転落などが響いた。
 
【セガサミーHDの売上高・営業利益の推移(億円)】

【コンシューマ事業】
売上高486億円(同10.3%増)、営業利益9億円(同16.0%減)だった。2ケタの増収となったものの、広告宣伝費などの増加により、営業減益となった。デジタルゲーム分野は、『ファンタシースターオンライン2』や、『ぷよぷよ!!クエスト』、『チェインクロニクル ~絆の新大陸~』などが堅調に推移し、売上高は前年同期比24%増の219億円だった。しかし、期初計画(235億円)を下回った。さらに15年3月期の計画についても524億円から473億円に引き下げられた。
 
【コンシューマ事業の売上高・営業利益の推移(億円)


■バンダイナムコHD
【全体】
売上高は2593億3300万円(前年同期比13.5%増)、営業利益318億7500万円(同20.8%増)だった。国内トイホビー事業がの「妖怪ウォッチ」関連商品が好調に推移したことに加え、ソーシャルゲームやスマートフォン向けアプリゲームの主力タイトルが安定的に推移したほか、『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ』『ONE PIECE トレジャークルーズ』なども好調だった。

【バンダイナムコHDの売上高・営業利益の推移(億円)

【コンテンツ事業】
売上高は1304億400百万円(同6.0%増)、セグメント利益は221億400万円(同1.6%増)だった。主力タイトルが安定的に推移するとともに、『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ』『ONE PIECE トレジャークルーズ』などの新規タイトルが好調だった。映像コンテンツと音楽コンテンツの連動展開しているIP「ラブライブ!」や「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン) episode7 「虹の彼方に」」などの映像音楽コンテンツも業績に貢献した。さらに欧米で前期に発売したゲームソフト「DARK SOULS(ダークソウル)Ⅱ」がPC版を中心に寄与した。
 
【コンテンツ事業の売上高・営業利益の推移(億円)


■スクウェア・エニックス
【全体】
売上高731億円(前年同期比18.6%増)、営業利益85億円(同81.9%増)だった。ゲームを中心とするデジタルエンタテインメント事業を中心に出版や版権事業が好調だった。
 
【スクウェア・エニックスの売上高・営業利益の推移(億円)

【デジタルエンタテインメント事業】
売上高437億円(同42.8%増)、営業利益79億円(同129.4%増)だった。ブラウザゲーム「戦国IXA(イクサ)」が引き続き堅調に推移したほか、スマートフォン向けゲーム「ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト」や「スクールガールストライカーズ」が好調だった。家庭用ゲームソフトは、新作の販売が伸長したことや昨年度発売したタイトルの追加受注販売が海外を中心に好調だった。またMMORPG「ファイナルファンタジーXIV」及び「ドラゴンクエストX」の運営も堅調だった。
 
【デジタルエンタテインメント事業の売上高・営業利益の推移(億円)


■カプコン
【全体】
売上高は259億1700万円(前年同期比51.3%減)、営業利益43億8300万円(同41.6%減)だった。家庭用ゲームソフトの大型タイトルの投入がなかったことに加え、前年同期には大ヒットした『モンスターハンター4』のリリースが行われていたこともあり、大幅な減収減益に落ち込んだ。
 
【カプコンの売上高・営業利益の推移(億円)

【デジタルコンテンツ事業】
売上高は134億63百万円(前年同期比64.1%減)、営業利益21億50百万円(前年同期比60.0%減)だった。「ウルトラストリートファイターⅣ」(PS3、Xbox360、PC用)や「逆転裁判123 成歩堂セレクション」(3DS用)が底堅い売行きを示したものの、目玉タイトル不在の影響が大きく響いた。また、モバイルコンテンツも「モンスターハンターポータブル2nd G for iOS」など一部を除いてヒット作に恵まれず、前年度に大ヒットした『モンスターハンター4』の反動減をカバーするには至らなかった。
 
【デジタルエンタテインメント事業の売上高・営業利益の推移(億円)


■コナミ
【全体】
売上高及び営業収入は前年同期に比べて0.8%増の987億円、営業利益は同55.3%増の58億円だった。家庭用ゲームソフトやスマートフォンアプリなどを提供するデジタルエンタテインメント事業が好調だったことが主な要因。
 
コナミの四半期売上高・営業利益の推移(億円)

【デジタルエンタテインメント事業】
売上高439億円(同1.4%減)、営業利益62億円(同67.5%増)だった。メタルギアシリーズのリピート販売が伸び、シリーズの販売本数は前年同期の53万本から109万本に伸びた。また 「ドラゴンコレクション」や「ワールドサッカーコレクション」シリーズなどモバイルゲームも堅調に推移したという。
 
デジタルエンタテインメント事業の四半期売上高・営業利益の推移(億円)



(※1)ただし、ゲーム関連のセグメントの中に玩具や映像ソフトなどの収益が含まれている会社もあるため、比較には限度がある。この点はご了承いただきたい。
(※2)こちらもモバイルゲームだけでなく、PCオンラインゲームも含まれる。
株式会社スクウェア・エニックス
https://www.jp.square-enix.com/

会社情報

会社名
株式会社スクウェア・エニックス
設立
2008年10月
代表者
代表取締役社長 桐生 隆司
決算期
3月
直近業績
売上高2428億2400万円、営業利益275億4800万円、経常利益389億4300万円、最終利益280億9600万円(2023年3月期)
企業データを見る
株式会社バンダイナムコホールディングス
http://www.bandainamco.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンダイナムコホールディングス
設立
2005年9月
代表者
代表取締役社長 川口 勝
決算期
3月
直近業績
売上高1兆502億1000万円、営業利益906億8200万円、経常利益1041億6400万円、最終利益1014億9300万円(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
7832
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