【年始企画】DeNA岩朝氏「『ハッカドール』はより尖ったプロダクトを目指す」 新レコメンデーション機能やゲームを追加 IP展開も本格化へ コンテンツ市場の展望も語る


スマートフォンアプリ業界に身を置く方々に話を伺い、2014年の市場動向と2015年のトレンドを読み解く特別企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2014-2015」。

様々なニュースアプリが世に出ているなかにあって、ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>の『ハッカドール』が異彩を放っている。昨年8月からスタートしたキュレーションサービスだが、アニメやマンガ、ゲーム、特撮など9ジャンルの"おたく"系のニュースに絞っていることに加え、ゲームサービスの提供、キャラクター展開、アニメーションを使ったプロモーション動画など、独自性の強い、尖ったプロダクト・サービス展開が注目を集めた。今回、10月に続いてプロデューサーである岩朝暁彦氏にインタビューを行い、2014年の展開を振り返ってもらいつつ、2015年の抱負と、コンテンツ市場の展望を語ってもらった。
 
 

■上々のスタートとなった『ハッカドール』

 
株式会社 ディー・エヌ・エー
『ハッカドール』プロデューサー
岩朝暁彦 氏
 

 

――:本日はよろしくお願いします。さて、『ハッカドール』に関して2014年8月の運営開始から振り返っていかがでしょうか。

2014年8月からリリースして以来、おかげさまでユーザー数は順調に増えています。インストール数を増やすための取り組みはもちろん、ユーザー様に継続的に利用していただくことを目指しました。DAU(Daily Active Users)や継続率などは当初想定していた水準を大幅に上回っており、プロダクトが受け入れられていると強い手応えを感じています。
 
その一方、プロダクトの中核は、レコメンデーションシステムですが、技術的にもチャレンジングでした。レコメンデーションの仕組みは、5回ほど大規模にアップデートを行い、小さな調整はその3倍くらい行ってきました。つまり、この半年間、2~3週間に1回の頻度で変え、試行錯誤を繰り返しながら改善してきたことになります。おかげさまでこの半年で技術的な基礎が固まったことは大変だったけど大きな成果でした。
 
2015年は、これまでのレコメンデーションを土台にして、新しい情報提供に取り組みたいと考えています。

 
 
―――:スタートとしては上々であったと。
 

 
はい。『ハッカドール』は、メディア、便利ツール、キャラクターIPの側面を持ちますが、メディアとしてはある程度の認知を得られたと思います。『ハッカドール』の由来は、「はかどる」からだったのですが、便利ツールとしても進化させることができました。例えば、特定のサイトを見たくない人には出さない、ツイートをしやすくするための機能強化などを行いました。とりあえず合格といえるかと思います。
 
キャラクターIPとしては、周囲からの期待が予想以上に高く、毎日、戦々恐々としています(笑)。自分では合格と考えていたのですが、周囲から「まだ足りない」といわれておりまして…。ですが、12月28日から『ハッカドール』のニコニコ生放送『ハッカちゃんねる』を始める等、キャラクターを生かした新しい取り組みをスタートしました。キャラクターもののキャンペーンなども多数立ち上がってきました。こうした取り組みをテコにして、2015年の年末や2016年には「えっ!」と驚かれるような展開にしたいですね。あ、また自分でハードル高めちゃってますね……。


▲12月から始まった「ハッカちゃんねる」
 
 

■ヘビーユーザー比率は7割超に…「キャラクターを好きになってくれる人が増えた」

 
――:ユーザーさんの定着はいかがでしょうか。
 
良好です。私たちは、過去1週間で5日以上使ってくれた方の比率を示すヘビーユーザー比率を重視しています。実はこれが全体の7割を超えています。ちょっと怖くなる水準なのですが、まだ上がリ続けている状況です。また、ユーザーが次の日に継続して利用する比率、1Day Return Rateも、70%近辺で推移しており、日によっては80%になるときもあります。何かの間違いじゃないかと分析担当者にこれまで何度も問い詰めていましたが、本当のようです(笑)。
 

――:それはすごいですね。高いヘビーユーザー比率となった要因についてどう考えていますか。
 
大きく2つあります。アプリを面白いと思ってもらい、アプリに興味を持って利用し続けるための「きっかけづくり」がうまくいったことがひとつです
 
アプリを利用しはじめた時、継続的に使っている方と違ったニュースが出るようになっています。少し古めの情報も含め、人気のあるニュースが出るような微調整を行い、最初に面白いと思ってもらえるようにしました。そして、アプリにある様々な機能を利用していただけるよう、サービスの利用ガイドともいえる4コマ漫画を用意しました。マンガを導入した結果、Return Rateが大きく上がっただけでなく、機能の利用率も倍増しました。

 

――:マンガは読みました。機能説明がわかりやすく説明されていると思いました。

ありがとうございます。あのマンガ自体もソーシャルメディア上でシェアされていますし、コミックマーケットなどの冊子に広告として掲載されるのですが、ちょっと違った広告として好意的に認知されているようです。サービスやキャラクター、機能性に興味をもってもらえているのかもしれません。

 

■キャラクターに愛着を持ってもらえる状況に 本格的なIP展開にもメド

 
―――:2つ目の理由は何でしょうか。
 
 
キャラクターの力が大きいと考えています。Twitter等での反応を見るに、キャラクターがとても愛されているなと感じています。もしかするとハッカドールの機能そのものについては愛着はないのだけど、キャラクターが好きだから使い続けようと思う方もいらっしゃるのかもしれません。ある種の応援の気持ちを持っていただいているようです。
 
最近、同人誌に関するお問い合わせが増えており、「営利目的でなければいいよ」と答えています。これ以外にもハッカドールのイラストを描かれる方や、ゲームを制作されている方もいらっしゃいます。パーカーなど自分でハッカドールグッズを作られた方もいらっしゃいました。

 

――:IP展開もだいぶ進んできましたね。
 
人気アニメを使ったIP展開はよく見ますが、『ハッカドール』のようにアニメ以外のIPでの展開事例は少なかったので、恐る恐る実施しましたが、軒並み良好でした。ゲームですと、『妖刀 あらしとふぶき』、『グリモア~私立グリモワール魔法学園~』、『怪盗ロワイヤル』とのコラボがあります。他にも『ねこのこはな』というマンガや、『うーさーのその日暮らし』とコラボしたりもしています。現在も、様々な方からコラボのお声掛けいただいている状況です。


――:キャラクターを作るにあたって、どういった点に気をつけたのですか。
 
キャラクターが設定や物語を語るだけの道具になるのではなく、キャラクター単体として切り出した際にも魅力的であるべきと考えました。いろんな記号的な要素が入っている「とっつきやすさ」はもちろんのこと、デザインとして魅力的な事に加え、設定上の突っ込みどころを残す事で、キャラクターに動きや遊びが出てくる余地を入れています。一次創作ではなく、二次創作も含めたキャラクターの世界観を作る、最近のものづくりの考え方に合っていると思います。
 
例えば、「ハッカドール1号」はヘタレなキャラです。プロモーションビデオでも、ニュースをきちんと配信しないといけないのに大失敗して終わります。この展開には、プロモーション用アニメ制作を手がけたトリガーさんからもだいぶ心配されました(笑)。また、「ハッカドール2号」は一見、グラマラスなお姉さん系だけどちょっと毒がある、とか。「ハッカドール3号」はいっそ男の娘だったりしました。こういったキャラクターをまとめる事で、組み合わせやシチュエーションで色々と察したり、妄想する余地があると良いな、と思っています。

 

▲左からハッカドール3号、1号、2号
 
 

■人気になるニュースの傾向

 
――:どういうニュースが好まれるといった傾向はあるのですか。
 
ニュースでは、速報系の情報記事と分析系の評論記事に大きく分かれると思います。当初、速報的な記事をレコメンデーションするようにしたのですが、『ハッカドール』では、ニュースのちょっとした解釈や分析などを含めた記事を求めていることに気づきました。そこで、速報性の高いニュースだけでなく、そうした分析的な記事など一歩踏み込んだ情報も加えることにしました。どういうニュースを大事にするか、私にとっては大きな気付きとなりました。

 

■多くのユーザーが利用するアプリ内ゲーム

 
――:アプリ内のミニゲームは今後どういった展開を控えていますか。
 
ユーザー様から新ゲームへの要望をいただいておりましたが、ようやく新しいゲームを出すことができました。「ハッカどっかーん」というパーティゲームです。もちろん、フルボイスとなります。ゲームの内容は、爆弾が流れてきて、ハッカドール3人と自分とで爆弾の導火線を切っていくものです。導火線を切るのに失敗すると爆発するとゲームオーバーとなります。ゲームのお楽しみポイントは「ヤジ」です。自分が成功したり失敗したりすると、キャラクターからボイスでヤジが飛んできますので、楽しんでいただくことになります。プレゼントされるギフトも増やしましたので、楽しんでいただけると思います。
 
 
▲「ハッカどっかーん」
 

――:これからもこういったミニゲームを出されていく考えなのですか。
 
次は、「ハッカトーク」の制作を行う予定です。これまではご存知のように1号のみしかありませんでした。バランスが良くないですし、ユーザー様からのご要望もいただいておりますので、2号バージョン、3号バージョンも用意したいと思います。3択を3回繰り返すという短い中で、ゲームとしていかに面白さを出すか、そして、ストーリーやセリフを考えるのは大変なのでどうしようか迷っていたのですが、ユーザー様に喜んでもらえるのならば、2015年はぜひ早めにご提供したいと考えています。

 

■2015年の取り組み…リアルタイム性の高い配信も開始
キャラクター展開も本格化?

 
――:さて、いま少し話が出ましたが、2015年はどういったことに取り組みたいですか。
 
『ハッカドール』にとっての2014年は成立を目指す年でした。できるだけ多くのユーザー様に利用いただくとともに、メディア様からも認めていただき、「こういうサービスも成立する」ということを示す年でした。レコメンデーションのエンジンも技術的に難しい部分も大きかったので、いろいろな意味でチャレンジングだったと思います。
 
2015年は、メディアとしてはユーザー規模を増やすのは当然として、提供できる情報の種類や情報の出し方についても拡大していきたいと思います。例えば、ニュースを1日3回配信するだけでなく、Twitterのように、もっとリアルタイム性の高い情報収集ができるようにするのもひとつの方向です。これはこれでユーザー様にとってはかどるのではないかと思います。あとはゲーム系の情報だと、もっとゲームの便利でオトクな情報をお届けできるようになると、ユーザー様にとっても使う価値が高まっていくでしょう。



――:人によっては1日1回でいい人もいるでしょうし、現在の3回が心地良いという人もいるかと思います。見せ方でも工夫が必要かもしれませんね。
 
おっしゃるように、ユーザー様の状況によってニーズは本当に様々です。ユーザー様の中には「自分の好みに近い人が今現在どんな記事を読んでいるのか気になる」という人もいらっしゃいます。エンジニアからすると、自分の好みに近い人が読んでいるような旬なニュースをリアルタイムで教える機能というのは技術的にも面白いらしく、作ってみたいという提案を受けました。では、そのうちやろうかと思っていたのですが、実はエンジニアが勝手に作っていた事が判明し、「出た!また勝手に作っているパターン!」という事でして、作ってしまったものならば、腹をくくって製品レベルまで育てていきたいと考えています。

 

■2015年のコンテンツ市場展望 「コアのマス化」は誤り
コア向けに徹した作品が支持される

 
――:2015年に注目している作品やジャンルはありますか。
 
 
ここ数年、よく「コアのマス化」などといわれていると思います。つまり、ニッチだった作品がメジャーになり、マス向けコンテンツに匹敵する市場規模になっていく状況にあるといわれました。例えば、劇場版『魔法少女まどか☆マギカ』の興行収入が20億円を突破したり、完全オリジナル作品『楽園追放』の興行収入が1億円を超えたりしています。これまでの常識ではニッチ向け、コアユーザー向けの小さな作品が、大きな作品として商業的成功を収めるようになっています。
 
これをもって「コアのマス化」というのも一見正しいと思いますが、自分はマス化というような、一般的なお客様に届いているような現象ではなくて、実はコア向けコンテンツが同じお客様に対して、劇場展開やグッズ、ライブなど二次展開や三次展開を通じて商業的価値の厚みが増した結果、薄く広く収益を得るマス向けコンテンツと同じだけのインパクトを出せるようになったとみるほうが正しいと思います。ファンの人数は大きくは増えていない中で、さまざまなコンテンツホルダーの努力の成果として、お金を使う余地や機会が増えてきたことで市場が大きくなったのではないでしょうか。
 
その点を見誤ると、売れるコンテンツ、売れないコンテンツの見極めを間違えると思います。したがって、コア向けのコンテンツを手がけるクリエイターは、これまでどおり、コア向けに濃く、尖ったコンテンツをしっかりと作り続けていくことが重要で、それが今後も支持されるとみています。 

 

――:ちょっと言い方を変えると、自分たちが作りたいものを作っていくことが重要ということでしょうか。
 
そうですね。コア向け作品を作っている人自身がおうおうにして、コアなファンでもあります。自分たちがコアであると理解したうえで、マス向けにおもねるのではなく、コア向けのモノづくりに徹することが重要かと思います。「コアのマス化だ、市場規模が大きくなっているぞ」となって、一般層を取り込みに行くと、今まで良い関係だったお客様からすると急に裏切られた形になり、全てが崩れていく恐れがあります。


――:なるほど。『ハッカドール』もそういった作品と同様に、引き続き尖ったプロダクトを目指していくわけですね。
 
はい。マス向けにぶれることなく、尖ったモノづくり、そして、尖ったキャラクター活用をやっていきたいです。また、メディアの皆様からも取り上げていただけるような面白い取り組みもどんどんやっていきたいと思います。2015年もご愛顧のほど、よろしくお願いいたします!


――:ありがとうございました。
 
(編集部 木村英彦)

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会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1369億7100万円、営業利益224億9500万円、税引前利益312億5900万円、最終利益256億3000万円(2021年3月期)
上場区分
東証一部
証券コード
2432
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