【ドリコム決算説明会】他社IPタイトル堅調で通期黒字転換 今期は『フルボッコ』『崖っぷち』『ブレブレ』など自社タイトル中心に収益拡大を目指す


ドリコム<3793>は、5月11日、2015年3月期の決算を発表するとともに、東京都内で決算説明会を開催した。発表された15年3月通期の連結決算は、売上高72億9800万円(前の期比4.4%増)、営業利益3億0100万円(前の期5億0300万円の赤字)、経常利益2億7800万円(同5億2200万円の赤字)、最終利益1700万円(同5億0800万円の赤字)となり、増収・黒字転換に成功した。
 

『ONE PIECE トレジャークルーズ』と『ジョジョの奇妙な冒険スターダストシューターズ』が業績に寄与したことが主な要因。配信会社から一定比率の売上分配を得るため、売上への影響は相対的に小さいものの、支払手数料がなく、利益に与える影響が大きくなるという。また『フルボッコヒーローズ』と『ちょこっとファーム』も善戦した。他方、リリース予定だった2タイトルが次期にずれ込んだことに伴い、支出する予定だった広告宣伝費の期ズレが発生したことも利益を押し上げた。

IPタイトルを中心に収益を伸ばしたが、続く16年3月期はオリジナルタイトルを中心に伸ばしていく考えだ。決算説明会に臨んだ内藤裕紀社長(写真)は、「今期(2016年3月期)に関しては、オリジナルゲームのラインナップが増えていることもあり、マーケティングを強化して伸ばしたい。これは単にテレビCMなどのプロモーションだけでなく、『フルボッコヒーローズ』で行なった『進撃の巨人』のようなコラボも含まれる。つまり、既存のタイトルに広告宣伝費をかけて伸ばしていきたい。もちろん、いくつか新作タイトルの開発も進めている」と述べた(以下、「」内は内藤社長の発言)。

これまでの説明会では、ネイティブアプリの新作をリリースして業績を拡大させていくという考え方が強かったように思われるが、新作タイトルの投入に加え、見込みのある既存タイトルを継続的に改修することで収益を伸ばしていくという考え方が強まってきたように思われる。スマートフォンゲーム業界では、かつては初動の重要性が指摘され、そこでつまずくと伸ばすことは難しいなどとよくいわれたものだが、リリース後、一定の年月が経過したタイトルでも運営次第で持ち直す事例が増えている。『フルボッコヒーローズ』の復調は、ドリコムにとっても大きな自信につながったのではないか。



■第4四半期は減収・赤字転落

黒字転換を達成した15年3月通期だが、第4四半期(15年1~3月期)だけをみると状況が異なっている。発表された決算をみると、売上高が16億6600万円(前四半期比QonQ、5.0%減)、営業損益が2300万円の赤字(前四半期4000万円の黒字)、経常損益が2800万円の赤字(同3200万円の黒字)、最終損益が1億1000万円の赤字(同5700万円の赤字)となり、QonQでは減収・赤字転落となった。
 

バンダイナムコエンターテイメントから配信する2タイトルのほか、『ちょこっとファーム』や『フルボッコヒーローズ』が堅調に推移したものの、ブラウザゲームを中心に既存ゲームの縮小傾向が継続したことが減収要因となった。ブラウザゲームについては、サービス終了する可能性もあるという。利益面では、これら減収に加え、新作ゲーム・アプリの開発費とゲームアプリの減価償却などが収益を圧迫した。

なお、広告メディアも引き続きコスト先行だった。こうしたなか、「HeatAppReward」や「フライングガチャ」が拡大したほか、動画を利用したリワード広告「poncan」も大口の提携がスタートするなど伸長した。また、『DropMusic』もアップデートを行い、ユーザーベースが拡大した。『DropMusic』は、今後、どうやって収益化を行うかがポイントになるかもしれない。
 




■第1四半期は増収・赤字幅拡大となる見通し…広告宣伝費や研究開発費で

続く2016年3月期の第1四半期(15年4~6月期)は、売上高18億円(前四半期比9.3%増)、営業損益3億円の赤字(前四半期2300万円の赤字)、経常損益3億円の赤字(同2800万円の赤字)、最終損益2億円の赤字(同1億1000万円の赤字)と、前四半期に比べて赤字幅が拡大する見通しだ。
 

バンダイナムコエンターテイメントから配信する2タイトルが引き続き安定した収益獲得が見込まれるほか、『フルボッコヒーローズ』の増勢トレンドが継続する見通し。『崖っぷちバスターズ』については、当初の見込みと違う点があったため、ユーザー満足度の向上に向けた改修を行っているという。本格的な売り上げへの寄与は第2四半期以降となる見通しだ。
 

前四半期に比べて赤字幅が拡大するが、『フルボッコヒーローズ』などの広告宣伝費が2億円増加することが大きな要因。テレビCMなどの広告宣伝費の回収は第1四半期中では難しいため、費用が先行する状態となる。

また、新作ゲームの開発費も減益要因となる。同社では、新作ゲームの開発にあたって、複数のプロトタイプを作っているが、その際、研究開発費として費用処理しているとのことだった。そして、完成したプロトタイプの中から見込みのあるものを本開発に移行させているそうだ。そして、本開発では開発費を資産計上するため、費用が減ることになる。

このほか、『DropMusic』やソーシャルラーニング事業も引き続きコスト先行となる見通し。『DropMusic』は590万ダウンロードを突破するなどユーザー獲得が進んだ一方、マンガアプリ『DropComics』は競争激化からサービス提供を中止したという。メディア事業やソーシャルラーニングは、ゲーム事業のボラティリティ緩和という位置付けで取り組んでいるが、引き続き収益性確立に向けた試行錯誤を続けていく。
 

 

以下、決算説明会での注目されるトピックスを中心にまとめていこう。



■『フルボッコヒーローズ』

『フルボッコヒーローズX』は、テレビCM放映後、DAU(デイリーアクティブユーザー数)が数万人前半から10万人台に急増したことを明らかにした。内藤社長は、「広告宣伝費をかけない状況になっても2ケタ近いアクティブユーザー数に落ち着くのではないか。また、ARPPUに関しては、後からついてくるため、売上ランキングももう少し良くなるだろう」とコメントした。コラボ実施後、アプリストアの売上ランキングで順位を上げているが、さらに上昇が見込まれるという。

サイバーコネクトツーとともに1年かけてゲームの改修を行い、KPIの改善も進んだという。さらにKPIを伸ばすため、『進撃の巨人』とのタイアップを行うとともに、北海道や宮城、中京、関西、広島、福岡などでテレビCMを実施したところ、想定よりも低いコストでユーザーが獲得できたそうだ。テレビCMの効果測定などを行うとともに、首都圏でのプロモーション展開を検討しているとのこと。さらにアニメなどの作品と相性も良いことも確認できたため、引き続き他作品とのコラボを行う考えだ。
 



■『崖っぷちバスターズ』

『崖っぷちバスターズ』は、4月27日にリリースしたが、「当初の想定と違う部分が出ているので、改修している」とのこと。内藤氏は、具体的な改修ポイントとして、キャラクター数の少なさやマルチプレイの問題をあげた。キャラクターが少ないと、ガチャを回す魅力が乏しいだけでなく、新しいクエストを追加する際にもキャラクターの不足がネックになるという。さらにマルチプレイについては、通信の遅れが発生して快適に楽しめないだけでなく、対戦相手が見つからないといった問題も発生している。

また、マーケティング上での課題もでているという。『モンスターストライク』などのように、ユニットをひっぱって敵にぶつけて倒すのではなく、画面から敵を落とすことがゲームの勝利条件となっている。ゲームの遊び方は大きく異なっているものの、画面構成が既存の引っ張りアクションゲームのそれと似ているため、ユーザーにゲームの面白さが伝わっていない可能性があるという。ユーザーに本作ならではの特徴や面白さをいかに伝えていくかが課題となる。

なお、ゲームの改修は、第1四半期中に終える予定で、その後、プロモーション活動を行う考え。リリース後、Webを中心にプロモーション活動を展開したものの、上記の問題に気づいたため、急いで止めたそうだ。改修後に本格的な運営フェーズに入るため、売り上げに寄与するのは第2四半期以降になりそうだ。
 



■『ブレイブソード×ブレイズソウル』

『ブレイブソード×ブレイズソウル』は、4月8日に子会社グリモアからリリースされた。当初想定していたターゲットユーザーからの支持を集めており、順調な立ち上がりになったという。4月10日には、App Storeの売上ランキングでも50位以内に入った。ただ、アプリは、少人数で開発・運営しているため、今後、少しずつ改修を進めていき、ユーザー数と売り上げを伸ばしていく考え。
 
 
(編集部 木村英彦)


■関連サイト

決算説明会資料

株式会社ドリコム
http://www.drecom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ドリコム
設立
2001年11月
代表者
代表取締役社長 内藤 裕紀
決算期
3月
直近業績
売上高97億7900万円、営業利益9億300万円、経常利益7億9300万円、最終利益1億400万円(2024年3月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3793
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