【東映アニメ決算説明会】海外売上高は13年3月期の9%から22%まで拡大…中国などアジア向けがけん引 新TVアニメなど今期は「ドラゴンボール」関連が活発化
東映アニメーション<4816>は、5月15日、東京都内で2015年3月期の決算説明会を開催した。決算説明会に先駆けて、前日5月14日に発表された2015年3月期の連結決算は、売上高303億円(前々期比2.3%減)、営業利益39億9600万円(同10.9%増)、経常利益39億7800万円(同1.0%増)、当期純利益24億3700万円(同4.5%増)と、第3四半期までの前年同期比減益での推移から一転増益での着地となっている。
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決算説明会では、2015年3月期決算の説明を中心とした部分を吉谷敏取締役経営戦略部長(写真:1番左)が説明、今後の展望を中心とした部分を高木勝裕社長(写真:右から2人目)が説明した。吉谷氏によると、前期は減収増益となったものの、その中身には大きく3つのポイントがあるという。
■海外事業は過去2番目の水準まで拡大
では、業績数字から見ていきたい。下のグラフは過去5年間の売上高推移となる。2013年3月期をピークに徐々に売り上げが減少しているが、これは2013年にワンピースの国内版権収入が最も膨らんだ反動によるところが大きい。「ワンピースはブームのスタートあたりの水準まで収束」(吉谷氏)したといい、これをポイントの1つとしていた。一方、それを補ったのがもう1つのポイントである海外事業の好調で、海外売上高の全体に占める比率は、2013年の9%から2015年は22%まで拡大した。そしてそれらの結果、大きな変化の中にありながら売上高300億円台を維持できたことを3つ目のポイントとしていた。
続いて各セグメントごとの状況を見ていこう。まずは映像制作・販売事業となるが、ここは劇場アニメで前々期にあった「キャプテンハーロック」と「手塚治虫のブッダ2」という大作のはく落分を、放映・配信本数が6作品から9作品に増えたテレビアニメと、海外映像でカバーした格好になる。ちなみに海外映像は、中国向け映像配信権の大幅拡大のほか、「ドラゴンボール」「ワンピース」の北米・アジア向けの好調が寄与したという。
一方、版権事業や商品販売事業、その他事業が下の表となるが、版権事業は国内版権が前期あった遊技機の大口契約分のはく落や、「ワンピース」のピークアウトにより落ち込んだ。その半面、海外版権は、「ワンピース」や「ドラゴンボール」など複数作品の中国向けアプリゲーム化権の販売が好調だったことで売り上げを大きく伸ばしている。
下のグラフは、海外事業の状況を示したものになる。はっきりと分かるのはアジア、中でも中国向けが大きく伸びていることだ。ただし、中国はコンテンツ規制などリスクもあることは留意しておく必要がある。ちなみに、現時点では、同社の作品で中国での規制に引っかかった作品はないという。また、海外事業の売上高は「2002年の78億2000円が過去最高。前期はそれに次ぐ水準(68億2000万円)」(吉谷氏)とのこと。
■2016年3月期は減収減益予想も保守的か
2016年3月期の業績予想は下記の通り。売上高が前期比9.3%減、営業利益が同24.9%減、経常利益が同19.6%減、当期純利益が同22.1%減と減収減益の見通しとなっている。ただし、この数字には、2015年7月より放送開始となるテレビアニメ「ドラゴンボール超(スーパー)」による影響などは加味されておらず、かなり保守的な内容になっていると言えそうだ。また、開発費が前期の5100万円から3億4800万円に大きく増えているが、これは今期から成長を加速させるための戦略投資枠を策定したことによるものとなっている。
■「ドラゴンボール」関連の動きが活発化 「ドッカンバトル」の中国展開も
下の資料は、2016年3月期の上期までの主な展開を表したものになる。4月18日に国内で公開された『ドラゴンボールZ 復活の「F」』は、「5月11日現在で、興行収入33億円と前作『ドラゴンボールZ 神と神』を上回った」(高木社長)という。また、アプリ関連で注目されるのは、第2四半期(2015年夏)に『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』が中国でリリースされる予定となっていることだろうか。また、中国向けアプリでは、『ドッカンバトル』のほかにも有力タイトルのリリースが控えているという。
なお、中長期の成長戦略としては、前述の戦略投資枠を策定のほか、映像作品の新企画・制作プロジェクトの推進などに取り組んでいくとし、昨年11月に公開して好評を博した「楽園追放」に続くオリジナルCGプロジェクトも企画中としていた。
なお質疑応答では、CGによる映像作品はコア向けの作品が多いのではとの指摘があったが、「これからコアだけでなく一般に受けるものも作っていく」(高木社長)とのこと。
(編集部:柴田正之)
会社情報
- 会社名
- 東映アニメーション株式会社
- 設立
- 1948年1月
- 代表者
- 代表取締役会長 森下 孝三/代表取締役社長 高木 勝裕
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高671億1700万円、営業利益177億7200万円、経常利益203億円、最終利益145億9300万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 4816