【インタビュー】痛快で爽快な『モンスターギア』のマルチプレイバトルを盛り上げる「音」のカラクリ 音で誰の活躍か分かる効果音へのこだわり


セガゲームス セガネットワークス カンパニーが贈る新作アプリ『モンスターギア』(以下『モンギア』)が絶好調だ。リリースから早々に200万ダウンロードを突破(関連記事)したほか、App Storeの売上ランキング(ゲームカテゴリー)では最高8位を記録。
 
本作は、最大4人で協力し、立ちはだかる巨大モンスターと戦うハンティングアクションRPGである。それぞれに固有のモーションが用意された150種類以上のモンスターは、こだわりぬいた3Dモデルで制作。プレイヤーは、大剣、双剣、ランス、ハンマー、弓という特徴の異なる5種類の武器を使い分けて、モンスターを撃破していく。
 
そして、アクションゲームの肝となる“爽快感”を演出するのは、何といっても聞いていて心地よいSE(サウンドエフェクト-効果音)と、気分を盛り上げてくれるBGMだろう。そんな本作の「音」を支えたのは、数々のスマホゲームタイトルで活用が拡がっているCRIWARE(提供:CRIミドルウェア)。
 
本稿では、『モンギア』の開発経緯とその魅力、こだわり抜かれたサウンド周りを中心に、セガゲームスとスタジオカリーブの両社に話を伺ってきた。
 
■『モンスターギア』
 

App Store



 

■「誰が活躍したのかを明確に」…音の差別化も意識

 

株式会社セガゲームス セガネットワークスカンパニー
開発本部 企画開発部 第三企画セクション ディレクター
久井克也 氏(写真左)

株式会社セガゲームス セガネットワークスカンパニー
開発本部 ソフト開発部 第一ソフト開発セクション
セクションマネージャー代行/リードプログラマ
秋葉晴樹 氏(写真中央)

株式会社スタジオカリーブ
サウンドディレクター/作編曲
森田朋子 氏(写真右)


――:本日はよろしくお願いします。まず『モンギア』におけるみなさんのご担当を教えてください。

久井克也氏(以下、久井):『モンギア』では、ディレクターとして開発全体を統括しています。運営チームは別におりまして、そことの施策共有を経て、実際にイベントや新要素を開発現場で取り込んでいくという形になります。

秋葉晴樹氏(以下、秋葉):本作ではプログラムリーダを担当しています。おもにメニュー回りの開発が中心となります。

森田朋子氏(以下、森田):私は株式会社スタジオカリーブのサウンドディレクターです。BGMを中心に手掛けて、SEを3割ほど担当しています。


――:非常に好調な『モンギア』ですが、そもそもの開発コンセプトについて教えてください。

久井:もともと『モンギア』は、今から1年半ほど前に“リアルの友達と一緒に協力して遊べるゲーム”というコンセプトのもと、プロデューサーの中村(セガゲームス 中村泰良氏)がプロジェクトを立ち上げました。当時はマルチプレイを導入したタイトルが人気を集めていたため、よりみんなで楽しめる面白いハンティングアクションゲームを作ろうとの思いで開発が始まりました。


――:“ユーザー同士の交流”を主軸としてプロジェクトが発足したのですね。ゲームシステムは非常にシンプルではありますが、モンスターの動きの読み合いなどなかなかやり応えがあります。

久井:ありがとうございます。『モンギア』の企画書の時点から、現場でもそれが満場一致の意見だったんです。とにかくアクションゲームらしさを残しつつ、いかにスマホに最適化するかがポイントでした。

そのため『モンギア』のシステムは、基本操作が「ガード」「通常攻撃」「特殊攻撃」と、たった3つのボタンだけ。あえてフィールド上を動き回るという難しい操作は排除しています。表示される4人のキャラクターの位置も固定で、モンスターも1体だけで固定するなど、極力シンプルな形に落とし込んでいきました。


――:とはいえ、キャラクター・モンスター含めてすべてが3Dですよね。それをあえて位置を固定させているのも、ほかにはないこだわりだと見受けました。

久井:たとえシンプルな画面構成でも、キャラクターの剣の振り方やモンスターの攻撃パターンひとつひとつをよりリッチに見せるべきだと思い、すべてを3Dで表現することに決めました。


――:マルチプレイでは、実際に端末を持ち寄って4人でプレイすることに重きを置いていますね。

久井:はい。実際に集まって遊ぶほうが盛り上がるというのもありますが、画面に4人全員のキャラクターが映し出されており、ほかのキャラクターが何をしているのかも一目で分かるため、全員が一斉に攻撃するのが爽快です。もちろん友達同士で誘い合うなど、ユーザーさんが増えるようなバイラル効果にも結び付くと思っています。


――:たしかに。『モンギア』のマルチプレイの魅力は、他プレイヤーの行動で一喜一憂できるところですよね。たとえば、自分がモンスターからダメージをくらっても、ほかの人がきっちりカウンターを決めてくれるなど。そういう意味では、プログラマーとしてバトルにこだわったところはありますか。

秋葉:バトルは試行錯誤の連続でした。開発当初は、ただ単純にダメージが表示されるだけで、いまいち誰がどう活躍しているのかが分からなかったのです。

そこから数字の大きさを変えてみたり、必殺技を発動するときは台詞を出してみたり、「いまアイツが活躍しているぞ」ということがきちんとわかる演出をビジュアルにも音にも取り入れるようにしました。あとは現在5種類の武器があるのですが、それぞれの特徴にも議論を重ねました。


――:そして、『モンギア』の音楽ではスタジオカリーブさんにご依頼したとのことですが、その経緯について教えてください。

久井:スタジオカリーブさんとは、過去に開発した『デーモントライヴ』というタイトルのときに初めてご依頼させていただき、そこからの付き合いとなります。大変クオリティの高いサウンドを毎回あげていただき、ぜひ今回もということでお願いしました


――:『モンギア』のサウンドを手掛ける際に、どのような意識をされましたか。

森田:スマホゲームなので画面自体は手のひらサイズですが、恐らくモンスターは大きいうえに、広大なフィールドのなかで戦っているのだろうというイメージがあり、BGMを壮大なものにしました。

ただ、まだ当時は私も手探りで、スマホゲームなので手軽に遊べるような割とキャッチーでパカパカと戦っている楽しい雰囲気も取り入れていましたが、それが開発現場の方が抱くイメージとは違っていました。

久井:我々も最初は手探りのところがありましたので、お互いに色々な案を出し合って、現在の武器の重みが感じられるような効果音や、よりリアルで壮大なBGMに行き着くことができました。

森田:やはりアクションゲームですので、攻撃したときに爽快感が得られるような音で、なおかつBGMもバトルシーンでテンションが上がっていくような迫力が必要だと心掛けました。
 
 
▲『モンスターギア』のバトルシーン


――:効果音などは、具体的にどのように変更していきましたか。
 
久井:はじめは金属音のような感じでした。『モンギア』の世界には物質として金属が存在しなかったので、あまりガシャガシャした音は避けていただくように再度話し合いをしました。開発当初は我々もサンプルを用意できず、想像で作っていただき申し訳なかったです。
 
森田:そこから武器の重さや見た目で音の高さを微調整していき、一斉に攻撃するため今何の武器が鳴っているのか分かるようにしました。ハンマーは低めの音で、大剣はそれより少し高めの音、双剣はとにかく振り回している音といったように、聞こえ方が変わるように差別化を図りました。


――:今では割と軽やかな音になっていますね。なかでも印象に残っているBGMや効果音などはありますか。
 
森田:タイトル画面で流れるBGMです。「これから狩りに行くぞ」と気分が上がるように、金管楽器を盛大に使った楽曲になっていて気に入っています。意識したことは、ずっと聞いていても疲れず飽きのこないような曲を作ることです。
 
久井:クエストを始めるときに「ほら貝」のような音が鳴るのですが、あそこは結構なこだわりがあります。ちなみに曲の長さにもこだわっていて、たとえばホーム画面は1分半、バトルは長期戦になることも考慮して3分程度にしています。
 


 

■壮大なBGMと軽快な効果音の制作秘話


――:サウンドの開発についてさらに詳しくお聞きしたいと思います。まずはサウンドを調整・実装するにあたり、「CRIWARE」を採用した理由を教えてください。

秋葉:家庭用ゲームやスマホ向けの協力対戦型バトルRPG『デーモントライヴ』を開発していた時からすでに「CRIWARE」を活用し、優れていることは分かっていましたので、今回も採用させていただきました。サウンド・ムービー再生の部分で演出のクオリティを高く仕上げてくれる安心感があります。


――:本作ではサウンドミドルウェア「CRI ADX2」(※1)を使用したと思いますが、今回設定した使用コーデックや曲数について教えていだけますか。

秋葉:コーデックは「HCA-MX」(※2)です。BGMは14曲、効果音は220個ほどですね。

(※1)「ADX2」:高度なサウンド演出から細かい音の調整までツール上で直感的に行える統合型サウンドミドルウェア。最先端のゲーム制作のニーズ・ノウハウを反映している。独自開発の音声圧縮機能を持ち、音質の良いボイスやBGMなどを豪華に使ったアプリが実現可能。低レイテンシモード、音声再生遅延推測機能等、Androidの遅延対策にも対応している。

(※2)「HCA-MX」:再生時のデコード処理の軽量化に特化したコーデック



――:今回オーサリングツールを使用したのはスタジオカリーブさん側とのことですが、新しく使った機能などはありますか。

森田:はい。ダッキング演出(メイン音声が流れる際に他の音を絞って目立たせる行為)にADX2の「REACT」機能を使いました。『デーモントライヴ』のときは使用していなかったのですが、今回は音が同時に鳴る場面が多かったため、演出と音の問題解消というふたつの目的で、カテゴリ間での再生パラメータを制御する「REACT」機能を使用しました。 


――:具体的に「REACT」機能は、ゲーム中のどういうシーンで使いましたか。

森田:バトルシーンはもちろんですが、ホーム画面でも使用しました。BGMが流れているときに、ガチャを回すなどほかのアクションをした際、そちらの音を目立たせることに使用しました。また、バトルシーンでは、みんなとゴチャゴチャになって戦っているときにギアバーストを発動させると、音がこもって迫力が出ませんでした。そこは発動のカットシーンが挿入されたタイミングでBGMを一瞬グッと絞って発動の音を際立たせ、カットシーンが終わったら、緩やかに戻していくという用途で使用しました。
 

▲ギアバースト発動


――:「ADX2」において、何か使用して便利だった機能はありますか。

森田:繰り返しにはなりますが、やはり「REACT」ですね。マニュアルを軽く確認した程度でスムーズに作業が行えましたし、後からプランナーの方に「もっと音を絞って欲しい」と依頼された際も、すぐに直したデータをお渡しできました。

秋葉:そうですね。森田さんには、ADX2で色々設定していただいたデータをもらったので、本当にありがたかったですね。制作会社によっては無加工のサウンドデータを納品いただき、後から弊社側で設定することもあるのですが、やはり開発部門にはサウンド制作を専門にする者は多くなく、音質や音量のバランスなどで苦労することが多々あるのです。そういう意味でも、事前にADX2で作業していただいたのは、我々としては大変助かりましたね。


――:「ファイルマジックPRO」(※3)はどのような部分で使用されましたか。

秋葉:ファイルをダウンロードするといった、本当に限定的な使い方をしました。10~15MBほどの大きなファイルをダウンロードするときに、スマートフォンの通信環境がよくないと、ダウンロードに失敗したり転送が途中で止まって再開したり、トラブルが起きることがありましたが、ファイルマジックPROのダウンロード機能を使用したことでそれらを解決できました。

(※3)「ファイルマジックPRO」:ゲームデータの圧縮からサーバ上のデータのダウンロード、追加ファイルの管理まで対応するミドルウェア。圧縮とパッキングの機能で、容量の大きな演出データも素早くダウンロードし、データの追加や差し替えにも柔軟に対応。


――:詳細にありがとうございました。それでは、最後に『モンギア』における今後のアップデートについて教えてください。


久井:先日実施したVer.1.1.5バージョンアップでは、新章(第7章シバレル大雪原)を追加しました。そのほか、細かいところではソロプレイ時のサブハンター(サブキャラクター)のAIを強化するなどの調整が加わっていますので、より遊びやすくなりました。このほか、先日は「戦国ガチャイベント」も開催しました。詳しくは申し上げられませんが、今後もこうしたテーマ性を持ったギアを出していくので、楽しみにお待ちいただければ幸いです。


――:本日はありがとうございました。
 
(取材・文:編集部  原孝則)
 
■『モンスターギア』
 

App Store



■スタジオカリーブ
 


■CRI・ミドルウェア
 
 
© SEGA
株式会社セガ
https://www.sega.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社セガ
設立
1960年6月
代表者
代表取締役会長CEO 里見 治紀/代表取締役社長執行役員COO 内海 州史/代表取締役副社長執行役員Co-COO 杉野 行雄
決算期
3月
直近業績
売上高1916億7800万円、営業利益175億3900万円、経常利益171億9000万円、最終利益114億8800万円(2023年3月期)
企業データを見る
株式会社CRI・ミドルウェア
http://www.cri-mw.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社CRI・ミドルウェア
設立
2001年8月
代表者
代表取締役会長 鈴木 正彦/代表取締役社長 押見 正雄
決算期
9月
直近業績
売上高28億4000万円、営業利益9700万円、経常利益1億3800万円、最終損益3億3900万円の赤字(2022年9月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3698
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