【KLab決算説明会】『ブレソル』が『スクフェス』に続く柱に イベント・ライセンス事業進出で「総合エンターテイメント企業への脱皮を目指す」

KLab<3656>は、8月6日、第2四半期(2015年4~6月期)の連結決算を発表するとともに、東京都内でアナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。決算説明会はこれまで真田哲弥社長が1人で説明していたが、今回から取締役副社長の五十嵐洋介氏と、常務取締役の高田和幸氏も説明に参加するなど、これまでとは趣の異なるものだった。KLabが会社として新しい事業展開の方向性を示す意味もあったと思われる。

決算説明会に臨んだ真田社長(写真)は、新たに始めるイベント事業とライセンス事業の内容と戦略的な意図を説明したうえで、「総合的なエンターテイメント企業を目指したい」と述べ、モバイルゲーム企業から脱皮していく考えを示した。収益のボラティリティの高いモバイルオンラインゲーム事業を補い、安定した収益を稼げる事業に進出することで会社全体としての収益の安定化を図る。

他方、新作アプリ『BLEACH Brave Souls(以下、『ブレソル』)』も好調なスタートをきり、主力タイトルである『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル(以下、スクフェス)』に続く、新しい収益の柱に育ちつつある。新しい事業戦略の方向性を打ち出す一方、大きな収益の柱が育ってきたことを予感させるなど、ポジティブな印象を与える決算説明会だったといえよう。

 
【五十嵐氏と高田氏】


 
■第2四半期 はQonQで減収減益

発表した決算は、売上高47億9700万円(前四半期比14.9%減)、営業利益5億3200万円(同47.8%減)、経常利益6億1100万円(同39.0%減)、最終利益2億4000万円(同43.5%減)だった。第1四半期の決算発表でのアナウンスのとおり、前四半期との比較では減収減益だった。
 

『スクフェス』が運営上の端境期にあったこともあり、売上高が減少したことに加え、テレビCMの出稿に伴う広告宣伝費の増加や、プロトタイプ開発に伴う試作費の増加が収益を圧迫した。
 
 
▲海外売上高の比率は13.3%から11.9%に下落した。『スクフェス』簡体字版と韓国語版の売上が減少したことによる。

 
▲貸借対照表。無形固定資産が3億9400万円増えた。数本の開発中のタイトルをソフトウェア資産として計上したことによる。


 
■第3四半期はQonQで88%営業増益予想も保守的な印象

第3四半期(7~9月期)は、売上高65億円(前四半期比35.5%増)、営業利益10億円(同87.9%増)、経常利益10億円(同63.7%増)、最終利益6億5000万円(同170.5%増)と、前四半期比で大幅な増収増益を見込む。『スクフェス』の大型アップデートの効果や、『ブレソル』の売上計画を保守的に見込むなど、上振れ余地の大きい見通しとなっているようだ。
 

『スクフェス』は、劇場版「ラブライブ!」が大ヒットした効果もあり、売上が回復基調にあるとのこと。海外では劇場版の公開もあり、業績貢献効果も見込まれる、としている。また、8月4日には大型アップデートを実施した。好調な出足だが、大型アップデートに伴う売上増加は計画には入れていないとのこと。

またリリース後、アプリストアの売上ランキングですぐに上位に入った『ブレソル』は、非常に好調なスタートを切った。ただ、運用開始直後のタイトルであるため、保守的な売上を予想しているとのことだった。

広告宣伝費については、大型プロモーションをシルバーウィーク前後で実施する予定。費用が先行計上され、売上貢献に関しては翌四半期以降に出てくる見込みだ。
 

会場からは劇場版『ラブライブ!』やテレビCMの効果について質問があった。これに対し、真田社長は、「DAU(日次アクティブユーザー数)が最初に上昇し、それに連れてARPPU(課金ユーザー1人当たりの平均売上高)が伸びている」と回答した。「映画によって古参のユーザーがゲームに戻ってきてくれているのではないか」との見方を示した。

アニメとゲームアプリの関係で見ると、昨年4~6月に放映された『ラブライブ!TVアニメ2期』の場合、放送終了後となる7月から9月にかけて波及効果が出てきたように、一定のタイムラグがあるそうだ。劇場版についても同様に一定のタイムラグがあるとしており、7月から9月にかけて伸びていくと見ているという。

なお、パイプラインについては、第3四半期以降のリリースを目指すタイトルは、IPタイトル2本、オリジナルタイトル5本となっているとのこと。ただし、プロト開発と本開発に進んでいるタイトル数であるため、リリース本数をコミットするものではないという。今回、『Glee Forever!』と『ブレソル』がリリースされたため、IPタイトルが減少した。オリジナルタイトルは、1タイトル中止したため、1タイトル減少した。
 


 
■今後の展開

(1) 『ブレソル』
続いて、今後の展開について説明があった。まず、リリース直後、アプリストアの売上ランキング上位に入った『ブレソル』は、出足は非常に好調とのこと。KLabとして初めて、リリース時にApp StoreとGoogle Playのおすすめに同時掲載されたという。また、熱心な原作・アニメのファンがFacebookやTwitterなどを通じて拡散し、強力なクチコミ効果が働いたこともダウンロード数の伸びにつながったという。9月に共闘機能を含む大型アップデートを実施し、その後、大型プロモーションを行う計画だ。

『ブレソル』については、すでに発表のあったとおり、北米、中南米、欧州、オセアニアでの配信権を取得し、海外版のリリースに向けて準備を行っているとのこと。マンガ・アニメ「BLEACH」は、世界各国で単行本や劇場版の公開など、世界中のアニメファンから支持を集めており、海外でもヒットが期待される。
 

説明会では『ブレソル』の好調の要因について質問が出た。真田社長は、「過去に見たことがない水準の継続率となっている」と述べた。そして、その要因について、会社見解ではなく、あくまで1プレイヤーとしての見解と前置きしたうえで、静止画やイラスト、アニメーションを駆使し、原作並みにリッチなストーリーモードを入れたこと、そして、オートバトルとマニュアルモードとのバランスをあげた。


(2)『Glee Forever!』
続いて世界的なIP「Glee」を使ったアプリ『Glee Forever!』についての説明があった。同タイトルは、6月末にカナダとオーストラリアでソフトローンチされ、プロモーションは実施していない。現在、運営する中で課題も見つかっており、ひとつひとつ改善しているとのこと。そののち、9月に全世界で配信し、プロモーションを行っていく計画だ。
 

会場からはアプリの課題に関して質問があった。真田社長は、「細かい点がたくさんある」としながら、一例として、日本の『スクフェス』に比べてデータダウンロード中の離脱率の高さをあげた。通信環境の違いが主な要因とみられるが、その対処方法として、ユーザーを待たせないよう、バックグラウンドでダウンロードする機能を盛り込むそうだ。「現状でもすぐに正式ローンチできる水準だが、改善を行ってより高い品質の状態で、満を持してリリースし、上位進出を狙いたい」と語った。


(3)『Age of Empires: World Domination』
2015年中のソフトローンチに向けて順調に仕上がっているという。決算説明会終了後に担当プロデューサーがゲームアプリのお披露目を行った。
 


(3)戦略
続いて、モバイルゲーム市場では、ランキング上位タイトルが固定化の傾向が続いているほか、ゲームアプリのリッチ化が起きており、開発費が高騰している。競争の激化とともにCPIが高騰するなど厳しい市場環境にある。こうしたなか、同社では、IPタイトルのリリースで業績の下落リスクを抑えつつ、オリジナルタイトルで大ヒットを狙っていく戦略だ。IPとオリジナルのバランスを取った経営を行っていく考えだ。
 




(4) 「KG SDK」について
続いて、モバイルゲーム開発SDK「KG SDK」についての説明があった。これは、各種ゲーム共通で必要な機能をまとめたソフトウェア開発ツールキットとなる。同社では、他社の開発したゲームアプリのパブリッシング事業に力を入れており、パブリッシングパートナーや共同開発パートナーにSDKを提供するという。

ストア課金ライブラリ、仮想通貨管理ライブラリ、アセット管理ライブラリを発表しており、今後も順次追加していく予定。開発パートナーにはKLabがマーケティングを行うだけでなく、開発ツールも提供して、開発支援も行っていくそうだ。収益については、共同提供したアプリの収益をレベニューシェアする形で稼ぐ形になる。つまり、SDK単体で販売するものではないとのこと。
 


 
■イベント事業では「あっと驚くようなイベントを企画」

ここで真田社長が登壇して、新規事業についての説明を行った。先に発表したイベント事業とライセンス事業への進出だが、社長自ら説明を行うところから今回の新規事業を同社がいかに重視しているかを示している。
 

この事業では、日本だけでなくアジア全域でライブや音楽フェス、ミュージカルなどイベントを行うとともに、様々なIPに関するグッズ販売を行うもので、早期の立ち上げと黒字化、収益貢献を狙っているという。将来的にはKLabのオリジナルIPを使ったゲームやイベント、ライセンス商品を行っていく方針だ。

今回、事業を開始する背景として、ゲームだけでなく、音楽やアニメ、電子書籍などのデジタルコンテンツの収益が年々、厳しくなっている状況にあることを明かした。例えば、音楽についてはコンテンツの複製がしやすいため、事業者が儲からなくなりつつあるという。こうしたなか、複製の効かない、オフラインのイベントの価値が上がっており、レコード会社はライブで収益を上げていくようになっている。

ゲーム会社として、グッズ化やイベント事業に注力することは、IP獲得力の向上にもつながる。IPの獲得競争は厳しくなっているそうで、ゲームだけでなく、グッズや興行でも収益が出るようになれば、IPホルダーにとっても収益機会の拡大につながり、より魅力的な提案ができるというわけだ。
 

なお、興行に関しては、ノウハウを持つ人材が不可欠だ。この点については、業界内からヘッドハントを行って人材を集めており、社内スタッフの混成チームですでにスタートしているという。「皆様があっと驚くようなイベントを企画している」とのことで、第1弾となるイベントが注目される。

 
(編集部 木村英彦)
KLab株式会社
http://www.klab.com/jp/

会社情報

会社名
KLab株式会社
設立
2000年8月
代表者
代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
決算期
12月
直近業績
売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3656
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