KLab<3656>は、新作パズルRPG『パズルワンダーランド』を2015年内にリリースすることを明らかにし、事前登録を受け付けている。
本作は、「回す」「繋ぐ」「チェイン」という新しい要素が入ったパズルシステムを、最大4人で同時に遊ぶことができる新感覚パズルRPGだという。「繋ぐ」と「チェイン」はわかるが、「回す」とはどういうことなのか。
KLabといえば、IPタイトルで強い印象を与えているが、『戦国バスター』や『天空のクラフトフリート』などオリジナルタイトルでも多数のヒットを生み出している。そんなKLabが満を持して世に放つオリジナルタイトルはどういったゲームになるのか。
今回、『パズルワンダーランド』の制作者達にインタビューを行い、ゲームの内容や特徴、そして開発秘話について話を聞いた。
■プロフィール
▲右から勘米良氏、水野氏、信澤氏。勘米良氏:法人向けシステム開発会社で開発経験を積んだ後、2014年1月にKLabに入社。『パズルワンダーランド』では、プロトタイプから現在までクライアントの開発を担当している。
水野氏:コンシューマゲームの開発を経て、2012年にKLabに入社。『パズルワンダーランド』ではゲームディレクター/プランナーを担当している。社内のオリジナルタイトルのプロジェクトに多く関わっている。
信澤氏:クリエイティブ部の副部長で、『パズルワンダーランド』ではアートディレクターを担当している。会社横断で2Dイラスト部分の制作、スタッフ管理を行っている。
■"回転"要素のあるラインパズルゲーム
―――:今日はよろしくお願いします。早速、本題に入りますと、『パズルワンダーランド』はどういったゲームになるんでしょうか。
水野氏:社内で開発したオリジナルのパズルRPGとなります。一見すると、普通のラインパズルゲームなのですが、新しいパズル体験として"回転"という要素を盛り込まれています。これが本作の大きな特徴の一つになります。
―――:パズルのところを回転させるということですが、どういうものをイメージしたら良いでしょうか。
水野氏:クエストが始まると、パズルの盤面にキャラクターが4体乗っており、1ターンごとにつきキャラクターを動かしてパズルをつないでいくことになります。通常のラインパズルゲームと同じく、決まったルートに沿ってパネルをなぞっていくのですが、このゲームのユニークな要素は、行き詰まった時に、自分の操作しているキャラクターの乗っているパネルをタップすることで周囲のパネルを回転できることです。
―――:回転の意味はどういったことにあるんでしょうか。
水野氏:回転させることによって、ルートが切れてしまっても、新しいルートが開くことができます。回転させることでより多くのパネルを取っていくことができ、うまくできればいくらでもコンボがつながります。既存のパズルゲームとは違った手触りなので、ほとんどの方にとっては初めてのゲーム体験になると思います。ルールを覚えるため、プレイのハードルが少し高いかもしれませんが、ルールを覚えれば、これまでにない爽快なパズルが楽しめるはずです。
■マルチプレイもリリース時から実装
―――:なるほど。リアルタイムのマルチプレイにも対応していますよね。
水野氏:はい。オンラインもしくは近くにいるお友だちなどと一緒に遊ぶことができます。こちらはローンチの時点で絶対に入れます。チャット機能も搭載されますので、そこでお客様同士で会話しながら楽しんでもらえればと思います。
―――:マルチプレイはどういった形になるんですか?
水野氏:ターン制となります。最大4人で参加できますが、1ターンずつ交代で自分の持ち寄ったキャラクターを操作していきます。色々な形が考えられるかと思いますが、このような形式にしたのは、ご自分の腕前を見せる場を用意したいと考えたためです。例えば、僕が非常にうまくて、他の2人が下手だったとしますよね。僕は「どや!」と腕を見せることができますし、他の2人が僕のプレイを見て学ぶ機会になると思います。
勘米良氏:でも、自分が「どや!」とやったがために、次の人が動かせるものがなくなってしまう可能性もあります(笑) 次の人に自分のプレイをどうやって引き継がせるか、というところも重要です。
信澤氏:パズルゲーム部分は、当社内でもうまくなる上限値が見えていません。上手い人がものすごい数値を出せるんです。プランナーが困っていますね(笑) マルチプレイでは、他の人のプレイを見るのも楽しみになると思います。上手い人のプレイを確認して、このゲームでこんなこともできるのかと確認してもらえると嬉しいですね。プロジェクト内でも遊んでいて、いまだに発見がありますので、ギャラリーとしても楽しめると思います。
―――:相当奥深いゲームになっているようですね。
勘米良氏:私たちもどこまでうまくなるのかわからないのです。ルールさえ覚えるとこんなもんかと思えるんですが、他の人のプレイを見ると「この手があったのか」と日々発見があります。これがリアルタイムで見られるのが面白いところです。
水野氏:このゲームに関しては、動画も多めに用意しようと思っています。生放送や公式サイト内でプレイ動画だけでなく、スーパープレイ動画など、遊んでみたいと思えるような動画をどんどん配信して、多くの方に魅力を知っていただきたいですね。
―――:マルチプレイというと、マッチングが大変ですが、なにか気をつけていることはありますか?
水野氏:マッチングの仕組みには力を入れました。マルチプレイを募集した時、ワールドチャットに「いま募集しているよ」と簡単に書き込めるようになっています。既存タイトルでは、部屋番号が入力すると入れるものが多いですが、チャットルームから入室のボタンを押すだけで入れます。チャットでワイワイとやりとりしているとき、募集がかかっているとすぐに入れるようにしました。募集が全然ない、募集しても人が集まらないといった状況が起こらないようにしています。
また、マルチプレイに参加する際、募集が終わっていることが多いですが、色々な募集がリアルタイムでリロードされるようにして常に最新の情報が常に出るようにしています。マルチプレイのハードルをできる限り減らすようにしました。どこまで面倒さを排除できるかもテーマでした。
―――:マルチプレイは多くの場合、ちょっと日が経ってから導入するタイトルが多いかと思いますが、ローンチ時に導入する理由は。
水野氏:マルチプレイは、このゲームを特徴づける重要な要素になるからです。メインとなる要素は、途中で載せるよりは最初から実装すべきという考え方です。せっかくダウンロードして時間を費やしていただくわけですから、お客様にはマルチプレイの面白さに触れていただきたいと思っています。マルチプレイで一緒に遊んで、チャットでワイワイやって楽しかった、と思ってもらえれば嬉しいですね。
▲チャットから簡単にマルチプレイに参加することができる。
―――:リリースして落ち着いてから入れたほうが楽じゃないですか。
勘米良氏:そうですね。リアルタイムでのマルチプレイは技術的にもハードルが高い要素ですので、その点は、企画と話し合いながら開発を進めました。「必然的に開発期間がかかってしまうけど、それでもやるの?」と聞くと、「やる」という回答でした。お客様同士のつながりが体感しやすい作りにできましたので、結果として頑張って実装してよかったと思います。
■キャラクターを揃えるのではなく、好きなキャラクターをとことん育成
―――:パズルRPGというと、キャラクターを揃えて編成してバトルに挑む作品が多いですが、既存タイトルの違いはあるんですか?
水野氏:システム上、キャラクターをガチャなどで集めて育てていくものが多いですが、このゲームでは、「ジョブ」を獲得して育てていきます。ジョブは、78種類用意されており、ツリー上に成長させることができます。この点はカードゲームの文脈というよりも、RPG色を強く打ち出しました。
パーティの編成に関してはこれまでのスマートフォンゲームの文脈を踏襲しています。ただ、キャラクターを入れ替えて編成するというよりは、「このダンジョンにはこういう敵が出てくるので、それに対応したジョブを身につけて臨む」というところで違いがあります。
―――:キャラクターを集めるよりはじっくりと育てていく、ということですね。
勘米良氏:はい。キャラクターを集めるというよりも、キャラクター1体1体を育成していくことを重視しています。既存の多くのゲームには、キャラクターごとにレアリティがありますが、このゲームでは全てのキャラクターが☆1から最高レアリティまで全てのジョブになれます。育成していけば、最高レアリティまで育てることも可能です。
水野氏:キャラクターについてはリリース時点で12体用意しています。キャラクターごとに独自のジョブツリーを持っており、付けられるジョブも決まっています。キャラクターもリリース後は順次増やしていく予定です。
―――:キャラクターにレベルの概念はあるんですか?
水野氏:キャラクターのレベルというよりは、ジョブのレベルという概念です。ひとつのジョブごとにレベルMAXを目指してもらいます。ジョブを最大まで育成することで「攻撃力5%アップ」などのマスターボーナスがもらえます。たくさんのジョブをマスターすることで、多くのボーナスがついてきます。一つのキャラクターをひたすら掘り下げて育てることができます。
もうひとつ重要な育成要素があります。装備品(アクセサリー)を1つ身につけることができ、プラスアルファの効果が出てきます。こちらは装備品ガチャなどから入手できます。RPG色の強いゲームを意識していましたので、装備をつけるのは既存のゲームとは少しアプローチが違うところかと思います。
信澤氏:キャラクターは初期12体で少ないと思われるかもしれませんが、その分、そのキャラクターに愛着をもって育てていただけると嬉しいです。同じキャラクターでもジョブが変わると見た目が変わりますし、モーションや使えるスキルも変わります。アクティブスキルと呼ばれるユーザーが任意に発動するスキルには専用のモーションやエフェクトも用意しています。育てて色々なジョブにしたり、星5まで成長させたとしても他のツリーを成長させて新しいジョブを取得したいと思うような作りのグラフィックになっています。
―――:1キャラあたりのジョブはどのくらいありますか?
水野氏:主人公キャラでは12~13あります。結構ありますね。すべてのジョブの種類は78種類用意されています。こちらもリリース後、順次追加していきます。
―――:キャラクターデザインは御社内で?
信澤氏:すべて社内です。シナリオからキャラクターの設定、デザインはすべて社内で行いました。キャラクターボイスは人気のある声優さんにお願いしています。プレイヤーのキャラクターに関してもキャラ付けをしっかりプランナーにやってもらいましたので、変わった性格が多くてキャラ立ちしていると思います。12キャラクターそれぞれ特徴がありますし、取得ジョブもそれぞれ異なります。
■パズルゲームとしては珍しいフル3D
―――:ゲームの特徴として、グラフィックもフル3Dになっていますね。パズルRPGでは非常に珍しいように思いましたが。
水野氏:確かに3Dのパズルゲームは少ないですね。キャラクターを含めて全て3Dです。パズル部分が3Dフィールドで構成されており、3Dのキャラクターたちがパズルの上に立っています。奥には3Dのモンスターがいます。モンスターも含めて全てのモーションも用意しました。そういった体験はパズルRPGにはなかったかもしれません。パズルゲームの多くは、パズルの盤面と奥にいるモンスターが分断されていましたが、このゲームではつながっています。
―――:グラフィックに関してはいかがでしょうか。
信澤氏:社内の3Dチームで作りました。パズルが新しいので、覚えてもらえるとすごく面白いのですが、これだけアプリが多くなってくると、手にとってもらうことも大変です。このため、3Dのモデルやモーション、演出も一定以上の品質にして、まず手にとってもらえるようなグラフィックスにするように心がけました。
また、画面構成も、スマートフォン向けのパズルRPGで採用されている"文法"を踏襲するだけではお客様に訴求しないでしょうし、メディアに掲載されても目立ちません。パズルの盤面と敵モンスターを分断するのは完成されたレイアウトなので、そこは踏襲しつつも、一工夫入れました。3Dの空間上でプレイを阻害せずに新しい体験をしてもらうことが難しいところでした。
クリエイティブだけでなく、表示できるかどうかも重要です。パズルと一緒に出すのがハードルの高い部分でしたが、開発には頑張ってもらいました。またパズルも遊んでもらいたいけど、キャラクターも大きく出したい、という難しさもありました。初めての試みで苦労しましたが、きれいに収まったと思います。
―――:開発側としては作るのは大変だったんじゃないですか。
勘米良氏:容量はもちろんですが、パフォーマンスをどう確保するかも苦労しました。クリエイティブから「こういう表現がしたい」という要望にはできるだけ応えていくつもりです。どうしても難しいものもあり、毎日、意見の相違はありましたが、お互いに努力しつて、綺麗な形でまとまったと思います。
―――:3Dでかつマルチプレイとなると、軽快な動作の実現も大変そうですね。
勘米良氏:大変でした。いまもまだまだ改善の余地があると思っています。同じ3Dでチャレンジした『ブレソル』の開発チームから技術的な共有をしてもらえたこともあり、何とか形になったと思います。ただ、少し前の端末をお使いの方には大変申し訳ないですが、iPhone4S以下、Androidもそれに準ずるものはサポート対象外とさせていただいています。
■今年1月にゲームを作りなおした
―――:ところで、この企画はいつごろだされたんですか?
水野氏:最初に企画書が書かれたのは去年の2月です。プロトタイプは、CGOの森田と信澤、勘米良の3人で作りました。プロトタイプの試行錯誤を重ね、ある程度固まったところで私が参加しました。6月くらいになると思います。
―――:最初から「回す」は入っていたんですか?
信澤氏:いえ、最初は、キャラクターをなぞる、いわゆるラインパズルゲームでしたが、回転要素については、今年1月に水野が考えました。結構開発が進んでいる状況でしたが、開発にはやり直してもらいました。
―――:今年1月となると、かなり開発が進んでいたんじゃないですか?
水野氏:はい。ただ、当時は、キャラクターが盤面の上にのっているという画面構成は変わりませんでしたが、決まったところをなぞるのが単調と感じていました。どうやったらうまくなれるのか、深みがない状況で、ここが悩みどころでした。回転要素を追加したことで、パズルに深みが出て、ずっと遊んでいて飽きることはなくなりました。開発していると、ゲームに慣れてしまい、自分の作っているものが面白いのかつまらないのかわからなくなることがよくありますが、そういったことはありません。先ほどお話したように、天井が見えていない状況ですし、プレイヤーとしても遊ぶ余地があると感じました。
勘米良氏:開発としても作り直しが必要と納得できましたから、特に苦ではありませんでした。むしろ積極的にやりたいと思ったくらいです。
水野氏:回転要素を追加して作り直したんですが、テストプレイをして開発チームの空気が明らかに変わったので、手応えを感じました。
信澤氏:今回のプロジェクトでは、「これを出して面白いのか」と突き詰めることができた、ということができて良かったです。これまでも面白いと思うものは出していましたが、議論しながら決めることができました。
■継続的に遊んでもらうゲームを目指す 上手い人を集めて生放送も
―――:今後のアップデートはどういった形を考えておられますか。
水野氏:まず、リリースの時点ではシナリオは完結しないようになっていて、月に1回ペースでアップデートをかけていき、同時にステージを追加していく予定です。キャラクターも月に3体ほど追加します。ジョブも同様です。
また、キャラとジョブは、ガチャから入手できるようにします。キャラクターのシナリオも用意して、よりキャラクターに愛着が持てるようにしたいと思います。これ以外にもストーリーを終えたお客様の腕前が上がってきた時に腕試しができるチャレンジコンテンツや降臨ダンジョンのような要素は随時追加していきます。
―――:PvP的な要素は。
水野氏:パズルの腕前の差が出やすいゲームですので、なにか考えたいなと思っていますが、具体的には何も決まっていません。この点に関しては、お客様の遊び方を確認しつつ、ご要望があれば考えたいところです。
―――:PvPになるとゲームが全く変わる可能性がありますからね。
信澤氏:PvPとは少し異なりますが、パズルの上手な方を集めて生放送するといった取り組みもやりたいと思っています。リリースしたら、私たちよりも上手い人が出てくるでしょうし、そのような仕組みになっていますから、上手な方のプレイをみたいですね。
また、運用では強力すぎるボスもでてくると思いますので、色々な攻略方法を編み出して欲しいです。開発の意図した攻略方法はあるんですが、こちらの想定と違う戦い方もあるでしょうし、それが可能なシステムです。それを編み出したうえで共有してもらえて、継続的に話題にあがって欲しいですね。
―――:最後に、このゲームをスマホゲーム市場でこういう存在にしたいという考えはありますか?
水野氏:お客様に馴染んでずっと継続的に遊んでいただけるものにしたいです。フルスイングでホームランというよりは、ランキングでずっと50位にいる、といったことを目指しています。遊んでいただけるような場所をゲームとして提供していくということです。
信澤氏:キャラにしろゲームシステムにしろ愛着を持ってもらえると嬉しいですね。長く続けていただけたら幸いです。
勘米良氏:マルチプレイで他の方とつながっていただき、継続的に遊んでもらえればと思います。一緒にやる仲間がいるから遊ぶ、といった感じで、遊び続ける理由になると思います。
(編集部 木村英彦)
■『パズルワンダーランド』
©KLabGames
会社情報
- 会社名
- KLab株式会社
- 設立
- 2000年8月
- 代表者
- 代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3656