【ラプラスリンク特集①】gloopsはソーシャルゲーム業界の常識をどう破壊し再構築したのか 上田Pが語る破壊の先で作り上げた"新しい楽しさ"


gloopsのスマートフォン向け新作RPG『LAPLACE LINK -ラプラスリンク-』のリリースが迫ってきた。本作は、なんとネイティブゲーム主流の中にあって、ブラウザゲームとして提供する。一見すると、時代に"逆行"しているようにもみえる。Social Game Infoでは、今回、『ラプラスリンク』の特集を行い、その魅力に迫る。第1回目となる今回は、プロデューサーの上田朋宏氏にインタビューを行い、既存のソーシャルゲームのどういった点を破壊しつつ、ゲームとしてどういった新しさ、楽しさを提供しようと考えているのかといった点について話を聞いた。


■上田朋宏氏プロフィール
慶應義塾大学から早稲田のロースクールに進学、IT関係の法律家を目指すも、自分が本当に好きなことを仕事にするために、2012年ゲームプランナーとしてgloops入社。入社後は、ディレクターとしてmobage版『スカイロック』のリリースに関わり、2014年に「LAPLACE LINK」のプロジェクトを立ち上げる。
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■モバイルゲーム市場をどう見るか

――:よろしくお願いいたします。いきなりで恐縮ですが、ブラウザゲーム市場は縮小の一途といった印象ですが、gloopsさんというと、ブラウザゲームも非常に強い印象です。いまの市場環境をどうご覧になっていますか?

そうですね。ソーシャルゲームの市場はほとんどゲームの進化が止まっており、ここを真剣に狙っているプレイヤーはすっかり減ってしまった印象です。ネイティブゲームが台頭してきて、それまでのカードバトルではビジュアルもゲーム性も勝負にならなくなりました。ソーシャルゲームでハイクオリティなゲームをいま作るならそのお金と時間をネイティブゲームの開発にかけた方が良いという判断が働くのかもしれません。あとは、技術的にもネイティブゲームの方ができることが多く、ブラウザではハイクオリティなゲームを動かせないと思われているんじゃないでしょうか。


――:ネイティブゲームも非常に厳しい市場ですよね。

はい。ネイティブゲーム市場は、競争が激しすぎてブラックホールのようになっています。お金と時間をかけた、「良くできているな」と思ったタイトルでも、売上ランキングでTOP100に入ることも難しい状況で、スッと闇に飲み込まれる恐怖があります。そもそもゲームの出る本数が圧倒的に多いですよね。加えて質も高いです。去年秋には超大型タイトルのリリースラッシュとなりましたが、驚愕しました。一体何から遊べばいいんだってなりませんか?

このレッドオーシャンならぬブラックホールで生き残り、次のタイトルを作る権利を得るためには、少しでも成功確率を上げるしかありません。そうすると、基本的には1タイトルに大量の時間とお金を費やしてクオリティを上げる戦略を取ることになります。そして、時間とお金を費やせば費やすほど、万が一にも失敗することはできなくなります。そんな状況では、当たるか分からない新しいことに挑戦するよりも、売れたタイトルに改良を加えたものや、売れたタイトルのゲームシステムにIPの世界観を載せたものをリリースする方が「成功確率が高い」ように見えます。結果として、似たようなゲームが市場に増えているのだと思います。

2010~11年のソーシャルゲームピークの時代も、似たようなカードバトルが市場に氾濫しましたが、その時とは全く状況が異なります。今のほうが厳しい市場です。ソーシャルゲームのピーク時はとにかく出せば当たったので、新しいことをするよりもひたすら素早くリリースすることが正義で、それによって似たようなゲームばかりとなりました。しかし今は、「失敗できない」という萎縮からより手堅い手法を選んだ結果、似たようなゲームになってしまっています。ブレイクスルーが起きづらいという意味では、今のほうが状況が悪いですね。



 
■『ラプラスリンク』はソーシャルゲーム2.0を目指した

――:そんななか、『ラプラスリンク』を出すことになりました。企画の経緯を教えて下さい。

チームの合言葉は、「ソーシャルゲーム2.0を作る」でした。ソーシャルゲーム市場ではゲーム進化は止まっており、そこを攻めるプレイヤーはいないと感じていましたので、その分、お客様も新しい体験を求めているだろうという確信がありました。新しい体験を提供するためには、ソーシャルゲームの常識や過去の文脈をいったん捨てようと考えました。その上で本当に必要な要素を再構成して、ソーシャルゲームを次のverに進化させることができれば、ネイティブゲームとも十分戦っていけると思いました。「ソーシャルゲーム2.0を作る」というと、「意識高い系」のように聞こえますが(笑)、「いい加減同じゲームばっかりで飽きた! みんなも飽きてるでしょ? 新しいものを作ろうぜ」というのが実体に近いかもしれません。
 


――:一度捨てて構成しなおしたとのことですが、その点について詳しく教えて下さい。

まず、ここで解体したのは、企画観点では主に

(1)「リストから選んでクエストに出かけなきゃいけないの?」
(2)「マイページって何だ?いるのか?」
(3)「メッセージウィンドウの会話シーンってみんな読むか?」


の3点です。

まず疑問に思ったのは、「リスト型クエスト」です。例えば、「1-1 冒険への旅立ち」とか書いてあるボタンがあって、それを押すと会話イベントなりバトルなりが始まるゲームって多いですよね。私自身、RPGが好きでしたので、ここが好きになれませんでした。新しい街に入った時のワクワク感とか、ダンジョンの静謐で不気味な感じとか、その中を主人公と一緒に冒険しなくてどうやって感情移入するんだと思いました。

でもそうすると、「じゃあどれだけMAP作るつもりなんですか?」とか「3Dポリゴンですか? ブラウザで動かなくないですか?」といった問題も同時にあがってきて、「いや、2Dで横スクロールにする。その代わり1つ1つをめちゃくちゃクオリティ高く描いてくれ」と決めました。2Dなのは「2Dでしか表現できないイラストの微妙な差異がある」、「昔懐かしいRPGの雰囲気を出せる」、「ネイティブでの3D流行への逆張り」という理由で、仮に技術的に検証した結果、3Dが可能だったとしても2Dを選んでいたと思います。

キャラの操作方向を左右に限定したのは、360度任意の方向に指を引っ張ってキャラを動かすという操作方法が、どうしてもストレスだと思ったからです。もう左右にしか動かさないから、ストレスなく動かすことを優先しました。あと、大体他のゲームが360度移動可能な俯瞰視点になっているので、横からの視点というのは新しいし、ビジュアルにもこだわれるなという思いがありました。

 


――:続いてマイページですが。

マイページは、ゲームを再開すると最初に訪れる、色んなボタンが置いてあって各ページに飛べるページですね。自分のパーティのキャラクターなどが見られてどのゲームにも当たり前に存在しますが、本当に必要なのだろうかと思いました。僕らは家庭用ゲーム機時代のRPGのような「世界への没入感」を目指していたので、まずそこから考えました。

思い出していただきたいのですが、例えば、国内の有名なコンシューマのRPGでマイページはあったでしょうか? むしろいきなりワールドマップに放り出される方が冒険感があって自然ではないかという結論に達しました。その結果、マイページをなくし、従来のマイページが果たしていた「各ページへの導線の整備」や「キャラクターの所有感を満たす工夫」というのは、別の機能で実現することにしました。

最後に会話シーンですが、メッセージウィンドウ形式だと、一文が長くて読むのが大変という声をよく聞きますし、自分もそう感じます。これももっとテンポ良く読めるようにするため、吹き出し形式の人形劇にしました。

 


――:イメージとしてはLINEの会話のような感じなんでしょうか。

はい。あの見やすさに慣れると、なかなかスマホでメールを使おうという気にならないですよね。ストーリーはRPGにとって重要な要素なので、少しでも「読む」負担を減らして、「見る」テンポで進めてもらえればと思います。


――:ゲームの楽しみは、モンスターなどとのバトルもあるかと思いますが、その点については。

まずは、「ターン制コマンドバトルはやらない」という所からスタートしました。それまでのソーシャルゲームでは、読み込みが発生する問題からターン制コマンドバトルが当たり前のように採用されていました。そうすると、どうしてもユーザーのゲームの腕というより、強いキャラをどうやって手に入れて育てるかということが重要になります。そういう状況を打破したいと考えました。同じキャラ、同じLvでもユーザーの腕次第で勝ったり負けたりする方がゲームとして面白いと思ったんです。かといって完全なアクションゲームも敷居が高いものあります。両者の良いところを取り入れる意味もあり、フィールドを動き回るアクションコマンドバトルとしました。
 

――:アクションコマンドバトルは意外とありそうでないですね。協力要素はどういった形になるのでしょうか。

ソーシャルゲームなので他のユーザーとの「協力」が重要なのですが、それをどうバトル内で表現するかに苦心しました。フレンドのキャラを借りたり、チェインやコンボを繋いだりというのは、すでに多くのゲームで使われています。いずれも協力プレイの楽しみ方として1つの正解だと思いますが、果たして似たようなことをしてお客様に喜んでいただけるのかと疑問に思いました。企画を最初に提出する段階で「協力」とは一体何なのかと非常に悩みましたね。

そこで、結局ありきたりかもしれませんが、役割分担にあるという結論に達しました。自分にできないことを他人ができて、他人ができないことを自分ができる…そこに協力が生まれるんじゃないかと思いました。そこからロールが生まれて、ただロールが最初から固定化されていると人気ロールと不人気ロールに偏りが出るからキャラチェンジシステムが生まれて…という感じで、あとは逆算ですね。

 


 
■再構築から生まれた新しい楽しさとは

――:ブラウザゲームでリリースされるとのことですが、カードゲームから大きく脱皮したゲームを出そうと考えているわけですね。

はい。一番大切なことは、再構築によって、どういった新しさ、面白さが出てくるか、です。既存のゲームを否定しただけで、面白いゲームを作り出せなければ意味がありませんよね。

まずは、リスト型クエストの廃止によって、街の中やダンジョンを自由に動き回れるようになりましたので、ゲームの世界にどっぷりハマっていただきたいです。スマホRPGとしてはあまり他にない形だと思うのですが、自分のキャラクターを操作して街やダンジョンを自由に歩き回り、住人から様々な依頼(クエスト)を受けてそれを解決しながら物語を進めていきます。2Dのミニキャラ達が可愛く時にコミカルに繰り広げる会話劇や、ダンジョンで突如発生するバトルなど、昔の懐かしいRPGの雰囲気を持ちながら、現代のスマホRPGの便利さも持ったクエストになっています。

 
▲街の中を移動しているシーンの動画だが、かつてのブラウザゲームでは考えられないほど軽快に動作する。あえてブラウザゲームといわれなければ、ネイティブゲームと思ってしまうのではないか。


しばらく物語を進めると、「マルチバトル」という機能が遊べるようになります。マルチバトルは、オンライン上で4人のプレイヤーと協力して1体の強力なボスを倒すというものです。回復や攻撃などの役割を「キャラチェンジシステム」で上手く切り替えながら戦っていくことになるのですが、味方の動きをよく見ながら息を合わせて戦うことが大事です。スポーツなどでよくある、「言葉をかわさなくても一瞬の呼吸でプレイを合わせる」といったイメージです。
 


――:仲間が前衛のキャラに変更して突撃したから自分は回復キャラに変更して支援する、といった動き方ですね。お互いの動きを見て意図を理解して協力しあう、といった感じでしょうか。

はい。お互いの協力がうまくワークして、強力なボスが倒せた時の達成感や爽快感は相当なものになると思います。私たち自身も開発中のテスト版をプレイして感じたことですし、オープンβテストでも同様の感想をいただきました。協力プレイは、オンラインで見知らぬ人同士で楽しむのもいいですし、友達同士で同じ場所に集まって一緒に遊ぶのも楽しいと思います。
 


――:どういったユーザー像を念頭に置いて企画したのでしょうか。

これは明確で、「家庭用ゲームのRPGを夢中になってやったことがある人」や「今のスマホRPGが物足りない人」ですね。大人になって社会人になると、自由に使える時間が少なくなり、帰宅してテレビの前でRPGをがっつりと楽しむのも難しくなっていますよね。現在はゲーム以外にも手軽に時間を潰せるエンターテイメントはたくさんあって、いつの間にかあんなにハマっていたRPGをやらなくなってしまった、という人も少なくないのではないでしょうか。そんな中、スマホゲームのRPGに手を出してみたけどなんか物足りない。そういった人にぜひ遊んでいただきたいです。『ラプラスリンク』は今のスマホでできる限界まで、"あの頃のRPG"の要素をつめこんで、かつ手軽にできるというスマホゲームの良さを受け継いでいます。


 
■ブラウザの技術が進化したいま、ネイティブに肉薄することは可能

――:『ラプラスリンク』をネイティブゲームではなく、ブラウザゲームとして展開する理由も教えて下さい。

理由はいくつかあります。ひとつめの理由は、ブラウザゲームの方が簡単に更新できるということがあります。プラットフォームへの申請が必要ありませんので、よりお客様の要望や遊び方に沿った、細かいアップデートも迅速にやっていきたいと思います。ですから、ご意見・ご要望がありましたら、お気軽に出していただければと思います。
 

ふたつめは、PCでも、タブレットでも、スマホでも、ブラウザに繋げる端末さえあれば遊べるというメリットがあります。家ではPC、外出先ではスマホなど、シーンに合わせた端末を選んで遊べたほうがより便利かと思っています。アプリだと、機種変更のたびにアプリをダウンロードし直して機種変更の手続きをして…といったことは本当に面倒ですよね。そういう面倒さがないのが良いところです。

とはいえ、ゲームのクオリティが低くては全く意味がないのですが、最近のブラウザゲームは技術の進化によってネイティブに比肩するようなクオリティを出せるようになってきました。実際にお客様の声を聞いても、面白いゲームであれば、ブラウザかネイティブかの違いを意識しない方が多いです。そういった諸々の理由から、ブラウザゲームとして作ろうと考えた次第です。



――:わかります。特に機種変更した時、アプリのデータ引き継ぎが面倒で、いくつかデータを移行しなかったものもあります。またゲームは野心的な作品であることはわかりましたが、ブラウザで協力型のアクションコマンドバトルなど快適に遊べるのでしょうか。

その点は心配ありません。βテストでは少し重いところもありましたが、描画ロジックの見直しにより、かなりスムーズに動作するようになっています。また、アプリ版やPC版もリリースしますので、動きやすい環境で遊んでいただければと思います。

また、ネイティブゲームが主流となる中、ブラウザゲームの進化は止まっていたのですが、実はブラウザの技術自体は進歩していました。ブラウザは世界中の方が毎日使う必須ツールで、多くの技術者がブラウザの技術を推進しているからです。現在も仕組み次第でネイティブゲームのようなリッチな表現をすることが十分できますし、将来はほとんど差がなくなるのではないかと思っています。



――:ここまでどういった点で苦労しましたか。

そうですね。エンドコンテンツ(ゲームをやり込んできたお客様が最後に挑戦するイベントや機能)をどうするかというのは、ずっと考えてきました。今まで育ててきたキャラや磨いてきた腕が生きなければなりませんし、基本的なバトルの延長線上にある遊びでなければなりません。そして、参加したい!! と思うような動機も必要です。これ以外にも課題はたくさんあり、全てを解決するのは容易ではありません。

単に敵を倒した数を競ったり、ポイントの多寡を競うようなありきたりのコンテンツにしたくないという思いもありました。かなりギリギリまで企画を作ってはボツにし、作ってはボツにしということを繰り返し、都合1年以上考えました。最終的にどういう形になったかは、是非お客様ご自身で確かめていただければと思います。



――:ありがとうございました。


次回は、『ラプラスリンク』のシナリオに関するインタビューとなります! お楽しみに。

 
(編集部 木村英彦)
 
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会社名
株式会社gloops
設立
2005年8月
代表者
李 仁
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12月
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