【インタビュー】『ガールフレンド(♪)』イラストチームに聞く「Save Point」の利便性 膨大なカードイラスト管理にも大きく貢献


現在MUGENUPが提供しているクラウド型制作管理システム「Save Point(以下、セーブポイント)」。昨年5月に提供が始まって以来、スマートフォンアプリの開発現場にも徐々に普及してきたこのシステムは、イラストを含めたさまざまなデータを一括管理でき、制作環境の改善、作業の効率化を図れる画期的なものだ。
 
そしてこの「セーブポイント」は、昨年末にサイバーエージェント<4751>よりリリースされた『ガールフレンド(♪)』においても利用されている。そこで今回、本作でアートディレクターを務める田中一馬氏(写真左)と古川健氏(写真右)にインタビューを行い、「セーブポイント」が持つ利便性や機能面のポイントを伺ってきた。
 

「Save Point」紹介ページ

『ガールフレンド(♪)』
公式サイト



 

■「セーブポイント」導入前は行き当たりばったりの運用だった


――:本日はよろしくお願いします。今回は『ガールフレンド(♪)』において、「セーブポイント」がどのように使われているかをお聞かせください。
 
田中氏古川氏:よろしくお願いします。
 
 

――:まずは、みなさんがどのような形で『ガールフレンド(♪)』に関わっているのかを教えてもらえますか?
 
田中氏(以下、田中):『ガールフレンド(♪)』のサービスリリース時からアートディレクターとして関わっていました。現時点では立場も変わったのですが、当時はイラストを監修する立場にいました。
 
古川氏(以下、古川):僕はイラスト制作の現場を指揮しています。さまざまな会社さんや人物とイラストを通してやり取りするので、恐らくもっとも「セーブポイント」を使用していると思います。「セーブポイント」の導入前からイラスト制作に関わっていたので、環境がいかに改善されたかを肌で感じています。

 

――:「セーブポイント」の導入前は、具体的にどのように運用されていたのですか?
 
古川:一言で言うと、行き当たりばったりでした(笑)。
 
 
田中:以前は弊社からストレージサービスにイラストをアップした日付と名称で管理していたんです。例えば4月1日と2日にアップしたものでは、中身や進展が違うものになっています。しかしだんだん件数が増えてくると、自分が探しているイラストがどこに入っているのか、分からなくなることもありました。最新のものをまとめておく工夫はしていたものの、「セーブポイント」だと、その一手間もなくなったのです。

 

――:人の手に頼る、アナログな方法だったのですね。
 
古川:ファイル名も統一されてなかったので、1枚のイラストを見つけるのも一苦労でした。さらに、仮に見つけても本当にそれが最新のイラストなのか、判断が難しい場合もありますからね。
 
田中:どのイラストに対してフィードバックしたかさえも、徐々にあやふやになってしまう状況でした。当時のデータに関しては、未だに見つけられないものもあるくらいです。
 
古川:データ管理が曖昧なせいで、同じイラストの修正を、別ラインで2回出してしまったこともあります。このようなミスもつきまとっていましたね。

 

――:そのようなミスを防ぐためにも、「セーブポイント」を導入することになったと。では、具体的にはどういった経緯で、「セーブポイント」を知ることになったのですか?
 
古川:昨年の夏頃、共に作品を開発しているパートナー企業さんが先に導入しておりまして、私たちも導入したほうがより円滑に作業できるだろうと考えたからです。実際に導入してみると、まずはその動作の軽さに驚きました。それまで利用していたストレージサービスはアップロード・ダウンロードにも時間がかかり、重いと感じる場面が多々ありました。それが「セーブポイント」だと、PSDなどの重いデータでもすぐにダウンロードできるんです。
 
田中:インターフェイスも分かりやすく、とても便利です。また、イラストカテゴリーごとに区別できるラベル機能は重宝しています。

 


――:では、効率化という意味でも以前と比べて改善されたのですね。
 
古川:ファイルと、それに対するコメント履歴がすべてリンクしているため、全体的にスムーズな作業が可能になりました。今までだと、特定の日付のファイルを見つけて、その日付のチャットを見て、ようやく把握できる状態でした。それが現在は、ひとつのスレッド内ですべて完結しているため、ひと目で分かります。そして何よりもミスがほとんどなくなりました。
 

――:お話を聞いていると、イラストデータのやり取りだけでなく、メッセージを残す機能も上手く活用しているみたいですね。
 

田中:ひとつのイラストに対する反応がすべてチェックできるので、たいへん助かっています。これまでのイラストを探して、次にメールの履歴を探して…という一連の流れから解放されただけでもまったく違いますし、ひとつの画面に集約されたことで安心感もあります。
 
古川:イラストチームでフィードバックを作り、進行管理の人に伝えるようお願いするという流れがありました。一度の連絡にも複数のスタッフが関わり、段階を踏まなければいけませんでした。「セーブポイント」の場合はイラストチームから直接伝えることができので、非常に速い印象です。
 


――:他には機能面で、便利だと感じるものはありましたか?
 
田中:PSDなどさまざまなデータを、すべてJPEGでダウンロードできる機能は頻繁に利用しています。というのも、イラストを印刷し、プロデューサーに確認を求める機会も多いので、1枚の容量は少ないほうが助かるからです。レイヤーが何枚も重なっているイラストだと、通常は重くて、なかなか作業が進みません。しかもどれが最新のものか分からない場合は、とりあえずすべて開いてみる必要性も出てきますし…。PSDをJPEGに変換する一手間がなくなったのは、かなり効率化に役立っています。
 
古川:やり方もとても簡単で、「セーブポイント」内に初めからJPEGのデータが存在しているイメージです。わざわざこちらから指示しなくても、「セーブポイント」側からPSDとJPEG、どちらでダウンロードするかを聞いてくれるのです。

 

――:イラストの見やすさという点ではいかがですか?
 
田中:プレビュー機能も備わっていて、サムネイルではなく原寸大のサイズですぐに確認できます。劣化なく細部まで見られるので、簡単なチェックだけならこれだけで済みます。なので、私がPSDのデータをダウンロードするのは、レイヤーの状態を確認するときくらいですね。
 

――:細部への修正指示もやりやすくなった印象ですか。
 
田中:やりやすいです。ひとつひとつは些細な違いでも、すべてが一瞬で終わるのは大きいです。

 

■イラストレーターとの連絡も「セーブポイント」内に集約


――:では、「セーブポイント」の利用方法についても教えてください。『ガールフレンド(♪)』では、具体的にどのような素材の作成に利用しているのですか?
 
古川:メインはカードイラストで、立ち絵やCDのジャケットも「セーブポイント」で管理しています。将来的には、例えばグッズ用のイラストなども管理できればと考えているのですが、現状はカードイラストだけで膨大な量になっているので、まずは使う場面を絞っているところです。ゲーム外の、違う領域のイラストまで管理するとなると、「セーブポイント」の使いやすさを自ら消してしまいますからね。

 
――:カードイラストに特化したツールとして利用していると。

古川:ゲームの第一印象となる部分ですし、決しておろそかにできないところですから。
 
 
――:外部の会社とのやり取りも盛んだと思いますが、会社間での連携という面ではいかがですか?
 
古川:さまざまな人とメールでやり取りする必要がありましが、一通りの連絡をすべて集約できるようになったため、利便性を感じます。また、メールだと一対一のやり取りになりがちだったものが、より多くの人に情報を伝えられるようになったのも嬉しいです。
 

――:逆に会社内でも、普段デザインに関わらないスタッフと「セーブポイント」を通じてやり取りする機会はありますか?
 
古川:新しいスタッフが入ってきたときには重宝しますね。それまで開発チームがどんな活動をしてきて、現在どんな状況にあるのかを説明するとき、「セーブポイント」の中を見てくれればすべて把握できるので。そのスタッフがどんな担当であれ、一度チェックしてもらうようにしています。
 

――:分かりました。では、今後の「セーブポイント」に期待していることはありますか?
 
古川:弊社の場合はゲームに実装するデータまで「セーブポイント」で管理するわけにはいかず、一度社内の共有サーバーにアップロードする必要があります。これ自体は仕方のないことですが、可能であれば、「セーブポイント」と社内サーバーが連携してアップロードできるようになると嬉しいですね。ツール内にリンクを設置してくれたりと、簡単に任意の場所へ移せるようにしてくれると、さらに運用が楽になると思います。
 
田中:あとはバックアップ機能もほしいです。また、ガントチャートをスプレッドシートと同期できれば、社内スタッフのスケジュールとチェックしながら指示できるのにと思うときもあります。

 

――:チーム内のスタッフからは、何か意見が出ているのでしょうか?
 
古川:よく耳にする意見では、スレッドをツリー状にして、視覚的に確認したいというものがあります。大量のデータが存在する分、以前のデータを掘り返す機会も増えてきます。掘り返す手段が増えれば、それだけ作業も楽になるかと。
 

田中:しかし、スタッフからの反響も概ね良いように感じます。「セーブポイント」導入前はイラストデータとメールでのやり取りが複雑に絡み合い、そこにハードルの高さを感じるスタッフもいました。

現在では説明しにくいことも、画像を添えて「ここをチェックして」と端的に伝えられるので、余裕も生まれたように感じます。また、イラストレーター個人が意見を伝えられるようになったのは、開発環境という点でも改善されていますね。

古川:確かに、自分が担当しているスレッドだけを見ればいいので、作業に集中しやすくなったのは感じます。メールだと、ひとまずすべてチェックしなければいけない手間が発生していましたから。


――:そのような要望を送ると、MUGENUPからはどのような反応が返ってきますか?
 
古川:アップデートも頻繁に行われますし、すぐに目に見える形で対応してくれている印象です。私たちが要望しなかった新機能も、いつの間にか追加されています。ある日突然、見たことのないボタンが追加されていて驚くこともります(笑)。追加されたボタンから新しい発見が生まれるケースもあるので、見つけたときにはとりあえず押してみて、一体どんな機能なのかを確認しています。
 

――:具体的に、最近アップデートされた機能で便利に感じるものはありましたか?
 
古川:最近だと、ひとつのスレッドにある複数枚の画像をまとめてダウンロードする機能は面白いと感じました。例えばラフイラストを3パターン描いてもらったとき、以前だと1枚ずつダウンロードする必要があったのです。それが現在では、すべてをまとめてダウンロードでき、手軽になっています。

 
田中:「セーブポイント」はイラストだけでなく、指示書などのテキストデータも保存できます。それもまとめて落とせるので便利ですね。イラストチームにはもちろん私たち以外にもスタッフはいて、誰かが新機能を発見すると、そのたびに盛り上がっています(笑)。

 

――:機能が頻繁に追加されると、人によってさまざまな使い方が生まれそうですね。
 

古川:以前から使っている私たちは、どうしても昔からある機能に頼りがちですが、新しいスタッフになると、やはり違った使い方をしているみたいです。新しい機能も積極的に利用している印象ですね。


――:細かいバグや不具合なども、定期的に直してもらっているのですか?
 
古川:私個人としては、バグや不具合などを見つけていないので、特に要望を送ることもありませんでした。しかしMUGENUPの担当者からも、「積極的に送ってほしい」と声をかけていただいています。
 


――:ちなみに、御社で「セーブポイント」を利用しているのは、現状『ガールフレンド(♪)』だけなのですか?
 
田中:そうですね。ただ、関連会社も含めて色々なチームが導入の検討をしているところです。弊社の中には、『ガールフレンド(♪)』以上に膨大なカードデータを作成しているチームも存在します。「セーブポイント」の力を活かせる作品もあるはずです。


――:なるほど。では最後に、「セーブポイント」を通してどのような開発環境を構築していきたいか、展望があればお願いします。
 
古川:理想を言えば、弊社のイラストレーター全員が外部メーカーに指示を出せるような環境にしたいです。「セーブポイント」のようなツールがなければ、一部分は見えても全体像を把握できません。しかし、幸いにも「セーブポイント」が存在し、1人のスタッフが全体の流れを追っていけるので、決して不可能ではないと感じています。
 
田中:『ガールフレンド(♪)』以外の開発チーム、そしてイラストレーター以外のスタッフにも広がれば、その分恩恵も増えると思います。プランナーなど別のポジションのスタッフが見るときは、結局共有フォルダに入れる必要がありますし、スケジュールも多くの人が見れる環境になければいけません。また、社内専用のwikiがありまして、それも「セーブポイント」内で管理できれば、利便性は高まると思います。
 
古川:スレッド上にwikiのリンクを貼れば、必要最低限の説明は済む、といった環境になったら嬉しいですね。

 

――:ありがとうございました。

 
(取材・文:ライター ユマ)


■関連サイト
 

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『ガールフレンド(♪)』
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株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
企業データを見る
株式会社MUGENUP
https://mugenup.com/

会社情報

会社名
株式会社MUGENUP
設立
2011年6月
代表者
代表取締役 伊藤 勝悟
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