京都に拓かれたライブ・エンタテイメント新時代。バイオヴォルテックス&Light Cycle Kyoto中山淳雄の「推しもオタクもグローバル」第128回
2016年VR元年以来、デジタルなVR空間で様々な表現が実現できるようになり、生成AIによってそれは間違いなく加速されることだろう。だが近年、それとはまったく別にリアル空間におけるライブ・エンタテイメントが活況を呈している。例えば京都ではチームラボのバイオヴォルテックス 京都であったり、MOMENT FACTORYと三井不動産によるLight Cycle Kyoto(LCK)であったりと、この数年で大規模施設が開かれている。これはなぜなのか?「体験すること」の価値、リアルな物質や現実的な人間同士のインタラクションによって得られる刺激が、デジタルでは代替できない価値とは何なのか。今回は「テレビの中に入ること」を夢見てきたVRワールド制作を専業にしているToshiakixさんがなぜLCKにハマり、この1年で100回近く通い続けることになったのか、その仔細についてインタビューを行い、「代替できない価値」について考えた。
■京都駅前のチームラボのイマーシブ施設
京都でにわかにライブエンタテイメントがホットスポットとなっている。きっかけは「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」だろう。2025年10月7日に京都市南区で京都駅八条口から徒歩7分の近接距離にできたモニュメントだ。延べ面積1万平方メートルには50以上の作品群が集まっており、「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」(2018~2022)、「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」(2018~)と日本各地で人気を博してきたチームラボ社にとっても、過去最大のスペース展示である。
チームラボといえば「チームラボプラネッツTOKYO DMM.com」ですでに確立した
ブランドをもち、この10年で最も勢いのあるライブエンタテイメント集団である。古くは2016年にお台場で開催された「DMM. プラネッツ Art by teamlab」から始まったが、この総工費45億円をたった2年で回収してしまうほどの成功をおさめる。そして2018年7月に開館した豊洲での1万平方メートルの同施設は、コロナ前までの2年間で180万人の集客を集める一大エンタメ施設となる。さらに驚くべきは、インバウンドブームでの日本渡航客を取り込み、2023年1~12月で単年度241万人来館の記録を打ち立てた。単一アーティストによる美術館としてはギネス記録となり、しかも「7割が外国人」という比率は正直、衝撃以外何物でもない。“過去最高レベルで外国人観光客が多い"という2024年の東京ディズニーランドでも17%(歴代ずっと1割以下)という状態だ。
2025年までの時点で豊洲は累計1000万人という金字塔を打ち立てる。その京都版としてさらに大きなサイズで展開されるバイオヴォルテックスはサイズも圧巻で、入場後の平均鑑賞時間は2~4時間、まるで迷路のように入り組んだ展示の数々はそのままテーマパークのようだ。



▲ライブ体験は全世界的な現象である。なんなら、日本のアニメ市場ですら、「アニメ関連ライブエンターテイメント」は2014年LCK
■MOMENT FACTORY×三井不動産の光と音の植物園イマーシブ施設LCK
もう一つ京都で注目すべきイマーシブ施設がある。LIGHT CYCLES KYOTO(ライトサイクル京都)で、京都府立植物園100周年イベントとして期間限定で始まり、2024年10~12月の3か月で8.5万人を動員した。年間来園者80~90万人という植物園人気もあるが、真っ暗闇のなかでガラス張りの温室で行われる展示のため時間は1800~2130に限られ、夏にいたっては1900~2130とかなり限られた展示時間だ。それでも植物園が昨年度比12万人で「30年ぶりに来園90万人突破」となった成果、はこのLCKなしには得られなかっただろう。


人気が高かったこともあり、2026年3月までの期間延長がなされ、現在も1年以上の展示が続いている。本イマーシブ施設を主導するのは三井不動産、もともとクリエイティブチームとしてのMOMENT FACTORYとの協業を模索し、2年かけて同社とのプロジェクトを複数模索してきた。
今回のLCKはテンポラリーで試験的に始めたものだが、2025年に年間を通しての事業へと発展させた。同社は京都府との提携を進めており、今回は立命館大学映像学部と推進しているアイデア・インキュベーションプロジェクトを取材した。中村彰憲教授が指導する「プロデュース実習」という講義の一環で、学生たち自身がこのプロジェクトのオーナーとなったならばどんなプロモーション施策を行い、どのようにマーケティングを行うかを分析・研究し、実際に発表の場には社員も同席の上でレビューがなされる。
2025年12月に昨年に続き第2回として行われたときには4つのチームが発表を行い、「DJ・フードトラックでリピート増員」「京都老舗のうちわ・ろうそくとのコラボ」「百人一首を使ったサイド・パフォーマンス」などのアイデアがだされ、実装するために必要な視点などがディスカッションされた。本プロジェクトは学生の育成機会になるのと同時に、企業にとっても映像学を学ぶ学生たちが若者の視点で動画制作しポストをしてもらうWinwinの関係になっており、こちらの公式TikTokで多くの視聴を集めているのは実は立命館の学生たちが作った動画である。
2025年は20本ほどの動画が投稿されており、「京都の涼しくてめ~っちゃ映える」といった動画のように、学生らしいユーザーに寄り添う身近さが引き込みの理由となっている。ほかにも京都産業大とのコラボなども含めて、地域を巻き込みながらイマーシブ施設を盛り上げるという意味では三井不動産側の大きなラーニングプロセスになっている、という点を担当者の佐藤拓真氏が語っていた。

▲立命館の学生たちによるアイデアプレゼンテーション

▲チケットサイトFeverでは「LCK」が他のイベントをおさえて、一番人気
■「光と音響の芸術」。80回通う仮想空間人からみた、LCKのすばらしさ
――:ものすごくLCKに通われている方、とお聞きしております。
VRワールド制作者のTosiakixと申します。これまで何度通ったかハッキリしませんが、頻繁にLCKへ通っています。2024年の秋からリピートして通っているんですが、現在は予約で2300円、当日券で平日2500円、土日2700円を支払っていました。通産30~40回くらい通ったところで「継続的に利用する来園者として、何か運用上の工夫や仕組みが考えられないでしょうか?」と直接、三井不動産さんにメールを入れました。そうしたら直接ご対応いただけて、特別に回数券という仕組みをつくっていただけました。その30枚回数券を現在は使い切っていまして、今は新たに10枚使ったところですね。
――:ではこの1年間の間に、80回くらいは来られているということですね・・・!?こんなに繰り返し来ている人っているんですかね?
遠方、特に外国の方も多いようですし、ほとんどの方は一回だけなんじゃないか、と思います。私の場合は近傍に住むフリーランスで時間が柔軟という事もありますが、あまりにLCKが衝撃的だったので、何度も繰り返し訪れるようになりました。時々友達を誘って、「布教」しています。
――:もともと夢中になりやすい気質とか?
いえ、自分も色々なものを見てますけど、ここまでハマるものはなかなかないです。
最初から最後まで30分でまわるときもあれば、1時間半かけてじっくりまわることもあります。ひとつひとつのエリアごとが個性的で楽しく、奥へと進入を促すような素敵な光景が前方に続いているので、どんどん進んでしまいます。それに、LCKのどのエリアの光景も、私の「制作の糧」になるなぁと思いながら見ています。私はVR空間のなかでワールドの制作をしているんですけど、自分が特に重視しているのは立体感、そして「光」なんです。空間の奥行きや距離感をみせたり、立体感を感じさせるには、光がすごく大事だと考えているんです。3D空間をVRで作ると、どうしてものっぺりして見えてしまうことが多いんです。HMDの解像度の限界もあるし、システムの処理負荷やコストの都合とかもある。現実ほど詳細な視覚情報を持たせられないので、のっぺりと“質感のない感じ"が現れちゃうんです。それを解決してくれる大きな助けが「光」だと思っていまして。

――:「果てしなきスカーレット」の荒涼とした大地のときにもそれは感じましたね。CGであまりにキレイにしすぎると、逆に奥行きが分からなくなりました。
難しいですよね。私が思う、奥行きや「光による立体感」って「光源」と「照らす対象」と「影がおちる対象」の3つの関係性で出来上がるんですが、人間は、どれか一つが欠けても直感で補完できるくらい、空間把握能力が敏感です。例えば光源の大きさ一つとっても感覚が大きく変わります。LCKのようにビーム的にみせる光源やちょうちんのようにぼんやり見せる光源もあります。その、空間そのものの見せ方が、LCKはあまりに上手いというか・・・感動しますね。言葉や意識で明確に捉えられていなくても、「光と影」が本能や無意識に直接語りかけてくる瞬間があると思うんです。
――:TosiakixさんはVRにいつごろからハマったんですか?
2018年のクリスマス直前に、VRChatにハマりました。2日間遊んだだけで「確信」して、すぐVR一式を買いました。もともと新しい物やゲーム好きというのはあったんですが、ネットの友人がVRをプレイしていたのを思い出し、VRChatにたどり着きました。最初に衝撃だったのは「空間のなかで自由に手指を動かしてペンを掴み、空中に絵や文字を立体的に描きはじめる」というところでした。テーブルに物が沢山並んでるところからシェイカーを「手で」持ちあげてブンブンまわして、ともだちに渡したりとか。でも自分だけデスクトップの操作で、マウスでそれをクリックしかできない事にヤキモキしたりして。「自分も手を動かして、この景色を両目で見てみたい・・・!」と思ってすぐにVR機器を購入したんです。
12月25日にはVIVE Proを手にしていました。当時で17万円、なかなかの買い物でしたが、自分は新しいものが好きで、結構そういうのは買ってしまうほうなんです。昔、「脳波でマウスポインターを動かせる」という機器を買ったことがあって、シリコンの輪っかを頭に巻き付けて「念じればマウスポインターが動きます」みたいな奴で。自分では一切動かせなくて、それは完全にミスした買い物でした笑。
――:すごい黎明期からVR原住民なんですね。以前取材したメタバース原住民の「バーチャル美少女ねむ」さんも2017年に入り、アバター活動は2018年1月の「コインチェック事件」インタビューからですよ。
我ながら思い切りというか、判断が早かったからですね。小さい頃、よく友達の家へ上がらせてもらってゲームをやってたときも「ブラウン管の中に入ること」は夢だったんです。なので、VR機器を買うことに迷いはなかったですね。VRChatを始めてからも衝撃的な体験があって、それはワールドとの関わり合いでした。VRChatを始めた初期の頃に、私をワールド制作者にしたきっかけの一つが「Star Wand」というワールドでした。
Star Wandは一見して、暗闇に杖が置かれているだけの場所なんですが、その杖を振り回すと周りの星々が、一緒になって動くというワールドです。プラネタリウムと違って、自分の操作に連動して激しく星が動き、天の川のように流れていく。そのときに感じたのは「自分はインタラクティブなものが好きなんだ」という事でした。
小さい頃に、テレビゲームに初めて触れた時以来の興奮を覚え、それでワールド制作者になろうと思ったんです。こんな体験を自分でも作りたい、と思うようになりました。
――:これが専業のお仕事なんですよね?
ワールド制作は2019年2月からなので、もう7年くらいVRワールドを作り続けています。最近は毎日PCに向かっていまして、12時間くらい作業を続ける日も珍しくありません。起きている時間はほとんどがVRワールドに入っているか作っているか、みたいな状態です。ClusterもResoniteもDOOR等にもちょっとは触れていましたが、私はやっぱりVRChatが一番慣れています。表現力も良いので、メインはこちらで活動しています。
学校では電気電子、無線工学の勉強をしていまして、最初の仕事も同じ系統でした。少し前に眼の病気にかかり、大好きなVRが出来なくなるかもしれないか、仕事を続けるかの悩みもありました。でもこの時に思い出した事が、私が学生の頃に親が「今、稼ぎを落とせないから」と病気の治療時期を遅らせ、仕事を無理に続けた結果、後々手遅れになったのを、近くで見ていたことでした。なので、私は「お金はまた稼げばいいけど、目の症状を手遅れにしたらVRができなくなるかもしれない。VRのために目を優先しよう」と思って、思い切って退職してVRワールド制作専業になりました。
VRChatの何が良かったかというと、自分は元々プログラミングができたわけでもないですし、何か美術的なスキルがあったわけでもないんです。VRChatは人をクリエイターにしてくれます。欲しい物がなければ自分で作る、が自然と身に付く環境だと思います。ネットで大半は調べられるし、助けてくれる仲間も大勢居ます。
――:VRって目に悪いって聞くんですけど、それは大丈夫なんでしょうか?
あ、それは逆の場合(ピント調節機能の一時的な改善等)もあります。平面のディスプレイと違い、脳が「遠くの景色を見ている」と錯覚することで、余計な目の緊張が解けるんだそうです。自分の場合は、ストレス等が原因だったので異なりますが。
――:しかし、そういうVRでモノを作る仕事ってもう成り立っているものなんですね、、、!?未来すぎます。
企業様、個人の方問わず、X等からお仕事をいただいたりしてます。中山さんの記事でもありますが、たしかにスタンミブーム のあとはこういうお仕事の依頼は増加傾向です
――:どうやってVRのなかでの建築やデザインを勉強しているんですか?
私は学校で学んだわけでも、研究者でもないです。音楽、本、ゲームを参考にしたり、XやPixivなどで「良い絵・写真」を観ることでも勉強しています。そうやって貯めた資料や「こういうものをつくりたい」という気持ちを、VRに吐き出して、とにかく実践してみたり。他の方が作っている作品を自分なりに分析して要素抽出、組み替え、再構成する、ということを繰り返しています。他にはギミック(プログラム)を見かけたら、こういうのにも応用できるかな?というパターンを5-6個案出ししてみたり。過去に見たアセットと組み合わせたり、みたいな思考が、ほとんど起きている間はずっと頭の中を支配してますね。
僕は保育園時代から作るのが好きだったんですよ。保育園の頃はレゴが特に好きで、小学生の頃も物作りが好きでした。例えばゲームでもRPGツクールとか、ゲーム感覚で世界を創れるものが好きでした。今はUnityを使っているんですが、PCやプログラミングが素人の自分でもとっつきやすく作れるんです。触っているだけで楽しいんです。制約があれば工夫したり迂回する、その悩むプロセス自体も楽しいです。
――:そんなインタラクティブを志向して仮想世界の住人になったTosiakixさんにとって、LCKは何が特別だったんでしょうか?
Xで情報が流れてきて、「まあ近所だし、一度は行ってみるか」ってなったんですよ。LCKは体験した瞬間から心が離れられなかったですね。
本当に衝撃ってのはああいうことだと思うんですが、もう最初の自動ドアが開いて光の筋が飛び出してきた瞬間に「あ、チケット代の元はとれた」と確信しました。

――:早すぎますね笑。他の施設とはなにが違ったんでしょうか?
光や霧がものすごく美しいと思いました。光も霧も触ることができるんですよ。手で光を遮ったり霧を切って歩いたり、自分なりのかたちにして遊ぶこともできる。そういうところがインタラクティブですし、この「光の筋の作り方」がLCKは特別に美しく、それは自分がワールドを作る時にも大変参考にしています。
日時や場所、他の来訪者の動きによってもその濃さが違いますし、光も霧も触ることもできる。とにかく空間を、それもとびきり美しく感じられる仕掛けに溢れているんです。
――:「空間を感じる」というのはどういうことなのでしょうか?
極端な話、仮想空間に3次元的な定規(空間を沢山の立方体で充填する等)があれば、距離感や空間のスケール感は簡単に感じられるようになると思います。ですが、それだと無骨すぎて景色に合わせづらいので、それぞれの空間の文脈に合ったもので代替します。その多くは光の筋であったり、蛍や埃、雨や雪、霧等がよく挙げられます。
さきほど、立体感は無意識や本能で理解する話をしました。空間演出を人の「無意識」へ、どうやってフィットさせるかというときに、私は光がとても良い役割をしてくれると思っているんです。立体感が出せるいい空間にするために「空間を盛り上げる」機能の多くを光が持っているんです。空間の立体性が把握し易いと良い景色に感じる、というのは経験則として知っていました。実は最近、「見るものへの、理解に対する脳のエネルギーコスパが良いほど、良い印象になりやすい」という可能性が示唆される論文を見つけていまして、それと同じものをLCKにも感じていました。私は植物、霧、光(と音楽や音響位置)などの関係性を、とても良い印象として感じています。

――:それでも何回もくる理由というのはどういうところにあるのでしょうか?
いつも新たな発見がありますし、毎日どころか、周回ごとでも景色が違います。それに「空間そのものの芸術性」は立体的なもので、スマホだけでは記録できない美しさがあります。両目で見ながら、その場を実際に歩かないと得られないものがあると思っています。記録だけではなく、心に刻み込みたいと思いながら、LCKへ通っています。
最初は光と霧に目を奪われていたのですが、途中から植物の美しさにも注目するようになりました。どこまで覗き込んでもエッジが見当たらない枝葉の曲線、VRChatでは見た事のない微細な凹凸や光沢、影。VRChatだと、木の葉はだいたい枝単位で纏められた平面です。現実世界のLCKでは葉っぱ1枚ずつへの映り込みすら異なります。仮にこれをUnityで再現する場合、葉っぱ1枚1枚にリアルタイムリフレクションプローブを割り当てる必要がありますが、処理が重くなるから非現実的です。
LCKの最後のエリアでは、光が激しく上下に動いたり、音楽にあわせて植物の輪郭を後ろから回り込むように見せています。ややななめうしろから葉を強調するように光がまわりこんで360度照らす一連の流れは、植物の複雑で微細な凹凸や輪郭をより強調しているように見えました。仮想空間では容易に再現できない、贅沢な「リアルの凄み」みたいなものを見せてもらっているように感じているんです。
――:何回も来ていて、飽きはこないのですか?
まったく飽きないですね。60~70回以上も来ていますけど、毎回来るたびに違うんですよ。
植物が成長してライトの邪魔をしはじめたり、逆に刈り込まれて全然違う形がみえることもあります。その度に新しい撮影アングルを見つけたりします。観客数の多い日には見える景色も違うし、霧の濃さは数秒で変化していきます。最初は光と音と霧にばかり注目していた自分も、植物の贅沢な造形にも注目し始めたり、月明かりが強い夜にはこんなふうに違って見えるんだとか、どんどん注目の幅が広がりました。最近はガラス張りの温室ドームやその空間全体も観るようになったりしています。昼間の植物園にも年パスで来るんですが、LCKの音と光がない静寂の空間だと、まるで温室が部屋着でリラックスしているようにも見えるというか。「賑やかな夜の植物園に見慣れていたから、昼間は却って、静寂という演出があるように見える」と思えるほどでした。昼夜での違いも面白いです。
それぞれの「ワールド」に引力があるんです。私はその引力に引き寄せられているだけ。LCKにはそれだけの引力があり、たた私はそれに従わざるをえないんです
――:ワールドの引力、というのが凄い言葉ですね。VR空間から現実をみているTosiakixさんならではの見方です。
私の場合は、結局そのワールドを通して「人を見る」ということをやっていて、それに引き寄せられている気がするんです。「この人は、こういう背景、想い、思想、制作手法がある人なんだ」と推察したり直接聞かせてもらうのが好きです。表面的な技術や配置手法、一般的なデザイン技術等ももちろん興味はあるんですけど、なぜその考え方をもってこのワールドを作ったのかという「芯の部分」を追求したいんです。だから「このワールドをどうやって(どうして、どういう想いで)作ったんですか?」というのをVR内では色々な方に訊いています。
あるフレンドさんの制作手法なのですが、私は勝手に“シルバニアファミリー"と呼んでいる手法があります。「そこに住む人の生活や気持ちをシミュレートして作る」という人形遊びのようなものでした。ある時、ワールドをつくるコンペティションが開催された時、そのコンペテーマとフレンドさんの制作手法がピッタリなので応募してみませんか?と誘ったら、その人が見事に優勝したということがありました。そのフレンドさんのデザインセンス、製作能力が特別に強かったのもありますが、製作の「芯」が合致していた事が一番の理由だと思っています。
――:LCKを作っているのはMOMENT FACTORYというカナダのデジタルクリエイティブチームです。この会社のことはご存じでしたか?
いえ、初めの頃は知らなかったです。LCKにハマってから調べたら、世界トップアーティストのライブ映像なども手掛けていて、すごいクリエイティブ集団なんだと知りました。
今だから言えるんですが、最初の頃は霧が濃いほうが好みだったんです。植物園のガラス窓から「外」の存在を感じてしまうと没入感がそがれる、と感じていました。
でも、それは自分が仮想現実を前提に、それに近いものとしてLCKをとらえていたからだと思います。でもLCKは逆で、リアルの制約のなかで、いかに拡張現実的ともいえる空間や表現を追求されています。
そういう一流のチームが何を考えているかという事を「芯」から知りたいです。私の場合、いま生きている中心軸が仮想空間なので、学習や観察の過程で、却って現実空間の凄さ、素晴らしさに気付かされることがあります。

――:確かにMOMENT社はデジタルのみのクリエイティブは作らないんです。絶対にリアルな空間で色々な制約があるのに、そこにいかにインタラクティブ性・仮想空間みを出すかということを追求しているように感じます。
そうですね。LCKのライトアップは、植物や空間が動いているように見せたり、何かの気配を演出したり、サボテンの1本ずつに光を当てて、生き生きと見せる点が拡張現実的だと思いました。夜の温室内に夜を再定義する点も面白いです。
現実世界の制作に制約や指定があるのは、どれだけ大変な事か私には想像しきれませんが、仮想現実特有の都合と比較して見れば、何となく想像できる気がします。
例えば仮想現実は、足場に隙間が空いて見えていても「当たり判定」として床が続いていれば、足が落ちることはない。支柱が極端に細くても、床が宙に浮いていても問題ありません。仮想世界は自由ですが、そこだけにいると空間以外の感覚もマヒしたりします。身体性の面で言えば、「自分」というアバターでピースサインをしようとしたときに、現実の世界でもコントローラーを操作する動きをしちゃうようになったり。

――:京都はいまイマーシブ施設ブームですよね。僕も先日「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」にいってきました。
バイオヴォルテックス京都も、インタラクティブな性質をとても大事にされていました。面白いと思ったのは、来訪者の衣服が汚れたり、展示物に衝突することを恐れないラフな展示で、LCKより体を動かすこと、「体験すること」の生々しさがあると感じました。植物園のように素材の制約が無い分、展示の形態は非常に自由だと感じました。油や水の上を歩いたり、レインコートを着て泡に塗れたり、雨が降ったり、銀色のボールが頭にドカドカぶつかってきたり。やりたい放題といった印象が、楽しかったです。仮想現実と比較すると、フィードバックが非常に豊かでとても羨ましいです。
バイオヴォルテックス京都では「相互作用による体験」を作るための、高度なデジタル技術が目を引きましたが、アナログがメインの展示も多くありました。自身も稚拙ながら3DCGをやっている身として、非常に高度なCG技術と手間暇が注ぎ込まれている事は理解できました。LCK同様、私にとっての新しい表現方法のヒントが多く得られました。
他にも興味深いことに、展示の一部では香りが撒かれているようでした。植物園のような環境そのもの(新鮮な草花や土)の香りではないですが、展示の雰囲気に合わせて選ばれているように思いました。
最も気に入ったのは、1階の最初のエリアです。「花と人、コントロールできないけれども共に生きる」は、どこか常世ではない神秘的な雰囲気で、特にお気に入りです。これをVRで見たい!という気持ちになりました。このエリアだけで1時間半も楽しんでいました。
――:Tosiakixさんの理想として、世界がもっとこうなったら、というのはありますか?
もっと気軽に、思い通りにすぐ作れる世界になってほしいですね。それこそ「想像した瞬間にできあがっている」みたいな。脳に電極がついていればいいな、と本気で思います。
とにかくLCKは僕に自信を与えてくれました。仮想空間の中で光を大切に扱ってきたので、現実でそれを実現しているところを「魅せられ」て「自分の方向性は間違っていなかった」と感じたんです。現実で一流の植物園に、一流のクリエイティブチームが加わったらこうなるのか、と実感しました。これを学んだら間違いない、というものを鑑賞させてもらっている気持ちです。だから自分の時間があけられる間は100回と言わず、これからもずっと通わせていただきたいと思ってます。
――:Toshiakixさんの「見方」が非常に勉強になりますし、なにより「好きになる力」が凄いなと純粋に思います。

会社情報
- 会社名
- Re entertainment
- 設立
- 2021年7月
- 代表者
- 中山淳雄
- 直近業績
- エンタメ社会学者の中山淳雄氏が海外&事業家&研究者として追求してきた経験をもとに“エンターテイメントの再現性追求”を支援するコンサルティング事業を展開している。
- 上場区分
- 未上場