世界エンタメ特集「ラスベガス2025」#2 進撃のラウンドワン:なぜ日本のボウリング場が米国で「ファミリーが安全に遊べる場所」になったのか

中山淳雄 エンタメ社会学者&Re entertainment社長
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米国でラウンドワンが急成長している。背景にあったのは「日本型アミューズメント施設がもつ、コミュニティ価値」である。ちょうど1年前、こんなポストがバズを呼んだ。「ラウンドワンがアメリカ進出したら大成功して、その地域の若者のクスリやら非行やらが減ったってことはもっと有名になっていい話」  。娯楽が少ないアメリカは“若者のたまり場"が荒廃しているという事件が2020年代のコロナ期に社会問題化しており、そうした中で同時期に店舗数を伸ばしたラウンドワンは「クスリや非行を減らした」という噂がたつ。それほどに明るく照明にかこまれた店舗やファミリーフレンドリーな“ラウンドワン的な店舗"が米国においては異質だったし、異なる文化を持ち込んだものでもある。今回、その実態について米国展開を推進した井手氏にインタビューを行った。

 

■創業者の一言で展開された2010年ロサンゼルスの海外第一店舗目、仕組み化完成までの5年間

――:自己紹介からお願いします。

米国Round One EntertainmentのEVP&CSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)の井手彰です。

――:ラウンドワンは1980年に杉野公彦さんが大学在学中に父親からローラースケート場を引き継いだところからスタート(会社としては1993年から)。30年かけて国内で1000億円近いアミューズメント総合施設になります。それがなぜ米国に展開されたのでしょう?

日本国内で出店拡大をしていく一方で、将来的な日本の人口ピラミッドの予測などあらゆる面で日本がシュリンクしていく可能性があることへの対策は常に杉野の頭にあって、国外への進出も含めて更なる成長曲線を描くストーリーをずっと考えていた中でその可能性が限りなく高くある場所として「米国」があったということです。

――:最初はどのように展開されたのですか?

2010年にロサンゼルスに1号店を展開。当初は杉野自らが詳細な米国でのモデル設計を立てながら、その実行部隊として現地採用メンバーを中心に組織が構成されました。それを中心にラウンドワンの基本的なノウハウを日本から出張ベースで数名がサポートしていくとういう形で店舗創りが行われました。1店舗目をオープンしてから2年間は年に1店舗ずつテスト的な意味も含めて作っていくベースで出店する、、、みたいな形で進められていきました。

3店舗の結果としてはざっくり「2勝1敗」みたいな状態だったのですが、何よりもその中身として「ラウンドワンの提供するサービスが北米においてもお客様に受け入れてもらえるし、ビジネスモデルとしても十分に通用する」ということの確信が得れたので、それを機に本格的な米国出店という成長ストーリーに一気に舵がきられました。

――:井手さんも最初の3年くらいは出張ベースでその後に完全に米国に赴任されたんですよね?

はい。私自身は2014年に4店舗目がちょうどできる数か月前くらいに出向・赴任して、その後は米国に張り付き状態で北米における店舗運営のあり方などを身を持って学んでいきました。それこそ私の管轄だったアミューズメント(ゲームコーナー)における店舗設計、機器やCraneなどで使用する商品やありとあらゆるモノの購買、機器の設置レイアウト作成といったことから、現場での機器の搬入や設置、オペレーションマニュアルの作成などといったことまで全部やりましたね。

「掴めてきた」と感じたのは7、8号店を作ってからですかね…。それまでは本当に日本では想像も出来ない事態が日常的に発生したり、数多くの失敗もあってその度に目の前の対応にとんでもないぐらいの時間とエネルギーを費やすといった遠回りもしてきたんですが、「これがアメリカでの商慣習なんだ、これがこっち基準なんだ」という“生の現場"を経験していきながらも、「ラウンドワンとして妥協できない部分」を融合させていく対応を試行錯誤していくことでこの国でのやり方というものを掴んでいった感じです。そうしてある程度の「ラウンドワンイズムの米国版モデル」が構築されていった段階から更なる勢いで店舗数を増やしていくという形になっていきましたね。。もちろん、今でも日々様々な問題や課題が発生し続けてはいますが、当時から積み上げられてきたノウハウが活かされていることで以前とは比較にならないぐらい安定してきたかなとは思います

――:もともとラウンドワンに海外強い方がいたりとか、提携先がアメリカにいた、というわけではないのですね?

はい。もちろん、1号店を作る際には、元々海外での実務経験のあるメンバーを採用し、構成されました。ただ、4号店以降に米国出店をさらに加速させる為に出向したメンバーの全員がほぼ英語をしゃべれませんでしたからね笑。でも当時日本で経営者としてもズバ抜けた能力を持っていた坂本(当時、常務取締役)を中心に、新店オープン・運営・企画・管理・技術などのそれぞれの分野で実績をあげていたエース級を送って、各人が米国での言葉の壁を解消すべく英語と日本語が話せるスタッフを脇において、各持ち場でのノウハウ・仕組みの構築と現地従業員の指導をしてきましたね。

中山さんにお会いしたのもこの時期ですよね。出向制度すらまともになくて、それもその都度作っていた状態でしたから、そうしたバックヤード業務も含めてほぼ全てをゼロイチで作っていきましたね笑。

 

 

――:それは本当に大変な苦労がありましたね。

今となってはその1つ1つが財産になってます笑。でも何だかんだで一番きつかったのはリクルーティング=人の採用と確保でしたね。お店をどんどん出店していくにも店舗運営には一定人数のスタッフが必要ですし、本社は本社で出店の準備と同時にそれら既存店へのバックアップをし続けていくのにこれまた一定数のスタッフが必要なのに、、、本当に知名度がなかったので。しかもPL厳格化しているから人件費もそんなにかけられない。ないないづくしのなかで本当に限られた人数の中で踏ん張ってきました。当時のメンバーにも本当に大変な想いをさせたと思いますし、協力してくれた。感謝してもしきれないです。

――:逆に言うと、そこまでゼロベースで作りながら、なぜうまくいったのでしょうか?

当時送られた人間のなかに誰一人として“臭いものに蓋をする"みたいなタイプがいなかったことですかね。1個1個の問題が起こるたびに、その場ですべてシューティングする。中途半端にバンドエイド的な施策だと意味がないんですよね。その瞬間にオペレーションを創る・ルールを創る・仕組みを創る、、、といった決断をする。その積み重ねとしてラウンドワン米国のオペレーションが鍛えられていきました。

また、購買から企画まで本社機能は完全に仕組み化に特化しており、極論どんなスタッフでも一定品質を保証できる店舗・組織づくりを目指してきました。とりわけ転職率が非常に高いアメリカではより一層「まずは仕組みが大事だ」というのが最大ミッションでした。まぁこれは「ラウンドワン」の得意技でもあるんですよね。そしてそれと同時に厳密にPLコントロールしていくことも徹底しました。

それらの蓄積の中である程度の本質部分に関しては本社の集中一元管理をしつつ、1店舗1店舗にしっかり向き合いながらオープンさせていったのが良かったんだと思います。今は幹部メンバーもどんどん増えており、その各部署責任者が中心になって、今までのやり方をさらにブラッシュアップしていきながら米国での更なる進化をし続けていかないといけないと思っています。

 

 

■とまらなかった出店数、コロナ中に「進撃期」となって拡大加速したラウンドワン

――:2017年から米国売上がIRでも記載され、みるみると大きくなりました。9店舗(2016)→32店舗(2019)→46店舗(2022)ときて、直近は60店舗近く。もはや日本では減少傾向にある100店舗に近づいています。

米国で最低でも100、200店舗をつくって日本を超える売上を作る、というのはもう最初からグループ全体で共有され、合意していた目標です。2020年だけちょっと停滞期はありましたが、あくまで想定路線のままに拡大していきました。

――:でも目標に対して現場ではいろんな混乱あるじゃないですか。現場みていない本社トップがどこまでそれを信用して、目標進行を守る状態がつくれるんですか?市場が悪いのか、派遣者が悪いのか、現場が悪いのか、とか「ビジョン通りにいかないこと」のほうがよっぽど多いですよ。

ここはやっぱり杉野が最大の理解者でもあり、米国メンバーに一定の信頼を置いてくれていたことが大きいと思います。もちろん、それまでの一定期間は杉野自身が米国に何度も来ては、常に「米国の実態」を自ら感じ続けてくれてましたし、その中でのマネージメントの指導もしてくれていましたしね。またコロナが始まる直前には米国チームにCFOとして入社してくれた笹山の存在も特に大きかったですね。彼はシンガポールなど東南アジアを中心に海外のスタートアップをたたき上げでやってきた実績もあって。

経営のインフラ整備や数値管理は当然のように最大の要であるわけですが、その部分を彼が確実に遂行しながら仕組みも構築し続けてくれた。そうしてその正確な情報や数値を元にして問題点や課題をあぶり出しながら我々米国メンバーでしっかり「策定・実行」していくことを、現在米国の代表を務める高橋を中心に日本側とも共有しながら1つ1つ進行できたこと。本当に至極当然のことではあるのですが、こういうことをしっかりと行いつつ「ラウンドワン米国」が現地の環境にも何とかフィットしながらも進めべき目標に対して進行してこれた要因だとは思います。

――:他社で何かをベンチマークしていた企業はあるんでしょうか?

北米で最大の店舗数・売上を出すNO1企業としてDave and Bustersさんがおられます。彼らのやり方・実績、あらゆることを見させてもらいながら、素晴らしいものは取り入れさせてもらいつつ、一方で彼らとの差別化ができることは何かを常に考えるということはもちろんやってます。他にも素晴らしい企業・ロケは北米にはいくつもあるので、そういったところも常に視野に入れています。

――:2020年2月にCOVID-19で事業としてはどんな判断をされたのでしょうか?

米国では3月中下旬ごろからロックダウンを行う州が出始めて、危機的な状況ではありました。でも3つ、このタイミングでやったことがあります。当時親会社としての即時決断として1つめは「新規出店のすべて一旦ストップ」です。契約上の問題やすでに着工していてコスト面等でも進めざる得ない2-3店舗の工事は進めながらそれ以外の案件は全部白紙に。2つ目に「資金確保」。この状況が1年続くのかどのくらいの期間になるかわからないなかで、当面の運転資金を融資などを使いながらしっかり確保してもらえました。そしてその上で米国を任せられている我々ができることとして3つ目に「運営やノウハウの再構築」です。それまで少人数だけでギリギリのレベルで仕組みやノウハウ構築をしてきたことをあらためてブラッシュアップする期間にあてました。今まで作ってきた運営マニュアルや仕組みが少し不十分だったものを片っ端から再度見直しながら作り直していったり、再開後のさらなる成長の為の自社の戦略を見直した上で各店舗のレイアウトの修正の実施などです。もちろん店舗営業ができない=インカムがない中で億単位の支出だけが続く状況には相当なストレスもありましたが、この時のブラッシュアップ期間が自分たちの課題や強みを見直す機会にもなり、これが後々に大きな成長材料になったと思います。

「既存の店舗を閉める」という判断は一切なかったです。成長領域であることは確かだったので。

――:なんか、本当に動き方に無駄がないですよね。井手さんのもともともっている気質なんでしょうか。

いえいえ、私自身は無駄だらけです笑。とは言え…「決めたら迷いがないこと」がラウンドワングループの最大の強みかもしれません。私自身も学生時代から自分で全部決めてゼロイチをするようなタイプだったので、それがこの会社とも相性が良かったんでしょうね。最後はすべて最前線にいる自分がどう判断するかです。もちろん、迷いなく実行したことよりもさらに良いものがあれば、それはそれでまたしっかりシミュレーションをした上で、「迷いなく」変化していくということも含めてだと思います。

――:アメリカの回復は早かったんでしたっけ?当時はどんな状況だったのですか?

実際には3月末には全ての州にてロックダウンがありましたが、夏前には一部の州では解除され始めてました。日本より圧倒的に早かったです。米国全土のなかではカリフォルニア州が一番遅かったくらいですが、2021年の5月にはほぼ縛りも一切なく通常営業をしており、正直その年は売上2倍!といったレベルでどこもかもが絶好調になりました。

今まで規制されていたところが一気に解除となると、飲食店や遊び場などが全部一気に盛り上がりましたね。2021年になると仮想通貨とか株高とかいろいろなものが上がっていきましたよね。なんかまわりの普通の生活をしていた人々の間でも突然仮想通貨で百万ドル(1.5億円)儲かった!みたいなバブルな話もでてきたころで。弊社も2019年比でもすでに1.5~2倍の状態が続き、すべてが追い風。2021~23年あたりは一気に「攻め」に転じた時期です。

――:ではラウンドワンのコロナ期の勝因というのは、まとめるとどういうところにあるのでしょうか?

1つ目はその状況下において「すぐに最善のアクションができた」こと。2つ目はもともともっていた「競争優位性」、そこにコロナ後に「消費回復」という追い風が吹きました。さらにはNetflixなどの動画配信ブームにのって「日本アニメIPの伸長」がさらなる追い風となって、2020年代の“進撃期"を演出していけたのだと思います。

 

▲Round One South Premium Outlets店、ゲームのみの専門店スタイル

 

▲ずらりと並んだクレーン機のボリュームは他のアーケードセンターにはない壮観さ

 

▲日本のゲーム機も一定割合あって「日本のゲームセンター」感も出ている

 

  

■日本IP輸出の旗艦店、米国現地のコミュニティ機能を担った背景

――:ラウンドワンのクレーンは日本キャラクターのぬいぐるみであふれています。「ゴジラ」「初音ミク」「呪術廻戦」「SPY×FAMILY」「進撃の巨人」などなど。

日本IPでの差別化というのは意図的にやってますね。クレーン(UFOキャッチャー)の割合はそれまで売上の3割程度で、一番大きかったのがリデンプションの4-5割だったんです。それが日本アニメIPの爆発的ブームもあって、最近だと全体売上の6割がクレーンというところまで増えてきてます。この売上の半分が日本IPのMDなんです。それをOEMで作ってもらってますが、まだまだこの比率あげたいくらいです。

――:ではラウンドワン米国の売上の1/3が日本IPグッズということになりますね。これは凄い事ですね。他社のゲームセンターではやらないのでしょうか?

Dave and BustersやVelocityとか他社は原価が高いものを嫌うので、そうした日本IPをわざわざ版権料はらって展開する、というのはやらないですね。人を配置して接客したり、Craneマシンの景品入替やセットアップを毎回商品が変わる度にしたりとかの営業コストも含めて、「ゲーム機を買って置いておけば、自動的に課金する」みたいな装置産業的な感覚が強い業界なんですよね。

でも弊社は違います。我々は米国60店舗にもなってきたことで、ようやく弊社向けの限定の景品を作っていただいてもメーカー様もビジネスとして成立する規模になってきています。これからがスタートラインだと思っていますのでまだまだこれら日本IPグッズの展開は拡大させていくつもりです。

――:中国・インドなどでは日本IPを使ったクレーン機がブームになってました。アジア系のゲームセンターが米国市場に展開する動きはあるんですか?

さすがに中華系、韓国系はクレーン系ビジネスのノウハウもありますし、パラパラと米国進出してくる傾向はありますよね。ただ、彼らは彼らのやり方でチャレンジされているかと思うのですが、我々は我々の強みとして圧倒的な日本IPのラインナップ数、商品のクオリティの高さ、そして当然ではありますが「本物という信頼」といったところで徹底的に差別化をしていくだけです。

――:今年3月に現代ビジネスで「いまアメリカで「ラウンドワン」人気が止まらない…その理由が日本人には思いもよらなかった」という記事を書かせてもらいました。教会・公民館などコミュニティが失われた米国でラウンドワンがコミュニティ機能をはたして、現地の若者の薬物使用や非行を減らしている、と。だいぶ反響がありました。

ファミリーフレンドリーであることは、だいぶ意識してきました。アメリカのゲームセンターってとにかく「ダークでかっこいい」って思っている節があったんですよ。アメリカ人って目が強くないから照明はとにかく暗めで、というのが不文律でしたしね。最初はそういったものを鵜呑みにしてやっていた。

でもある時、日本のように明るくした方がやっぱりファミリーにはいいんじゃないか?って議論が出て、それで照明をガンガンにして、「とにかく明るくて安全安心さを見せられるところ」という形にしました。そうしたら、もっとファミリーの方々が来てくれるようになったんです笑。目が弱いから暗くないとダメ、、、って思い込みだったんです。暗~いところでゲーム機がピカピカ光ってたほうがカッコいいじゃんというのもまた「思い込み」だったんじゃないかと。実際に弊社の影響なのかわかりませんが、周辺のアミューズメント施設も暗いものから徐々に“明るい店"がパラパラできてきています。

――:もはや米国はアーケードゲームセンターが“衰退産業"になってしまっていました。2000年代ごろまではバンダイナムコもセガも、ロケーションの海外展開でチャレンジしてきたんですが、なぜそちらは失敗し、ラウンドワンは成功したのでしょうか?

私は他社様の当時の状況は一切何も知らないので何か言える立場ではないですが、1つだけ言えるとすれば、、、当時それに関わった方々は本当に毎日大変な想いはされただろうなということだけは安易に想像できます。。。

我々も本当に現場ではたくさんのトラブルや衝突みたいなものもありましたよ。でも本社一元管理だったり、ビジネスモデルの根幹部分に関してはある意味トップダウンでやって譲らないところは譲らなかった。PL管理・コントロールも徹底的にやった。でも同時に、日本にはない仕組みやサービスもバランスよく取り入れていきました。フードビジネスや誕生日パーティのスペースなどこっちでスタンダードといえる部分も積極的に取り入れていきました。もちろん、最大の成功の要因は「我々のビジネスモデルが米国にフィットしたこと」だと思います。

――:なるほど。ラウンドワンの本当の強みというのは「現場主義」で米国最前線にいるメンバーが日本の強みも知りながら、その柔軟性をもって日々ジャッジを変えてきたところにあるのでしょうね。

1店舗1店舗の展開手法で成功、失敗を繰り返しながら、時には本当に吐くような苦しい局面も経験してきました。そういうなかでも「次に絶対生かすぞ、そうじゃないと何の意味もない」というのをモットーに日々変化をしてきましたね。米国展開をフェーズごとに分けるなら最初のコツをつかむまでの7~8店舗目までが第1フェーズ、型が決まって約30店舗まで広げていった2019年までが第2フェーズ、そして2020年から始まったコロナ期の第3フェーズの中でも成長を加速することができました。今は第4フェーズに入ってきていて、ここからはまた違うフェーズになっていくわけで、今のフェーズに合った判断の中で更なる変化と進化をしていく段階になっていると思っています。

 

▲ラスベガスの競合店舗“Velocity Esports"、典型的な米国のボウリング&ゲームセンター

 

▲【撮影】Velecity:展示されているゲーム機、クレーン機は日本にはないものが多い

 

▲【撮影】Velecity:ソニックなど一部はあるが、日本IPの割合は1割にも満たない

  

■止まらぬラウンドワンの海外展開、米国から中国へと一気呵成に進む

――:ライブエンターテイメント産業が再活性期に入っています。ゲームセンターにせよボウリングにせよ、イマーシブ施設にせよ、こうした「リアル産業」というのはなぜ今こんなに熱いのでしょうか?

「旧時代のリアル」と「新時代リアル」で変わりましたよね。2020年代以降って、リアルの価値が再認識されて、2019年までも成長期ではあったんですが、それとはまったく別の種類の新時代のリアル体験産業として成長してきている認識です。

――:他社のようにフランチャイズで拡大スピードを上げていく、というのはやらないのでしょうか?ラウンドワンはすべて自社展開ですよね?

フランチャイズをやるかどうかは今はおそらくないかと思いますが、この先どうするかはまだわかりません。ただ今はっきり言えることは、自社だけでまずは100、200店舗まで作れるなというのは確信もって進めています。とはいえ、企業として当然NO1を目指したいですし、劇的な成長を続けていきたいと思いますよね。日本のやり方はスタンダードになりにくいのですが、アメリカのやり方は世界のスタンダードになりえるんですよね。だからラウンドワン米国で出来上がったこの「型」を、しっかり他の市場に輸出できるようにもしていきたいですし、そういう意味でも様々な可能性があって、ワクワクしかないですよね。

――:米国現地の競合はどういったところがあるのでしょうか?

さきほども少し触れましたが、米国のオペレーターで売上ではNo1の会社があって、Dave&Busters(1982年設立、「食べる、飲む、遊ぶ、観る」体験をワンストップで提供)が240店舗程度を展開しています。彼らは数年前(2022年)に40~50店舗を持っていたMain Eventを買収して拡大しています。他にも主にファミリー層をメインターゲットにした老舗のChuck E. Cheeseといった約4、500店舗を展開している会社もあります。他にもボウリングの文脈だとAMF Bowlingをもって“Lucky Strike"にリブランディングしたBowlero社(2013年設立、327ヵ所、売上10億ドル規模)も巨大です。IPO後にこちらのアーケードゲーム業態にも手を伸ばしてきていますね。

――:こうした競合のなかで、ラウンドワンはどういう位置づけになるのでしょうか。

北米における店舗数や売上ではまだまだ彼らに及んでいないのが実態です。ただ、彼らに少しでも近づき、追い越し、そして北米の誰もが「遊び場=ラウンドワン」を思い浮かべる状態にしたいと本気で思っています。ラウンドワンの強みというのはいくつかあるのですが、特に1つ目は「圧倒的なゲームコーナーの規模と競合他社には真似できないレベルの機器や商品のラインナップ・クオリティー」です。そして2つ目は何よりも「複合施設である」という点なんですよ。アミューズメント機器のみならず、ボウリング、ビリヤード、卓球、飲食、(店舗によっては)日本でも展開している遊び放題の施設=スポッチャなど全部が店舗内でそろっている業態というのは他にはなかなかないんです。

こういう「最大公約数をとっていく」というやり方はまさに日本で創業者の杉野が開発してきたラウンドワンのDNAでもありますし、それを米国市場で若干の型を変えながらも、本質はとらえて続けていきます。さらにこれからは10数店舗の飲食店を揃えたフードコートそのものをラウンドワンの店舗内で展開したり、その他の新たな業態でお客様のニーズがあるものを積極的に取り込んだ「複合施設」としての進化もし続けていく予定です。

 

▲Round1 Meadows Mallで最新のラウンドワン設計スタイルになっている。

 

▲フロアーの半分以上はゲームコーナー。ところ狭しとゲーム機が設置されている。

 

▲ボウリング、ビリヤード場も併設

 

▲お酒も頼めるバー施設もある

 

▲Redemption機器の交換グッズにはたくさんの日本IPなどが並ぶ

 

▲こどもへの日本IP浸透にはまさにこうしたクレーン機の接点から始まる

 

――:ラウンドワンが入るとモールが盛り上がる、と言われる時代ですよね。

本当にそれは非常に有難いお言葉です。とはいえ、現状はまだ集客はモールに依存しています。ただ今までは門前払いだったような集客力の高いモールにも呼ばれるようにはなってきましたし、家賃の高いところに出店できるだけ体力も出来てきました。もっともっと実力をつけて「ラウンドワン」という名前だけでお客様を呼び込む知名度をだしていきたいですね!

――:最後にこれを読んでいる日本のIP系企業さんたちに期待すること、ラウンドワン米国としてメッセージすることがあれば、お願いします。

ラウンドワンにとって、200店舗そしてそれ以上の展開を目指すためにも日本IPとの連携は欠かせません。北米でのコラボも積極的にやっていて、各ライセンサーさんとはもちろん、北米でのラインセンス管理をされているVizmedia(小学館・集英社・小学館集英社プロダクションによる米国子会社)さん、Crunchrollさん、Aniplexさんなどや、それらのIPを「素晴らしい商品」として形にしてくれる各社メーカーさんのご協力を頂きながら、北米ローカルの皆様により多く認知・ご提供できるような取り組みをさせてもらっています。でもまだまだこんなもんじゃないと思っています。素晴らしい日本IPは北米の方々にもっともっと認知されるべきですし、愛されているいくべきものだと思っています。弊社としてもまだまだ微力ではありますが、一緒にそういった訴求も含めて実施していきたいと思ってますし、もっともっともっともっと多くの日本IP関連の商品が必要だと思っています。今後もさらに。世界へ誇るべきIP、強力なプラットフォームをもつ会社さんとはぜひご一緒していきたいです。

 

 

会社情報

会社名
Re entertainment
設立
2021年7月
代表者
中山淳雄
直近業績
エンタメ社会学者の中山淳雄氏が海外&事業家&研究者として追求してきた経験をもとに“エンターテイメントの再現性追求”を支援するコンサルティング事業を展開している。
上場区分
未上場
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