【モバイルファクトリー決算説明会】四半期ベースでの最高益更新 QonQ減収はスマートノベルの縮小が主な要因 複数人で楽しめるリアルイベントに注力
モバイルファクトリー <3912> は、4月22日、東京都内で決算説明会を開催した。同日発表した2016年12月期の第1四半期の連結決算は、売上高4億8200万円(前年同期比23.1%増)、営業利益1億5100万円(同2.1倍)、経常利益1億5100万円(同2.4倍)、四半期純利益9600万円(同2.8倍)と増収増益での着地となった。『ステーションメモリーズ!』(『駅メモ!』)が引き続き業績のけん引役となっており、営業利益は四半期ベースでの最高益を更新した。
決算説明会では、同社の宮嶌裕二代表取締役CEOが、今回発表された2016年12月期第1四半期決算のハイライトを説明した後、質疑応答が行われた。その質疑応答の内容なども踏まえつつ、会見の様子をまとめてみた。
■QonQでは5%減収ながら85%の営業増益に
まずは第1四半期決算の状況を四半期推移(QonQ)で見てみると、売上高は前四半期比5.2%減と減収、営業利益は同85.2%増、経常利益は同85.8%増、四半期純利益は同98.5%増と減収ながら大幅増益を達成した。
売上高が減収となったのは、新規のイベント配信を停止するなど、戦略的にスマートノベルの事業規模を縮小させていることが主な要因だ。これは位置情報連動型ゲームに経営資源を集中するという方針の下に進められていることで、スマートノベルの売上減少自体は特に懸念すべきポイントはないだろう。
一方、注力分野で位置情報連動型ゲームについては「位置ゲームはこの四半期も増収だった」(宮嶌CEO)という。
減収となりながらも大幅増益となった要因は、大きく分けて2つの要因がある。1つは、広告宣伝費を大きく抑制したことだ。これは前回2015年12月期の決算説明会でも示されていた方針だが、Webプロモーションの費用対効果を精査した結果、これを抑制してリアルイベントなどにシフトしたことが影響している。ちなみに広告宣伝費はQonQで7000万円の削減となっている。
もう1つは、前述の通り、位置情報連動型ゲームの売上が伸び、スマートノベルの売上が減少したことだ。これは成長している『駅メモ!』(iOS、Android版)が他社パブリッシングでネット売上となるのに対し、スマートノベルの特に自社パブリッシングによるグロス売上が減少したという形になり、この売上高の計上の違いが利益だけ伸びているように見える要因となっている。
■都市部でのリアルイベント「東京トレジャー鉄道」を実施
続いてこの四半期のトピックを見ていこう。まずは都市部でのリアルイベントとして、3月23日より、タカラッシュと共同でリアル宝探しイベント「東京トレジャー鉄道」を開催してることだ(5月9日まで)。まだ開催中であるため、実際にこのイベント通じて、ゲームを始めたユーザーの分析などはこれから進むものと思われるが、「今回は東京だけでの開催だが、今後はそれ以外の地区でも、さらにもっと大きなエリアでもやりたい」(宮嶌CEO)としており、一定の手応えを得ているもようだ。
また、運営タイトルの状況として、この四半期は位置情報連動型ゲーム初のIPタイトルとなる『ふなっしーのおさんぽ日和』(配信:フォアキャスト・コミュニケーションズ)の配信を2月29日にAppStore、3月31日にGooglePlayでそれぞれ開始した。リリース後の動向などは「契約上お話できない」(宮嶌CEO)としていたが、決算説明資料にはリリース後必要対応を実施と記載しており、若干の課題を抱えたスタートになったことが予想される。
ほか、T-MEDIAホールディングスと共同で開発したO2O型位置情報連動型ゲーム『にゃんこプレジデンッ!』のサービスを期中に終了した。これは「『駅メモ!』に経営資源を集中する」(宮嶌CEO)という判断に基づいたものとのこと。
■複数人で遊ぶと楽しいイベントを今後も展開へ 中期では送客ビジネスも視野
今後の展開としては、やはりリアルイベントの展開に注力していく方針。同社独自の試算で経済効果が約2億3400万円に相当したという地方創生を目的としたO2Oイベント「いわて×駅メモ!」キャンペーン~駅メモ!で巡る「黄金の國、いわて。」~のように地方創生の取り組みを行いつつ、前述のように都市部でのイベントを、特に複数人が遊ぶと楽しい趣向で行うことを考えているという。なお、第1四半期は大きく抑制した広告宣伝費だが、第2四半期はリアルイベントと絡める形で第1四半期よりも増やすとしていた。
ちなみにこうした都市部での展開については、大きく送客することができるように育成できた際の中期的な展望として、送客ビジネスも視野に入れているとのことだ。
■今期予想は据え置きも保守的な計画
なお、2016年12月期通期の予想については、従来予想から変更なく、売上高18億8800万円(前期比7.8%増)、営業利益4億6000万円(同46.6%増)、経常利益4億6000万円(同50.5%増)、当期純利益2億9900万円(同61.6%増)の見込みとしている。
質疑応答において、第1四半期実績から見て保守的ではないかとの指摘があったが、「もともと保守的な計画だったので、個人的には(第1四半期は)このぐらいはいくかなと思っていた」(宮嶌CEO)としていた。
■まとめ
基本的には会社側の描いている計画通り順調な進捗となっていると言って良さそうだ。ただ、同社は、リアルイベントにより、ロイヤリティーユーザー(課金を行うユーザー)になりやすいオーガニックのユーザー(自分自身でアプリを探して入ってきたユーザー)を増やす戦略をとっているが、これが上手く成果を発揮するかどうかは、もう少し結果を見て判断する必要がありそう。
ポケモンがNianticと共同開発している新作アプリ『Pokémon GO』が、位置情報連動型ゲームの市場に大きな刺激を与えることも予想され、これが同社にとって良い影響(市場規模の拡大)と悪い影響(強力な競合)として、それぞれどう働くのか引き続き注視しておきたい。
(編集部:柴田正之)
会社情報
- 会社名
- 株式会社モバイルファクトリー
- 設立
- 2001年10月
- 代表者
- 代表取締役 宮嶌 裕二
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高33億7000万円、営業利益9億4500万円、経常利益9億4000万円、最終利益ゼロ(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3912