『SHOW BY ROCK!!』『アイドリッシュセブン』といったスマートフォン向けのリズムゲームを複数開発し、知名度を急激に高めているギークス。どちらもゲームだけにとどまらず、アニメ化やグッズ展開も話題を集め、それに合わせるようにゲームのユーザーも急速に増えている。また2016年秋にはカクテル擬人化キャラクタープロジェクト『カクテル王子(プリンス)』のゲームアプリ配信も控えており、こちらも同社を勢いづける起爆剤になりそうだ。
そんなギークスは2016年に入ってから、IDCフロンティアが提供するビッグデータ分析基盤「Yahoo!ビッグデータインサイト(YBI)」を各タイトルに導入している。これはビッグデータの収集や保管、高速な分析と可視化を可能にしたツールで、今後ゲームアプリへの普及も予想されている。
今回はギークスのデータ分析チームへインタビューを実施し、同社がなぜYBIの導入を決断したのか、そしてツールを活用することでゲームアプリはどう成長を遂げていくのか、今後の展望も含めて聞いてきた。
■組織のフラット化による「出る杭は称える」社風に
ギークス株式会社
執行役員 ゲーム事業本部長
Sakurai 氏(写真左)
ゲーム事業本部 エンジニア
Yokozeki 氏(写真中央)
ゲーム事業本部 エンジニア
Yamamoto 氏(写真右)
――:本日はよろしくお願いします。まずは皆さんが現在携わっている業務について教えてもらえますか。
Sakurai:弊社にはスマホゲームを開発するゲーム事業本部があり、私はそこで事業本部長として全体の統括をしています。
Yokozeki:私はサーバーサイドのエンジニアとしてゲーム開発に関わっており、現在はそれに加えて分析チームのメンバーも兼任しています。分析チームは、YBIの導入を機に、私とYamamotoを含めた数名の社員の有志によって結成されました。
Yamamoto:私は主に、KPIに設定している数値を取得し、その分析を担当しています。分析の文化を社内に広めるために勉強会の開催や、それに伴って社内運用フローの構築などを担当しています。
――:具体的に皆さんが携わっているタイトルとしては『SHOW BY ROCK!!』や『アイドリッシュセブン』がメインになるのですか。
Sakurai:運用という点では『SHOW BY ROCK!!』と『アイドリッシュセブン』の2タイトルです。あとは開発中の自社タイトルとして『カクテル王子(プリンス)』、それ以外にも開発がスタートしているタイトルが複数あります。『カクテル王子(プリンス)』は実際に存在するカクテルを多種多様なイケメンに擬人化させたキャラクターを軸に、ゲームアプリを中心として、アニメ・グッズ・イベントなど多角的に展開する予定です。
――:それだけのタイトルを横断的に見ていくとなると、苦労する点も多いのではないでしょうか。
Sakurai:以前の開発体制を振り返ると、横の連携が取りにくく、苦労していました。横というのは各タイトルのフロント側のチームやサーバーチームのことですが、全体がバランスを取れるように組織をフラット化させることを目指しました。
――:フラット化、ですか。
Sakurai:ゲーム事業本部はスタジオ制で、部長や課長といった上司の存在をなくして、誰でも意見を言える組織に体制変更しました。そのおかげで、これまでは燻っていた若手の言葉が開発現場へ届くようになり、それが開発にも良い影響を及ぼしています。体制変更は苦労もありましたが、結果的には良い方向へ向かっていると感じています。
――:意見が出やすくなったことによってどんな影響が出たか、詳しく教えてもらってもいいですか。
Sakurai:ゲーム開発は大きく分けて企画側のメンバーと技術側のメンバーがいますが、企画側の考えに技術側が開発視点を持って意見する場面は以前と比べてかなり増えました。「もっとこうしたほうが面白い」といった提案も出てくるようになりました。エンジニアも普段からゲームをプレイしていますし、プレイヤーさんの視点に立った意見も多いです。こういった企画側と技術側の両意見を生かせるのは、この体制をとっている我々の特長だと思います。
――:桜井さんとしては、メンバーにはどんな人が多いと感じますか。
Sakurai:30代のキャリアを積んだメンバーもいますが、20代の若手を中心に、誰もが技術に対して貪欲です。ただ自己中心的な貪欲さではなく、チームとして目指すべき方向が同じであるところが誇れるところです。私達としてもスキルアップを目指す若手メンバーを応援したいと考えており、「出る杭は称える」を社風に掲げてメンバーと接しています。
――:ギークスさんの作品だとパブリッシャーとの協業タイトルも多いかと思います。ゲームを運営するうえでこだわっているポイントはありますか。
Sakurai:最近特に意識しているのはUXポリシーです。これが決まっていないと様々な要素が盛り込まれてしまい、一体誰に向けて作ったゲームなのか、どんな遊び方をして欲しいのかが分からなくなってしまいます。私たちは、どこに楽しさを作りたいのかを事前にしっかりと決めておくことを意識しています。今回のデータ分析の話にもつながってきますが、客観性のあるデータも参考にしつつ適切な対応をゲームに組み込んでいきたいです。
――:ジャンルに対するこだわりはありますか。ギークスさんの場合、女性に人気のあるリズムゲームに注力している印象があります。
Sakurai:ゲーム市場のトレンドが今後どうなるか読みにくい時代です。トレンドを研究しながら、『SHOW BY ROCK!!』や『アイドリッシュセブン』を運営していくなかで、キャラクターを利用したゲームや女性向けのゲーム開発・運営が徐々に我々の強みとなってきました。キャラクターゲーム、女性向けゲーム、リズムゲームなど、今後はたくさんのタイトルがリリースされてくると思いますが、先行して開発してきたことを強みとしながら、今後のトレンドに合わせて、新たなジャンルにも挑戦していくことも必要だと思っています。
――:データ分析のためにYBIを採用したとのお話ですが、その経緯について教えてもらえますか。
Yokozeki:分析チームを作ろうと社内で話題に上がったとき、最初の問題として出てきたのが「どのBIツールを選ぶか」でした。私たちは選定の際にコスト面やサービス内容とともに、構築のしやすさも重要だと考えています。YBIはTreasure Dataを基盤にしたサービスであり、マニュアルも豊富に揃っていました。そして何よりYBIを運営するIDCフロンティアさんのサポートが充実しており、安心感が高かったことが決め手でした。
――:YBIを採用する前から、データ分析の重要性は感じていたのですか。
Yokozeki:別のツールを使って収集をしていたのですが、そのデータを使って何をするのか、どうゲームに反映させるのか、活用できずにいたこともあります。そこで、よりデータを活用するために分析チームを作ることになり、やるならば集計方法も見直して、データに強い組織になっていこうと考えました。
Sakurai:以前のツールでも基本のKPIデータは取り、仮説を立てながら判断していました。しかし、それは結果を振り返っているだけで、リアルタイムのデータではありませんでした。読み取れるデータとあわせて、Twitterでユーザーの生の声を聞きながらの対応でした。リアルタイムのデータでないと、適切なキャンペーンを打ちづらく、成功や失敗の判断すら難しい状況でした。成功を振り返ることもできなければ、失敗を活かすこともできない。それでは成長もできないため、分析チームの設置とYBIの導入を決断しました。今はユーザーの声に加えてリアルタイムのデータのもとに、効率的に生きた運用ができるようになったのは大きいです。
――:導入することを検討するとき、社内での反響はいかがでしたか。
Sakurai:果たして取得したデータが本当に役立つのか、窮屈な運営になるのではないかと、疑問を抱く者もいたのは事実です。ですが、「リアルタイムのデータで現状を把握できるのは大きな武器になる」と説得し、導入にこぎつけました。今ではある程度データも蓄積され、その疑問も自然と薄まっていきました。
――:なるほど。では導入の際、IDCフロンティアさんからはどのようなサポートが得られましたか。
Yokozeki:データを収集するためのデータベースエンジンにはPrestoを選択しました。弊社では利用実績がなかったのですが、マニュアルが豊富だったのでスムーズに導入することが出来ました。あとは導入実績の紹介もしていただいて、「とある会社ではこのように使われています」と、かなり具体的な例まで教えていただきました。
Sakurai:驚いたのは、既に導入されている企業へ私たちを招待してくれたことです。サービスが競合する企業ではあったのですが(笑)、先方の担当者の方とお話をさせていただいて、それでツールの使い方やデータの活用法もイメージすることができました。
――:では、実際に使ってみての感触はいかがですか。
Yokozeki:導入のしやすさには驚きました。実際に分析チームを立ち上げ、データ収集を行うことになってから、1週間程度で詳細なデータを取れるまでになりました。2、3週間はかかると予想していたところが、これほどのスピード感で進められたのは運営側としては嬉しいです。
Yamamoto:最初に提案いただいてから導入までの期間もわずか1ヶ月程度だったので、システム面だけでなく話の進め方もかなり早かった印象です。話が最初に出た当初は、こんなに早いタイミングでデータを元にした議論ができるようになるとは思っていませんでした。あとはサポートが充実していて、仕様について分からないことがあっても、メールを送るとすぐに返信いただけます。タイムリーに対応いただけるのは有難いです。
Yamamoto:インターフェイスの面でもシンプルで見やすく、複雑すぎないことで操作性も高いところも好感触でした。
――:収集できるデータの面で驚いたことはありますか。
Sakurai:取得できるデータ量の多さです。基本的な情報から、かなりマニアックな情報まで、取れないデータのほうが少ないほどです。
Yamamoto:少なくとも運用を始めてからの数ヶ月で、「データがなくて困った」というケースは一度もありません。現在はデータ分析に強いメンバーもジョインし、あらゆる角度からどこを注視すればいいのか、日々頭をフル回転させています(笑)。自分たちだけで完結するのではなく、たくさんの人を巻き込みながらデータを活かす努力をし、ノウハウを蓄積しています。
――:細かなデータが取れるとなると、タイトルによって使い方も変わってきそうですね。
Sakurai:ええ。ただ、便利だからこそ「データに溺れるな」という合言葉もチーム内では言い続けています。データはもちろん重要ですが、ユーザーの生の声や現場の勘をないがしろにしてはいけないと思っています。すべてをバランスよく使いこなすことが大切ですね。
――:裏を返せば、改めて気を付けなければいけないくらい便利とも言えそうですね。ちなみにYBIは、現在運営しているすべてのタイトルに導入しているのですか。
Sakurai:はい。まずは『SHOW BY ROCK!!』で導入し、次に『アイドリッシュセブン』、その後運営が始まるタイトルにも順次導入していく予定です。見えてくるデータはタイトルごとに変わってくると思いますが、見るポイントは統一のものにしていきたいと考えています。項目を共通化して、その上で何を読み解くかで違いを生み出していきたいです。
――:『SHOW BY ROCK!!』ではすでに具体的なデータも収集できているのですね。
Yamamoto:はい、既にデータを活用しています。社内の報告資料にも、今まででは実現できなかった細かな数字を出せるようになりました。もちろん中には厳しい数字が出てくることもありますが、それも含めて我々のためになっていると思います。
Sakurai:以前であれば数字が落ちていることは分かっても、なにが原因なのかは掴めないケースもありました。そうなると推測で語るしかなかったのですが、今ではリアルタイムのデータを元に、より発展した議論もできるようになっています。
――:データを見る際、どんなところに気をつけていますか。
Sakurai:当たり前のことかもしれませんが、なんとなくの思いつきでデータを収集して分析するのではなく、戦略的に分析することを心がけています。UXポリシーに沿って、狙い通りの層のユーザーに、狙い通りの遊び方をしてもらっているのかを基準にしています。基準がなければ、議論も発展しませんからね。
――:使い方を最初にルール化しなければいけないと。
Sakurai:そうですね。使い方の共通認識を持つことが大切だと思います。あとは企画側のアイデアを活かしたい思いもあります。エンターテイメントを提供しているのに数字第一になってしまうと本末転倒だと思いますので、データのことは分析チームに任せて、企画チームは自由な発想を出せるような環境作りに努めています。
――:YBIを導入して、社内に変化は出てきそうですか。
Yamamoto:現在、データ分析に関する勉強会は毎週のように行っており、それはエンジニアも気軽に参加できるようになっています。先ほどの「分析チームに任せる」という話とは少し矛盾しますが、知識として持っていることは決して無駄ではありません。データの見方を知っているだけでも役立つことはあるはずですし、逆に分析チームに対して「こんなデータがほしい」と要望を出せるようにもなります。勉強会を通して、メンバー全体の意識が変わってきた印象があります。
――:逆にIDCフロンティアさんへの要望などはありますか。
Sakurai:機能面では既にすべてが揃っていると思います。今後は各社さんも導入を進めていくと思いますが、業界のトレンドなどもアドバイスいただきながら、IDCフロンティアさんの手厚いサポートが引き続き受けられるのであれば大変助かります。
Yokozeki:今回のYBIの提案や、負荷テストサービスの開始もそうですが、IDCフロンティアさんは需要のキャッチ力が非常に長けていると感じます。今後も継続して魅力的なサービスが展開されていくと嬉しいです。
Yamamoto:導入後、YBIの使い方をレクチャーしていただいたり、先ほども申した通り、サポートのメールの返信が早かったり、IDCフロンティアさんの対応力の高さはすごいと感じているので、今後も引き続き様々な面でお力添えいただけると助かります。
――:分かりました。それでは今後データをどのように活用していくかなど、展望があれば教えてください。
Sakurai:スマートフォン向けアプリ市場は、各社工夫を凝らした様々なゲームがひしめいており、ブースト広告などの力技が通用しなくなってきたと感じています。高まるユーザーニーズをしっかりと捉えられるような、客観性を持ったデータ戦略の時代に突入していると思います。ユーザーへどんな楽しさを伝えていきたいのかをしっかりと見つめて、ゲームを作っていきたいです。
Yokozeki:分析チームとして、集めたデータを活かせる体制が作れたので、次のステップでは一歩踏み出して、タイトルごとの特性に合わせた分析基盤づくりに着手したいですね。そして、社内での成功体験を増やしていきたいです。データを運営に活かすことで事故が少なくなった、ユーザーからの評価が高くなったといった事例を増やすことで、「導入してよかった」と感じてほしいです。
Yamamoto:データを収集する基盤が完成したところなので、あとはゲームを開発・運営するチームと横の連携を取れるようにしていきたいです。運用フローなどを整えていくことで、分析チームはもちろん、ゲーム開発に携わるエンジニアも含めた全員が今よりも更に意欲的に開発できる、そしてユーザーにもより良いものを提供できる環境を目指していきます。合言葉である「データに溺れない」を意識しながら、分析結果をゲーム運用に活かしていきます。
――:ありがとうございました。
◼︎カクテル王子
Sakurai:以前の開発体制を振り返ると、横の連携が取りにくく、苦労していました。横というのは各タイトルのフロント側のチームやサーバーチームのことですが、全体がバランスを取れるように組織をフラット化させることを目指しました。
――:フラット化、ですか。
Sakurai:ゲーム事業本部はスタジオ制で、部長や課長といった上司の存在をなくして、誰でも意見を言える組織に体制変更しました。そのおかげで、これまでは燻っていた若手の言葉が開発現場へ届くようになり、それが開発にも良い影響を及ぼしています。体制変更は苦労もありましたが、結果的には良い方向へ向かっていると感じています。
――:意見が出やすくなったことによってどんな影響が出たか、詳しく教えてもらってもいいですか。
Sakurai:ゲーム開発は大きく分けて企画側のメンバーと技術側のメンバーがいますが、企画側の考えに技術側が開発視点を持って意見する場面は以前と比べてかなり増えました。「もっとこうしたほうが面白い」といった提案も出てくるようになりました。エンジニアも普段からゲームをプレイしていますし、プレイヤーさんの視点に立った意見も多いです。こういった企画側と技術側の両意見を生かせるのは、この体制をとっている我々の特長だと思います。
――:桜井さんとしては、メンバーにはどんな人が多いと感じますか。
Sakurai:30代のキャリアを積んだメンバーもいますが、20代の若手を中心に、誰もが技術に対して貪欲です。ただ自己中心的な貪欲さではなく、チームとして目指すべき方向が同じであるところが誇れるところです。私達としてもスキルアップを目指す若手メンバーを応援したいと考えており、「出る杭は称える」を社風に掲げてメンバーと接しています。
――:ギークスさんの作品だとパブリッシャーとの協業タイトルも多いかと思います。ゲームを運営するうえでこだわっているポイントはありますか。
Sakurai:最近特に意識しているのはUXポリシーです。これが決まっていないと様々な要素が盛り込まれてしまい、一体誰に向けて作ったゲームなのか、どんな遊び方をして欲しいのかが分からなくなってしまいます。私たちは、どこに楽しさを作りたいのかを事前にしっかりと決めておくことを意識しています。今回のデータ分析の話にもつながってきますが、客観性のあるデータも参考にしつつ適切な対応をゲームに組み込んでいきたいです。
――:ジャンルに対するこだわりはありますか。ギークスさんの場合、女性に人気のあるリズムゲームに注力している印象があります。
Sakurai:ゲーム市場のトレンドが今後どうなるか読みにくい時代です。トレンドを研究しながら、『SHOW BY ROCK!!』や『アイドリッシュセブン』を運営していくなかで、キャラクターを利用したゲームや女性向けのゲーム開発・運営が徐々に我々の強みとなってきました。キャラクターゲーム、女性向けゲーム、リズムゲームなど、今後はたくさんのタイトルがリリースされてくると思いますが、先行して開発してきたことを強みとしながら、今後のトレンドに合わせて、新たなジャンルにも挑戦していくことも必要だと思っています。
■大切なのはツールと上手く付き合い、データに溺れないこと
――:データ分析のためにYBIを採用したとのお話ですが、その経緯について教えてもらえますか。
Yokozeki:分析チームを作ろうと社内で話題に上がったとき、最初の問題として出てきたのが「どのBIツールを選ぶか」でした。私たちは選定の際にコスト面やサービス内容とともに、構築のしやすさも重要だと考えています。YBIはTreasure Dataを基盤にしたサービスであり、マニュアルも豊富に揃っていました。そして何よりYBIを運営するIDCフロンティアさんのサポートが充実しており、安心感が高かったことが決め手でした。
――:YBIを採用する前から、データ分析の重要性は感じていたのですか。
Yokozeki:別のツールを使って収集をしていたのですが、そのデータを使って何をするのか、どうゲームに反映させるのか、活用できずにいたこともあります。そこで、よりデータを活用するために分析チームを作ることになり、やるならば集計方法も見直して、データに強い組織になっていこうと考えました。
Sakurai:以前のツールでも基本のKPIデータは取り、仮説を立てながら判断していました。しかし、それは結果を振り返っているだけで、リアルタイムのデータではありませんでした。読み取れるデータとあわせて、Twitterでユーザーの生の声を聞きながらの対応でした。リアルタイムのデータでないと、適切なキャンペーンを打ちづらく、成功や失敗の判断すら難しい状況でした。成功を振り返ることもできなければ、失敗を活かすこともできない。それでは成長もできないため、分析チームの設置とYBIの導入を決断しました。今はユーザーの声に加えてリアルタイムのデータのもとに、効率的に生きた運用ができるようになったのは大きいです。
――:導入することを検討するとき、社内での反響はいかがでしたか。
Sakurai:果たして取得したデータが本当に役立つのか、窮屈な運営になるのではないかと、疑問を抱く者もいたのは事実です。ですが、「リアルタイムのデータで現状を把握できるのは大きな武器になる」と説得し、導入にこぎつけました。今ではある程度データも蓄積され、その疑問も自然と薄まっていきました。
――:なるほど。では導入の際、IDCフロンティアさんからはどのようなサポートが得られましたか。
Yokozeki:データを収集するためのデータベースエンジンにはPrestoを選択しました。弊社では利用実績がなかったのですが、マニュアルが豊富だったのでスムーズに導入することが出来ました。あとは導入実績の紹介もしていただいて、「とある会社ではこのように使われています」と、かなり具体的な例まで教えていただきました。
Sakurai:驚いたのは、既に導入されている企業へ私たちを招待してくれたことです。サービスが競合する企業ではあったのですが(笑)、先方の担当者の方とお話をさせていただいて、それでツールの使い方やデータの活用法もイメージすることができました。
――:では、実際に使ってみての感触はいかがですか。
Yokozeki:導入のしやすさには驚きました。実際に分析チームを立ち上げ、データ収集を行うことになってから、1週間程度で詳細なデータを取れるまでになりました。2、3週間はかかると予想していたところが、これほどのスピード感で進められたのは運営側としては嬉しいです。
Yamamoto:最初に提案いただいてから導入までの期間もわずか1ヶ月程度だったので、システム面だけでなく話の進め方もかなり早かった印象です。話が最初に出た当初は、こんなに早いタイミングでデータを元にした議論ができるようになるとは思っていませんでした。あとはサポートが充実していて、仕様について分からないことがあっても、メールを送るとすぐに返信いただけます。タイムリーに対応いただけるのは有難いです。
Yamamoto:インターフェイスの面でもシンプルで見やすく、複雑すぎないことで操作性も高いところも好感触でした。
――:収集できるデータの面で驚いたことはありますか。
Sakurai:取得できるデータ量の多さです。基本的な情報から、かなりマニアックな情報まで、取れないデータのほうが少ないほどです。
Yamamoto:少なくとも運用を始めてからの数ヶ月で、「データがなくて困った」というケースは一度もありません。現在はデータ分析に強いメンバーもジョインし、あらゆる角度からどこを注視すればいいのか、日々頭をフル回転させています(笑)。自分たちだけで完結するのではなく、たくさんの人を巻き込みながらデータを活かす努力をし、ノウハウを蓄積しています。
――:細かなデータが取れるとなると、タイトルによって使い方も変わってきそうですね。
Sakurai:ええ。ただ、便利だからこそ「データに溺れるな」という合言葉もチーム内では言い続けています。データはもちろん重要ですが、ユーザーの生の声や現場の勘をないがしろにしてはいけないと思っています。すべてをバランスよく使いこなすことが大切ですね。
――:裏を返せば、改めて気を付けなければいけないくらい便利とも言えそうですね。ちなみにYBIは、現在運営しているすべてのタイトルに導入しているのですか。
Sakurai:はい。まずは『SHOW BY ROCK!!』で導入し、次に『アイドリッシュセブン』、その後運営が始まるタイトルにも順次導入していく予定です。見えてくるデータはタイトルごとに変わってくると思いますが、見るポイントは統一のものにしていきたいと考えています。項目を共通化して、その上で何を読み解くかで違いを生み出していきたいです。
――:『SHOW BY ROCK!!』ではすでに具体的なデータも収集できているのですね。
Yamamoto:はい、既にデータを活用しています。社内の報告資料にも、今まででは実現できなかった細かな数字を出せるようになりました。もちろん中には厳しい数字が出てくることもありますが、それも含めて我々のためになっていると思います。
Sakurai:以前であれば数字が落ちていることは分かっても、なにが原因なのかは掴めないケースもありました。そうなると推測で語るしかなかったのですが、今ではリアルタイムのデータを元に、より発展した議論もできるようになっています。
――:データを見る際、どんなところに気をつけていますか。
Sakurai:当たり前のことかもしれませんが、なんとなくの思いつきでデータを収集して分析するのではなく、戦略的に分析することを心がけています。UXポリシーに沿って、狙い通りの層のユーザーに、狙い通りの遊び方をしてもらっているのかを基準にしています。基準がなければ、議論も発展しませんからね。
――:使い方を最初にルール化しなければいけないと。
Sakurai:そうですね。使い方の共通認識を持つことが大切だと思います。あとは企画側のアイデアを活かしたい思いもあります。エンターテイメントを提供しているのに数字第一になってしまうと本末転倒だと思いますので、データのことは分析チームに任せて、企画チームは自由な発想を出せるような環境作りに努めています。
――:YBIを導入して、社内に変化は出てきそうですか。
Yamamoto:現在、データ分析に関する勉強会は毎週のように行っており、それはエンジニアも気軽に参加できるようになっています。先ほどの「分析チームに任せる」という話とは少し矛盾しますが、知識として持っていることは決して無駄ではありません。データの見方を知っているだけでも役立つことはあるはずですし、逆に分析チームに対して「こんなデータがほしい」と要望を出せるようにもなります。勉強会を通して、メンバー全体の意識が変わってきた印象があります。
――:逆にIDCフロンティアさんへの要望などはありますか。
Sakurai:機能面では既にすべてが揃っていると思います。今後は各社さんも導入を進めていくと思いますが、業界のトレンドなどもアドバイスいただきながら、IDCフロンティアさんの手厚いサポートが引き続き受けられるのであれば大変助かります。
Yokozeki:今回のYBIの提案や、負荷テストサービスの開始もそうですが、IDCフロンティアさんは需要のキャッチ力が非常に長けていると感じます。今後も継続して魅力的なサービスが展開されていくと嬉しいです。
Yamamoto:導入後、YBIの使い方をレクチャーしていただいたり、先ほども申した通り、サポートのメールの返信が早かったり、IDCフロンティアさんの対応力の高さはすごいと感じているので、今後も引き続き様々な面でお力添えいただけると助かります。
――:分かりました。それでは今後データをどのように活用していくかなど、展望があれば教えてください。
Sakurai:スマートフォン向けアプリ市場は、各社工夫を凝らした様々なゲームがひしめいており、ブースト広告などの力技が通用しなくなってきたと感じています。高まるユーザーニーズをしっかりと捉えられるような、客観性を持ったデータ戦略の時代に突入していると思います。ユーザーへどんな楽しさを伝えていきたいのかをしっかりと見つめて、ゲームを作っていきたいです。
Yokozeki:分析チームとして、集めたデータを活かせる体制が作れたので、次のステップでは一歩踏み出して、タイトルごとの特性に合わせた分析基盤づくりに着手したいですね。そして、社内での成功体験を増やしていきたいです。データを運営に活かすことで事故が少なくなった、ユーザーからの評価が高くなったといった事例を増やすことで、「導入してよかった」と感じてほしいです。
Yamamoto:データを収集する基盤が完成したところなので、あとはゲームを開発・運営するチームと横の連携を取れるようにしていきたいです。運用フローなどを整えていくことで、分析チームはもちろん、ゲーム開発に携わるエンジニアも含めた全員が今よりも更に意欲的に開発できる、そしてユーザーにもより良いものを提供できる環境を目指していきます。合言葉である「データに溺れない」を意識しながら、分析結果をゲーム運用に活かしていきます。
――:ありがとうございました。
■IDCFクラウド
会社情報
- 会社名
- ギークス株式会社
- 設立
- 2007年8月
- 代表者
- 代表取締役CEO 曽根原 稔人
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高237億3900万円、営業利益9000万円、経常利益8200万円、最終損益14億7300万円の赤字(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 7060