【緊急インタビュー】「全く違うからこそ相性が良い」 グリー前田氏とブシロード広瀬氏に聞く"異色の"資本業務提携で目指すもの



ブシロードとグリー<3632>は、9月15日、IPコンテンツを活用したスマートフォン向けゲームアプリの共同開発やコンテンツビジネスにおける広範囲な協業を行うため、資本業務提携を行うと発表した。資本業務提携に伴い、グリーはブシロードが実施する第三者割当増資を引き受け、約20億円(出資比率10%強)を出資する。

今回の提携は、意外なものと受け止める向きが多いように感じられるが、両社はどういった考えを持っているのか。今回、グリー取締役で、ポケラボ社長の前田悠太氏(写真左)と、ブシロード取締役の広瀬和彦氏(写真右)にインタビューを行い、資本業務提携に至った経緯や狙い、両社の期待するところについて話を聞いた。


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——:ニュースには驚きました。ブシロードさんがよりによって、といってはなんですけど(笑)、グリーさんと資本業務提携をされるとは思いませんでした。どういう経緯があったんでしょうか。

一同:(笑)

広瀬氏:ポケラボさんと『戦姫絶唱シンフォギア XD UNLIMITED(以下、シンフォギア)』の開発で協業させていただいていることが大きなきっかけです。資本政策として、どういう会社と組むべきか考えている中で、グリーさんは当社との相性が非常に良い会社だと思いました。もちろん、提携ありきで協業していたわけではありません。

会社としては、両社は事業領域も得意分野も全く違っています。パーソナルな面でも、グリーの田中社長と、当社社長の木谷は、年齢が違いますし、考え方も全く違っています。その意味で、両社は良い意味で全く違っていて、だからこそお互いの意見や考えを認め合える関係になっていると考えています。

前田氏:当事者が言うと変な感じですが、一言で言うと相性が良い。これに尽きますね。木谷社長と田中の考え方の相性もそうですし、きっかけとなった『シンフォギア』の共同開発を通じて、お互いの得意なところが手に取るようにわかっていたことも大きいと思っています。

その中で、お互いの足りないところを補い合いつつ、相乗効果を出せる関係にしていきたいです。ブシロードさんはIPをゼロから作って育てて、広く深く展開し、長く愛されるコンテンツが提供できる稀有な会社です。一方、グリーは、ゲームが作れますが、コンテンツを広く長く愛されるようにする仕組みづくりに関しては、まだまだ未熟ですし、できていないことが多くあります。

そういったところを重ねあわせると、両社が提携することで、ゲームというものをコンテンツビジネスとしてより広く展開できる関係にできるのではないかと考えました。



——:両者の強みを組み合わせて、というところですね。ブシロードさんは、独立独歩で行くイメージがありまして、他社の資本を受け入れたのは意外な感じがしました。

広瀬氏:従来どおりの国内を中心にトレーディングカードゲーム(以下、TCG)の会社としてやっていくのであれば、そうした資本政策は必要ありません。ただ、国内のTCG市場がほぼ頭打ちになるなか、当社が次のステージに進むためには、海外市場や、マスマーケットにアプローチする必要があります。

そういった事業展開を視野に入れた時、自分たちだけの力だけでやるのは難しいですし、資本の部分でも何らかのバックアップが必要です。つまり、資本の面で不足しているから資本提携をしたというよりは、今後、より勝負をするために外部の企業との取り組む必要がある、と判断したということです。



——:異業種や同業他社と組むような考えはなかったでしょうか。

広瀬氏:当社は、エンタメ業界の中でも、極端にリスクを取って勝負する会社だと思っています。当社のようなやり方は、全く異なる業界の会社からは理解を得づらいです。かといって事業内容が近くても同様です。近いとお互いにあれこれといいたくなり、信頼関係を築くのが難しいでしょうし。社風も事業も得意領域も考え方も全く違いますが、同じエンタメ業界にいらっしゃるグリーさんとはいい関係ができていると感じています。


——:相性が良いなと感じるところはありますか?

広瀬氏:先ほどの話と似ていますが、得意な分野やカラーがぜんぜん違うことです(笑) 得意分野やカラーが被ってしまうと、それこそ組むことに意味がないですし、むしろ、全く違うほうがお互いの考え方を素直に聞けるのではないかと思います。とはいえ、同じエンタメ業界ですから、コンテンツに対する考え方や目指すものは共通していることが多いです。

前田氏:確かにぜんぜん違いますね(笑) 例えば、ブシロードさんは、IPというソフトの根幹を持っていらっしゃる。トレーディングカードゲームやライブ、物販など多面的に展開することを得意としており、我々はそういったものは全くもっていません。

その一方で、当社は、ゲームを作る開発部隊は、ネイティブだけで500人いますし、デジタル領域では広告事業もやっています。VRも手がけています。コンテンツを活かす手段がグリーにはあって、ブシロードさんにはありません。

事業領域としても被っていないですし、培ってきた土壌も違っています。だからこそをお互いに補えます。広瀬さんがおっしゃったように、全く違うから素直に聞ける部分も大きいです。我々も、木谷社長や広瀬さんとお話していると本当に勉強になります。そのあたりが補完関係、相性になるかと思います。



——:ゲームもいまやイベントやグッズ展開、マンガ、アニメなど多面的な取り組みが必須ですよね。

前田氏:そうですね。ゲームだけの閉じた施策だけでは、お客様から長く愛されるコンテンツを提供し続けるのは難しいです。ゲームを中心に広い意味でのコンテンツとして愛され続ける状況にしないと厳しいです。その点、ブシロードさんは、リアルやアナログの連携を得意としているだけでなく、ファンの方々に愛されています。当社も、ゲーム会社として学んでいく必要があります。そういう観点からも、今回の提携はすごく意味があると思います。


——:提携の内容ですが、『シンフォギア』に関してはどういったことをお考えなんでしょうか。

広瀬氏:そうですね。まず、『シンフォギア』をしっかりと作って、多くの方に遊んでいただくことが大事です。詳細はお話できませんが、その次に何ができるかなと考えているところですね。我々の得意なところは、自社コンテンツだけでなく、他社のコンテンツをお借りしてゲームを提供し、原作ファンの方々に受け入れていただけるプロデュース力だけでなく、ただのライセンスを受けたゲームだけで終わらないことです。

例えば、『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』では、1年に1回、大規模なイベントを行っています。今年は2日間で4万人を超える動員を記録しました。こうした取り組みは、コンテンツとしても重要な位置づけになっていると思っています。まだなんともいえませんが、当社も、イベント事業などでもお役に立てればと思っています。



——:今回の提携に期待しているところを。

広瀬氏:一番わかりやすいところでは、スマートフォンゲームの展開が中心になると思います。ブシロードは開発を持っていませんし、そういうものを持つ予定も当面はありません。そのなかで、自分たちでパブリッシングしていても、開発ノウハウは蓄積されません。

全てのタイトルをグリーさんとやるわけではありませんが、深くお付き合いすることで、当社にとっての中核ラインとなっていただければと思っています。毎回毎回、開発会社を変えているのは大変です。また、中長期的にはデジタル戦略としては、VRなど当社単独ではできないことをグリーさんと一緒にできないかと考えています。



——:ゲーム開発に関しては、グリーさん独占というわけではないんですね。

広瀬氏:独占ではありません。とはいえ、協業の範囲内でご一緒に取り組む機会は多くなるとは思います。

前田氏:我々も開発のキャパシティの問題がありますので、全てをお受けするのは難しいかもしれませんが、まずは得意とするゲームで成果を出したいと考えています。そして、エンターテインメントの一つのコンテンツととらえたとき、ゲームは本質的にはお客様に楽しんでもらうための一手段でしかありません。ブシロードさんと組むことで、この手段を広げて、深く広く愛してもらえるコンテンツを提供していきたいと考えています。そのために広く協業を進めさせてもらいたい、というのが我々の期待するところです。相互補完関係がきれいにできているパートナーシップだと思いますので、結果を出していきたいですね。


——:ありがとうございます。期待しています。


 
(編集部 木村英彦)
グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高613億900万円、営業利益59億8100万円、経常利益71億2300万円、最終利益46億3000万円(2024年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
企業データを見る
株式会社ブシロード
http://bushiroad.com/
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会社情報

会社名
株式会社ブシロード
設立
2007年5月
代表者
代表取締役社長 木谷 高明
決算期
6月
直近業績
売上高462億6200万円、営業利益8億8200万円、経常利益18億9800万円、最終利益8億400万円(2024年6月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
7803
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