【インタビュー】新オフィスへの移転、さらにカカリアスタジオを設立したHappy Elements…代表・新井氏に会社の現在位置と新たな目標を訊いた

現在Happy Elementsでは、開発体制の強化のために様々な職種で採用に力を入れている。

『あんさんぶるスターズ!(あんスタ)』の記録的なヒットを機に、2015年に大きな注目を集めることとなったHappy Elements。今年に入ってもその勢いは衰えず、『ラストピリオド』、さらには『あんさんぶるガールズ!!』のリニューアル版をリリースし、新たなファンの獲得にも成功した。
 
そんな同社は先日、京都オフィスの移転とカカリアスタジオの設立を発表した。会社の好調ぶりがうかがえるニュースであると同時に、その意図がどこにあるのか気になった人も多いはずだ。そこで今回、Happy Elements代表取締役CEO兼カカリアスタジオエグゼクティブプロデューサーの新井元基氏にインタビューを実施し、会社の現在位置と、オフィス移転から生まれた新たな目標、求めている人物像をうかがった。

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■「技芸」にこだわるカカリアスタジオ


――:本日はよろしくお願いします。Happy Elementsといえば先日京都オフィスを移転しましたよね。まずはその経緯から教えてもらってもいいですか。

新井氏(以下、新井):これまでも京都でゲームを開発しており、以前のオフィスでは同じビルの他の階を増床する形で事業を拡大してきました。しかしスタッフも増え、いよいよ同じビルでは借りることのできるフロアがなくなってしまったので、今回の移転を決断しました。移転は1年前から検討をはじめていましたが、この度ようやく物件が決まりました。
 

――移転してまだ間もないですが、働き心地はいかがですか?
 
新井:広さが以前の倍になり、余裕を持った広々とした環境になりました。
 

――オフィス移転に合わせてカカリアスタジオも設立しましたよね。
 
新井:Happy Elementsは中国に本社があり、当社はその子会社に当たります。しかし子会社といっても京都で独自の理念をもって作品を制作しており、本社からなにかを言われることはほとんどありません。一方で、今グループの兄弟会社であるHappy Elements Asia Pacificがアニメ『アイドルメモリーズ』を日本・中国で展開しており、今後Happy Elementsでは本社主導で日本・中国をまたいだ様々な展開を行うことを計画しています。京都オフィスの独自の理念をユーザーさんに伝えられるように、同じHappy Elementsブランドではなく、独自のブランドで展開していこうということでカカリアスタジオを設立しました。
 


――日本と中国、それぞれの考え方があるからこそのスタジオ設立ということですね。
 
新井:私たちとしてはこれからも京都を拠点に、変わらない考えで運営を続けていきます。そのためにも、このタイミングで新しいブランドが必要だと考えたのです。それともうひとつ、先日グリモアを子会社化し、グリモアスタジオと位置づけることになったのも要因です。
 

――独自性を大事にするための「カカリアスタジオ」だったと。
 
新井:カカリアとは花の名前で、社内公募で決めた名称です。スタジオとしては「よりハイクオリティなゲーム、コンテンツをユーザーの皆様にお届けること」をビジョンに掲げており、「技芸」の花言葉が私たちの信条を上手く表していると考えています。ユーザーさんに本当に楽しいと思ってもらえるゲームを作るために、私たちひとりひとりの技術力やセンスを最大限発揮させて取り組んでいきたいと思います。


▲カカリアの花。花言葉は『技芸』。
 

――グリモアスタジオとは、今後どのような関係を築いていくつもりですか?
 
新井:彼らにもこれまでと変わらない考えでスタジオを運営してもらいたいと考えています。オリジナルタイトルにこだわるという考えはカカリアもグリモアも同じで、やりたいことは似ていると思います。こちらから支援できることはしていきつつ、必要以上に口を出すことなく、自由にゲームを作ってもらいたいです。
 
 

■RPG、ネイティブリニューアル、アクション…これからもチャレンジを


――Social Game Infoで新井さんにインタビューを行うのは、昨年末以来約1年ぶりになるかと思います。この1年で、オフィス移転以外に環境の変化はありましたか?
 
新井:新タイトルとして『ラストピリオド』をリリースし、さらに先日『あんさんぶるガールズ!!』、『キャットバスターズ』の配信も始まりました。
 

――やはり2016年はその3タイトルが大きなトピックかと思います。まず『ラストピリオド』はユーザーからどのような反響がきていますか?
 
新井:最初の反響はものすごくて、非常に手応えを感じました。ただ、その後盛り上がりを維持することができず、RPGというジャンルの厳しさを痛感しています。カカリアスタジオが強みとしているイラストの部分は評価をいただいている感触はあるのですが、ユーザーさんからの期待に応えられるように改善を行っていきたいと思います。直近、川口春奈さんを起用したTVCMを実施したり、マルチプレイやギルドバトルといった大きな機能追加を行ったりと、また盛り上がりを感じてきていますので、引き続き力を入れていきます。
 

 

 

――『あんさんぶるガールズ!!』は配信が始まって間もないですが、こちらはいかがですか?
 
新井:『あんさんぶるガールズ!!』は元々配信していた携帯ブラウザ向けのゲームを、いわゆるガワネイティブではなくスマートフォンのネイティブアプリにリニューアルしたもので、これは当社はもちろん他のメーカーを見てもあまり例がありません。それでも挑戦したのは、あんさんぶるガールズ!というコンテンツをできる限り長く続け、ユーザーさんから長く愛されるものにしたかったためです。実際に配信してみると、以前からプレイしていただいている方と新規の方でゲームに求めているものが違うことがわかり、難しさを感じています。新規のユーザーさんにももっと楽しんでもらえるようにすることが今後の課題と考えており、まだリリースしたばかりですが大きく手を加えることも含めて検討中です。
 

 
 
 

――さらなる新作として『キャットバスターズ』もリリースされましたよね。
 
新井:『キャットバスターズ』は、これまで沢山のライトゲームをリリースしていたHappy Elements Super Liteのチームが手がける新作です。アクションの要素が強く、これまでの当社のタイトルとはかなり毛色が違うものになっています。

 
 
 


――こちらもすでにリリースされていますが、Happy Elementsは配信前の段階からユーザーの目を引くキャンペーンが上手い印象があります。新井さんとしては、なにかこだわりはあるのでしょうか?
 
新井:特別なことはやっていないのですが、せっかくいいものを作っても、ユーザーさんの手に届かず遊んでもらえないような状況ではクリエイターが報われないので、会社としてはプロモーションに力を入れています。クリエイターがものづくりを突き詰められる環境を用意することと、懸命に作った作品をいかに手に取ってもらえるようにするかが、会社としては注力しているところです。
 

――例えば『あんスタ』はゲーム以外にもさまざまな展開をされています。メディアミックスについて、新井さんはどのような考えをお持ちですか?
 
新井:『あんスタ』では、多数のグッズ・プライズ化、音楽CD、2.5次元舞台、マンガ、小説など、様々な展開を積極的に行っており、スマホゲームだけでなく様々な展開であんスタのコンテンツをユーザーさんに楽しんで頂きたいと考えています。また、女性向けゲームはここ1年ほどで他社さんからも多数リリースされており、これからも強力な競合がどんどん出てくることが予想されますので、コンテンツとしての総合力で競合に負けるようなことにならないようにしたいと考えています。今後も色々とチャレンジしていきます。
 
 

■良いものをつくり続けられる環境を


――採用面では、現在特に募集している職種はありますか?
 
新井:メインはエンジニアとデザイナーです。エンジニアはサーバサイドとクライアントサイドのエンジニア、デザイナーはイラストレーターやグラフィックデザイン、アニメーション・演出ができる人などを全般的に募集しています。その他、プランナーやライター、スクリプターなども募集中です。
 

――人物像に求めるものはありますか?
 
新井:当社としてはものづくりを突き詰められる環境を整えようと努力しているので、ものづくりを突き詰めたい方に入って頂きたいです。良いコンテンツを制作するために、メンバー一人一人が最大限のパフォーマンスを発揮できる組織・環境作りを意識しています。
 

――開発拠点が京都にあることで、なにか利点を感じる機会はありますか?
 
新井:一番はイラストレーターの方が沢山いることですね。芸大、美大が東京の次に多い地域で、その割にゲーム会社は少ないです。そのため、優秀なイラストレーターが入社して頂きやすい環境になっているのだと思います。また学生自体の数も多いので、学生のアルバイトで優秀なエンジニアの採用もできています。

 
――オフィスの環境や福利厚生で、御社ならではのところを教えてください。
 
新井:オフィスに関しては移転したばかりなので、きれいな環境の中でじっくりと仕事ができます。カカリアスタジオではアプリごとに組織が分かれていて、それぞれが独立した部屋で作業しています。部屋の中をどう使うかは組織毎の自由で、例えば壁紙も違ったりします。『メルクストーリア』のチームはミーティングルームの壁紙にキャラクターがプリントされていたり、個性が出ているのも面白いです。
 



新井:また、壁は防音も考慮しており、共有スペースや他のチームの部屋で騒いでいても全く気になりません。気軽に集まって話したり食事をしたりするための共有スペースも多く用意しており、コミュニケーションを取りやすいようにすることを意識したオフィスになっています。


 
――それでは今後に向けた目標、展望があれば教えてください。
 
新井:これまでと変わらないのですが、継続的に良いものを作り続けられる環境でありたいと考えています。これからも、既存タイトルをしっかり運営しながら、新しいタイトルを世に出していきたいです。
 
また、カカリアスタジオでは少数精鋭のチームでゲームの開発・運営を行っていますが、少ない人数で皆全力で開発・運営を行っており、余裕が無い状態になりやすいため、特に運営を長く続けていくと、新しい技術をキャッチアップしたり、スキルアップしたり、新しい表現・技術に挑戦するような時間が中々取りづらい状況になりがちであるという課題を感じています。新しいオフィスができたことを機に、より採用に力を入れ、今までよりは少し余裕をもって新しいことに挑戦しやすい組織・環境づくりをしていきたいです。

 

――…ちなみにですが、Happy Elements の新作に期待しているプレイヤーもたくさんいらっしゃるかと思います。ファンに向けて何か最新情報など頂けないですか。

新井:期待は痛いほど感じています。ですが、新作について今はまだお話できる状況ではなく――

謎の男:NO。隠す必要はありませんよ。新井社長。



――:あ!入り口から謎の男が!
 
新井:!!
 
謎の男:QUIET。何も言わなくても分かります。私を呼んだのですね。
 
新井:いつからそこに…。
 


――:あ、あなたはまさか!
 
謎の男:新井社長と私でお話しましょう。最新情報について、ね。
 
新井:!!

 

《後編はこちら》
 


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