【インタビュー】制作環境向上につながるツールに…MUGENUP『セーブポイント』リリースから1年半 これまでの反響と今後の展開を訊く


 
MUGENUPが提供している、制作管理ツール『セーブポイント』。本ツールはクリエイティブに特化したクラウド型のプロジェクト管理ツールだ。一昨年5月にリリースされ、現在では様々なゲーム会社やタイトル制作に導入されている。

本稿では、プロジェクトマネージャーの杉田裕明氏にサービスの反響やこれまでの取り組みを聞くとともに、今後もアップデートや展望について聞いた。

 

『セーブポイント』紹介ページ

 
■ゲーム会社とともに歩んできた1年半

株式会社MUGENUP
プロジェクトマネージャー
杉田 裕明

 
―――:本日はよろしくお願いします。改めてですが、簡単に「セーブポイント」の概要を教えてください。

『セーブポイント』はクリエイティブに特化した制作管理ツールとして、1年半前から展開しているサービスです。当時は100社を予定していたのですが、それ以上に利用いただいていまして、今では、開発中やリリース後の作品を含めて150タイトル以上でご利用いただいています。


―――:2016年での反響はいかがでしょうか。?

皆様のおかげもあって、苦労もありながら、成果のあった一年でした。特にここ半年はお問い合わせも増え実績や事例も豊富にできました。 他社様の使い勝手のお話を聞きつけてお問い合わせをいただくことが増えました。

―――:最近ではゲーム以外での導入も進んでいるのでしょうか。

ご縁もあって、漫画の制作、遊技機系の開発やVR関連の開発にてお問い合わせいただくケースも増えました。

―――:利用方法としては、ゲーム開発と同じ様に利用されているのでしょうか。

そうですね。ゲーム開発と非常に近いものがあって、どのコンテンツも複数のものを並行して制作しないといけない。また納期などの締め切りもあり、社内外問わず多くの人と制作を進めることが多いので、すごく親和性は高いと考えています。私自身もVR分野は非常に未来を感じているので、個人的にも応援したい分野のひとつです。

―――:今年一年で印象的だったエピソードはありますか。

使っていただいているお客様から、他のお客様をご紹介いただくケースが非常に多かったことが印象的です。

これはこの業界の皆さんは比較的業界内での流動性が高いという背景があり、逆に言えば横のつながりが強いと感じています。また、今現在では「これが正解」と言える制作フローを皆様が模索されている段階で、その中でお役に立てたのかなと感じます。



―――:ゲーム分野外への導入もそういった要因はありそうですね。好評だったアップデート内容はありましたか。

この一年で見ると、ガントチャートのアップデートは非常に好評でした。一般的なガントチャートツールでは、ゲーム制作といった登録するデータ数が多い実務に対応ができないのですが、同時表示機能や直感的な操作で動かせるという点をこだわって、皆さんに好評を得られたのは嬉しかったです。


次の目標としてはスピードですね。WEBサービスなので、早く表示する、処理をできるというところも突き詰めて皆様の直感的な操作に対して、もっと対応できるスピードの高速化を実現していきたいです。


―――:まだまだ要望やリクエストは挙がっているのでしょうか。

今でも月に15~20件はいただいておりますね。それだけ、ご利用いただけている、もっと使っていきたいというお気持ちもいただけていると感じています。


―――:そちらも変わらず、素早い対応を行っていくと。

もちろんです。2週間に一回は何かしらの更新を繰り返していきます。

他に一年で変わったことと言えば、お客様との距離感も変わったと思います。お問い合わせを頂いた背景についても真摯にお話し頂くこともあり、また実際にお会いして話すということも増え、お互いに「ゲームをもっと良くしていこう」「ツールをもっと良くしていこう」という、良い関係を築くこともできたと思います。



―――:それでは知名度も広がったという実感もあるのでしょうか。

おかげさまでゲーム業界のカンファレンスなどにお伺いした際は「利用しています」とお声がけいただくことも増えました。2016年はGTMFや東京ゲームショウにも出展させていただいたのですが、様々な方にご挨拶もできました。

―――:ゲーム会社さん以外の反響はいかがでしょうか。

ゲーム会社さんと相対して制作されているクリエイターや制作会社の方からも好評いただいていますね。複数のゲーム会社から使ってくれと言われて、ご利用いただくことになり、結果として制作効率が上がったというお声もいただけましたね。

 
■コストダウンだけではない、より良い作品を作れる為の制作環境向上ツールに

―――:今後のアップデート計画についてお聞かせいただけますか。

大きくは三つの軸があります。ひとつはゲーム業界の流れに沿ったアップデートです。それは、より一層な大規模開発という流れがあり、2D制作からの3D制作など、現場に即した機能を追加予定です。もう一つは「セーブポイント」はWEBサービスになりますので、先ほどお話しした直感性とスピード感、この二つをさらに高めていければと思います。最後は制作管理に止まらず、その制作の前後にある業務フロー全般の効率化もご提供できればと考えています。


―――:制作の前後とおっしゃいますと。

クリエイターさんの管理や制作物のデータベースとしてのアーカイブ、こういった各社様がよく悩まれているところにもお手伝いができるアップデートができればと思います。例えば、制作物のデータアーカイブと言っても、今のゲーム開発事情においては、社内だけのアーカイブを作るだけでは価値が不十分だとお聞きすることが多いです。社外を含めた、複数のチームと制作を進めることが当たり前になってきており、そのアーカイブからピックアップして「これに似たものを制作してほしい」というオーダーを行うことは往々にしてあります。その際に、データを一つ一つ選んで送る作業がかなり手間なので、アーカイブの一部権限を付与することで簡単に共有することができるという、現場の方々に対してより価値を提供できると思います。


―――:制作を進めるにあたっての「共通言語化」がスムーズに行えるわけですね。

おっしゃる通りです。共通言語があって、初めてコミュニケーションはうまくいくものですからね。このサービス自体を広めたいという気持ちはもちろんありますが、このツールを扱っていて一番価値があると思うのは、各現場の方の業務が円滑に進むようになった、一人一人の負担が高くなりすぎないようになったという点ですね。

クリエイティブの現場というのは、ゲーム業界に限らず、一人のクリエイターに対する負荷が高くなってしまったり、その方が倒れても替えが効かないという場面が多かったりしましたが、こういった管理ツールや共通言語を作ることで、制作における敷居を下げて、色んな方が取り組めるような環境作りをお手伝いしたいと思います。



―――:制作環境改善としてのお問い合わせもあるのでしょうか。

これまでは、コストダウンを狙いとしたイラスト制作効率化が多かったです。お問い合わせのケースは大きく二つあり、会社からイラスト管理ツールを検討すべきというミッションがくだり、お問い合わせいただくケース。もう一つは他社の環境を使って便利と思ってお問い合わせいただいたケースですね。この一年で後者のケースが増えたのがすごく嬉しく思います。

そして、制作環境の改善という観点でのお問い合わせはまだ少なく、あくまで経営目線からみた制作効率化によるコストダウン、といった狙いが多いですね。コストダウンの他にも、労働環境改善としてもお役に立ちたいと思います。


ですので、私たちがご提案する際のポイントとしては、制作環境の改善ですね。例えば、一人の窓口担当をなくし、それでもプロジェクトがまわる環境を実現できれば、そのポジションの方が別の分野でご活躍いただくことで、単純に一人月分の人員が解消されます。コミュニケーションが円滑になり、過去の情報の確認も簡単なので、制作スピードを1.2倍にできた、といったケースもありますね。

他の例としましては、ゲーム業界の業務の中で「検索する」という作業が実は非常に多いのですが、各社さんに聞いてみたら半分の時間になったと聞きます。『セーブポイント』だけで検索作業が済み、また検索したファイルも体系化してまとめられているので、圧倒的に検索スピードが上がり、仕事量が減るというご提案をさせていただいています。解消された分、クリエイター一人一人の負担軽減や、よりクリエイティブな作業専念に活用いただきたいと思います。



―――:今後への課題とはどういったものを考えていますか。

開発面と伝達面にてそれぞれ課題はありますね。開発面ではエンジニアが足りていないという点です。たくさんいただくご要望やお問い合わせに応えたいのですが、そうなるとエンジニアやUI/UXデザイナーが必要になってきます。外部的な要因で言いますと、もっとお客様と懇意に接する場を作っていければと思いますね。今も直接お会いはしていますが、それに加えてカンファレンスなども行い、そのコミュニティの中で、お客様同士でも情報交換ができるような場を作りたいと思います。私たちが発信している情報以外にも、利用されたお客様同士で「この使い方が便利だ」というコミュニケーションがとれる場を形成していきたいです。


―――:エンジニアが必要ということはご要望のバリエーションも多いのですね。

たくさんありますね。表面的なものを変えるのは簡単なのですが、本来であればその背景や変えたことでそのほかに影響が及ぶことも考えないといけません。そうなりますと抜本的に変えていかないといけないことも少なくありませんので、エンジニアが必要にはなりますね。


―――:2017年はどういったことをされていきたいですか。

この一年では乙女ゲームへの導入が進んだので、2017年はIP作品への進出ができればと思います。今もすでにいくつかご利用いただいており、版元さんが簡単に確認できる機能を好評いただいています。プロジェクトが社内で大きくなるだけでなく社外との連携がより密になる現場でもケアができるようにしていきたいと思います。


―――:クロスメディア展開する作品も増えましたからね。

多くのゲーム会社さんから出ているIPタイトルのように、版元さんやゲーム会社さん、各協力会社さんが、それぞれのポジションで愛情を注ぎながら制作されたタイトルは、ファンからも愛される作品になっているように思います。このどこかが崩れても、ゲームとして作品のファンに好かれないコンテンツになってしまうので、いろんなスタッフの皆さんが愛を持って、気持ちよくモノづくりをできるよう、プロジェクトを応援していきたいですね。


―――:様々な方が関わるとなると、セキュリティ面も気をつけていらっしゃるのでしょうか。

去年からセキュリティは強化していました。IPという知的財産を扱うこともあれば、皆様の未公開の情報を扱うこともあります。今後はより一層、システムとしてのセキュリティの向上はもちろん、スタッフ自身のセキュリティ意識の教育も行っていきます。


―――:最後に今後の展望や一言お願いいたします。

少し大きな話になりますが、ゲーム会社さんの採用情報にあるような「イラストレーターの経験」、「Photoshopの経験」と同じように、「セーブポイントを使ったことがある」という記載が出てくるくらい、制作現場にとってメジャーなツールになりたいですね。これがないと工数がどうしても多くなってしまうと言われるような、皆様にとって「便利で必要不可欠なツール」でありたいと思います。


―――:ありがとうございました。


 
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https://mugenup.com/

会社情報

会社名
株式会社MUGENUP
設立
2011年6月
代表者
代表取締役 伊藤 勝悟
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