昨年は『ポケモンGO』の大ヒットが記憶に新しいが、成熟に向かうスマホゲーム市場でIPタイトルの強さが目立つのは大きな特徴のひとつと言えるだろう。一方でIPタイトルではないオリジナルタイトルは、成熟した市場の中でどのような戦略で戦うことが必要になるのだろうか。2016年を振り返ると、オリジナルタイトルの代表的なヒットタイトルの一つが『ワールドクロスサーガ -時と少女と鏡の扉-』(以下、ワクサガ)だろう。
今回SocialGameInfoでは、アクセルゲームスタジオ株式会社執行役員/事業推進部部長の佐藤竜史氏と株式会社AppBroadCastビジネス企画室プロデューサーの近藤塁氏にインタビューを実施。『ワクサガ』はどのような施策を行い、成熟市場の中でヒットタイトルになることができたのか、話を伺ってきた。
アクセルゲームスタジオ株式会社
佐藤竜史氏(写真右)
株式会社AppBroadCast
近藤塁氏(写真左)
――:本日はよろしくお願いいたします。
佐藤氏(以下、佐藤):よろしくお願いいたします。私はワクサガには、マーケティング・プロモーションの責任者として関わっています。具体的には、プロモコンセプトやプロモーション方法などをゲームの開発チームと一緒になって考えています。
――:すでにご存じのかたも多いと思いますが『ワールドクロスサーガ』について改めて紹介をお願いいたします。
佐藤: ワクサガは時をテーマにした戦略型の対戦RPGです。物語も時間をテーマに進んでいきますが、バトルシステムも時間をテーマにしており、時間軸を可視化したタイムラインにキャラクターのコマンドを入力していきます。ターンバトルは先行が有利の場合が多いのですが、タイムラインによってそれを覆すようなバトルが展開できる点と、キャラクターのステータスだけに左右されない戦略バトルが楽しめるようになっている点が特徴になっています。
―リリース前のワクサガのプロモーション戦略において、どのようなことを考えられていたのでしょうか?
佐藤:弊社は他社様と組んで、協業でゲームアプリを作ってきたことはあったのですが、弊社単体でアプリを出すのはワクサガが初めてでした。つまりワクサガが初の自社パブリッシングタイトルとなります。そのような状況だったので、手探りで情報を集め、試行錯誤しながら初動のプロモーションをどう仕掛けていくかを考えていました。
ワクサガ以前は自社に加えて協業先様からもゲームに対する意見をもらえる環境でしたが、ワクサガに関しては、自分たちだけで出来の良し悪しを判断しなくてはなりませんでした。そのような自信がない状況で何か後押ししてくれるものがあればと思ってβテストを行うことは必須という判断をしました。
―βテストの実施にあたり株式会社AppBroadCast様の「サキプレ」を利用されたということですが、どうして「サキプレ」を利用されたのでしょうか?
佐藤:いくつかβテストのサービスがあるなかでAppBroadCast様のβテストサービス「サキプレ」を選んだのは、実施後のレポートがとても魅力的だと思ったことが大きな要因になります。ユーザの意見をしっかり分析してビジュアル化してくれていて、経験の少ない僕らにもわかりやすいレポートはとても助かりました。
近藤氏(以下、近藤):「サキプレ」のレポートはわかりやすさを重視してグラフや表などを使ってまとめています。ゲーム会社様の場合はリリース前はやることが多く、リソースも足りないことが多いと思います。サキプレは、弊社メディアの「ゲームギフト」を利用したβテストのユーザ獲得からアンケートの実施、回収、アンケートの集計からレポート作成まですべて弊社で行わせていただいています。
佐藤:「サキプレ」を選んだもうひとつの理由はゲームユーザを集めることができる点です。ワクサガはタイムラインのシステムを使うことから、カジュアルなゲームではなくミドルコア向けのゲームだと考えていました。そのためβテストはゲームリテラシーの高い人にプレイしてもらい意見を聞きたいという意向がありました。その点でもゲーム好きユーザが集まる「ゲームギフト」でのβテストである「サキプレ」は適していたと思います。
―実際に「サキプレ」でβテストを実施し当初から大きく変更のあった部分はあったのでしょうか?
佐藤:大きく変えた部分のひとつとして3Dキャラのクオリティを見直したことです。実はワクサガはβテストの時点では、進化前、進化後の全レアリティごとに個別の3Dモデルを用意していました。しかし「サキプレ」では3Dキャラの評価が低く出てしまいました。ユーザが初期に手にするのは、進化前(レアリティの低い)キャラなので3Dモデルもシンプルになりがちです。
低評価はそこが要因と判断し、1キャラの3Dモデルは最終進化時のモデルのみとして、初期から見栄えのする3Dキャラを見られるようにしました。用意していた百体以上の3Dモデルがお蔵入りです(笑)。費やした人の数やお金は大きなもので、当時はかなり大きな決断でしたが、結果的に現在では3Dキャラについてのネガティブな意見もほぼないので、良い決断だったと思っています。
―「サキプレ」は実施タイトルも多く実績もあると思いますが、他社比較もできるのでしょうか?
近藤:おかげさまで「サキプレ」の実施タイトル数は50タイトルを超えて(2017年2月現在)、ゲームアプリにおいては業界最大のβテストサービスに成長しました。もちろんどのゲームかなどのタイトル名までは出せませんが、他タイトルの横断比較という面で情報の提供も行わせていただいています。
例えば、「サキプレ」では独自のスコアを算出していて、リリース後のランキング順位から売上予測も出すことができます。このタイトルは「サキプレ」でのスコア300の場合、過去のスコアの近いタイトルのリリース後のランキングから、売上ランキングはこの順位が予想できますというようなアドバイスさせていただいています。
―ワクサガでは売上ランキングの予想はどのように使われたのでしょうか?
佐藤:先ほどお話したように、ワクサガは初の自社パブリッシングタイトルということもあり不安がありましたが、「サキプレ」レポートの売上ランキングの予想から、自分たちの方向性があっているという確信を得ることができたことが一番大きいと思います。
また安心したという部分では、βテストを実施する前には、開発チームでもこの部分に不満がくるかなというのを想定してテストしている部分もありますが、その部分がユーザの意見と一致したことも自信となりました。
―マーケティングの部分で「サキプレ」を利用したことはありますか?
佐藤:「サキプレ」でいただいたユーザの意見をフィードバックレポートとしてティザーサイトに公開しました。今では多くの会社で実施されている施策ですが、当時としてはあまり実施されている会社がなかったと思います。リリース前の盛り上がりを作るという意味でも良かったと思います。
―「サキプレ」を実施するにあたりゲーム会社様が気を付けることなどあるのでしょうか?
近藤:やはりクリティカルなバグなどによってユーザがプレイできなくなるような状況はなくしていただきたいです。起動できない、強制終了などユーザがプレイできない状況になると、アンケートでのユーザの回答がプレイできないという批判に集中してしまい、結果としてゲームそのものについてのユーザの意見が取得できないことがあります。ゲーム会社様にはプレイできなくなるようなクリティカルバグはサキプレ実施前になくしておいていただきたいです。
佐藤:バグという部分でいうと、事前に弊社でもデバッグは行いましたが、「サキプレ」によって明らかになったバグもいくつかありました。「サキプレ」ではバグの発生したユーザの端末やバージョンなどもわかるので、弊社で再現してみて確認もできます。社内のデバックでは見つからないバグ見つけることができるという部分でも「サキプレ」はとても役立ちました。
―「サキプレ」のサービスは今後も使っていきたいと思っていますか。
佐藤:はい。今後も「サキプレ」を活用していきたいと思っています。一番良かったことは「サキプレ」によってアプリの良い点がわかり、明らかとなった課題をなくすことで、自信を持ってリリースを迎えられました。やはりゲームはプロデューサーをはじめとしたチームが納得いく状態でリリースすることがとても重要だと思います。
一方でワクサガをリリースしてからわかったことですが、数値バランスの部分などサキプレのレポートからもっとここを直しておけば良かった、こうしておけば良かったという部分はたくさんありました。ワクサガの経験を次に活かせば、サキプレのレポートをより活用できるのではないかと思っています。コストの部分で見ても「サキプレ」は費用対効果以上のメリットはあると思います。正直に言うととても良いサービスなので、他の会社さんには使ってほしくはないですが(笑)、「サキプレ」については、特に自社パブリッシングが初めての会社などは実施するべきだと思います。
―最後に読者のかたへのメッセージをお願いします。
佐藤: ワクサガは今春で配信開始から1周年を迎えます。ユーザの皆様に引き続き楽しんでいただけるようにイベントなど様々な企画を準備していますので、ぜひご期待ください。またコラボなども行っていきたいと思っていますので、ゲーム会社様からのご連絡もお待ちしております。ディレクターやエンジニアなどの採用も積極的に行っていますので興味のある方はお願いします。
近藤:AppBroadCastはワクサガでは「サキプレ」だけではなく、事前登録までフォローすることでリリース後のユーザ様の囲い込みにも協力させていただきました。ぜひプロモーション施策としてゲームギフトをご活用ください。
―ありがとうございました。
今回SocialGameInfoでは、アクセルゲームスタジオ株式会社執行役員/事業推進部部長の佐藤竜史氏と株式会社AppBroadCastビジネス企画室プロデューサーの近藤塁氏にインタビューを実施。『ワクサガ』はどのような施策を行い、成熟市場の中でヒットタイトルになることができたのか、話を伺ってきた。
■アプリの良い点、課題点が明確になる「サキプレ」
アクセルゲームスタジオ株式会社
佐藤竜史氏(写真右)
株式会社AppBroadCast
近藤塁氏(写真左)
――:本日はよろしくお願いいたします。
佐藤氏(以下、佐藤):よろしくお願いいたします。私はワクサガには、マーケティング・プロモーションの責任者として関わっています。具体的には、プロモコンセプトやプロモーション方法などをゲームの開発チームと一緒になって考えています。
――:すでにご存じのかたも多いと思いますが『ワールドクロスサーガ』について改めて紹介をお願いいたします。
佐藤: ワクサガは時をテーマにした戦略型の対戦RPGです。物語も時間をテーマに進んでいきますが、バトルシステムも時間をテーマにしており、時間軸を可視化したタイムラインにキャラクターのコマンドを入力していきます。ターンバトルは先行が有利の場合が多いのですが、タイムラインによってそれを覆すようなバトルが展開できる点と、キャラクターのステータスだけに左右されない戦略バトルが楽しめるようになっている点が特徴になっています。
―リリース前のワクサガのプロモーション戦略において、どのようなことを考えられていたのでしょうか?
佐藤:弊社は他社様と組んで、協業でゲームアプリを作ってきたことはあったのですが、弊社単体でアプリを出すのはワクサガが初めてでした。つまりワクサガが初の自社パブリッシングタイトルとなります。そのような状況だったので、手探りで情報を集め、試行錯誤しながら初動のプロモーションをどう仕掛けていくかを考えていました。
ワクサガ以前は自社に加えて協業先様からもゲームに対する意見をもらえる環境でしたが、ワクサガに関しては、自分たちだけで出来の良し悪しを判断しなくてはなりませんでした。そのような自信がない状況で何か後押ししてくれるものがあればと思ってβテストを行うことは必須という判断をしました。
―βテストの実施にあたり株式会社AppBroadCast様の「サキプレ」を利用されたということですが、どうして「サキプレ」を利用されたのでしょうか?
佐藤:いくつかβテストのサービスがあるなかでAppBroadCast様のβテストサービス「サキプレ」を選んだのは、実施後のレポートがとても魅力的だと思ったことが大きな要因になります。ユーザの意見をしっかり分析してビジュアル化してくれていて、経験の少ない僕らにもわかりやすいレポートはとても助かりました。
近藤氏(以下、近藤):「サキプレ」のレポートはわかりやすさを重視してグラフや表などを使ってまとめています。ゲーム会社様の場合はリリース前はやることが多く、リソースも足りないことが多いと思います。サキプレは、弊社メディアの「ゲームギフト」を利用したβテストのユーザ獲得からアンケートの実施、回収、アンケートの集計からレポート作成まですべて弊社で行わせていただいています。
佐藤:「サキプレ」を選んだもうひとつの理由はゲームユーザを集めることができる点です。ワクサガはタイムラインのシステムを使うことから、カジュアルなゲームではなくミドルコア向けのゲームだと考えていました。そのためβテストはゲームリテラシーの高い人にプレイしてもらい意見を聞きたいという意向がありました。その点でもゲーム好きユーザが集まる「ゲームギフト」でのβテストである「サキプレ」は適していたと思います。
―実際に「サキプレ」でβテストを実施し当初から大きく変更のあった部分はあったのでしょうか?
佐藤:大きく変えた部分のひとつとして3Dキャラのクオリティを見直したことです。実はワクサガはβテストの時点では、進化前、進化後の全レアリティごとに個別の3Dモデルを用意していました。しかし「サキプレ」では3Dキャラの評価が低く出てしまいました。ユーザが初期に手にするのは、進化前(レアリティの低い)キャラなので3Dモデルもシンプルになりがちです。
低評価はそこが要因と判断し、1キャラの3Dモデルは最終進化時のモデルのみとして、初期から見栄えのする3Dキャラを見られるようにしました。用意していた百体以上の3Dモデルがお蔵入りです(笑)。費やした人の数やお金は大きなもので、当時はかなり大きな決断でしたが、結果的に現在では3Dキャラについてのネガティブな意見もほぼないので、良い決断だったと思っています。
―「サキプレ」は実施タイトルも多く実績もあると思いますが、他社比較もできるのでしょうか?
近藤:おかげさまで「サキプレ」の実施タイトル数は50タイトルを超えて(2017年2月現在)、ゲームアプリにおいては業界最大のβテストサービスに成長しました。もちろんどのゲームかなどのタイトル名までは出せませんが、他タイトルの横断比較という面で情報の提供も行わせていただいています。
例えば、「サキプレ」では独自のスコアを算出していて、リリース後のランキング順位から売上予測も出すことができます。このタイトルは「サキプレ」でのスコア300の場合、過去のスコアの近いタイトルのリリース後のランキングから、売上ランキングはこの順位が予想できますというようなアドバイスさせていただいています。
―ワクサガでは売上ランキングの予想はどのように使われたのでしょうか?
佐藤:先ほどお話したように、ワクサガは初の自社パブリッシングタイトルということもあり不安がありましたが、「サキプレ」レポートの売上ランキングの予想から、自分たちの方向性があっているという確信を得ることができたことが一番大きいと思います。
また安心したという部分では、βテストを実施する前には、開発チームでもこの部分に不満がくるかなというのを想定してテストしている部分もありますが、その部分がユーザの意見と一致したことも自信となりました。
―マーケティングの部分で「サキプレ」を利用したことはありますか?
佐藤:「サキプレ」でいただいたユーザの意見をフィードバックレポートとしてティザーサイトに公開しました。今では多くの会社で実施されている施策ですが、当時としてはあまり実施されている会社がなかったと思います。リリース前の盛り上がりを作るという意味でも良かったと思います。
―「サキプレ」を実施するにあたりゲーム会社様が気を付けることなどあるのでしょうか?
近藤:やはりクリティカルなバグなどによってユーザがプレイできなくなるような状況はなくしていただきたいです。起動できない、強制終了などユーザがプレイできない状況になると、アンケートでのユーザの回答がプレイできないという批判に集中してしまい、結果としてゲームそのものについてのユーザの意見が取得できないことがあります。ゲーム会社様にはプレイできなくなるようなクリティカルバグはサキプレ実施前になくしておいていただきたいです。
佐藤:バグという部分でいうと、事前に弊社でもデバッグは行いましたが、「サキプレ」によって明らかになったバグもいくつかありました。「サキプレ」ではバグの発生したユーザの端末やバージョンなどもわかるので、弊社で再現してみて確認もできます。社内のデバックでは見つからないバグ見つけることができるという部分でも「サキプレ」はとても役立ちました。
―「サキプレ」のサービスは今後も使っていきたいと思っていますか。
佐藤:はい。今後も「サキプレ」を活用していきたいと思っています。一番良かったことは「サキプレ」によってアプリの良い点がわかり、明らかとなった課題をなくすことで、自信を持ってリリースを迎えられました。やはりゲームはプロデューサーをはじめとしたチームが納得いく状態でリリースすることがとても重要だと思います。
一方でワクサガをリリースしてからわかったことですが、数値バランスの部分などサキプレのレポートからもっとここを直しておけば良かった、こうしておけば良かったという部分はたくさんありました。ワクサガの経験を次に活かせば、サキプレのレポートをより活用できるのではないかと思っています。コストの部分で見ても「サキプレ」は費用対効果以上のメリットはあると思います。正直に言うととても良いサービスなので、他の会社さんには使ってほしくはないですが(笑)、「サキプレ」については、特に自社パブリッシングが初めての会社などは実施するべきだと思います。
―最後に読者のかたへのメッセージをお願いします。
佐藤: ワクサガは今春で配信開始から1周年を迎えます。ユーザの皆様に引き続き楽しんでいただけるようにイベントなど様々な企画を準備していますので、ぜひご期待ください。またコラボなども行っていきたいと思っていますので、ゲーム会社様からのご連絡もお待ちしております。ディレクターやエンジニアなどの採用も積極的に行っていますので興味のある方はお願いします。
近藤:AppBroadCastはワクサガでは「サキプレ」だけではなく、事前登録までフォローすることでリリース後のユーザ様の囲い込みにも協力させていただきました。ぜひプロモーション施策としてゲームギフトをご活用ください。
―ありがとうございました。
会社情報
- 会社名
- アクセルマーク株式会社
- 設立
- 1994年3月
- 代表者
- 代表取締役社長 松川 裕史
- 決算期
- 9月
- 直近業績
- 売上高21億4400万円、営業損益9800万円の赤字、経常損益1億円の赤字、最終損益1億200万円の赤字(2023年9月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3624