【インタビュー】「自分自身をさらけ出して挑戦できる」…『♯コンパス』開発経緯より探るNHN PlayArtの制作環境や求める人物像とは
現在NHN PlayArtでは、様々な職種において採用に力を入れている。
NHN PlayArtは、2014年にLINE<3938>、ディズニーと共同で開発・運営している『LINE:ディズニーツムツム』を始め、様々な人気スマートフォンゲームを開発している企業だ。
2016年12月には『#コンパス~戦闘摂理解析システム~』(以下、『♯コンパス』)をリリース。このタイトルはNHN PlayArtがゲームシステムの開発・運用を手がけ、ドワンゴが同社の動画サービス「niconico」で活動するクリエイターによるIP制作や独自SDKを搭載するなど、両社の強みを生かしながら、ゲームの企画開発からデザイン、音楽制作、ゲーム実況にいたるまで行っている。
本作では「1バトル3分間」で仲間とチームを組み、他プレイヤーのチームと3x3のバトルで、ステージに配置された拠点を奪い合うリアルタイム対戦ゲーム。アクションゲーム、戦略ゲーム、カードゲームの要素を、3分に凝縮して詰め込んだ、まったく新しいジャンルの対戦ゲームとなっている。
本稿では、『#コンパス』のプロデューサーであるNHN PlayArtのStudio51 エグゼクティブプロデューサーの林 智之氏や同社採用担当に話を伺い、同社におけるゲーム作りの考え方や、現場で求めている人材について話を伺った。
■「自分自身をさらけ出して挑戦できるゲーム業界であってほしい」
株式会社NHN PlayArt
Studio51
エグゼクティブプロデューサー
林 智之氏
──本日はよろしくお願いします。林さんは『#コンパス』のプロデューサーとのことですが、ご経歴等を最初に教えてください。
私自身がゲームを作り始めて今年で約15年になりました。新卒のときに大手コンシューマーゲーム会社に入社、ゲームのディレクション等を行い、その後別のコンシューマーゲームの開発会社に在籍をし、2013年にNHN Japanに入社しました。その後NHN JapanがNHN PlayArtと社名を変更し、スマートフォンゲームの開発に関わることになります。NHN PlayArtでは初となるスマートフォンタイトルを担当しました。
当時、いろいろ開発の面でチャレンジさせてもらい、ユーザーさんからの評判も良いながらも残念ながら売上を向上できず、終了してしまいます。その頃に『#コンパス』の開発を始めた形になります。『#コンパス』では、過去作の開発メンバーと共に、比較的すぐにプロトタイプを制作し製品化することができました。
──『#コンパス』では、最近のスマートフォンゲームでは珍しくバーチャルな世界観となっております。どういった経緯でそういった世界観を採用したのでしょうか?
まず始めに、対戦ゲームを作りたいという希望がありまして、対戦を軸に考えておりました。そして、その対戦一つ一つにお客さんに集中してもらいたいというのがありました。例えば、ファンタジーの世界で重々しい世界で対戦をしても、世界観が邪魔してしまい対戦に集中できないのではないかと思いまして、なるべくソリッドな世界で対戦を楽しんでもらえるようなゲーム作りを目指しました。
チームでアイディアを出し合った際に、意見として出たのが「バーチャル・SNSの空間」です。プレイヤーがそこに集まって対戦を楽しむという、ゲーム内と現実がリンクしたような世界観が生まれました。
──スポーツの試合に近い形ですね。
そうですね。なぜ対戦をしているか、なぜ戦っているかわからないけれど、ここに競技として楽しいものがあるから遊ぼうよ、という形で遊んでもらっています。
──「SNSの空間」というお話がありましたが、『#コンパス』は、あのニコニコ動画のドワンゴさんとの共同開発のタイトルですが、こちらはどのような経緯で共同開発という形になったのでしょうか?
最初はNHN PlayArtで「プロトタイプ」の開発を始め、制作を続けていました。その後開発から3、4ヶ月たった段階で、面白いゲームができてきたという手応えを感じたので、次の段階である「どうやって多くのユーザーに遊んでもらうか」ということを考え始めました。
普通に考えれば、有名なイラストレーターさん、声優さんを起用するという選択肢があると思います。ですが、『#コンパス』はSNSの中という世界観です。ゲーム内にいろいろな人が集まってくる雰囲気を作りたいなと考え、ニコニコ動画で活躍されているボカロPやイラストレーターがキャラクターを生み出してくれたら面白いな、と思いドワンゴさんに声をかけさせていただいたのがきっかけとなります。開発から半年たったくらいからドワンゴさんと合流し、一緒に世界観を構築してきた形になります。
──本作では、昨今タイトル達と違った独特な世界観の他にも、豊かな3DCG表現が特徴にあげられるかと思います。主に3Dのグラフィックの部分でこだわり等はありますでしょうか。
僕自身がゲーム会社に入った頃は、PlayStation2の全盛期で様々な3Dのゲームが作られており、やはりそれに倣って僕も3Dゲームを作っておりました。スマートフォンゲームを開発するにあたり、スマートフォンで綺麗に見せるのはどうすればいいのだろうか?という試行錯誤をしましたね。
試行錯誤する中で、スマートフォンでは意外とポリゴンは綺麗に作ることができますが、リアルなテクスチャーはスマートフォンでは難しいという結果がでました。PlayStation4でリリースされているようなリアルなゲームを、大きなテレビでプレイする分には綺麗なのですが、これを小さな画面に表示させるとどこが背景でどこがキャラクターなのかわからなくなってしまいます。そこで『#コンパス』では、画面の情報量を減らし、ポリゴン数は多く使うけれど質感を省いたアニメ調の表現を使うことにしました。
──グラフィック以外のこだわりポイントがあれば教えてください。
『#コンパス』はアクションゲームということで、少し難しく感じるユーザーさんがいらっしゃると思います。僕がスマートフォンのゲームを作り始める少し前までは、多くの人に遊んでもらえる、誰でも遊べるということを重要視している開発者さんが主流で、今でもそれを意識されている会社が多いと思います。そのフィールドで勝負しても、僕自身が根っからのゲームオタクなのでとても太刀打ちができない。だったらゲーム好きにターゲットを絞って作ろうと思いました。
ただ、そうなってしまうと「じゃあPlayStatios4でゲームをしたほうがいいじゃん」となってしまいます。誰でも遊べるゲームとゲーム好きに向けたゲームの間をさがして見つけたのが、「リビングの大きなテレビでハードコアなゲームをプレイしたいけどめんどくさい」と感じる人たちに向けて、「片手でソファーに座ってテレビを見ながらプレイできるゲーム」を提供することでした。
気がついたらテレビを見ずにずっとゲームをプレイしちゃっているような、とにかく入り口は広く、片手ですぐ遊べてマッチングもすぐできて、でも中身はゲーム性を豊かにして熱中できるようなものを目指しました。
──様々なこだわりを詰め込んで2016年の12月にリリースされた『#コンパス』ですが、リリース当初の反響はいかがだったでしょうか。
おかげさまで、新規IPのゲームとしては大きな反響をいただきました。サービス開始前から毎週ニコ生を実施しておりまして、ゲームの世界観がいろんな人があつまる空間、SNSの世界だったのでいろんな人の意見を集めたく、ニコ生にて著名な実況者の方にプレイしてもらって、ゲームについて意見してもらうということを行いました。
ゲームがどんどんよくなっていく過程をユーザーのみなさまに見てもらっていたので、実況者さんの人気も相まってとても良いスタートを切ることができました。
──リリースした当初からセールスランキングにも度々登場していましたね。
おかげさまでかなり良い数字が出ています。App Storeの「トップセール(総合)」にて6位を獲得し、200万ダウンロードを突破しました。対戦ゲームで、少し難しい『#コンパス』はお客さんを選ぶゲームだと考えておりました。また、ゲーム開発者の中で「日本人は対戦が好きではない」、「トゥーンシェーダーのゲームは流行らない」と言われている中で、若干ビクビクしながらのリリースだったのですが、ゲームにとって一番良い表現の選択をできたと思います。
──バーチャルな世界観の対戦ゲーム、さらにアニメ調のグラフィックということで、実は競合がいなく開拓の余地があった市場かもしれません。
確かにあまり競合がいないジャンルではあります。ですが開発当初にそれを狙ったわけではありません。ゲーム製作者として、何か他のゲームをコピーする必要はありませんし、常に新しい遊びを提供するのが我々の使命です。新しい遊びを提供し、その遊びが評価されたのだと感じております。
──最後になりますが、現在『#コンパス』で遊んでいるユーザーの方々、そして、NHN PlayArtへの入社を考えている方へ向けたメッセージをお願いします。
『#コンパス』は、まだまだ成長段階のゲームです。ユーザーのみなさまの意見を取り入れるという点では、まだ未完成なゲームだと思います。開発・運営としてもゲームをより面白くするために様々な仕掛けを仕込んでおりますが、ユーザーのみなさまからのメッセージをいただければ、すべて反映するわけにはいきませんが、それを元にチューニングし、ゲームをより良いものにしていきたいと考えております。
ゲームを作るという点に関しては、これから『#コンパス』のような新しいジャンルのゲームがどんどん世の中に出てきてほしいと思っております。「これが流行っているから作ろう」と思って作ったゲームが売れなかったら後悔しかないし、だったら好きなものを作って売れない方がまだいいかと思います。
NHN PlayArtは筋さえ通せばいろんなことに挑戦させてくれる会社です。それは『#コンパス』が証明しています。自分自身が面白いと思ったもの、自分自身をさらけ出して挑戦できるゲーム業界であってほしいと、個人的には思っております。ですので、様々なことに挑戦したい方にNHN PlayArtの門を叩いてほしいと感じています。
──ありがとうございました。
■「面白いゲームを作るのは、面白い人達」
NHN PlayArt
ゲーム制作室
アートディレクター兼デザイナー選考担当
竹内 晃朗氏(写真右)
Studio Hi-WORKS 開発兼エンジニア選考担当
山田 陽平氏(写真左)
──よろしくお願いします。お二人はデザイナーとエンジニアにおける採用の業務も兼務しているとのことですが、採用以外ではどんな業務を行っているのでしょうか。また、ご経歴などを簡単に教えてください。
竹内氏:デザイナーを統括するチームにてマネージャーをしております。普段はそれぞれゲームの開発チームに所属し、通常業務として開発工程でのマネージメント等を行っています。現在は新作のタイトルを担当しております。
経歴としては、社歴が古くて13年ほどNHN PlayArtに在籍しており、ゲームのポータルサイト「Hangame」等を経て、現在はスマートフォンゲームを開発しております。
山田氏:僕はエンジニアを統括するチームに所属しております。『妖怪ウォッチ ぷにぷに』の開発に携わっておりまして、がっつり現場の人間になります。
僕も社歴が長く、PCのオンラインゲームがとても流行っている時期に、ポータルサイト「Hangame」に魅力を感じて入社しました。
──実際に現場で活躍しているお二人ですが、NHN PlayArtにおけるゲーム作りの考え方で特徴的なものがあったら教えてください。
竹内氏:ポータルサイト「Hangame」ではカジュアルなゲームを多く手がけてきたということもあり、広いユーザー層に向けたゲーム作りが得意かなと思います。最近であれば、『LINE:ディズニー ツムツム』等がそうです。
デザイン的なことに関しても、『LINE:ディズニー ツムツム』のように、カジュアルで可愛くて、いろいろな人に受け入れられるデザインが得意な人が比較的多く在籍しております。ただ、最近では『#コンパス』のようにスタジオごとに特徴が出初めてきております。
山田氏:エンジニアでも同じで、カジュアルゲーム開発の経験からでも広い層のユーザーのことを考える人が多いのが特徴だと思います。広く遊んでもらうゲームを作るという意識が強く、どんなゲームを作るにしても、どんなお客さんでも遊べるものを作るということを意識しています。
──実際の現場で働いている方の特徴を教えてください。
竹内氏:『妖怪ウォッチ ぷにぷに』のアートディレクターがいるのですが、もともと映像に強い方です。もちろんゲーム制作も行っているのですがプロデューサーと一緒になって版元との調整を行っていたりしていました。本人曰く、映像とゲームの両方を同時に担当した時期もあり大変ではあったようですが、スキルがある方が幅広い分野で活躍された一例かと思います。
山田氏:プログラマーやデザイナーがディレクションする立場に成長できることが特徴です。もともとチーム一丸となって企画のアイディアを出すような文化でもあったので、その結果ディレクション等ができるようになった背景ですね。
竹内氏:また、少し前に中途で入社されたエフェクト特化型のデザイナーが最近入社したのですが、最近ゲームの企画書を制作し、社長の承認まで通ったので近々動き始める予定です。どのような経歴な人でも、筋が通せて面白い企画であれば、会社としてもバックアップは惜しみません。
山田氏:この業界のゲーム作っている人って意外とゲームに対して真面目な方が多く、「どうやったら面白くなるのだろうか」を常に考えています。ゲームが好きで、ゲームに対して思いが強い分しっかり作ろうと考えている人が多いですね。
──現在NHN PlayArt内ではどういった経歴を持った方が多いのでしょうか。
竹内氏:基本的に中途で入社した方はゲーム制作経験のある方達です。
山田氏:そうですね、長年ゲーム畑で働いてきた人が多くなってきている印象があります。
竹内氏:我々としても実際に現場でゲームを作っていた方、ゲーム制作を志向されている事を重要視し、採用しております。
──実際にはどういった方を採用しているのでしょうか?
竹内氏:単純ですがゲームが好きな方にきてほしいと思っております。
山田氏:この部分はとても重要で、面接中に会話をしていて「この人本当にゲームが好きなんだなあ」と感じられる人のほうが魅力的に感じますし、実際に入社してからも活躍される方が多くいらっしゃいます。
ゲーム作りはとても大変な仕事です。ゲームを遊んでいるのは楽しいのですが、作っている時、実際何が「おもしろい」のかというのを試行錯誤する作業はとても辛く大変です。そんな辛い状態の中でも、ゲームへのモチベーションが高くもつというのは「ゲームが好きだ」というところに尽きると思います。ですので、面接の際はそういったところを拝見させていただいております。
竹内氏:また、現場でもいろんなことに関わっていく人が活躍する文化なので、いろいろなものに感度が高い人が入社したときも活躍しやすいと思います。
──実際のスキルに関してはいかがでしょうか?
竹内氏:例えば他社さんの3Dデザイナーだと、モーション特化型デザイナー、モデル特化の方と分けているところもありますが、弊社の場合は、両方のスキルを持っていてほしいと考えております。そういう具合で2スキルセット程持っていらっしゃる方の方が弊社の現場にはフィットしやすいかと考えております。
山田氏:エンジニアですと、最近の流れだとunityでしたり、3Dができる方が重宝されるようになってきました。弊社としても3Dのゲームを作るにあたって、そういったことができる方の採用を積極的にしていきたいです。
コンシューマーゲームで3Dをやってきた人が、もう直接的なことを言ってしまうと「欲しい」です(笑)。
──実際のオフィス環境についてお伺いします。どういった環境でみなさん作業しているのでしょうか?
竹内氏:デスクは個人のスペースを広くとっており、椅子も、快適にデスクワークをするためにアーロンチェアを1人に1つ支給しており、かなりいい環境だと思います。
山田氏:パーテーションが設置されているのですが、このパーテーションも工夫がされており、作業中は前の人の目線が気にならないように、少し立ち上がれば周りの人に話しかけやすい高さになっています。
竹内氏:社内にビル共用トイレとは別にトイレを増設していたり、社内カフェにてお弁当の販売があったりと、ゲーム開発に集中できる環境が整っていると思います。
弊社はオフィス移転が多かったので、引越しに伴い業務環境が徐々に洗練されてきたようにも思います(笑)。
山田氏:エンジニアの方が一番気になるマシンスペックですが、弊社では最新のiMacを支給し、ビデオカード等もかなり性能の高いものを用意しております。
すべて、開発者に合わせ、社内の環境が整えられている状態になっています。
──最後になりますが、これからNHN PlayArtにチャレンジしたいと考えている方、Social Game Infoの読者の方々にメッセージをお願いします。
竹内氏:先ほどもお話しした通り、NHN PlayArtは、なんでもやりたがりの人が受け入れてもらえる、職種の枠を超えて活躍ができる会社です。そういった環境を求める方には是非、NHN PlayArtに興味を持っていただければと思います。
山田氏:面白いゲームを作るのは、面白い人達です。弊社であれば絶対面白いゲームが作れると、自信を持って言えます。面白いゲームを作りたい、ガッツのある人、待ってます!
■『#コンパス~戦闘摂理解析システム~』
©NHN PlayArt Corp.
©DWANGO Co., Ltd.
会社情報
- 会社名
- NHN PlayArt株式会社
- 設立
- 2015年10月
- 代表者
- 代表取締役社長 丁 佑鎭
- 決算期
- 12月