ソニー・インタラクティブエンタテインメントの子会社フォワードワークスが、万を持して7月4日にリリースした第1弾タイトル『みんゴル』。言わずと知れたゴルフゲーム「みんなのGOLF」シリーズのスマートフォン向けタイトルとして誕生した本作は、配信開始から4ヶ月足らずで400万ダウンロードを達成。その実力をいかんなく発揮している。
今回はそんなヒットを受け、今作で総合プロデューサーを務めるキーマン・川口智基氏にインタビューを行い、現在の状況、そして近いタイミングで発売されたPlayStation ®4用ソフト『New みんなのGOLF』との関係性など、さまざまな質問をぶつけてきた。
■『みんゴル』の分かりやすさを全面に出した戦略
『みんゴル』総合プロデューサー
川口 智基氏
――本日はよろしくお願いします。実はSocial Game Infoがフォワードワークスさんに単独の取材をするのはこれが初めてですね。
そうなんですよ!ちょっと意外ですよね。
――そうですよね(笑)。というわけなので、まずは川口さんが『みんゴル』内でどのような業務に携わっているのか、基本的なところから教えてもらっていいですか。
はい、よろしくお願いします。私はスマホアプリ『みんゴル』で総合プロデューサーとして、プロジェクトの立ち上がりから開発、運営をトータルで見ている立場です。開発と運営は今回のパートナー企業であるドリコムさんとともに行っていて、リリース以降も、ドリコムさんとは密にお話をさせていただいています。
――「みんなのGOLF」シリーズといえばゲームファンなら知らない人はいない人気IPですが、これをスマートフォンで展開することになった、そもそものきっかけはなんだったのですか?
フォワードワークスは昨年4月に設立しましたが、当初から「SIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)のIPを活用しよう」という考えがありました。プレイステーションに触れたことはないけど、モバイルではゲームを遊ぶ方は大勢います。
そういった方々にもSIEの誇るIPを楽しんでもらうことを目標として、特に日本のゲームファンにはなじみの深い「みんなのGOLF」を第1弾タイトルとしてリリースすることにしました。
――ということは、フォワードワークスさんの第1弾タイトルが『みんゴル』になるのは、かなり早い段階で決まっていたと。
そうですね。会社の設立前から様々な準備を進めていましたが、そのときから「最初は『みんゴル』」と決めていました。SIEがフォワードワークスワークスを設立しモバイルゲームを展開するとなったとき、ゲーム業界の方々、そしてユーザーの方々の中で「どんなことをするのか」が大きな話題となっていました。
そうなると、第1弾タイトルでは私たちがやりたいことを体現できるタイトルでなければいけません。「みんなのGOLF」というIPを活かし、それを最適な形でユーザーさんに届けることを目指しました。
――先日400万ダウンロードを達成して、好調な印象を受けますが、手応えはいかがですか?
想定していたより早いスピードで多くのユーザーさんが遊んでくださっています。あらためて「みんなのGOLF」というIPの偉大さを実感しています。
――この好調の要因は、川口さんはどこにあると考えていますか?
やはり分かりやすいということが大きいと思います。テレビCMでも「スマホで『みんゴル』」という分かりやすいメッセージを強調しました。ゲームを多少なりとも知っている人なら、これだけでどんなゲームかを想像いただける。ゲーム内容を想像しやすいから、手に取りやすいという状況を作れたのだと思います。
タイトルをストレートに『みんゴル』にしたのも同じ理由です。「みんなのGOLF」シリーズはファンからは「みんGOL」の略称で呼ばれていて、愛着があるネーミングですよね。例え略称であってもゴルフゲームであることは分かってもらえます。こういったところでも、シリーズが培ってきた歴史、偉大さを感じましたね。
――なるほど、ちなみに、『みんゴル』をプレイしている層は、どんな人が多いのでしょう。
やはり最初はシリーズを遊んでいる方、あるいは昔は遊んでいたけど、最近休んでいた方も多い印象です。今はそこからさらに広がって、初めてゴルフゲームを遊ぶという方にも徐々に広がってきています。
――現在はライトユーザーを取り込むフェーズに入って来ていると。
プレイステーションで『みんなのGOLF』が発売されたとき、実際のゴルフをプレイしない人も大勢巻き込みましたよね。それと同じ現象が『みんゴル』でも起きているのかと思います。ゴルフゲームをプレイしたことのない方にももっと触れていただきたいですね。
――開発を担当したドリコムさんからもゲーム内容に対する提案はあったのですか?
ドリコムさんの中に「みんなのGOLF」のファンがとてもたくさんいて、プロジェクトに参加したメンバーの中にもファンが大勢入ってくれました。そんな方たちですから、スマホで「みんなのGOLF」を遊ぶならどうしたいかという構想を常に持たれていたようです。特に操作面でのアイディアは非常に多く出してもらいましたね。
――アイディアは実際のゲーム内にも活かされているのですね。
はい。ドリコムさんのスタッフはスマートフォンのゲームを多数開発してきて、その経験を充分に活かしてくれました。私たちは私たちで、「みんなのGOLF」の面白さや気持ちよさを追求してきました。両社のやってきたこと、やりたいことが形になったのが、今の『みんゴル』なのです。
――そもそもドリコムさんとは、どのようなきっかけて巡り合ったのですか?
私たちはこれまでプレイステーションのビジネスを通して多くの多くのメーカーさんとやり取りする機会は当然ありましたが、スマートフォンを中心にゲームを開発するメーカーさんとの接点は少なく、フォワードワークス設立に合わせてさまざまなメーカーさんとお話をする機会を作りました。そこでドリコムさんとお話をした際に、先ほど話したとおり、『みんゴル』への愛情をとても積極的に語ってくれて、こちらからお願いすることになりました。
――フォワードワークスさんとしても、作品に愛情を持っているメーカーを求めていた面はありますよね。
そうですね。ビジネスとしての視点はもちろん大切ですが、IPに対する情熱を持っているスタッフとともに作ることもとても重要だと思います。今作はドリコムさんとのシナジーによって実現できた作品だと、今あらためて感じています。
■「みんなのGOLF」がそれぞれのデバイスで楽しめる工夫を
――「みんなのGOLF」シリーズといえば、8月にはPS4でも新作(『New みんなのGOLF』)が発売されましたよね。
7月4日に『みんゴル』をリリースしましたが、その約2ヵ月後の8月31日にPS4版の『New みんなのGOLF』がSIEから発売されました。2ヶ月弱という近いタイミングでのリリースになりましたが、今回はゲーム的な連動は取り入れていません。
スマートフォンでゲームを楽しむシーンとPS4でゲームを楽しむシーンは異なりますし、『みんゴル』はPS4でできることの一部を切り取ってスマートフォンに持ち込む、というコンセプトはありませんでした。
逆に、スマートフォン版の延長線上にPS4版があるということでもなく、それぞれの作品がそれぞれのデバイスで最高の体験を提供することを目標にしていましたね。
――連動しないことが、むしろお互いの良さを引き出していると。
無理に連動させると、それがゲームを進めていく上での障壁になってしまうケースも考えられます。それに両方をプレイしている人だけが有利になるというような環境も作りたくはありませんでした。スポーツゲームである以上、競技性や公平性も重要なポイントです。片方しかプレイしない人が不利だと感じるのも良いことではありませんからね。
ただ一方で、プロモーション面での強力に連携することができたので、リリース時期が近かったことは、お互いにとって良かったと考えています。
――スマートフォンならではの体験という意味では、これまでのコンシューマ版とどのように差別化を図ろうと考えていましたか?
まずは、コンシューマ版の開発スタッフに監修をしてもらい、シリーズの持ち味はスマホでも表現できるように努力しました。そのうえで、スマートフォンというデバイスで遊んでもらうためのゲームプレイの最適化を進めました。
例えば、普通のゴルフは全18ホールを回ってスコアを競いますが、それではちょっとした移動時間でのプレイには向きません。1ホールずつクリアしていくほうがマッチすると考え、18ホールプレイしないように変更を加え、現在のシステムになりました。
もうひとつ、ショット時の操作方法も大きくカスタマイズしたポイントです。「みんなのGOLF」シリーズではタイミングに合わせてボタンを3回押すシステムが確立していますけど、スマートフォンではどうするべきか、試行錯誤しました。
――しかし結果的には、コンシューマと同じ感覚をスマートフォンで再現できていますよね。
引っ張って離すという現在のシステムは、多くの時間を費やして新しく発明したものです。おかげさまでユーザーさんからの反応も良く、安心しています。
――逆にスマートフォンであっても外せない、「みんなのGOLF」の芯となる部分はどこだと考えていましたか?
やはりショットの気持ち良さですね。ボールを打って飛ばすというシンプルなアクションの中で気持ち良さを演出するためのノウハウは、20年に渡る「みんなのGOLF」シリーズで培ってきたものです。システムが変わっても、そのノウハウは存分に活かされています。
――川口さんとしては、PS4版とスマートフォン版はどのような関係性にあると考えていますか?
あくまでも別の作品で、どちらかを遊べば満足、という内容にはしていないつもりです。それぞれで違った楽しさがあると思いますし、欲を言えば両方をプレイしてもらいたいです。「みんなのGOLF」シリーズへの接触時間を増やすことが、私たちの目標でもあります。
――生活の中に溶け込むために、2つの展開があると。
そのとおりです。当然PS4だけで遊ぶ人もいれば、スマートフォンだけで遊ぶ人もいるはずです。その人に合った環境で、新しい「みんなのGOLF」を楽しんでもらえればと思っています。
――そういえば『New みんなのGOLF』発売記念キャンペーンもかなり大々的に行っていましたよね。こちらの反響はいかがでしたか?
シリーズでおなじみのキャラクターも登場して、さらにそのキャラクターになれるアイテムが手に入るということで、過去の作品をプレイしている方からは特に好評でした。先ほどもお話したとおり、本作をプレイしているユーザーはシリーズ経験者も多い状況ですので、とても熱狂していただけましたね。
――こうしたプロモーション面での連動は、今後も行っていくのでしょうか。
具体的なことをお話できる段階ではありませんが、両作品とも非常に多くの方に楽しんでいただいていますので、今後も続けていきたいと思っています。それをできることが、フォワードワークスの強みのひとつでもありますからね。
――これから川口さんがやってみたいことなど、今後の展開についても教えてください。
この4ヶ月の間にもコースやギア・ウェアの追加、イベント開催などで盛り上げてきまして、これらは今後も継続して行っていきます。あとは最大8人で楽しむ「みんなでゴルフ」が先日正式リリースしました。正式リリースではランキングトーナメントモードを新たに追加して、ランキング形式で全国のユーザーとスコアを競い合うことができるようになりました。
――アップデートに関して、ユーザーからはなにか反響があるのでしょうか。
もちろんユーザーさんからはたくさんの意見や要望が届いていて、とても参考になる意見も多いです。アプリの内容もまだまだ良くなる余地があるので、期待してお待ちいただければと思います。
――それでは最後に、フォワードワークスさんとしての今後の目標をお聞かせください。
『みんゴル』はとても多くの方にプレイしていただき、これからももっとお楽しみいただけるよう努力していきます。そして9月には第2弾アプリとして『ソラとウミのアイダ』もリリースしました。こちらはオリジナルIPなので、『みんゴル』とは異なるアプローチでその魅了をお伝えできるよう様々な展開を行っていきます。ぜひ期待して見守ってもらいたいです。
今後もたくさんの作品を用意していますので、それらを通してフォワードワークスをもっと多くの方に知ってもらいたいですね。
――ありがとうございました。
■『みんゴル』
©Sony Interactive Entertainment Inc. ©ForwardWorks Corporation
Developed by Drecom Co., Ltd.
※「PlayStation」および「プレイステーション」は、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標または商標です。
会社情報
- 会社名
- 株式会社フォワードワークス
- 設立
- 2016年4月
- 代表者
- 代表取締役社長 植田 浩