2017年におけるスマートフォンアプリ業界の総決算として、前年から2018年に至るまでの市場動向を総まとめする年始恒例企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2017-2018」。
今回スポットを当てるのは、リリースから約2年半を経て今や不動の人気を確立している『Fate/Grand Order』を始め、2017年には『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』や『きららファンタジア』など、IPタイトルで続々とヒット作を輩出しているアニプレックスだ。
インタビューに応じてくれたのは、同社 企画制作第2グループ 本部長 兼 Quatro A 代表取締役の三鍋尚貴氏。IPタイトルを成功に導く秘訣を始め、アニメ・映像の視点から見た市場振り返り、さらに2018年の展望を語っていただいた。
――本日はよろしくお願いします。まずは三鍋さんの経歴と、現在担当されている業務について教えてください。
もともとはキーエンスという電機メーカーに入り、その後エイベックスへ転職。音楽の販促や映像事業の立ち上げに従事しアニメビジネスに出会いました。その経験を活かして、アニプレックスではビデオパッケージのマーケティング・映像配信・ECなどを担当してきました。2016年にはデジタル事業グループが発足し、私はそこの本部長としてゲーム部門を担当しています。
――2017年のソーシャルゲームやアニメ市場を振り返ってみて、どんな印象がありましたか?
肌で感じている部分としては、ゲームアプリの転換期を迎えた印象があります。一つのタイトルが首位を独占している訳ではなくなり、さまざまな作品がリリースされ、トップが目まぐるしく変化する1年でした。また提供する側からすると、海外の作品がランキングの上位に入ることが目立ちましたね。アジアを中心とした海外のユーザー動向も見ていかないとヒット作が生まれない時代になったのだと感じています。
――海外産アプリの躍進は前々から言われてきましたが、それが実感できる1年だったと思います。
そのとおりです。日本の市場は独自の発展を遂げてきましたが、海外の作品が受け入れられるようになってきました。これは『パズドラ』『モンスト』以降ではなかった動きです。
――なるほど、ではアニメ市場をどう見てきたかについても教えてください。
2016年の『君の名は。』のヒットを受けて、劇場アニメに注目が集まった1年でした。アニプレックスでも『ソードアート・オンライン』『Fate/stay night [Heaven's Feel]』がヒットしましたし、充実した1年だったと思います。あとは『グランブルーファンタジー』など、ゲーム原作のアニメが大きく存在感を示しましたね。ゲーム原作のアニメはこれまでにもありましたが、なかなかヒットに恵まれないのが現実でした。その点でもさまざまなメーカーがチャレンジした1年だと思います。
もうひとつ、TVアニメの総数が減らずに維持しているのも注目に値します。これは海外資本が入ってきたり、AmazonやNetflixの影響だったりといろいろな要因があります。その一方でメーカー側としては、リソースの確保がとても大きなポイントになりました。「作りたいものが作れない」、そう感じることも多かったのが2017年です。
――アニプレックスさんといえば『Fate/Grand Order』にも関わっていますが、こちらはどんな1年でしたか?
2016年末にアニメ特番を放送したところ、非常に好評で、多くの新しいユーザーの皆さんにゲームを始めていただくきっかけにもなりました。ありがたいお話ですが、大変な1年でもありましたね(笑)。7月には2周年イベントを幕張メッセで行いました。ひとつのIPであれだけの大型イベントを行えたのはとてもありがたいことで、日頃から支えて頂いているお客様に感謝致します。
また本作は海外展開も始めまして、北米では自社でパブリッシングしています。海外でも自社パブリッシングというのはゲーム専業のメーカーでも珍しいことで、プレッシャーを感じつつ、良い経験が得られたと思います。
――良い経験というと、具体的にどんな点が挙げられますか?
ゲーム内イベントだけを見ても、国ごとで評価に差があります。自分たちでやったからこそ実感できることも多く、今後の私たちの財産になっていくでしょうね。表現についても、海外では文化的な背景によってファンの受け取り方が変わってくることもあります。丁寧な対応が必要であることはあらためて痛感しましたし、その一方で現地のファンと触れ合う機会が作れたのは嬉しかったですね。
――もちろん『Fate/Grand Order』以外にも、いろいろな動きがあったと思います。
4月にはゲーム制作スタジオとしてQuatro Aを設立し、8月には『マギアレコード』を配信しました。そして12月には『きららファンタジア』もロンチして、作りながら走り続けた印象が強いです。
――ゲームの配信が単発で終わるのではなく、アニメなどを絡めて上手くPRしているのも印象的でした。
確かに、配信に合わせてアニメの再放送などを積極的に行ってきましたね。『きららファンタジア』に関しては、他メーカーが取り組んでいるような展開を参考に自分たちなりに考えて、プロモーションを仕掛けました。SNSを絡めたやり方は、多くのファンの方から注目していただきました。
――Quatro Aを設立も大きなニュースですよね。こちらはどのような経緯で立ち上げたのでしょうか。
アニプレックスはアニメーション製作会社であり、Quatro Aはゲームアプリの世界でその「アニメーション」を軸に、魅力的で驚きのある作品を直接お客様にお届けするための“ものづくり企業”として誕生しました。
また、アニメだけでなくゲームの世界でもリソースの確保は大きな問題だと感じています。作りたいものが作れない時代に、自分たちの開発ラインがあれば、作品を確実に作れるだけでなく、こだわりを持つこともできます。自分たちの思いをダイレクトに伝えるために生まれたスタジオと言えますね。
それとQuatro Aが生まれた背景には、すでにアニメ制作スタジオとしてグループ内にA-1 Picturesを抱えている影響もありました。A-1 Picturesがグループ内にいることのメリットは日頃から感じていましたし、ゲームのスタジオもあったほうがいいと、自然な流れで考えられたのです。
――ゲームでも、A-1 Picturesと同じ流れを作る狙いもあったと。
そうですね。ゲームでも良い作品をしかるべきタイミングでお客様へ届けるためには、自社内で管理できることが重要でした。今後はアニプレックスの作品をゲーム化する際に活躍してくれる予定です。ただよく聞かれますが自社内ですべて完結するつもりは一切無く引き続き他社との協力関係を大事にして進めていきたいと思います。
――最近のソーシャルゲーム市場は作品数も増え、成功するタイトルと失敗するタイトルがはっきりと別れるようになりました。三鍋さんは成功と失敗の境目に、どのような差があると考えていますか?
私たちの中でも明確な答えがなく、主に原作タイトルに関する私見になってしまいますが、根本的にあるのは「その作品がゲームに向いているか」だと思います。どんな作品にも強みがあり、その強みがゲーム向きであるかどうかで変わってきます。ここをイメージできていないままゲーム化してしまうと、ファンは離れていくものです。ゲームの良さをしっかりと理解し、なおかつお客様と共有できる作品が、ゲームとしてヒットすると考えています。
――原作とゲームの親和性ですね。
例えばシナリオの評価が高い作品をゲーム化しようと考えたとき、お客様はゲームにも良いシナリオを期待します。一方でマネタイズを考えると、シナリオではなくキャラクターなど、別の部分を深掘りする必要も出てくるのです。それがヒットにつながるとは限りませんし、シナリオの良さを最大限活かしたいのなら、最終的に商用ゲーム化を諦めてプロモーション目的という選択もあるかもしれません。
――確かにアニプレックスさんが関わるタイトルは、ゲームと相性の良いコンテンツが多い印象があります。
原作者の方々に協力していただいているのも大きいです。『Fate/Grand Order』であればTYPE-MOONさん、『マギアレコード』であれば芳文社さんやシャフトさんと一緒に制作させて頂いています。一般的には製作委員会を設置せず、IPを借りてきて自分たちで作る事が多いと思いますが、私たちの場合は原作者に関わってもらい、一緒に考えてもらうことを大切にしています。
――IPをゲーム化することのメリット、デメリットについてはどのように考えていますか?
メリットで言えば、当然ながらIPファンへ確実にアプローチできることです。現実的な問題として、一定の規模を見込めることでゲーム化する際の最初のハードルをクリアできるのは大きいですね。同じく、ゲームを通じて新たなファンを獲得できるので、アニメや映画側も恩恵が得られます。
――コンテンツの中で循環が生まれると。ではデメリットはいかがですか?
あるとすれば、作りこまれた世界観をゲームとして実現するためには、様々な面でクオリティの追求が必要になり、それに合わせて時間も手間もかかってしまいがちになります。また作品を理解しているスタッフを揃える必要があるのも難しさのひとつです。ゲーム化することになって初めて原作を読む人ばかりでは、良いゲームは生まれません。
――IPを扱う上で、三鍋さんが大切にしていることはありますか?
一番はやはり原作が持つ世界観です。世界観をいかにゲームへ落とし込んで、ファンに感動を与えられるかは非常に重要です。世界観を壊してまで作ったゲームは消費されるだけですし、ファンにとって嬉しくないことです。原作者に入ってもらって、その作品のどこを重視しているかを見極めながら伸ばすことを意識しています。
加えて、抽象的な言い方になりますが、そもそもゲームが面白いかどうかも大切なポイントです。当たり前の話ですけど、ゲームが面白くなければ遊び続けてはくれません。その一方で、ビジネスとしてゲームを見ていると、プロジェクトを止めることができないケースもあります。ときには立ち止まって、ゲームが本当に面白いかを確認することも大事にしていきたいです。
――それでは2018年は、どのような1年になると見ていますか。
スマートフォンゲーム市場は転換期を迎え、この傾向は2018年も続いていくと思います。今まで目にしたことのない海外のゲームが日本に上陸し、ヒットを記録する可能性は大いにあります。逆に日本のアプリが海外で存在感を示せるチャンスでもあります。こうした変化が多く見られる1年になると思います。また国内でもスマートフォンで音楽や映像配信などのサービスがより身近により楽しめる環境になってきており、お客様の限られた時間の奪い合いという点では厳しい環境になると思います。
そんな中、弊社としてはチャンスがあれば『Fate/Grand Order』の海外展開を進めていくつもりです。もちろん他のゲームでもチャンスがあれば積極的に考えていきたいですね。また弊社のゲームはシナリオをじっくり読んでもらうタイプが中心でしたが、2018年はいろいろなジャンルにも挑戦していきたいです。
――最後に、読者に向けたメッセージがあればお願いします。
ゲーム業界全体が転換のタイミングにいる中で、私たちも柔軟に変化していければと思います。流れの早い現代において現状維持では必ず衰退します。時には慎重に、時には大胆に「変化」する気持ちもって戦っていきましょう。2018年は皆さんも様々なチャレンジをする1年になると思いますが、ぜひ皆さんと一緒に一丸となって新しい時代を作っていきたいです。
――ありがとうございました。
今回スポットを当てるのは、リリースから約2年半を経て今や不動の人気を確立している『Fate/Grand Order』を始め、2017年には『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』や『きららファンタジア』など、IPタイトルで続々とヒット作を輩出しているアニプレックスだ。
インタビューに応じてくれたのは、同社 企画制作第2グループ 本部長 兼 Quatro A 代表取締役の三鍋尚貴氏。IPタイトルを成功に導く秘訣を始め、アニメ・映像の視点から見た市場振り返り、さらに2018年の展望を語っていただいた。
◼︎2017年はゲームアプリの転換期に
――本日はよろしくお願いします。まずは三鍋さんの経歴と、現在担当されている業務について教えてください。
もともとはキーエンスという電機メーカーに入り、その後エイベックスへ転職。音楽の販促や映像事業の立ち上げに従事しアニメビジネスに出会いました。その経験を活かして、アニプレックスではビデオパッケージのマーケティング・映像配信・ECなどを担当してきました。2016年にはデジタル事業グループが発足し、私はそこの本部長としてゲーム部門を担当しています。
――2017年のソーシャルゲームやアニメ市場を振り返ってみて、どんな印象がありましたか?
肌で感じている部分としては、ゲームアプリの転換期を迎えた印象があります。一つのタイトルが首位を独占している訳ではなくなり、さまざまな作品がリリースされ、トップが目まぐるしく変化する1年でした。また提供する側からすると、海外の作品がランキングの上位に入ることが目立ちましたね。アジアを中心とした海外のユーザー動向も見ていかないとヒット作が生まれない時代になったのだと感じています。
――海外産アプリの躍進は前々から言われてきましたが、それが実感できる1年だったと思います。
そのとおりです。日本の市場は独自の発展を遂げてきましたが、海外の作品が受け入れられるようになってきました。これは『パズドラ』『モンスト』以降ではなかった動きです。
――なるほど、ではアニメ市場をどう見てきたかについても教えてください。
2016年の『君の名は。』のヒットを受けて、劇場アニメに注目が集まった1年でした。アニプレックスでも『ソードアート・オンライン』『Fate/stay night [Heaven's Feel]』がヒットしましたし、充実した1年だったと思います。あとは『グランブルーファンタジー』など、ゲーム原作のアニメが大きく存在感を示しましたね。ゲーム原作のアニメはこれまでにもありましたが、なかなかヒットに恵まれないのが現実でした。その点でもさまざまなメーカーがチャレンジした1年だと思います。
もうひとつ、TVアニメの総数が減らずに維持しているのも注目に値します。これは海外資本が入ってきたり、AmazonやNetflixの影響だったりといろいろな要因があります。その一方でメーカー側としては、リソースの確保がとても大きなポイントになりました。「作りたいものが作れない」、そう感じることも多かったのが2017年です。
――アニプレックスさんといえば『Fate/Grand Order』にも関わっていますが、こちらはどんな1年でしたか?
2016年末にアニメ特番を放送したところ、非常に好評で、多くの新しいユーザーの皆さんにゲームを始めていただくきっかけにもなりました。ありがたいお話ですが、大変な1年でもありましたね(笑)。7月には2周年イベントを幕張メッセで行いました。ひとつのIPであれだけの大型イベントを行えたのはとてもありがたいことで、日頃から支えて頂いているお客様に感謝致します。
また本作は海外展開も始めまして、北米では自社でパブリッシングしています。海外でも自社パブリッシングというのはゲーム専業のメーカーでも珍しいことで、プレッシャーを感じつつ、良い経験が得られたと思います。
――良い経験というと、具体的にどんな点が挙げられますか?
ゲーム内イベントだけを見ても、国ごとで評価に差があります。自分たちでやったからこそ実感できることも多く、今後の私たちの財産になっていくでしょうね。表現についても、海外では文化的な背景によってファンの受け取り方が変わってくることもあります。丁寧な対応が必要であることはあらためて痛感しましたし、その一方で現地のファンと触れ合う機会が作れたのは嬉しかったですね。
――もちろん『Fate/Grand Order』以外にも、いろいろな動きがあったと思います。
4月にはゲーム制作スタジオとしてQuatro Aを設立し、8月には『マギアレコード』を配信しました。そして12月には『きららファンタジア』もロンチして、作りながら走り続けた印象が強いです。
――ゲームの配信が単発で終わるのではなく、アニメなどを絡めて上手くPRしているのも印象的でした。
確かに、配信に合わせてアニメの再放送などを積極的に行ってきましたね。『きららファンタジア』に関しては、他メーカーが取り組んでいるような展開を参考に自分たちなりに考えて、プロモーションを仕掛けました。SNSを絡めたやり方は、多くのファンの方から注目していただきました。
――Quatro Aを設立も大きなニュースですよね。こちらはどのような経緯で立ち上げたのでしょうか。
アニプレックスはアニメーション製作会社であり、Quatro Aはゲームアプリの世界でその「アニメーション」を軸に、魅力的で驚きのある作品を直接お客様にお届けするための“ものづくり企業”として誕生しました。
また、アニメだけでなくゲームの世界でもリソースの確保は大きな問題だと感じています。作りたいものが作れない時代に、自分たちの開発ラインがあれば、作品を確実に作れるだけでなく、こだわりを持つこともできます。自分たちの思いをダイレクトに伝えるために生まれたスタジオと言えますね。
それとQuatro Aが生まれた背景には、すでにアニメ制作スタジオとしてグループ内にA-1 Picturesを抱えている影響もありました。A-1 Picturesがグループ内にいることのメリットは日頃から感じていましたし、ゲームのスタジオもあったほうがいいと、自然な流れで考えられたのです。
――ゲームでも、A-1 Picturesと同じ流れを作る狙いもあったと。
そうですね。ゲームでも良い作品をしかるべきタイミングでお客様へ届けるためには、自社内で管理できることが重要でした。今後はアニプレックスの作品をゲーム化する際に活躍してくれる予定です。ただよく聞かれますが自社内ですべて完結するつもりは一切無く引き続き他社との協力関係を大事にして進めていきたいと思います。
◼︎アニプレックスが考えるゲームに合うIP、合わないIP
――最近のソーシャルゲーム市場は作品数も増え、成功するタイトルと失敗するタイトルがはっきりと別れるようになりました。三鍋さんは成功と失敗の境目に、どのような差があると考えていますか?
私たちの中でも明確な答えがなく、主に原作タイトルに関する私見になってしまいますが、根本的にあるのは「その作品がゲームに向いているか」だと思います。どんな作品にも強みがあり、その強みがゲーム向きであるかどうかで変わってきます。ここをイメージできていないままゲーム化してしまうと、ファンは離れていくものです。ゲームの良さをしっかりと理解し、なおかつお客様と共有できる作品が、ゲームとしてヒットすると考えています。
――原作とゲームの親和性ですね。
例えばシナリオの評価が高い作品をゲーム化しようと考えたとき、お客様はゲームにも良いシナリオを期待します。一方でマネタイズを考えると、シナリオではなくキャラクターなど、別の部分を深掘りする必要も出てくるのです。それがヒットにつながるとは限りませんし、シナリオの良さを最大限活かしたいのなら、最終的に商用ゲーム化を諦めてプロモーション目的という選択もあるかもしれません。
――確かにアニプレックスさんが関わるタイトルは、ゲームと相性の良いコンテンツが多い印象があります。
原作者の方々に協力していただいているのも大きいです。『Fate/Grand Order』であればTYPE-MOONさん、『マギアレコード』であれば芳文社さんやシャフトさんと一緒に制作させて頂いています。一般的には製作委員会を設置せず、IPを借りてきて自分たちで作る事が多いと思いますが、私たちの場合は原作者に関わってもらい、一緒に考えてもらうことを大切にしています。
――IPをゲーム化することのメリット、デメリットについてはどのように考えていますか?
メリットで言えば、当然ながらIPファンへ確実にアプローチできることです。現実的な問題として、一定の規模を見込めることでゲーム化する際の最初のハードルをクリアできるのは大きいですね。同じく、ゲームを通じて新たなファンを獲得できるので、アニメや映画側も恩恵が得られます。
――コンテンツの中で循環が生まれると。ではデメリットはいかがですか?
あるとすれば、作りこまれた世界観をゲームとして実現するためには、様々な面でクオリティの追求が必要になり、それに合わせて時間も手間もかかってしまいがちになります。また作品を理解しているスタッフを揃える必要があるのも難しさのひとつです。ゲーム化することになって初めて原作を読む人ばかりでは、良いゲームは生まれません。
――IPを扱う上で、三鍋さんが大切にしていることはありますか?
一番はやはり原作が持つ世界観です。世界観をいかにゲームへ落とし込んで、ファンに感動を与えられるかは非常に重要です。世界観を壊してまで作ったゲームは消費されるだけですし、ファンにとって嬉しくないことです。原作者に入ってもらって、その作品のどこを重視しているかを見極めながら伸ばすことを意識しています。
加えて、抽象的な言い方になりますが、そもそもゲームが面白いかどうかも大切なポイントです。当たり前の話ですけど、ゲームが面白くなければ遊び続けてはくれません。その一方で、ビジネスとしてゲームを見ていると、プロジェクトを止めることができないケースもあります。ときには立ち止まって、ゲームが本当に面白いかを確認することも大事にしていきたいです。
――それでは2018年は、どのような1年になると見ていますか。
スマートフォンゲーム市場は転換期を迎え、この傾向は2018年も続いていくと思います。今まで目にしたことのない海外のゲームが日本に上陸し、ヒットを記録する可能性は大いにあります。逆に日本のアプリが海外で存在感を示せるチャンスでもあります。こうした変化が多く見られる1年になると思います。また国内でもスマートフォンで音楽や映像配信などのサービスがより身近により楽しめる環境になってきており、お客様の限られた時間の奪い合いという点では厳しい環境になると思います。
そんな中、弊社としてはチャンスがあれば『Fate/Grand Order』の海外展開を進めていくつもりです。もちろん他のゲームでもチャンスがあれば積極的に考えていきたいですね。また弊社のゲームはシナリオをじっくり読んでもらうタイプが中心でしたが、2018年はいろいろなジャンルにも挑戦していきたいです。
――最後に、読者に向けたメッセージがあればお願いします。
ゲーム業界全体が転換のタイミングにいる中で、私たちも柔軟に変化していければと思います。流れの早い現代において現状維持では必ず衰退します。時には慎重に、時には大胆に「変化」する気持ちもって戦っていきましょう。2018年は皆さんも様々なチャレンジをする1年になると思いますが、ぜひ皆さんと一緒に一丸となって新しい時代を作っていきたいです。
――ありがとうございました。
会社情報
- 会社名
- 株式会社アニプレックス
- 設立
- 1995年9月
- 代表者
- 岩上敦宏
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- ・売上高:2062億2200万円(前の期比36.6%増)
・営業利益:534億5300万円(同81.9%増)
・経常利益:537億5100万円(同84.2%増)
・最終利益:369億3600万円(同100.5%増) - 上場区分
- 未上場