多彩なゲームを開発しつつ、技術スタッフを他社へ送り出しプロジェクトを成功に導く「デジタルクリエイタープロダクション宣言」を推進するエクストリーム、そしてカーナビから始まり『マップラス+カノジョ』『温泉むすめ』といった新作も発表したばかりのエディア。どちらも2017年に大きな存在感を放ち、2018年以降もスマートフォンアプリ業界を盛り上げるであろう存在だ。
そんな両社を牽引する存在、エクストリームの佐藤昌平社長と、エディアの原尾正紀社長との対談インタビューが実現。ビジネス上はもちろん、プライベートでも両名は懇意な仲だという。そこで今回は、両氏に対談の機会を作ってもらい2人が考えるスマートフォンアプリやゲーム業界の未来について語って頂いた。
■私たちは「ピースがピッタリハマる関係性」
――お二人の知り合った経緯について。
佐藤氏:エクストリームが上場したのは2014年12月のことで、その1年半後にエディアさんも上場しました。そしてお互いが上場を果たしたタイミングで懇親パーティーが行われて、そのとき初めてお会いしました。話を聞いていたら、自宅が近いことが分かったんですよね(笑)。
原尾氏:それからは池袋界隈でよく飲みに行くようになりましたね(笑)。もう帰り道にふらっと立ち寄るような感覚です。私からするとエクストリームさんは昔からの取引先で知っていたんですけど、佐藤さん本人とお会いするのはとある交流会が初めてでした。だから最初は「はじめまして」なのか「お世話になっています」なのか、少し迷いましたね(笑)。
佐藤氏:初対面とはいえ仕事上の繋がりがあったのは大きくて、すぐに馴染めた印象です。とはいっても真面目な話ももちろんしてますよね。ゲーム業界の将来とか、ゲームをどうやって良くしていくかとか。
――当時のお互いの印象について
佐藤氏:弊社とエディアさんとはピースがピッタリハマる関係性だと思っています。私たちはゲームの開発が中心で、一方エディアさんはパブリッシングを積極的に行っていて、そういう意味では素晴らしいパートナーだと思いますし、エディアさんに見合う会社になるよう努力していきたいですね。
原尾氏:いやいや(笑)。エクストリームさんは歴史が長いですし、ゲームを作るときはいつも参考にしています。印象として真っ先に来るのはやはり技術力の高さですね。困ったときにはエクストリームさんにお願いすればいいという感覚でいて、無茶なお願いにも快く対応してくれるのでいつも助かっています。
佐藤氏:原尾さんともとても気が合いますし、相性が良いのかなと。家が近いですし。
原尾氏:近所なのは大事ですね(笑)。そもそも世代が近いですから。普段から話をしていても、学生時に熱中したことの話で盛り上がったりしていますよ。
佐藤氏:ソーシャルゲームの会社さんを見渡すと、意外と同世代の経営者が少ないんですよ。ベンチャー企業だと30代、40代が多くて、大手だと60代の方が多くなりますし。
――両社がゲーム業界に参入することになったきっかけ
原尾氏:弊社はモバイルコンテンツの開発から始まった会社で、ゲーム事業への進出は一社員の提案からでした。ソーシャルゲームが流行り始めた2010年ごろですかね、とある社員が「うちでもゲームやりたいです」と企画書を持ってきて、私としても面白そうだと感じたのがきっかけでした。ゲームに限らずカーナビなど、弊社の事業は基本的に社員からのボトムアップから始まっています。だから基本的にどんな提案でもアレルギー反応を起こさず始めることができるんです。
佐藤氏:私の場合は30年弱の期間ゲーム業界にいて、最初はスーパーファミコンやアミューズメント向けのゲーム開発に携わっていましたね。独立してからもゲーム会社さんとの繋がりは続いていましたし、なによりゲーム以外にできることはないと考えていました。エクストリームがゲームへ進出したのも、当然の流れでした。
原尾氏:ゲーム業界に入る順番が私たちとは逆なんですね。
佐藤氏:そうなんですよ。私たちはまずゲームから入って、最近ようやく別の分野にも手を伸ばせるようになったのです。運が良かったと思うのは、独立した当時はPCオンラインゲームの黎明期で、私たちが入っていく場所があったことです。当然競合する会社も少なく、早い段階から好循環が生まれたのを覚えています。反面、新しい会社を経営するのは毎日が苦労の連続でしたね(笑)。
原尾氏:そうですよね、私も苦労を数えたらキリがないです(笑)。良かったことをひとつ挙げると、ゲームが社員にもユーザーさんにも楽しんでもらえるコンテンツだったことですね。社員はやりたいことをやっているし、作ったものをユーザーさんに楽しんでもらう。ユーザーさんの数が何十万、何百万と広がっていくのは本当に嬉しいです。
佐藤氏:スマートフォンが誕生したのも、ゲーム会社を経営する上では大きかったですね。日本に住む多くの方が、ポケットの中に小型のPCを入れている現在の状況は私たちにとって夢のような環境と言えます。デバイスの進化によってソフトウェアも進化して、そこから新しい発明が生まれるという、夢がある業界になってきたと思います。
原尾氏:確かに、コンシューマだと専用の機械を買わなければいけない、能動的な時代でしたよね。今は誰もがスマートフォンを自然に所持していて、受動的にゲームを楽しめるようになったんです。昔と比べるとユーザー層が広がり、ゲームの領域が広がったのは間違いないです。
佐藤氏:ゲームの領域が広がったという意味では、位置情報ゲームは最たる例ですよね。
原尾氏:おっしゃる通りで、位置情報ゲームはゲームなのかツールなのかメディアなのか、様々な見方ができると思います。ゲームの幅が広がったことによって、多彩な業種の方がゲームを作るようになりました。元々はゲームを作っていなかった私が、ゲーム界の大先輩である佐藤さんとこうしてお話できているんですから。
佐藤氏:大先輩だなんてそんな(笑)。
――時代の進歩の中でのクリエイターの在り方について
佐藤氏:会社間だけでなく、人と人との繋がりはとても大事だと思います。弊社は技術者が多く、彼らがどう成長していくのかが会社の今後に直結します。だからこそ取引先や、インターネット上に溢れている情報は常にチェックしています。もはや自分たちだけで天才を生み出せる時代ではないですからね。
原尾氏:エンジニアはもちろん、プランナーもやらなければいけないことが広がっています。以前だと企画だけに専念すればよかったのですが、今は売り上げや満足度を含めた総合的なバリューをどうやって上げていくかも考えなければいけません。
佐藤氏:広がったがゆえに、たくさんの情報を拾っておかないと成功できないんですよね。この業界はアイディアをアウトプットすることがとても重要ですけど、アウトプットだけではいつか空になってしまう。インプットする習慣も重要なんです。
原尾氏:佐藤さんは面接のときも、インプットし続けることができるかも見ていると聞きましたね。
佐藤氏:面接では確かに気にしていますね。特に新卒採用の面接では、「今までどんなインプットをしてきたか」ではなく、「これからどんなインプットをしていくか」を注意して聞くように心がけています。私は学生のとき、ろくなインプットをしていませんでした(笑)。でも好奇心が強かったからここまで来れたのだと思うんです。
原尾氏:特定のゲームしか作らない人ではなく、好奇心旺盛でいろいろなジャンルに興味を持つ人のほうが伸びるのはよくある話ですね。そもそも、エンターテインメントに携わる人は好奇心旺盛でなければいけない気がします。
佐藤氏:自分が好きなゲームだけ作っていても、なかなか利益には繋がりませんからね。ユーザーの皆さんが求めているものを作って、しかるべき対価を頂く。これができなければゲームというサービスは続かないんでしょうね。
■日本の閉塞感を打ち破る新しい発明を
――両社が考える今後の展望について
原尾氏:『マップラス+カノジョ』に『温泉むすめ』を発表して、また女性向けのゲームも控えています。弊社としては新しいマーケットを切り開きたいのと、クロスメディア展開に進出していきたい狙いもあります。ゲームを中心にしつつ、アニメやコミック、音楽、グッズといった商品にも事業を広げていきたいと考えています。そういった動きが本格的に見え始めたのが2017年と言えます。
エディアは常に、少し変わったことをやりたい気持ちを持っていて、メジャーなゲームを作りたい一方で意外性も持たせるような、オンリーワンのポジションを狙っていきたいと思います。そんな意外性が、「エディアらしさ」と言われるよう頑張りたいです。
佐藤氏:エクストリームではエンジニアが社外のプロジェクトに参画する「デジタルクリエイタープロダクション宣言」を推進しておりまして、技術をきっちりとした形で提供できる企業でありたいと考えています。そのためにはタレント性を持ったスタッフを育てて、メーカーさんから「彼にもう一度来てほしい」と思って頂けるような企業になりたいです。弊社のスタッフでなければ実現しないことを確立して、将来は、メンバーが全員弊社のスタッフというプロジェクトが生まれたら嬉しいですね。
原尾氏:エクストリームさんのスタッフには私たちも助けられていて、チャレンジを続ける上でとても頼らせてもらっています。これは2社間だけでなく、業界全体で出来つつあるし、今後は今まで以上にチャレンジしやすい業界になっていくかと思います。
――今後業界が発展するために二人が考えていること
佐藤氏:これは私たちにも言えることですけど、新発明がなかなか生まれない時代になってきたと感じます。今までだとハードウェアの発明に合わせてソフトが生まれる循環でしたが、ハードに頼らないアイディアが生まれてきてもいいのではと思いますね。
プレイステーションやセガサターンといったハードが生まれる中で、白黒のゲームボーイで『ポケットモンスター』が生まれたような、性能だけでは作れない遊びを提供しなければいけません。
原尾氏:スマートフォンアプリ業界全体が新しい形を求められているところがある中で、みんな保守的になっていますよね。IPタイトルが流行っているのも、そういった背景があるからだと思います。ただ、こういう状況になっているのは日本だけなんですよ。
佐藤氏:そうですね。日本独特の閉塞感だと思います。
原尾氏:ただ、海外の、特に中国やアメリカはむしろどんどん伸びていて、もしかしたら海外勢に席巻されるかもと危惧しています。
佐藤氏:『ポケモンGO』にはじまり『リネージュ』『アズールレーン』もありましたね。ランキングにも海外勢がかなり入ってきましたけど、本来は日本勢も対抗して、新作を世に送り出さないといけないんです。
原尾氏:クオリティをひたすらリッチにすればいいという話でもないので難しいですけど、新しい試みはするべきですね。
――両社の期待と今後
佐藤氏:2人で飲んでいても、やりたいことの意見がよく一致するんですよ。お互いで強みを伸ばしていけば、きっと面白いものが生まれると思っています。まずは時間を作って、具体的になにができるか話し合っていきたいですね。
原尾氏:一緒にひとつのタイトルを作るとかも面白そうですね。ピースがガッチリハマる感覚というか、会社同士の相性はとてもいいですし、できることも多いと思います。
佐藤氏:エディアさんはコンテンツとしての作り込みがとても上手いから、見ていてとても勉強になりますね。
原尾氏:ありがとうございます。エディアはゲーム屋である以前にコンテンツ屋であるという自覚を持っていて、ゲームよりもっと大きな枠組みで作り込んでいるんです。人の真似ではないオリジナリティ、人から「変わっているよね」と言われるようなコンテンツを提供して、業界の異端児と言われるような存在になりたいですね。
佐藤氏:エディアさんみたいなメーカーをサポートできるよう、私たちも技術力を担保できる会社として成長を続けていきたいですね。技術力を担保するために「デジタルクリエイタープロダクション宣言」を掲げているわけですし、この存在が確立できれば業界全体が機動的になると考えています。まずはこういったポジションがあるということを、業界内の皆さんに認めてもらえるように頑張っていきたいです。
原尾氏:これからも業界を盛り上げていきたいですよね。
佐藤氏:そうですね。一緒に業界全体が盛り上がるように頑張っていきましょう!
会社情報
- 会社名
- 株式会社エクストリーム
- 設立
- 2005年5月
- 代表者
- 代表取締役社長CEO 佐藤 昌平
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高102億1700万円、営業利益10億9700万円、経常利益14億4800万円、最終利益10億3400万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 6033
会社情報
- 会社名
- 株式会社エディア
- 設立
- 1999年4月
- 代表者
- 代表取締役社長 賀島 義成
- 決算期
- 2月
- 直近業績
- 売上高32億7700万円、営業利益1億6100万円、経常利益1億5800万円、最終利益1億5000万円(2024年2月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3935