【イベント】「リアルの世界でも『FGO』を楽しめる」と塩川氏も納得の出来 加藤氏が話すリアル脱出ゲーム初の試みとは…「謎特異点Ⅰ ベーカー街からの脱出」対談をレポート

 
SCRAPは5月10日、原宿ヒミツキチオブスクラップにおいて、FGO PROJECTが配信するiOSおよびAndroid向けゲームアプリ『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)とコラボしたFate/Grand Order×リアル脱出ゲーム「謎特異点Ⅰ ベーカー街からの脱出」のプレス向け体験会を行った。本稿では、体験会終了後に行われた、SCRAP代表の加藤隆生氏と、FGO PROJECTクリエイティブプロデューサーの塩川洋介氏による座談会の内容をお届けしていく。
 
座談会では、本企画の成り立ちや公演の特徴・楽しみ方、この先に両者が目指したいことについてという話が展開された。なお、体験会のレポートについては下記の関連記事にて公開しているので、そちらをチェックしていただきたい。
 
【関連記事】
【イベント】大仕掛けが施された「謎特異点Ⅰ ベーカー街からの脱出」に挑戦…Fate/Grand Order×リアル脱出ゲームが魅せる新境地とは!
 
 

■現実世界での物語体験を目指す『FGO』×リアル脱出ゲーム

 

▲SCRAP代表の加藤隆生氏(写真左)と、FGO PROJECTクリエイティブプロデューサーの塩川洋介氏(写真右)。
 
今回の体験会では、参加した12チーム中脱出成功が2チーム。うち1チームは今回がリアル脱出ゲームに初挑戦だったことに対して加藤氏は「謎解き力は成長していくものなので作る方は大変なのですが、今回は謎解きがめちゃくちゃ得意な人でも解けないようになっています。ですが、知識問題でもないところで『FGO』を凄く好きな人なら解けてしまうということが起こっていて、凄く絶妙なバランスで作れていると思います」と本公演に対する自信を覗かせた。
 
これに対し意見を問われた塩川氏は「『FGO』を知らなくても謎解きとしてのヒントがきちんと散りばめられていたと思いますので、やはり”気付けたかどうか”というところが絶妙なバランスに仕上がっていて安心して見ていられました」と答えた。
 

 
また、いよいよ5月11日より始まる本公演に向けての心境として塩川氏は「好きで始めたところがありましたので、絶対面白くなるという確信はありつつも、その中でどれだけの方が『FGO』×リアル脱出ゲームに興味を持ってもらえるかという部分で不安なところもありました」と話す。しかし、そんな中で5月10日まで実施されていたFate/Grand Order×リアル脱出ゲーム「謎特異点Ⅰ ベーカー街からの脱出」お試し謎キャンペーンは正解者の目標人数を大幅に超え、各地域の公演チケットも好調な売れ行きとなっている。
 

▲加藤氏は、リアル脱出ゲームは最終的には我々とお客様が一緒に作り上げていく空間エンターテインメントなので、日々変わっていくという意味ではソーシャルゲームと似通った部分があると語る。
 
そして、ここからは各テーマに沿って話が展開されたので、その内容をお届けしていく。
 
1.Fate/Grand Order×リアル脱出ゲーム 企画の成り立ちについて
 
塩川氏:元々のきっかけは2017年の夏頃に初めてリアル脱出ゲームに行かせていただいたことなんです。それまでもリアル脱出ゲームを知ってはいたものの、行く前は「クイズ的なもの」と甘く見ていました。しかし、行ってみると物凄い空間演出や、ストーリーと謎を解くことの一体感、ストーリーとしてのオチと謎としてのオチが見事にリンクしていて、「こんなに物語を表現できるコンテンツなんだ」と感動して、『FGO』でやるしかないと思いました。それから、謎解きキットを持って街に繰り出したり、遊園地や赤い部屋に閉じ込められたり、どういう形のものが『FGO』と合うかなと考えながら色々と行かせていただきました。
 
加藤氏:僕の方も、最初にお話が来た段階では『FGO』を遊んでいませんでした。ただ、身近に凄く『FGO』にハマっている人がいたので「遂に俺もその沼にハマるのか!?」と思いながらダウンロードして遊んでみると、これはソーシャルゲームというより、インタラクティブな物語をデジタル上で体験する新しい物語の在り方ではないかということを思い衝撃を受けました。自分の感情移入するキャラに対して自分ができることが凄く緻密に作られていて、その結果、キャラが応えてくれることもたくさん用意されていて、この体験を空間に落とし込むとどんなことが生まれるんだろうとワクワクしたのを覚えています。
 
2.それぞれのゲームの面白さとは

 
塩川氏:リアル脱出ゲームの面白さは、現実世界で”ごっこ遊び”をするということが醍醐味かと思います。謎を解く楽しみはもちろんありながらも、例えば今日であれば60分という制限時間の中で、マスターとなりロンドンの事件を解決していくというシチュエーションに、現実の世界から放り込まれるところが面白さの本質だと思っています。そのツールとして謎解きがあり、それが上手く噛み合っているという印象です。
 
加藤氏:全くその通りで、僕らが考えているのは新しい体験をしてもらいたい”ということです。新しい体験には新しい感情が付いてきますし、「あの時こういう気持ちになったな」、「こういう熱さがあったな」という感情は覚えていられます。冷静に考えて、大人になってまで最後の答えを出すために走って、時間に間に合わなかったら憤ることってあまりないじゃないですか。そういう感情が生まれることが素敵だと思っていて、僕はヒリヒリした体験や悔しさ、悲しさは全て宝物だと思っているので、そうした体験を進化させていきたいと日々考えています。
 
塩川氏:実はその構図としては『FGO』も近いところがあるんです。『FGO』はスマートフォンで遊べるゲームなのですが、ゲームを遊んでいる現実世界も含めて『FGO』の一部だと考えて作っているので、2017年末に、『FGO』内のストーリーに合わせて公式サイトが赤くなり、アクセスできなくなるという試みがありました。あれも、現実に生きている我々が如何にゲームで起きている体験を現実も含めて楽しむかというところでリアル脱出ゲームを参考にさせていただきました。リアル脱出ゲームでは、制限時間60分で会場にいる方々が対象ですが、我々の考え方としては『FGO』を遊んでいる全ての方々にその空間に入り込んでいただくというイメージでおりました。
 

 
――:両者とも”没入感”を大切にされていますよね。
 
加藤氏:それが全てと言っても過言ではないです。ましてや僕らは、いつでもできるゲームではなくわざわざ足を運んでいただいて1時間閉じ込めるゲームなので、その1時間は絶対に集中力を切らさないようにしなければなりません。そのためには没入していただくしかないので、如何に没入してもらうかについては常々考えています。
 
3.本作の特徴と楽しみかた
 
塩川氏:まずは『FGO』を一切知らない方も楽しめるし、『FGO』を知っている方が遊んでも楽しい。リアル脱出ゲームが初めての方も何度も挑戦している方も楽しめるという掛け合わせが絶妙な仕上がりになっているところが良いと思います。実際、自分もテストプレイさせていただいた際に『FGO』を全く知らない方でも楽しめるのかという点は凄く気にしていたのと同時に、『FGO』が凄く好きな方にとってここで「今日、この場でマスターになれた」と感じてもらえるか、それを思い出として持って帰ってもらえるかというところを気にしていました。そういった意味では、サーヴァントとの絡みなど『FGO』っぽいシステムでゲームを解いていくギミックがあって、マスター体験をできるようになっていたところが特徴になっていると思います。
 
加藤氏:今、仰っていただいた通り、凄くギリギリまでバランス調整をした結果、絶妙なバランスを見つけられたと思っています。また、これはリアル脱出ゲームとしての話なのですが、本公演にはリアル脱出ゲーム史上初めての試みが取り入れられています。大きな仕掛けを用意していますので、謎解きが大好きな方にも楽しみにして来ていただきたいですし、『FGO』が好きでリアル脱出ゲームは初めてという方にも気楽に遊びに来ていただくだけでも楽しいと思います。


 
塩川氏:また、『FGO』はひとりで遊ぶゲームとなっているのですが、リアルの世界で『FGO』を遊んでいる友人などとの会話も含めて『FGO』の楽しみ方だと思っています。そういう意味では、この場は正に『FGO』が好きな方、これから好きになってくださる方が隣にいるという意味で、普段スマートフォンで遊んでいる『FGO』と変わらないのかなと思います。
 
加藤氏:『FGO』は、1章終わるごとに人に話したくなりますよね。僕はみんなと比べたら遅れて始めていることもあって、既に終わっている人に「あの最後、予測できた?」という話ができるので夜中にLINEをしていましたね。このコラボが決まっていたので、身内にしか話せずSNSに書けなかったことが辛かったです(笑)。
 
4.企画発表から開催前日までの反響を受けて
 
塩川氏:今回のコラボをきっかけに、今までリアル脱出ゲームに行ったことがなかったけど行ってみようとか、興味を持ってくださる方が凄く増えたかなと思います。ネットを見ていても、リアル脱出ゲームを知っている方が『FGO』ユーザーの方々に「リアル脱出ゲームってこういうものだよ」と丁寧に教えてあげている場面があり、『FGO』ユーザーの方々を優しく導いてくれようとしているのが伝わりました。そうしたところから、良いコミュニティが生まれて嬉しいと思います。
 
加藤氏:僕は東京公演が売り切れた瞬間から「これがソーシャルゲームなら売り切れないのにな……デジタルゲームが羨ましい」と思いました。売り切れの切なさは味わいましたが、凄く強い反響をいただけたので、これは頑張らなきゃと思いましたし、その期待に応えられるようなゲームになったと思っています。
 
コラボを発表したときからずっと感じていたのは、お互い気にはなっていたけどちゃんと触ったことがない者同士だっただけで凄く相性が良かったのかなという気はしています。『FGO』ユーザーは謎を解こうとしてくださっているし、謎解きが好きな人も「『FGO』やってみようかな」と言っている人がかなり多い印象だったので、その相性の良さが出たのかなと思います。
 

 
5.この先に目指したいこと
 
塩川氏:(今回の公演に”I”と付けたのは)もちろん、IIをやりたいからです。終局特異点までやって、その後も亜種特異点がありますので(笑)。
 
加藤氏:(笑)。
 
塩川氏:やりたいことも色々あるんです。今回は6人1チームで挑むホール型でしたが、もっと広いところで大勢集めてやるのもいいかもしれないですし、キットを持って街を歩いてみてもいいじゃないですか。
 
加藤氏:僕も可能性や期待度は感じています。ただ、それを空間に落とし込むときには新しい発明”が必要だと思っているんです。絶対にみんなの予想を超えて100%、200%を与えないとまず満足してもらえないと思っています。なので、街を歩くことと『FGO』が絡んだときにはどんな面白いことができるのか、そこにはどんな発明が必要なのかということを考えていきたいです。でも、ダラダラと考えても仕方がないので早々に考えてバンバンやっていきたいと思っています。
 
塩川氏:最初は「なんで『FGO』がリアル脱出ゲームなの?」という組み合わせに対しての驚きや意外性というところで注目があると思います。しかし、これが謎特異点IIなのか別の形になったとしても1度目の謎特異点Iが基準値にあるので、さらにハードルが高くなってきますよね。
 

 
加藤氏:そうですね。でも、ウチの方から1番最初に「こういう形でやれませんか?」と出したタイトル案は50ほどあったと思いますので。
 
塩川氏:A4サイズの紙にびっちりと書かれていましたね。あれを1個ずつやっていけば50回はいけますね。
 
加藤氏:設定だけなら考えていることはたくさんありますし、それを体験に落とし込んでいくときの特別さという部分を今から丁寧にひとつずつ積み上げていきたいと思います。
 
6.今だから言える制作裏話
 
塩川氏:『FGO』には多数のサーヴァントが登場しますが、イベントを作る際には誰が顔なのかを決める必要があります。そこはリアル脱出ゲームも『FGO』のイベントと同じ感覚で、今回、謎特異点Ⅰの顔となるのは誰だというところが最も重要でした。その中で『FGO』を遊んでいる方も、一切知らずに来てリアル脱出ゲームという謎で楽しめるのは誰だろうというところから「シャーロック・ホームズしかいないね」という話になりました。最初に膨大なタイトルリストをいただきましたが、やっぱりホームズだよねというところでお互い納得感を得ていきました。
 
加藤氏:先ほども言った通り、ギリギリまで考えて悩んでリアル脱出ゲーム初の試みを思い付いたのは公演2週間くらい前なんです。4~5ヶ月前から用意してきた公演で2週間前にそれほど大きな変更があるとかなり大変なのですが、それにスタッフが全て対応してくれたのは中々凄いことだったと思います。でも、これは苦労するに値するだけのアイデアだったと思っていますというのが裏話、というか苦労話ですね。
 

 
最後に、加藤氏と塩川氏より締めの挨拶が届けられた。
 
加藤氏:最後の最後まで、ほんのちょっとでも良くできるところがあるなら良くしようと思って作ってきました。そして、最高の作品が作れたと思っています。是非、みなさまお誘い合わせのうえ遊びに来てください。
 
塩川氏:今回、自分がリアル脱出ゲームとのコラボを発案して、多くの方の力を借りて本公演を迎えることができました。我々は、今回の公演もFGO PROJECTとしてのひとつのゲームプロジェクトと思って、TYPE-MOONさんも含め一緒にやらせていただきました。『FGO』のゲームコンテンツを作るときと同じ感覚で手掛けておりますので、是非、『FGO』を遊んだことがない方は「これが『FGO』なんだ」と理解していただいてスマートフォンで遊んで欲しいですし、スマートフォンで普段『FGO』を遊んでくださっている方には、リアルの世界でも『FGO』を楽しめると思って来ていただければ嬉しいです。
 
 
(取材・編集 編集部:山岡広樹)


 
■関連サイト
 

Fate/Grand Order×リアル脱出ゲーム「謎特異点Ⅰ ベーカー街からの脱出」


©TYPE-MOON / FGO PROJECT
FGO PROJECT

会社情報

会社名
FGO PROJECT
企業データを見る