【インディーゲームクリエイター列伝】『Animal Run Relay』開発者のyoudoyou.motto氏にインタビュー…動物好きの陸上競技経験者が目指したのは“遊べる動物図鑑”

日本および海外で活躍するインディーゲームクリエイターに焦点を当て、その創作哲学・開発背景・作品世界を掘り下げて紹介するインタビュー連載企画「インディーゲームクリエイター列伝」。

今回は、2025年12月2日にSteamで正式リリースされた『Animal Run Relay(アニマル ラン リレー)』を手掛けたインディーゲーム個人開発者のyoudoyou.motto氏へのインタビューをお届けする。

動物の走る姿に魅せられて、その感動を落とし込んで生まれた作品

――:まずは『Animal Run Relay』がどのようなゲームか教えてください。

『Animal Run Relay』は収録された40種類以上の動物たちのリアルな走るスピードを切り口にした、リレーチームを結成してレースを行うゲームです。ジャンルはレース、戦略シミュレーションということで、少しボードゲームチックな側面も持っています。

加えて、最初はカタツムリから始まって段々とスピードが速くなっていく体験ができるマラソンモードも用意しておりまして、そっちのほうがメインのモードじゃないかという意見もあります(笑)

――:元々動物がお好きだったんですか?

動物や自然は昔から好きです。ゲームを開発するようになってからも、いつか動植物を題材にした作品を作りたいなとは思っていました。たまたまSNSで動物のスピードをテーマにした動画を観た時に、動物の走る姿に感動したんです(笑)その動物たちの尊さをどうにかゲームに落とし込んで、多くの人たちに伝えたいと思ったのが『Animal Run Relay』開発のキッカケでした。

動物を題材にするのに、動物同士を戦わせるといったアイデアもあったのですが、動物虐待と言われてしまいそうで躊躇していたところで、スピードに着目したSNSの動画をみて「これだ!」と思いました。

――:ちなみに走る事もお好きなんですか?

昔は陸上競技をやっていました。短距離走も長距離走も……最終的には中距離に落ち着きました(笑)

――:動物と陸上競技という好きなものを掛け合わせて生まれたのが『Animal Run Relay』ということですね。

そうですね。やはり自分の知っている事しかゲームにできない、というところが経験上ありますね。

――:『Animal Run Relay』の開発に際して、印象的だったエピソードがあれば教えてください。

開発中は何度もゲーム画面を見るのですが、好きなものを題材にしている分、何回見ても動物は全然飽きないなと感じました。ゲーム内で使用した動物の3Dモデルは既存のアセットの中から現実に近しい動きをしている素材を使ったのですが、ネコ科やウシ科などの足の動きを繰り返し見ていると共通項に気付いたりして、新たな発見があって面白かったです。

尚且つ、『Animal Run Relay』では動物が鳴き声を発するのですが、その鳴き声の素材もちゃんと入手できるのかを確認してからゲーム内に入れる動物を決めていきました。やはり鳴き声があると迫力が生まれますし、それがリアルな声かどうかは、動物の凄さを伝えるためにこだわりました。

個人的には『Animal Run Relay』を“遊べる動物図鑑”のような作品にしたかったんです。自分の幼少期の体験として、動物の大きさを比較する内容の図鑑を読んで興味を持ちました。ですから『Animal Run Relay』は動物達の走るスピードだけではなく、走り方も見られるし鳴き声も聴ける、まさに動物図鑑のようなコンテンツになればいいなと作りながら思っていました。

――:企画を立ち上げてからリリースするまではどのくらいの期間でしたか?

今年の2~3月に開発をスタートさせて、12月にリリースすることができました。当初は半年くらいで出すつもりでしたが、私はゲーム開発する時は毎回何か新しい事に

挑戦することを心掛けています。技術的に新たなことを落とし込んでいる間に、ゲームがもっと面白くなるアイデアがひらめいて、その修正・追加をしていくという流れでリリースに至りました。なので、時間はかかってしまいましたが、このゲームが完成するのに必要な時間だったなと思っています。

そして、ある程度自分のアイデアを遊べる形にした段階で知人にプレイしてもらって、その反応から修正点を見つけてより取っつきやすいものにするという事も普段から心掛けています。

――:『Animal Run Relay』は動物好きやレース、シミュレーション好きをターゲットにしているんですか?

あまりターゲットを広げ過ぎるのはダメだとはよく言われるのですが、動物好きはもちろん、図鑑的な意味で子どもに遊んでもらいたいと思っています。あとはリアルさを求める方にも触れてもらいたいですね。また、『Animal Run Relay』は日本だけではなく世界中で共感される面白さがあるんじゃないかなと思っています。日本でダメだったとしても世界のどこかで受け入れられる可能性があるので、最初から6ヵ国語対応させています。

――:youdoyou.mottoさんがインディーゲーム開発を行うようになったきっかけを教えてください。

私は元々エンジニア出身というわけではありませんでした。IT系の会社に転職をしようと考えたときに「アプリが作れたらいいな」というところから始まりました。

しかし、便利なモノよりも面白いことのほうがアイデアが出てきやすい性分なので、「だったらゲームを作ってみようかな」という考えにシフトしていきました。

もちろんアプリも作りたいとは思っていますが、ゲームを半年~1年かけて個人で開発していると、その間に次のアイデアが降ってくるので一向にゲーム開発がやめられなくて(笑)会社や組織でゲームを作るとなると、売り上げにならないモノは断念することもあると思いますが、個人開発は、表現したい世界やゲームがあれば、自己責任の中で実現できる。それが魅力の1つですね。

――:という事は、今後もインディーゲームの個人開発は続けていくと。

そうですね。現在は仕事で、ある程度のチーム、組織の中でゲーム開発をやっていますが、個人でのインディーゲーム開発は、アイデアが降り続ける限りやっていきたいですね。

チームでインディーゲームを開発するのは憧れますが、まずは個人開発という個人の尖った趣向で作ったゲームでも、一定の結果が出るというか、面白いことができるんだと思ってもらえるような実績を出したいですね。

――:ちなみにyoudoyou.mottoさんがゲームクリエイターとして心に残るゲームタイトルは何ですか?

ゲーム自体は幼少の頃から大学生になるまで、めちゃくちゃ遊んでいましたので、あまり一つには絞れないですね。

最初に持っていたハードはファミコンだったのですが、『ウエスタンキッズ』は影響を受けた作品のひとつです。サムとポポというキャラクターがナイフと拳銃を持って悪者を倒していく作品なのですが、アクションゲームの面白さだったり、子どもながらにグロさや戦いの残酷さを感じたのを覚えています。そこからアクションゲームが好きになり、『ロックマンX』や『メタルギアソリッド』などを遊びました。

『Animal Run Relay』は動物を40種類以上収録していますが、本当はもっともっと増やしたかったんです。そういったキャラの多さみたいなところにも昔から魅力を感じていて、『星のカービィ スーパーデラックス』や『三國無双』、『タイムスプリッター 〜時空の侵略者〜』といったキャラがたくさん収録されているゲームも好きでしたね。キャラの多さは無条件に面白いというか、「このキャラを使ったらどうなるんだろう」と色々な角度で遊び込めるので、自分にとって、キャラの多いゲーム=楽しめる、という基準が、それらのゲームで育まれた気がしています。

あとはハンゲームが流行った時に一番オンラインゲームに触れて、見ず知らずの人と、チャットやゲームで遊ぶというのにハマりましたね。『3on3 FreeStyle』というバスケットボールゲームで、いいプレイをしたら仲間にグッジョブを送るボタンがあったのですが、ワンボタンでコミュニケーションを交わして承認欲求を満たされるという時代を先駆けていたような作品で印象に残っています。

もうひとつ、『剣豪2』というゲームはどうしても挙げておきたい作品です。『剣豪』は3がシリーズ最高傑作らしくて、いつかやろうと思っている内にその機会を逃してしまいました。『剣豪2』は剣術にフォーカスした奥深いアクションゲームでした。当時、『鬼武者』をイメージして買ったのですが、遊んでみると全然そんな感じではなくて初見はがっかりした記憶があります(笑)ただ、プレイし続けるにつれて、このアクションは、自分にとって斬新なシステムだと感じました。

さまざまな技や構えがあって、それらから生まれる剣の振り方、崩し方が違っていて、駆け引きのパターンが豊富なじゃんけんのような楽しさがありました。格闘ゲームなんだけど、一撃で勝負が決まるという、真剣のシビアさ、緊張感が表現されていました。最初はがっかりしたのに、遊んでいく内に唯一無二の面白さがあった点で心に残っています(笑)

――:ゲームクリエイターとして今後の目標はありますか?

『Animal Run Relay』をリリースして3週間くらい経ちましたが、ちょっとスカした感があります(笑)しかし、このゲームが面白いことをまだ諦めてないので、イベントに出たりして、認知度拡大を図りたいですね。それがうまく回ったら『Animal Run Relay』を積極的に追加開発していきたいです。

あとは、パソコンゲームとスマホゲームの方を引き続き進めていきたいです。パソコンゲームは、例えばゲーム実況の配信者さんに取り上げてもらえると何万人規模に見て楽しんでもらえる可能性があり、スマホゲームは、ライト層を含め、たくさんの人が触れてくれるチャンスがあります。それらの特性を踏まえて、自分のアイデアがよりマッチしたほうに合わせて、ゲームを作っていければと考えています。

――:最後に読者や同じクリエイターへのメッセージをお願いします。

ゲームファンの皆様へのメッセージとしては、今は、いろいろなゲームを、スマホやパソコンにダウンロードして即遊べる便利な時代です。特に、インディーゲームは非常に安い価格で遊ぶことができるので、映画を観る感覚でたくさんのゲームに触れていただけたらうれしく思います。

『Animal Run Relay』は購入するには少し勇気のいる作品かもしれませんが(笑)、そういったゲームでも「今日はこの作品を遊んでみようかな?」というノリで触れてみてほしいです。開発者の表現したいことや思想が色濃く出ているのが、インディーゲームというジャンルです。どんなシステムや表現が、自分を楽しませてくれるのか、自分にとっての神ゲー(宝)探しの気分で、インディーゲームを遊んでいってほしいと思います。

ゲームクリエイターの方々に対しては、自分はまだまだ半人前なので何も言えないですけど、お互い後悔のない創作活動、ゲームクリエイター活動をしていきましょう!

――:本日はありがとうございました。

『Animal Run Relay』

料金:有料
カテゴリ:シミュレーションレース、ランゲーム
対応OS:Windows