【CEDEC 2018】『逆転オセロニア』プロデューサーの香城卓氏が語る、「コミュニティと共創するゲーム運営」とはなんぞや?
パシフィコ横浜にて開催された「CEDEC2018」。期日は8月22日から同月24日までで、この3日間で多数のセッションに多くの人々が集まる。本稿では、『逆転オセロニア』が実践した“コミュニティと共創するゲーム運営”について、ディー・エヌ・エー ゲームサービス事業部 第一ゲームサービス部『逆転オセロニア』プロデューサーの香城卓氏が行ったセッションに触れていきたい。
▲『逆転オセロニア』プロデューサーの香城卓氏。
『逆転オセロニア』は、2100万DLを突破したオセロを題材とする「ドラマチック逆転バトル」。ジャンルこそよく分からない事になっているものの、深い人気を博すDeNAのタイトルだ。そんななか今回は、香城氏(以下けいじぇい氏)から「サービスとしての逆転オセロニア」「プレイヤーに届ける価値」という「コミュニティに関する分析やマネジメント」部分のお話がなされた。
▼逆転オセロニアの事業推移
『逆転オセロニア』の事業推移が他のタイトルと違っているのは、「最初の一年が低空飛行だった」というところ。しかしこれ、実は「最初から沸騰を狙わずにいこう」という戦略だったのだ。まず、社内から後ろ指を指されながらも地道に地方をまわりSNSを使いつつ、「ひたすらコミュニティを作っていく」という事だけに取り組んだ。そしてコミュニティが暖まってきたところで、2016年の12月末にTVCMを含めたマスプロモーションを投下。そのタイミングでユーザーが激増した。これでアクティブユーザーはなんと6倍に増加。このCMに合わせてTwitter上でユーザーが数多くつぶやいて、盛り上がりを醸成していった形だ。後は多少の上下動はあれども十分な収益規模になったという。
▼下の画像において、右下に置かれたのは対戦格闘ゲーム。そこはマニアックかつガチ勢の集う修羅の国。オセロニアは、2016年の段階でそれとは対極に位置する「安心かつ取っ付き易い世界」を目指してスタートしている。どちらも対戦ゲームではあるが、オセロニアには「ギスギス感を排除しよう」という発想が根底にありそうだ。
つまり「コミュニティマネジメント」が最も重要な時代に突入しているのだ。オセロニアのプレイヤーは、自らを「オセロニアン」と呼ぶ。そんなオセロニアン、コミュニティと一緒に、このタイトルをどう育てていったのか、またその中で何が見えてきたのか……を次の項目で語った。
▼オセロニアが考える「コミュニティマネジメントの定義」
普通のマーケティングやプロモーションで盛り上げようとしても、飽きやモチベ減少で人はいなくなってしまう。しかしコミュニティマネジメントだと、「この人がいるから続けている」という状態を作っていく事がコミュニティマネジメントの仕事だと思っている、とけいじぇい氏。ユーザーのモチベが低下しようとも、「一緒に遊びたい人」がいるから続けていくのだ。これは筆者にも経験があるので、大いに納得するところである。
▼オセロニアが考える「コミュニティマネジメントの土台」
そうなると「コミュニティマネジメントis何?」という疑問は出る。これに対しては「ファンをつなげてあげる事。そこに安全と安心が生まれる」というアンサーが。運営サイドとしては全国行脚で日本全国にオセロニアンがいる事は知っていたため、そのオセロニアン同士をつなげてあげて「オセロニアンって自分の他にこんなにいたんだ!」という驚きと喜びにつながった。
知り合い(同好の士)ができると「オセロニアって面白いですよね」と発信する際の安全と安心が担保される。例えばマーケティング上「buzzらせよう」という段で、この「発信に対する安心安全」が保たれていない状態で無理に行っても成功は厳しい。「発信の安全安心」があるからこそ、モチベーションとカロリーを保ったままコミュニティが分散・拡大していくのだ。
▼オセロニアが考える「コミュニティマネジメントのご法度」
運営内でご法度とした事がある。それは「ギルドシステムはやめよう」という事だ。ギルド制のあるタイトルはゲームシステム上で決まっているので集まりはすぐにできるが、そのつながりは薄い。一方コミュニティの醸成を目指す方法は強制力がないため集まりが遅く、時間がかかってしまう。ところがこちらは自然発生的に集まった仲間なので、つながりが深いのだ。
▼オセロニアが考える「マーケティングドリブンの事業成長」
マーケティングで一気に集まった人たちは、属性もセグメントもバラバラでコミュニティ化しづらい。そうなるとアクティブユーザーの増加が単純なプラスに働かず、モチベーションの低下などによりログインしなくなってしまう。
一方でコミュニティがしっかり作られている、「安全安心」を確保していくと、人と人とのつながりがモチベーション化して荒廃しないのだ。オセロニアの配信直後は人数も少なく、人が少ない段階から全国を行脚。ネットカフェのすみっこでリアルイベントを開催してオセロニアン達をつなげていったそう。そこから成熟期に人を加えて少しずつコミュニティを拡大、さらにそこへマーケティングをかけて、「一気に人が増えてもコミュニティが壊れないタイミング」を見計らって多数のユーザーを誘導し人を増やしている。
けいじぇい氏は、もし社内からマーケティングを促されても、そこはぐっとタイミングを見計らって無視&待つ胆力も重要だと語った。
▼「オセロニアンの宴」の開催ペースは以下の通り
とこれだけに留まらず、なんと年間30本以上のオフラインイベントを実施しているのだとか。数千人を集めて都内でイベントを1回するよりも、数百人を集めて日本全国でイベントを行った方がコミュニティ施策としては有意というのがオセロニア運営の方針なのだ。そこで重要視しているのは「オフラインイベントは自分たちが行く」という事で、大規模イベントというショーを見に来てもらうのではなく、各地域のコミュニティ形成を目的としたイベントを開催して、つながりを深くしようとする狙いがある。
このオフラインイベントの副次効果は強く、ユーザーと直接会話する事によって、互いに意見を交わしながら「ゲームを共創している」という感覚をオセロニアンに提供できている。「運営都合でゲームが作られるのではなく、コミュニティ=ユーザーが望む形でアップデートされていく体験こそが最大のエンゲージメントを生む」とけいじぇい氏。
▼「オフラインイベントの参加者」のKPI変化
下のグラフでは、イベント参加を契機としてアクティビティが劇的に変化する事を、定量分析によって測定。イベントに参加したグループは継続性に20%以上の改善傾向が見られる。実は「オフラインイベやります」と発言した時点で差分が生まれ、それが大きな違いとなっていくのだ。
また、Mirrativを利用したゲーム実況者のKPI変化では、Mirrativ で実際に配信を経験したユーザーほど平均バトル数が多く、減るどころか増加している。これは「自分の配信を誰かが見てくれている」という体験が効果的に働いているのだろう。
なお「回し者!」と言われるかも知れないが、Mirrativマジいいっすよ、とけいじぇい氏は語った。(実はすでにDeNAと別会社)
▲その証拠に、Facebookは創業以来続いていたミッションを上記のものに変更。確かに現在のFacebookは小さなコミュニティを重視しているふしがあり、肥大化したグルーバルなものから離れていっている感がある。広告の解析を見てもそれを感じられるのではないだろうか。
▼ポストソーシャルゲーム時代のゲームデザイン
これまでのソーシャルゲームは、競争や共闘や対戦といった、ゲーム内のソーシャル性だけで良かった、ゲームデザインだけで良かったとけいじぇい氏。しかしこれからは人間社会やソーシャル世界の価値の変遷が起きて、製品周りのコミュニティまでデザインする必要が出てくると言う。即ちこれが「共創」なのだ。
けいじぇい氏の考えるポストソーシャル時代は、運営との距離が近く、コミュニティの雰囲気が安心できるもので、意思決定や施策優先度がコミュニティ都合でなされるもの。中でも「運営の都合でパラメーターをサイレント修正するのは不誠実。ユーザーやコミュニティと、運営の距離が離れていくばかり」という言葉には強く頷ける。
例えばKPIをあげるためのシステム開発は運営都合であり、そうではなくて「今これが不便、これが困っている」というところから順に処理していく事が、コミュニティと運営のエンゲージメントを高めていく。これからの時代、上画像の左側は廃れていき、ユーザーに相手にされなくなっていくのではないか、とゲームへの想いを強く語った。
「Game for Community!」という事で、サービスを届けていく側と、サービスを楽しむユーザーの距離感は、次の10年でより密になっていくという。「Game for Community」を大切にして開発しないとユーザーに届かないし、そこをしっかりしていけば、ゲーム大国日本再興の鍵になるのではないかとけいじぇい氏は考えているのだ。
そしてコミュニティは人のつながりがちょっとずつ深まり作りだされていくので、「長い時間をかけて少しずつしか拡がっていかないもの」という認識が大切だ。けいじぇい氏は聴講者に対して、「会社に帰って伝えても難しいとは思いますが……」と前置きしながらも、すぐに結果が出るものではないと強く語った。
また、これからの時代はゲームデザインだけではなく、コミュニティデザインまで設計する必要があるため、製品をサービス化するにあたりどんなコミュニティを作っていくのかが大切だという。私見だが、そうしないとユーザー数は右肩下がりの曲線を描き、サービス終了までの時間が加速度的に早まるのかも知れない。実際にTwitterの公式アカウントすら閉じられ撤退していくタイトルは、フォロワー数も少なく盛り上がっておらず、見るに忍びない状況になっている……。
最後にけいじぇい氏は、「今でも『ソシャゲ(笑)』みたいな側面も少なからずありますが、コミュニティ×ゲームという文脈が、次の10年でソーシャルゲームという言葉の意味が変わっていくような取り組みになっていくといいなと思っていますし、コミュニティファーストなゲームがこれからもたくさん生まれていく事を、心から願っています」とこのセッションを締め括った。
■『逆転オセロニア』
© 2016 DeNA Co.,Ltd.
オセロは登録商標です TM & Ⓒ Othello,Co. and Megahouse
▲『逆転オセロニア』プロデューサーの香城卓氏。
『逆転オセロニア』は、2100万DLを突破したオセロを題材とする「ドラマチック逆転バトル」。ジャンルこそよく分からない事になっているものの、深い人気を博すDeNAのタイトルだ。そんななか今回は、香城氏(以下けいじぇい氏)から「サービスとしての逆転オセロニア」「プレイヤーに届ける価値」という「コミュニティに関する分析やマネジメント」部分のお話がなされた。
▼逆転オセロニアの事業推移
『逆転オセロニア』の事業推移が他のタイトルと違っているのは、「最初の一年が低空飛行だった」というところ。しかしこれ、実は「最初から沸騰を狙わずにいこう」という戦略だったのだ。まず、社内から後ろ指を指されながらも地道に地方をまわりSNSを使いつつ、「ひたすらコミュニティを作っていく」という事だけに取り組んだ。そしてコミュニティが暖まってきたところで、2016年の12月末にTVCMを含めたマスプロモーションを投下。そのタイミングでユーザーが激増した。これでアクティブユーザーはなんと6倍に増加。このCMに合わせてTwitter上でユーザーが数多くつぶやいて、盛り上がりを醸成していった形だ。後は多少の上下動はあれども十分な収益規模になったという。
▼下の画像において、右下に置かれたのは対戦格闘ゲーム。そこはマニアックかつガチ勢の集う修羅の国。オセロニアは、2016年の段階でそれとは対極に位置する「安心かつ取っ付き易い世界」を目指してスタートしている。どちらも対戦ゲームではあるが、オセロニアには「ギスギス感を排除しよう」という発想が根底にありそうだ。
■オセロニア流「コミュニティマネジメントの考え方」
けいじぇい氏がゲーム作りの際に意識している言葉の中に、「このゲームやった方がいい?」という文言がある。現代の消費者は、自分で決めずに「誰かの評価で動く」という集合知を重視する傾向にあり、製品そのものが判断基準ではなく、「製品を取り巻く人の群れ」を見てその価値を評価する時代になったという。これは、食べログや価格コムなどに代表される口コミサイトを、数多くの人々が利用・活用している事からも明らかだろう。つまり「コミュニティマネジメント」が最も重要な時代に突入しているのだ。オセロニアのプレイヤーは、自らを「オセロニアン」と呼ぶ。そんなオセロニアン、コミュニティと一緒に、このタイトルをどう育てていったのか、またその中で何が見えてきたのか……を次の項目で語った。
▼オセロニアが考える「コミュニティマネジメントの定義」
普通のマーケティングやプロモーションで盛り上げようとしても、飽きやモチベ減少で人はいなくなってしまう。しかしコミュニティマネジメントだと、「この人がいるから続けている」という状態を作っていく事がコミュニティマネジメントの仕事だと思っている、とけいじぇい氏。ユーザーのモチベが低下しようとも、「一緒に遊びたい人」がいるから続けていくのだ。これは筆者にも経験があるので、大いに納得するところである。
▼オセロニアが考える「コミュニティマネジメントの土台」
そうなると「コミュニティマネジメントis何?」という疑問は出る。これに対しては「ファンをつなげてあげる事。そこに安全と安心が生まれる」というアンサーが。運営サイドとしては全国行脚で日本全国にオセロニアンがいる事は知っていたため、そのオセロニアン同士をつなげてあげて「オセロニアンって自分の他にこんなにいたんだ!」という驚きと喜びにつながった。
知り合い(同好の士)ができると「オセロニアって面白いですよね」と発信する際の安全と安心が担保される。例えばマーケティング上「buzzらせよう」という段で、この「発信に対する安心安全」が保たれていない状態で無理に行っても成功は厳しい。「発信の安全安心」があるからこそ、モチベーションとカロリーを保ったままコミュニティが分散・拡大していくのだ。
▼オセロニアが考える「コミュニティマネジメントのご法度」
運営内でご法度とした事がある。それは「ギルドシステムはやめよう」という事だ。ギルド制のあるタイトルはゲームシステム上で決まっているので集まりはすぐにできるが、そのつながりは薄い。一方コミュニティの醸成を目指す方法は強制力がないため集まりが遅く、時間がかかってしまう。ところがこちらは自然発生的に集まった仲間なので、つながりが深いのだ。
▼オセロニアが考える「マーケティングドリブンの事業成長」
マーケティングで一気に集まった人たちは、属性もセグメントもバラバラでコミュニティ化しづらい。そうなるとアクティブユーザーの増加が単純なプラスに働かず、モチベーションの低下などによりログインしなくなってしまう。
一方でコミュニティがしっかり作られている、「安全安心」を確保していくと、人と人とのつながりがモチベーション化して荒廃しないのだ。オセロニアの配信直後は人数も少なく、人が少ない段階から全国を行脚。ネットカフェのすみっこでリアルイベントを開催してオセロニアン達をつなげていったそう。そこから成熟期に人を加えて少しずつコミュニティを拡大、さらにそこへマーケティングをかけて、「一気に人が増えてもコミュニティが壊れないタイミング」を見計らって多数のユーザーを誘導し人を増やしている。
けいじぇい氏は、もし社内からマーケティングを促されても、そこはぐっとタイミングを見計らって無視&待つ胆力も重要だと語った。
■オセロニア流「コミュニティマネジメント施策の実践例」
オセロニアのオンライン施策は、日々のつながりをTwitterで、日々の情報や考察をYou Tubeで、日々の配信者作りをMirrativ(同社のゲーム配信アプリ)で行っている。もちろんこれでもコミュニティとして成り立っていくが、「オフラインに力を入れている」のがオセロニアの特徴だ。全国のネカフェと提携して月イチで地元オセロニアンが集まる場を提供。公式ファンミーティング「オセロニアンの宴」では運営とコミュニティの接点作り。「オセロニアンの戦」では全国大会を開催と、オフラインの施策は初期から手掛けており、オンラインと合わせて注力している。▼「オセロニアンの宴」の開催ペースは以下の通り
とこれだけに留まらず、なんと年間30本以上のオフラインイベントを実施しているのだとか。数千人を集めて都内でイベントを1回するよりも、数百人を集めて日本全国でイベントを行った方がコミュニティ施策としては有意というのがオセロニア運営の方針なのだ。そこで重要視しているのは「オフラインイベントは自分たちが行く」という事で、大規模イベントというショーを見に来てもらうのではなく、各地域のコミュニティ形成を目的としたイベントを開催して、つながりを深くしようとする狙いがある。
このオフラインイベントの副次効果は強く、ユーザーと直接会話する事によって、互いに意見を交わしながら「ゲームを共創している」という感覚をオセロニアンに提供できている。「運営都合でゲームが作られるのではなく、コミュニティ=ユーザーが望む形でアップデートされていく体験こそが最大のエンゲージメントを生む」とけいじぇい氏。
■オセロニア流「コミュニティマネジメントの事業貢献と分析手法」
用いているのは、サンプルグループ比較。まずはユーザーのインストール日から±30日でフィルターをかける。そして測定する日のプレイヤーレベルを95%から105%の中で見ている。これはゲームでどれくらい遊んでいるのかの指標。そして最後にアクセス頻度だ。これらの条件にすべてヒットしたユーザー群からサンプルグループを作り、リアルイベントに参加した/してないというユーザーで差分を見て、事業貢献を計測している。▼「オフラインイベントの参加者」のKPI変化
下のグラフでは、イベント参加を契機としてアクティビティが劇的に変化する事を、定量分析によって測定。イベントに参加したグループは継続性に20%以上の改善傾向が見られる。実は「オフラインイベやります」と発言した時点で差分が生まれ、それが大きな違いとなっていくのだ。
また、Mirrativを利用したゲーム実況者のKPI変化では、Mirrativ で実際に配信を経験したユーザーほど平均バトル数が多く、減るどころか増加している。これは「自分の配信を誰かが見てくれている」という体験が効果的に働いているのだろう。
なお「回し者!」と言われるかも知れないが、Mirrativマジいいっすよ、とけいじぇい氏は語った。(実はすでにDeNAと別会社)
■オセロニア流「コミュニティと共創するゲーム運営とこれから」
ここまでの講演で「オセロニアの印象、変わりましたか?」とけいじぇい氏。これまで説明したコミュニティの取り組みやユーザーとの交流を見て、会場の傍聴者も印象が変わったはずでしょう? と続ける。取り組みを見せる事、状態を開示する事で好感が広がるこの状態は、Twitter内でも同様の効果を生んでいる。製品だけではなく、コミュニティ、ユーザーを見て価値を判断するトレンドは今後も続く。これからのソーシャル社会、人類世界の価値変換として、世界的にコミュニティの重要度は増しているのだ。▲その証拠に、Facebookは創業以来続いていたミッションを上記のものに変更。確かに現在のFacebookは小さなコミュニティを重視しているふしがあり、肥大化したグルーバルなものから離れていっている感がある。広告の解析を見てもそれを感じられるのではないだろうか。
▼ポストソーシャルゲーム時代のゲームデザイン
これまでのソーシャルゲームは、競争や共闘や対戦といった、ゲーム内のソーシャル性だけで良かった、ゲームデザインだけで良かったとけいじぇい氏。しかしこれからは人間社会やソーシャル世界の価値の変遷が起きて、製品周りのコミュニティまでデザインする必要が出てくると言う。即ちこれが「共創」なのだ。
けいじぇい氏の考えるポストソーシャル時代は、運営との距離が近く、コミュニティの雰囲気が安心できるもので、意思決定や施策優先度がコミュニティ都合でなされるもの。中でも「運営の都合でパラメーターをサイレント修正するのは不誠実。ユーザーやコミュニティと、運営の距離が離れていくばかり」という言葉には強く頷ける。
例えばKPIをあげるためのシステム開発は運営都合であり、そうではなくて「今これが不便、これが困っている」というところから順に処理していく事が、コミュニティと運営のエンゲージメントを高めていく。これからの時代、上画像の左側は廃れていき、ユーザーに相手にされなくなっていくのではないか、とゲームへの想いを強く語った。
■For2020 これからのゲームの未来に向けて、ゲーム×コミュニティをゲーム大国再興の礎にしたい
「Game for Community!」という事で、サービスを届けていく側と、サービスを楽しむユーザーの距離感は、次の10年でより密になっていくという。「Game for Community」を大切にして開発しないとユーザーに届かないし、そこをしっかりしていけば、ゲーム大国日本再興の鍵になるのではないかとけいじぇい氏は考えているのだ。
■まとめ
コミュニティとゲームを「共創」していく事で、運営の想像を超えた価値が生まれて事業は成長していく。ここでユーザーとして注目すべきは、「自分も参加している」という感覚だろうか?そしてコミュニティは人のつながりがちょっとずつ深まり作りだされていくので、「長い時間をかけて少しずつしか拡がっていかないもの」という認識が大切だ。けいじぇい氏は聴講者に対して、「会社に帰って伝えても難しいとは思いますが……」と前置きしながらも、すぐに結果が出るものではないと強く語った。
また、これからの時代はゲームデザインだけではなく、コミュニティデザインまで設計する必要があるため、製品をサービス化するにあたりどんなコミュニティを作っていくのかが大切だという。私見だが、そうしないとユーザー数は右肩下がりの曲線を描き、サービス終了までの時間が加速度的に早まるのかも知れない。実際にTwitterの公式アカウントすら閉じられ撤退していくタイトルは、フォロワー数も少なく盛り上がっておらず、見るに忍びない状況になっている……。
最後にけいじぇい氏は、「今でも『ソシャゲ(笑)』みたいな側面も少なからずありますが、コミュニティ×ゲームという文脈が、次の10年でソーシャルゲームという言葉の意味が変わっていくような取り組みになっていくといいなと思っていますし、コミュニティファーストなゲームがこれからもたくさん生まれていく事を、心から願っています」とこのセッションを締め括った。
■『逆転オセロニア』
© 2016 DeNA Co.,Ltd.
オセロは登録商標です TM & Ⓒ Othello,Co. and Megahouse
会社情報
- 会社名
- 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
- 設立
- 1999年3月
- 代表者
- 代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 2432