【DeNA決算説明会】第2四半期はベイスターズ好調もゲーム苦戦で減収減益 『メギド72』『伝説対決』『マリオカートツアー』で下期巻き返しへ



ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>は、11月8日、第2四半期累計(4~9月)の連結決算(IFRS)の発表を行うとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した決算は、売上収益682億円(前年同期比7.0%減)、営業利益106億円(同21.9%減)、最終利益96億円(同6.6%減)と減収減益だった。スポーツ事業が好調だったものの、主力のゲーム事業が苦戦したことが主な要因だ。

決算説明会に臨んだ守安功社長(写真)は、「(ゲーム事業について)コストの適正化は進めているものの、グロスが上がらないと利益確保が難しい状況だ。グロスを押し上げる成長タイトルを作っていきたい」と述べた。グロスを伸ばすタイトルとして、オリジナルタイトル『メギド72』と、テンセントとの共同配信となる『伝説対決』に期待を寄せた。さらに『マリオカートツアー』も年度内にリリースされる予定で、下期に巻き返しを狙う。

続いて第2四半期(7~9月)をみると、売上収益343億円(前四半期比QonQで1%増)、IFRS営業利益56億円(同19%増)、NON-GAAP営業利益54億円(同19%増)、最終利益44億円(同15%減)となった。ゲーム事業が売上と営業利益で弱含んで進捗したものの、横浜DeNAベイスターズを中心とするスポーツ事業が好調に推移し、営業増益を達成した。新規事業への投資については「インライン」とのこと。
 


以下、第2四半期のセグメント別の状況に見ていこう。


 
■ゲーム事業

まず、ゲーム事業は、売上収益が同1%減の212億円、セグメント利益が11%減の47億円だった。ゲームのコイン消費については、主力の内製タイトルとサードパーティタイトルで若干だが減少した。「夏休みなどもあるため、もっと伸びなくてはならない」とし、売上が想定に達しなかったとのことだった。また、トップラインの低下による限界利益の減少に加え、新作のリリースに伴い減価償却とマーケティングコストが発生し、利益は2ケタの減少となった。
 
 
▲『スーパーマリオラン』はリリースからまもなく2年だが、ダウンロード数が3億近くに到達。いまでも毎月定期的にダウンロードがあり、定番として遊ばれるタイトルになった。また『ファイアーエムブレムヒーローズ』は、ユーザー数、収益ともに安定して推移しているという。年末にアップデートと、周年イベントで盛り上げたいとのこと。

 
▲『どうぶつの森 ポケットキャンプ』は1年が経過した。当初から継続して遊ぶユーザーが全体の半数以上になるなど高い継続率を誇っている。ゲームの改善で運営状況が徐々に上向いている。さらに『マリオカートツアー』については予定どおり今年度中にリリースする。「タイトルとタイミングはまだいえない」。


 
■『メギド72』

オリジナルタイトル『メギド72』について、12月に控えた1周年に向けて施策を行うとともに、テレビCMを中心としたマーケティング施策を強化していく考えを示した。熱量の高いユーザーに支えられて、ユーザー数、売上ともに徐々に拡大している状況にあるという。

守安社長によると、リリース当初、ゲームのシステムが少し複雑なため、初めて遊ぶ人には敷居がやや高く、熱心に遊ぶコアなファンに限られていたという。このため、リアルでサポートが行われることから、熱量のファンを中心に口コミで広がることを狙っていたそうだ。

ただ、ここにきてDAU(日時アクティブユーザー数)が積み上がり、ファンコミュニティも盛り上がってきたこともあり、リアルだけでなく、ネットでもユーザーをサポートする環境が整ってきたと判断。テレビCMなどのマーケティング施策を行うとともに、1周年に向けたアップデートとイベントを行い、ファンの裾野を拡大していく、とした。
 


 
■『伝説対決-Arena of Valor-』

テンセントゲームズと提携し、『伝説対決-Arena of Valor-』をリリースすることにした経緯について、「日本市場では中国や韓国など海外勢のタイトルが増えてきたが、これをチャンスと捉えて海外でヒットしたタイトルを日本でも提供することにした」と述べた。

両社の役割分担は、テンセントのアカウントから配信し、DeNAはローカライズやマーケティング、カスタマーサポート、運営支援などを行うことになる。「中国で非常に人気のあるタイトルだが、日本国内でMOBAというジャンルが浸透しているわけではない。マーケティングでその面白さを伝えて、タイトルの普及と垂直立ち上げを狙いたい」と期待を示した。

気になる収益への影響については「わからない」とのこと。リリース後、大当たり、もしくは逆に大きく外すなど極端な結果になる可能性があるとの見方を示した。前述のように、MOBAゲームが国内で十分に浸透していないためだが、「ブームのようなものになったとき、かなりのポテンシャルがある」という。

両者の提携は、本作のみとなるが、テンセントは有力タイトルを多く抱えていることもあり、他のタイトルでも業業の可能脳性を模索したいとのこと。ただ、『伝説対決』のリリースとヒットさせることが前提で、当面はそちらに注力していく考えだ。
 

 
 
■スポーツ事業

続いてスポーツ事業は、売上収益が16%増の79億円、セグメント利益が25%増の30億円と2ケタの増収増益となるなど好調に推移した。1試合あたりの売上収益の伸びが主な要因だったと説明した。下期においてはプロ野球がシーズンオフとなるため、売上収益、利益ともに低下する見通しだ。

守安功社長によると、対戦相手や曜日によってチケット料金が変わるシステムを導入したほか、グッズ・飲食などの客単価の増加、さらにスポンサーからの広告収入、放映権収入が主な増収要因になったとのこと。横浜スタジアムのキャパシティの問題で観客動員は大きく伸びが見込めないなか、観客動員数に依存しない収益構造になってきたという。

現在、横浜スタジアムでは座席の拡張を行っており、2019年には3500席、さらに翌2020年以降には2500席を増える見通しだ。伸び悩んでいる観客動員数も一段の伸びが見込まれ、「スポーツ事業については今後も右肩上がりで成長するのではないか」と期待を示した。
 


 
■EC事業・新規事業

EC事業は、売上収益が20%減の27億円、営業利益が87%増の4億円だった。DeNAトラベルを譲渡したことに伴い、減収となったものの、事業全体の収益性は改善した。
 


最後に新規事業については、売上収益が10%増の27億円、セグメント損益が18億円の赤字(前四半期は17億円の赤字)だった。様々な分野に投資を行っているが、AIを活用する次世代タクシー配車アプリ「タクベル」と、AI×ヘルスケアをとりあげた。

「タクベル」については先行投資を行っているが、神奈川県タクシー協会と共同で神奈川県でサービス展開を開始し、年内を目処に東京都内でもサービスを開始する。都内については4000台からサービスを開始する予定だが、タクシー事業者への営業活動を強化しているため、増える可能性があるとのこと。「台数については競合よりも多いわけではないが、ビジネスとして成立する台数と考えている」という。

強みとして、配車サービスについては、同社ではタクシー事業者にとってコストの部分だけでなく、利便性の高さを重視しているという。サポートも含めて、タクシー事業者が利用できるサービスパッケージとして提供することで、実効性のあるネットワークにすることが狙いだ。今後の投資額については競合の状況を見て判断するため、増える可能性もあるし、減るかもしれないとした。
 


また、AI×ヘルスケアについては、Preferred Networks と PFDeNA が、深層学習技術を用いて 少量の血液でがん14種を判定するシステムの共同研究を開始したとのこと。
 


 
(編集部・木村英彦)
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
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