【年始企画】Craft Egg森川修一社長が振り返る『ガルパ』の2018年 MV機能や海外展開、IPコラボなど挑戦した1年 新作2本を開発中!
スマートフォンゲームアプリ業界の最前線で働く方々に話を伺う年始恒例企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2018-2019」。これまでは市場動向の振り返りと展望をメインとしていたが、今回は、各社の個別の状況にフォーカスし、2018年の取り組みや課題、そして、2019年の展望について語ってもらうことにした。
今回は、『バンドリ!ガールズバンドパーティ!(以下、ガルパ)』の開発・運営を担当するCraft Eggの森川 修一社長(写真)にインタビューを行い、2018年の『ガルパ』運営を中心に振り返ってもらいつつ、2019年の展望を聞いた。
■プロフィール
人材系のベンチャーでスカウト・ヘッドハンティングのエージェントを経験後、モバイルオンラインゲーム大手に入社。公式コンテンツのディレクターを経験したあと、ゲーム事業に携わるようになる。その後、独立を経て、2014年5月、サイバーエージェント子会社としてCraft Eggを設立し、代表取締役に就任、現在に至る。
――:本日はよろしくお願いいたします。まず、2018年のCraft Eggの展開を振り返っての感想をお願いいたします。
当社は、『ガルパ』の開発運営を行っており、そちらを中心にお話しますと、2018年は、台湾や香港、マカオ、韓国、英語圏など海外進出を積極的に行いました。評判が良く、予想以上に多くの人に遊んでいただいています。想像していたよりも英語圏がいいですね。アジア圏も遊んでおられる方が多いですし、ドイツやフランス、ブラジル、ロシアでも一定の支持を得ています。熱の入ったファンの方が多いですね。これは、海外でもアニメを日本とほぼ同時に配信していましたし、年に2回ほどブシロードさんがイベントやライブをしてくださっているところが大きいと考えています。
国内向けでは、チャレンジとして、ミュージックビデオの再生機能とバンドストーリーのミッションをセットで実装したことがあげられます。Poppin'Party以外の4バンドが歌ったり、演奏したりといったシーンがゲームの中で見られるようにするなど、これまでとは一味違った体験を提供できたと思います。
そのほかは、『ペルソナ』シリーズや、初音ミクとのコラボなど、他IPとのコラボを初めて実施しました。さまざまなチャレンジができた1年だったと考えております。
――:IPコラボには驚きました。イベントストーリーは好評でしたね。
ストーリーの流れを無理に作ることは避けるようにしました。ストーリーを作る際、お話としての面白さだけでなく、メンバーの個性やメンバー同士の関係性を勘案して、自然な流れになるようにしています。この子たちが話していて、こういう話し方や展開にはならないよね、ということが起こらないようにしています。
特にコラボをやるときは気を使います。『ペルソナ』シリーズはしっかりとした世界観があって、キャラクターやモチーフも素晴らしいです。それを取り入れながらも、『ガルパ』の世界観とは異ならないように、バンドの子たちと『ペルソナ』がコラボする流れをいかに自然につくれるか、メンバーの行動やバンドの持つ空気感とうまく繋げられるように気をつけました。
――:ゲーム内でも日常のイベントやアップデートをかなり頑張っておられましたよね。印象に残っていることはありますか。
リリース1周年のタイミングで大きなアップデートを行いましたが、コラボを行うタイミングで各IPをオマージュしたようなライブ背景に変えられるような仕組みを作ったり、スペシャルエリアを作ったりしたことですね。
これまでハロウィンやクリスマスのタイミングで、季節に合わせてエリアの背景やそこでの会話、メンバーの着ている服を変えていたのですが、特設エリアを新しく作って、よりハロウィンらしい場所、クリスマスらしい場所をつくりました。
この作品は、メンバーたちの個性や、メンバー同士がどういうやり取りをしているかを大切にしています。普段のゲームでは伝えきれないことを表現できたので、やってみて本当に良かったと思っています。
これ以外には、交換所に過去のイベントでしか入手できなかったスタンプやメンバーを置きました。あとは今夏にリズムゲームでスペシャル譜面と呼ばれる、今までとは難易度が異なる譜面の提供を開始しました。
キャラクターコンテンツとリズムゲームという2軸で、どういう楽しみ方を提供できるかを運営側としてはとても意識しました。
――:ガルパをこれまで運営されてきて、支持されている要因はどういったことがあると思いますか。
難しい質問ですが、ゲーム内のイベントだと思います。『ガルパ』において、イベントの位置づけが非常に大きくて、キャラクターコンテンツとして読み応えのあるストーリー、聴き応えのある楽曲を継続的に提供できていることを評価いただくことが多いように思います。1つ1つのイベントで、メンバーたちの成長する様子を描くということと、そのイベントに最適な楽曲を提供することを意識しています。
この作品では、キャラクターたちの成長が許容されています。ゲームの中だけでキャラクターの成長を描くことを許されているキャラクターコンテンツというのは大変、珍しいんです。
あとは、バンドならではといいますか、カバー楽曲も好評です。これまで「BanG Dream!(バンドリ!)」や『ガルパ』に興味を持っていなかった方にも遊んでいただく、いいきっかけになっているかと思います。カバー楽曲は、ひと月に最低1曲くらいのペースで追加しています。多いときには5曲くらい入ることもありました。
▲年末年始に実装されたカバー楽曲。
――:当たり前ですが、曲を作るだけでなく、譜面も作る必要があるんですよね。
はい。音ゲーのゲームデザイン、レベルデザインの考え方は独特なので、譜面チームは職人レベルのことをやっています。こういう難易度の順番でこういう曲の流れで遊んでいったら、音ゲーがうまくなるといったマッピングも行っています。また楽曲のジャンルなどを可視化したり、難易度や曲のイメージに合わせた遊び方などを議論したりもしています。
――:SNSの投稿を見てもファンからの声が暖かいなと感じることが多いですが、運営側としてはいかがですか。
これは本当に嬉しいですし、非常に優しい方が多いです。こんなに暖かい言葉をかけていただけるんだと思いました。
――:運営側もすごく真摯にされていると思います。
そういっていただけるとありがたいです。お客さまから頂戴したメッセージやご意見、ご感想は毎月、社内に貼り出しています。自販機でものを買おうとしたときやゴミを捨てに行くときなど、ふとしたタイミングで目につくところに掲出することで、運営側もお客さまの声をより意識するようにしています。
――:2019年の展開については。
2019年は1月からアニメ2nd Season、10月からアニメの3rd Seasonがあります。ゲームでは、アニメ放送時ならではのアップデートやキャンペーンを行いつつ、2nd Seasonと3rd Seasonの間をつなげるようにしたいです。アニメとの連携については、「今週のアニメがこういう話だったから、今回のガルパの更新はこうだったんだな」と遊んでいる方に伝わるようにしたいですね。プロジェクトとしては盛り上がる1年になりそうなので、しっかりとゲーム側としても盛り上げたいです。
――:ゲーム側でこういうことをやりたいというお考えは。
各バンドや各メンバーにフォーカスが当たるようなことをお話だけでなく、機能ベースなどでも実現したいと思っています。あとは、去年はミュージックビデオのような体験の変わるアップデートがあったので、遊び方自体がより楽しくなるようなアップデートはやっていきたいです。皆さんに長く愛されるコンテンツにしたいですね。
――:昨今、アプリでもクロスメディア的な展開が増えてきましたが、ご覧になっていて感じるところがあれば。
私個人としては、ゲームだけではファンの方を作っていくのが難しい時代になっていると考えています。『荒野行動』などでも、動画を投稿するユーザーがいて、コミュニティができてと、ゲーム以外に作品に触れるタイミングがあります。ゲームで遊ぶだけでなく、コミュニーケーションが楽しいと思ったり熱中したりする状況ができています。
ゲーム以外に触れる機会を作っていかないと、コンテンツとしてファンについていただくことは難しくなってきているので、クロスメディア的な展開をする作品は今後も増えると思います。各社が同じことを始めると、体験として薄くなっていく可能性があります。「このプロジェクトはここがすごい!熱い!」と言われることを用意することが大事です。
例えば、「BanG Dream!(バンドリ!)」で言うと、キャストさんが実際に演奏してライブをしていますし、ゲームではカバー曲で遊べるなど、わかりやすいとっかかりの魅力があります。弊社としても、これから新規コンテンツを作っていく場合、そういう部分を丁寧に考えています。
――:クロスメディア展開でも成否がはっきり分かれていて、これはこれで難易度が高いなとも感じます。
はい。クロスメディアといっても、ゲーム以外にアニメやCDを出していればいいというものではありません。その話がなぜ面白いのか、なぜそういう曲を出しているのか、コンテンツとしての一貫性がないと、今のお客さまには、違和感を持たれてしまいますし満足をしてもらえません。中身が薄いなと思われたら、飽きられてしまいます。
複数のメディアで展開をするには、そのプロジェクトならではの売りやテーマを丁寧に作っていくことが大事だと思っています。新規の企画を考えている時、迷走するポイントがそこですね。入れたい要素があったとして、このプロジェクトにとって必要なのかと考えてみることが大事なのかもしれません。
――:あれ? そういえば、新規を作っていらっしゃるとのことですが…
はい。6月にColorful Paletteという新しい子会社を設立しました。Colorful Paletteでも新規タイトルを作っていますが、Craft Eggとしても別に新規タイトルを作っています。『ガルパ』の運用も本当に丁寧にやらないといけませんし、会社としての成長や新しいものづくりを実現するためにも新規が必要だと思っています。
『ガルパ』の要素分解をして、『ガルパ』は何が良かったのか、何をやっていればもっと良かったのか、ということを考えることは、新規の企画を詰めていくにあたって大事にしています。
――:Craft Eggさんでも新規を作られていたんですか。Colorful Paletteさんが新規を担当し、Craft Eggさんはガルパに専念されるという印象を持ったんですが。
両社ともやっています。今、Craft Eggとしても2本ほど作っています。1本は早ければ年内、遅くとも2020年の早い段階に出せたら良いなと思っています。
――:いずれもゲーム以外の展開も考えておられるのですか。
はい。市場全体を見て、今後、ゲームだけで成功する事例はごくごく限られてくると思います。違ったフックを作れるように、現在企画全体を考えています。
――:2019年の市場はどうなると見ていますか。
引き続きIPと海外は大きなテーマになってくると思います。最近でいうと、ゲーム会社とメディアやアニメの制作会社さんが組んで大規模なオリジナルコンテンツを作っている事例がいくつかありますが、そういう動きが楽しみですね。こういうところが組んで、ファンの方に受け入れてもらえるのか、どう展開をしていくのかに注目しています。
――:2019年も海外にどうでていくかも重要なテーマになりそうですね。KLabさんが海外で大きな成功を収めていますが…。
はい。海外で収益をあげていくことも大きなポイントになっています。『ガルパ』については現地のパブリッシャーさんにお願いしていますが、会社としてはこれとは別に新しい取り組みが必要と考えています。新規タイトルでチャレンジできたら良いですね。
――:最後にメッセージを。
僕からいえることは、「本当に苦しいですけど頑張りましょう!」ということですね。
――:ありがとうございました。