【DGT特集Vol.1】ゲーム運営に特化したDeNAの子会社"DeNA Games Tokyo"…ユーザーファーストな運営を実現するための"おもしろさの創出×仕組み化"とは?
ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>が配信するモバイルゲームの運営を専門に行う子会社として、2015年に設立されたDeNA Games Tokyo(略称DGT)。
そこで今回から「DGT特集」と題し、DeNA Games Tokyoのキーマンたちへのインタビューを実施する。記念すべきVol.1は、2018年8月1日付で、企画部部長から同社代表取締役社長に就任した川口俊氏。
DeNA Games Tokyoの設立の背景やタイトル運営において大切にしている方針、運営力を高めるために注力していること、さらに今後のビジョンについてお話を伺った。
株式会社DeNA Games Tokyo
代表取締役社長
川口 俊 氏
――:本日はよろしくお願いいたします。まず始めに、DeNA Games Tokyoの会社概要と設立の背景についてお聞かせください。
2015年に設立されたDeNA Games Tokyo(以下、DGT)は、社名にもある通りDeNAグループで、ゲーム運営に特化した子会社です。
DGTが設立されるまでは新規タイトルの開発もヒットタイトルの運営もDeNAで行っていました。ですが、プレイヤーのことを第一に考えた良質な運営を続けていかなければならないですし、新規タイトルを開発するためにも人材の流動性を担保しなければならない、という課題がありました。
こういった背景から、DeNAが開発したタイトルを運営するため、運営開発に特化した子会社としてDGTが設立されました。
新規開発と運営では必要なスキルや志向性が異なります。今、DGTはゲームの運営が好きなメンバーや運営のプロフェッショナルが集まって運営をしています。その結果、元々DeNAで運営していたメンバーが次の新規ゲーム開発に注力できるので、DeNAグループとしてゲーム市場により貢献していける状態が作れていると思います。
――:設立時から比べてスタッフの人数はどのくらい増えているのでしょう?
設立時は20名程度でオフィスも初台にありましたが、直後に拠点を今の秋葉原に移しました。タイトルの移管計画が決まったタイミングで採用してメンバーを増やし、適切に運営できる体制を作っています。現在は200名を超える規模になりました。
――:ちなみに川口社長は2015年設立時からDGT所属だったのですか?
私は当時、DeNAでとあるタイトルの運営を担当していました。そのタイトルをDGTに移管するための引き継ぎメンバーとして、2016年10月、DGTに来ました。
当初は引き継ぎが完了したらまたDeNAに戻る予定でしたが、私の中で「DGTっておもしろそうだな」と思ったんです。当時の"運営で世界のリーディングカンパニーになる"というビジョンにも共感できたので、DGTで働きたいと手をあげ、今に至ります。
――:では川口社長も元々運営がお好きだったと。
自分の経歴を少しお話しますと、新卒で入った会社が自動車の部品メーカーでした。ゲームとは全く異なる業界から2013年にDeNAに転職し、ゲームプランナーとしてのキャリアがスタートしました。
私のゲームプランナー人生は『怪盗ロワイヤル』から始まりました。プレイヤーの声がダイレクトに届き、その結果をスピーディに反映させると、また新たな声が届くというところにやりがいを感じたんです。世のお客さまからのフィードバックがスピーディに来るという運営のおもしろさに気づき、運営に魅了され、その延長線上にあるDGTに魅力を感じました。
――:DGTは運営のプロフェッショナルが集まる会社というのが1つ特色だと思いますが、その他に他社にはない魅力や特徴はありますか?
運営特化の会社ですので、採用の面接時から「ゲーム運営の力で、世の中をおもしろくしていきたい」というお話をして、共感していただいたメンバーを採用させていただき、運営をしています。
また、メンバーの色の話にはなりますが、当たり前ですがゲーム好きしかいないですね。ゲームが好き、ゲームへの熱量があれば、未経験の方でも採用させていただくことはあります。
前職がゲームと異なる業種だったとしても、ゲーム好きというベースがあれば、少しプレイしただけでもプレイヤーの理解が早かったり、こんな体験をしたいだったり、こういう表現がいいねという、自分がプレイヤーとして培ってきた想いみたいなものがあるはずなんです。それを運営で発揮しているメンバーが多いところが人材面での特徴的かなと思っています。
ゲーム業界の転職市場では、ゲーム開発経験者かどうかというところで、最初のスクリーニングをされている企業もいらっしゃるとは思います。ですが、DGTはそこをオープンにして、「ゲーム好きな人集まれ」という形で候補者の方にお会いさせていただいてます。
――:次にDGTの事業についてお聞きしたいのですが、まずDeNAからタイトルを移管する作業で重要なポイントはありますか?
タイトルの移管は大変です。多くの苦労を経験してきましたが、そこもノウハウとして蓄積できています。DGTが運営しているタイトルは基本DeNAの内製タイトルなので、元々運営しているプランナー、エンジニア、デザイナー、分析といった様々な職種はDeNAのメンバーです。
ざっくりとした移管スケジュールですが、DGTヘの移管が決まったら、あるタイミングからDeNAの運営タイトルにDGTのメンバーがジョインして、一緒に運営をしながら引き継ぎを行います。その引き継ぎが終わったら、タイトルをDGTに移管するという流れです。
スキルベースなことや業務ベースの部分は、仕組みとして引き継ぎができると思っています。ただ運営というのは、やはりタイトルの長年の歴史があるので、過去にプレイヤーから好評だったものやUX(ユーザーエクスペリエンス)など、プレイヤーを理解するということが何よりも重要です。
プレイヤーの想いをキャッチアップするためには、実際にプレイして自分自身もそのタイトルのプレイヤーになることが重要です。さらに、DeNAでは熱量高く運営しているメンバーが多いので、彼らの想いもしっかりと引き継ぐということが重要です。プレイヤーの理解に加え、前任の方がどういった想いで運営してきたかというところを理解して受け止め、同じ熱量以上でDGTが引き継いで運営する。いわば「魂の引き継ぎ」と言うのでしょうか。そこが大切なところであり、仕組みではない本当に重要な部分だと感じています。そういった部分までこだわっているメンバーの数が、DGTの特徴の1つになっていると思います。
――:DGTがゲームを運営する上で、大切にされていることは何でしょうか?
DGT設立当初から方針として掲げている運営ポリシーは"ユーザーファースト"という言葉です。
プレイヤーと向き合って、プレイヤーのことを考え抜いた運営をすること。そしてDGTが運営するタイトルを愛してもらう。大前提としてプレイヤーに不義理なことをしないという方針を持つことが、結果として『怪盗ロワイヤル』をはじめとしたタイトルの長期運営につながっていると考えています。
――:例えばサービス終了となるタイトルがあった場合、クローズの仕方について意識されていることはあるんですか?
これまでDGTが運営してクローズしたタイトルは1本ありました。その際、DGT内でメンバーとはクローズではなくエンディングと呼び、"エンディングをしっかり作ろう"と話しました。
クローズが決まるというのは採算の面以外にも様々な理由があります。中には運営メンバーを最少人数まで減らしてクローズを迎えるという会社もあるかと思います。しかし、DGTはそのタイトルでメンバーを減らさず、プレイヤーの記憶に残せるようエンディングに向かいました。
プレイヤーにとってそのタイトルは、朝起きてすぐや通勤時間などに遊んで、もはや生活の一部になっていたと思いますし、それが終わってしまうというのはとても大きな出来事。だからそこに関してもプレイヤーに対して不義理なことは絶対にしてはいけないことなんです。
今まで遊んでくださったプレイヤーに「ありがとう」という気持ちをしっかり込めて、手を抜かずにプレイヤーに盛り上がっていただき、エンディングを迎えることを意識していました。それがDGTはちゃんとプレイヤーと向き合っているとか、最後まで責任を持って運営しているという、プレイヤーに対する想いや運営力だけでなく、DGTが運営するゲームへの信用力にもつながっていくと思っています。
――:タイトル運営において感じる難しさや課題はありますか?
タイトル運営は本当に難しいです。例えば、あるタイトルで新しい取り組みを実施したとします。最初はプレイヤーも新鮮に感じてくれるけど、3ヵ月後になるとちょっと慣れてきて、半年経つと「またこれか」と思われてしまう。
そうした飽きにつながることは当たり前に起こってくるところなので、そこに対してプレイヤーの期待を超えたものを届け続けるというのは一番難しいと思っています。
これは私たち運営側にも言えることです。新しいものを開発するときは「プレイヤーはどういう反応をしてくれるんだろう」という期待から運営メンバーもテンションが上がるんですが、やはりそれを続けているとどうしても慣れてしまう。それは目に見えているわけではないですが、慣れが飽きにつながっていくと組織としてもテンションが下がることも起こる。私自身も運営をしていたときに「慣れって怖いな」と感じていました。
ただそこは、良いものでも意図的に変えていったり、新しい取り組みだったり、今までと違った取り組みをするという文化があれば解決できるとは思っています。まさしく今、DGTではその部分で"おもしろさの創出"へのチャレンジに注力している時期です。
――"飽き"を解消するために注力されている"おもしろさの創出"のチャレンジとは具体的にどのようなことをしているのでしょうか?
ゲーム内でプレイヤーに新しさや驚きをお届けするというところで、今年10周年の『怪盗ロワイヤル』や『農園ホッコリーナ』をはじめ、各タイトルで様々な取り組みをしてきましたが、2018年夏に実施した高知県とのコラボ(関連記事)が具体例です。これは簡単に説明させていただくと、プレイヤーが実際に高知県に行くことでゲームの限定アイテムがもらえる、というものでした。
高知県とのコラボでは、ゲーム内のコミュニティで"高知県"というつぶやきが多く、各タイトルの歴史の中でもプレイヤーたちがこれだけ"高知県"とつぶやいている光景を初めてみました(笑) また、これらのゲームはソーシャル性も高いので、例えば、高知県に行けないプレイヤーが高知県に住んでいるプレイヤーや高知県に行ったプレイヤーに「どうだった?」と交流して新しいつながりが生まれました。それが結果的にゲームを続けてくれるところにつながったと感じましたし、実際、KPIとしている数値も上がりました。
今回の「ゲーム×行政」といった取り組みはもちろん、今後は例えば学校や映画、スポーツなど、ゲームの運営の幅を他の業態と掛け合わせて広げて、ゲームの可能性を引き出すことでプレイヤーにおもしろい体験をお届けすること、運営の幅を広げるところに注力していきたいと思っています。
――:"おもしろさの創出"のほかに運営力を高めるために注力されていることはありますか?
今DGTのゲーム運営のテーマとして持っているのは、"おもしろさの創出"に加えて"仕組み化"です。DGTのゲーム運営の上位概念としてある"ユーザーファースト"の下に、"おもしろさ×仕組み化"という方針があります。DGTはゲーム好きが集まる会社なので、アイデアベースでも、少しロジックが飛んでいるけどおもしろそうという挑戦を全面的に後押ししたいと考えています。
先程お話した行政との取り組みも、ロジックの延長線上にはないんです。ですが、おもしろそうというところは長期的に見るとつながってくる。そこに挑戦してみようと。その後に仕組み化することで、再現性を持たせたいと考えています。
"おもしろさ"という点で、高知県とのコラボで普段つながっていないプレイヤー同士の新たなコミュニケーションにつながった場合に、そのプレイヤーたちのプレイの熱量が上がったという事実が生まれました。
これを抽象化すると、普段ゲーム内で関わらない人たちがつながることによってプレイヤーの熱量が上がる。ですので、次は同じ体験ができる企画を狙って作っていこうという再現性の部分を仕組み化できれば、DGTの運営ノウハウ、経験が蓄積されていくのかなと思ってます。
企画がプレイヤーにおもしろいと思ってもらえて良かったで終わるのではなく、何故プレイヤーに受けたのかをしっかり分析して抽象化し、再現性を持たせるという、「おもしろさと仕組み化の両軸」に注力していきます。
それを実現させて運営の幅、バリエーションを持つことでDGTは色々なゲームのフェーズで直面する課題に対して、こうカスタマイズすればできるんじゃないかという知見になる。そういった運営が結果的に長期運営、プレイヤーに長く遊んでもらえることにつながると思っているので、それを意識してやっていきます。
――:DGTが目指すビジョンを教えてください。
今のゲーム業界や市場は、この運営会社だから良いよね、というよりも新規開発する会社でおもしろそうかどうかという判断が一定されていると思うんです。新規開発する会社はそのまま運営もしますから、開発を切り離した運営特化のDGTはポジション的に特殊だと思っています。
従ってその特殊な部分でより一層価値を出さなければと感じています。その価値を出していき、DGTって運営の幅が広くておもしろいよね、長期運営できるよねとプレイヤーが実感できるブランディングができたとき、DGTはゲーム市場、ゲーム運営市場で存在感を出せていると思うので、このような存在を目指したいです。
――:ちなみに現在7タイトル以上を運営されていますが、今後も増やしていく予定でしょうか?
この2月で8タイトル以上になりますが、本数についてはあまり意識していません。今DGTが運営しているタイトルを大事にしつつ、タイトルの様々なフェーズに合わせた運営にも挑戦したいとは思っています。
そこに挑戦することでDGTの運営力の向上や経験の幅の蓄積ができるか、DGTにとっておもしろそう、プレイヤーにもっとおもしろい体験を届けられそう、というタイトルに対してはアプローチしていきたいですね。
――:現在運営しているのはDeNA内製タイトルのみとのことですが、将来的に他社タイトルを運営する考えはあるのでしょうか?
将来的に、DeNA以外のタイトルを運営する可能性はあると思います。DGTも他社も、そしてプレイヤーも「それ良いね」と思えることであればチャレンジしたいです。
――:DGTの発展に伴い、今後新しいメンバーも入ってくると思います。川口社長が一緒に働きたい人物像はどういった人と働きたいですか。
ちょうど2018年末に、DGTの行動指針として「REBUILD」という言葉を掲げました。
このREBUILDに込めた思いと言うのは、事業や組織など、あらゆるものを根本から見直せること。今までこうだったから、あの人がそうやってきたからそのままで良い、ではなくて、本当に良いやりかたは何かを考え、熱量を持って周囲を巻き込んで実現させるために走り切るという思いを込めてます。またこの思いを、DGTの文化にしていきたいです。
REBUILDを今後のDGTの色、文化の色として築いていきたいので、共感した方、そういった経験がある方、挑戦したい方と一緒に働きたいです。また、未経験でもゲームが好きな方、ゲーム運営が好きな方はDGTをゲーム業界への入り口だと思ってチャレンジしていただければと思います。
▼DGT特集バックナンバー▼
・【DGT特集Vol.1】ゲーム運営に特化したDeNAの子会社"DeNA Games Tokyo"…ユーザーファーストな運営を実現するための"おもしろさの創出×仕組み化"とは?
・【DGT特集Vol.2】ゲームトレンドの変化に適応できる人材を採用・育成するための取り組み…採用マネージャーが語るDGTの人材戦略
・【DGT特集Vol.3】大切なのは言語やスキルではなく"おもしろさに関与する"姿勢…技術部部長が語るゲーム運営エンジニアに必要なこと
・【DGT特集Vol.4】いいプランナーの条件は「おもしろい体験作り」と「プレイヤーと真剣に向き合う姿勢」…優秀なプランナーを育成するためのDGTの取り組みと環境に迫る
そこで今回から「DGT特集」と題し、DeNA Games Tokyoのキーマンたちへのインタビューを実施する。記念すべきVol.1は、2018年8月1日付で、企画部部長から同社代表取締役社長に就任した川口俊氏。
DeNA Games Tokyoの設立の背景やタイトル運営において大切にしている方針、運営力を高めるために注力していること、さらに今後のビジョンについてお話を伺った。
株式会社DeNA Games Tokyo
代表取締役社長
川口 俊 氏
■ゲーム運営に特化し、ゲーム好きのメンバーが集まるDGT
――:本日はよろしくお願いいたします。まず始めに、DeNA Games Tokyoの会社概要と設立の背景についてお聞かせください。
2015年に設立されたDeNA Games Tokyo(以下、DGT)は、社名にもある通りDeNAグループで、ゲーム運営に特化した子会社です。
DGTが設立されるまでは新規タイトルの開発もヒットタイトルの運営もDeNAで行っていました。ですが、プレイヤーのことを第一に考えた良質な運営を続けていかなければならないですし、新規タイトルを開発するためにも人材の流動性を担保しなければならない、という課題がありました。
こういった背景から、DeNAが開発したタイトルを運営するため、運営開発に特化した子会社としてDGTが設立されました。
新規開発と運営では必要なスキルや志向性が異なります。今、DGTはゲームの運営が好きなメンバーや運営のプロフェッショナルが集まって運営をしています。その結果、元々DeNAで運営していたメンバーが次の新規ゲーム開発に注力できるので、DeNAグループとしてゲーム市場により貢献していける状態が作れていると思います。
――:設立時から比べてスタッフの人数はどのくらい増えているのでしょう?
設立時は20名程度でオフィスも初台にありましたが、直後に拠点を今の秋葉原に移しました。タイトルの移管計画が決まったタイミングで採用してメンバーを増やし、適切に運営できる体制を作っています。現在は200名を超える規模になりました。
――:ちなみに川口社長は2015年設立時からDGT所属だったのですか?
私は当時、DeNAでとあるタイトルの運営を担当していました。そのタイトルをDGTに移管するための引き継ぎメンバーとして、2016年10月、DGTに来ました。
当初は引き継ぎが完了したらまたDeNAに戻る予定でしたが、私の中で「DGTっておもしろそうだな」と思ったんです。当時の"運営で世界のリーディングカンパニーになる"というビジョンにも共感できたので、DGTで働きたいと手をあげ、今に至ります。
――:では川口社長も元々運営がお好きだったと。
自分の経歴を少しお話しますと、新卒で入った会社が自動車の部品メーカーでした。ゲームとは全く異なる業界から2013年にDeNAに転職し、ゲームプランナーとしてのキャリアがスタートしました。
私のゲームプランナー人生は『怪盗ロワイヤル』から始まりました。プレイヤーの声がダイレクトに届き、その結果をスピーディに反映させると、また新たな声が届くというところにやりがいを感じたんです。世のお客さまからのフィードバックがスピーディに来るという運営のおもしろさに気づき、運営に魅了され、その延長線上にあるDGTに魅力を感じました。
――:DGTは運営のプロフェッショナルが集まる会社というのが1つ特色だと思いますが、その他に他社にはない魅力や特徴はありますか?
運営特化の会社ですので、採用の面接時から「ゲーム運営の力で、世の中をおもしろくしていきたい」というお話をして、共感していただいたメンバーを採用させていただき、運営をしています。
また、メンバーの色の話にはなりますが、当たり前ですがゲーム好きしかいないですね。ゲームが好き、ゲームへの熱量があれば、未経験の方でも採用させていただくことはあります。
前職がゲームと異なる業種だったとしても、ゲーム好きというベースがあれば、少しプレイしただけでもプレイヤーの理解が早かったり、こんな体験をしたいだったり、こういう表現がいいねという、自分がプレイヤーとして培ってきた想いみたいなものがあるはずなんです。それを運営で発揮しているメンバーが多いところが人材面での特徴的かなと思っています。
ゲーム業界の転職市場では、ゲーム開発経験者かどうかというところで、最初のスクリーニングをされている企業もいらっしゃるとは思います。ですが、DGTはそこをオープンにして、「ゲーム好きな人集まれ」という形で候補者の方にお会いさせていただいてます。
■タイトル運営のポリシーは徹底したユーザーファースト
――:次にDGTの事業についてお聞きしたいのですが、まずDeNAからタイトルを移管する作業で重要なポイントはありますか?
タイトルの移管は大変です。多くの苦労を経験してきましたが、そこもノウハウとして蓄積できています。DGTが運営しているタイトルは基本DeNAの内製タイトルなので、元々運営しているプランナー、エンジニア、デザイナー、分析といった様々な職種はDeNAのメンバーです。
ざっくりとした移管スケジュールですが、DGTヘの移管が決まったら、あるタイミングからDeNAの運営タイトルにDGTのメンバーがジョインして、一緒に運営をしながら引き継ぎを行います。その引き継ぎが終わったら、タイトルをDGTに移管するという流れです。
スキルベースなことや業務ベースの部分は、仕組みとして引き継ぎができると思っています。ただ運営というのは、やはりタイトルの長年の歴史があるので、過去にプレイヤーから好評だったものやUX(ユーザーエクスペリエンス)など、プレイヤーを理解するということが何よりも重要です。
プレイヤーの想いをキャッチアップするためには、実際にプレイして自分自身もそのタイトルのプレイヤーになることが重要です。さらに、DeNAでは熱量高く運営しているメンバーが多いので、彼らの想いもしっかりと引き継ぐということが重要です。プレイヤーの理解に加え、前任の方がどういった想いで運営してきたかというところを理解して受け止め、同じ熱量以上でDGTが引き継いで運営する。いわば「魂の引き継ぎ」と言うのでしょうか。そこが大切なところであり、仕組みではない本当に重要な部分だと感じています。そういった部分までこだわっているメンバーの数が、DGTの特徴の1つになっていると思います。
――:DGTがゲームを運営する上で、大切にされていることは何でしょうか?
DGT設立当初から方針として掲げている運営ポリシーは"ユーザーファースト"という言葉です。
プレイヤーと向き合って、プレイヤーのことを考え抜いた運営をすること。そしてDGTが運営するタイトルを愛してもらう。大前提としてプレイヤーに不義理なことをしないという方針を持つことが、結果として『怪盗ロワイヤル』をはじめとしたタイトルの長期運営につながっていると考えています。
――:例えばサービス終了となるタイトルがあった場合、クローズの仕方について意識されていることはあるんですか?
これまでDGTが運営してクローズしたタイトルは1本ありました。その際、DGT内でメンバーとはクローズではなくエンディングと呼び、"エンディングをしっかり作ろう"と話しました。
クローズが決まるというのは採算の面以外にも様々な理由があります。中には運営メンバーを最少人数まで減らしてクローズを迎えるという会社もあるかと思います。しかし、DGTはそのタイトルでメンバーを減らさず、プレイヤーの記憶に残せるようエンディングに向かいました。
プレイヤーにとってそのタイトルは、朝起きてすぐや通勤時間などに遊んで、もはや生活の一部になっていたと思いますし、それが終わってしまうというのはとても大きな出来事。だからそこに関してもプレイヤーに対して不義理なことは絶対にしてはいけないことなんです。
今まで遊んでくださったプレイヤーに「ありがとう」という気持ちをしっかり込めて、手を抜かずにプレイヤーに盛り上がっていただき、エンディングを迎えることを意識していました。それがDGTはちゃんとプレイヤーと向き合っているとか、最後まで責任を持って運営しているという、プレイヤーに対する想いや運営力だけでなく、DGTが運営するゲームへの信用力にもつながっていくと思っています。
――:タイトル運営において感じる難しさや課題はありますか?
タイトル運営は本当に難しいです。例えば、あるタイトルで新しい取り組みを実施したとします。最初はプレイヤーも新鮮に感じてくれるけど、3ヵ月後になるとちょっと慣れてきて、半年経つと「またこれか」と思われてしまう。
そうした飽きにつながることは当たり前に起こってくるところなので、そこに対してプレイヤーの期待を超えたものを届け続けるというのは一番難しいと思っています。
これは私たち運営側にも言えることです。新しいものを開発するときは「プレイヤーはどういう反応をしてくれるんだろう」という期待から運営メンバーもテンションが上がるんですが、やはりそれを続けているとどうしても慣れてしまう。それは目に見えているわけではないですが、慣れが飽きにつながっていくと組織としてもテンションが下がることも起こる。私自身も運営をしていたときに「慣れって怖いな」と感じていました。
ただそこは、良いものでも意図的に変えていったり、新しい取り組みだったり、今までと違った取り組みをするという文化があれば解決できるとは思っています。まさしく今、DGTではその部分で"おもしろさの創出"へのチャレンジに注力している時期です。
■運営力をより高めるため"おもしろさの創出"と"仕組み化"
――"飽き"を解消するために注力されている"おもしろさの創出"のチャレンジとは具体的にどのようなことをしているのでしょうか?
ゲーム内でプレイヤーに新しさや驚きをお届けするというところで、今年10周年の『怪盗ロワイヤル』や『農園ホッコリーナ』をはじめ、各タイトルで様々な取り組みをしてきましたが、2018年夏に実施した高知県とのコラボ(関連記事)が具体例です。これは簡単に説明させていただくと、プレイヤーが実際に高知県に行くことでゲームの限定アイテムがもらえる、というものでした。
高知県とのコラボでは、ゲーム内のコミュニティで"高知県"というつぶやきが多く、各タイトルの歴史の中でもプレイヤーたちがこれだけ"高知県"とつぶやいている光景を初めてみました(笑) また、これらのゲームはソーシャル性も高いので、例えば、高知県に行けないプレイヤーが高知県に住んでいるプレイヤーや高知県に行ったプレイヤーに「どうだった?」と交流して新しいつながりが生まれました。それが結果的にゲームを続けてくれるところにつながったと感じましたし、実際、KPIとしている数値も上がりました。
今回の「ゲーム×行政」といった取り組みはもちろん、今後は例えば学校や映画、スポーツなど、ゲームの運営の幅を他の業態と掛け合わせて広げて、ゲームの可能性を引き出すことでプレイヤーにおもしろい体験をお届けすること、運営の幅を広げるところに注力していきたいと思っています。
――:"おもしろさの創出"のほかに運営力を高めるために注力されていることはありますか?
今DGTのゲーム運営のテーマとして持っているのは、"おもしろさの創出"に加えて"仕組み化"です。DGTのゲーム運営の上位概念としてある"ユーザーファースト"の下に、"おもしろさ×仕組み化"という方針があります。DGTはゲーム好きが集まる会社なので、アイデアベースでも、少しロジックが飛んでいるけどおもしろそうという挑戦を全面的に後押ししたいと考えています。
先程お話した行政との取り組みも、ロジックの延長線上にはないんです。ですが、おもしろそうというところは長期的に見るとつながってくる。そこに挑戦してみようと。その後に仕組み化することで、再現性を持たせたいと考えています。
"おもしろさ"という点で、高知県とのコラボで普段つながっていないプレイヤー同士の新たなコミュニケーションにつながった場合に、そのプレイヤーたちのプレイの熱量が上がったという事実が生まれました。
これを抽象化すると、普段ゲーム内で関わらない人たちがつながることによってプレイヤーの熱量が上がる。ですので、次は同じ体験ができる企画を狙って作っていこうという再現性の部分を仕組み化できれば、DGTの運営ノウハウ、経験が蓄積されていくのかなと思ってます。
企画がプレイヤーにおもしろいと思ってもらえて良かったで終わるのではなく、何故プレイヤーに受けたのかをしっかり分析して抽象化し、再現性を持たせるという、「おもしろさと仕組み化の両軸」に注力していきます。
それを実現させて運営の幅、バリエーションを持つことでDGTは色々なゲームのフェーズで直面する課題に対して、こうカスタマイズすればできるんじゃないかという知見になる。そういった運営が結果的に長期運営、プレイヤーに長く遊んでもらえることにつながると思っているので、それを意識してやっていきます。
■DGTのビジョン、他社タイトルの運営の可能性は?
――:DGTが目指すビジョンを教えてください。
今のゲーム業界や市場は、この運営会社だから良いよね、というよりも新規開発する会社でおもしろそうかどうかという判断が一定されていると思うんです。新規開発する会社はそのまま運営もしますから、開発を切り離した運営特化のDGTはポジション的に特殊だと思っています。
従ってその特殊な部分でより一層価値を出さなければと感じています。その価値を出していき、DGTって運営の幅が広くておもしろいよね、長期運営できるよねとプレイヤーが実感できるブランディングができたとき、DGTはゲーム市場、ゲーム運営市場で存在感を出せていると思うので、このような存在を目指したいです。
――:ちなみに現在7タイトル以上を運営されていますが、今後も増やしていく予定でしょうか?
この2月で8タイトル以上になりますが、本数についてはあまり意識していません。今DGTが運営しているタイトルを大事にしつつ、タイトルの様々なフェーズに合わせた運営にも挑戦したいとは思っています。
そこに挑戦することでDGTの運営力の向上や経験の幅の蓄積ができるか、DGTにとっておもしろそう、プレイヤーにもっとおもしろい体験を届けられそう、というタイトルに対してはアプローチしていきたいですね。
――:現在運営しているのはDeNA内製タイトルのみとのことですが、将来的に他社タイトルを運営する考えはあるのでしょうか?
将来的に、DeNA以外のタイトルを運営する可能性はあると思います。DGTも他社も、そしてプレイヤーも「それ良いね」と思えることであればチャレンジしたいです。
――:DGTの発展に伴い、今後新しいメンバーも入ってくると思います。川口社長が一緒に働きたい人物像はどういった人と働きたいですか。
ちょうど2018年末に、DGTの行動指針として「REBUILD」という言葉を掲げました。
このREBUILDに込めた思いと言うのは、事業や組織など、あらゆるものを根本から見直せること。今までこうだったから、あの人がそうやってきたからそのままで良い、ではなくて、本当に良いやりかたは何かを考え、熱量を持って周囲を巻き込んで実現させるために走り切るという思いを込めてます。またこの思いを、DGTの文化にしていきたいです。
REBUILDを今後のDGTの色、文化の色として築いていきたいので、共感した方、そういった経験がある方、挑戦したい方と一緒に働きたいです。また、未経験でもゲームが好きな方、ゲーム運営が好きな方はDGTをゲーム業界への入り口だと思ってチャレンジしていただければと思います。
▼DGT特集バックナンバー▼
・【DGT特集Vol.1】ゲーム運営に特化したDeNAの子会社"DeNA Games Tokyo"…ユーザーファーストな運営を実現するための"おもしろさの創出×仕組み化"とは?
・【DGT特集Vol.2】ゲームトレンドの変化に適応できる人材を採用・育成するための取り組み…採用マネージャーが語るDGTの人材戦略
・【DGT特集Vol.3】大切なのは言語やスキルではなく"おもしろさに関与する"姿勢…技術部部長が語るゲーム運営エンジニアに必要なこと
・【DGT特集Vol.4】いいプランナーの条件は「おもしろい体験作り」と「プレイヤーと真剣に向き合う姿勢」…優秀なプランナーを育成するためのDGTの取り組みと環境に迫る
会社情報
- 会社名
- DeNA Games Tokyo
- 設立
- 2015年4月
- 代表者
- 代表取締役社長 川口 俊