【DGT特集Vol.2】ゲームトレンドの変化に適応できる人材を採用・育成するための取り組み…採用マネージャーが語るDGTの人材戦略
ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>が配信するモバイルゲームの運営事業に特化した戦略子会社として、2015年に設立されたDeNA Games Tokyo(略称DGT)。
「DGT特集」と題し、DeNA Games Tokyoのキーマン達へのインタビューを実施する。今回は、Vol.1の川口俊代表取締役社長に続き、採用・広報チームマネージャーの徳田悠輔氏だ。
事業環境がスピーディーに変化していくモバイルゲーム市場において、トレンドの変化に適応できるゲームクリエイターを採用・育成するためにDGTが大切にしていること、取り組んでいることについてお話を伺った。
株式会社DeNA Games Tokyo
採用・広報チーム マネージャー
徳田 悠輔 氏
――:まずは徳田さんのこれまでの経歴について教えてください。
新卒でDeNAに入社して、新卒育成・新卒採用・ゲーム事業の中途採用等を担当した後、2018年からDGTの採用・広報マネージャーを務めています。
採用担当としては、プランナーやデザイナー、エンジニアなどの開発側の人材から、マーケッターやアナリスト、PMまでゲーム業界の人材採用は一通り経験してきました。
現在はプレイングマネージャーとして活動しているので、いち採用担当として直接候補者の方とコミュニケーションを取ることもあれば、採用・広報活動の戦略であったり方針に関しても責任を担っています。また、DGTの事業特性上、スケジュール通りに運営しているタイトルを移管しなければならないので、採用活動の重要度が高いです。常日頃からDGT代表の川口や開発側の部長陣とも密にコミュニケーションを取りながら、事業と人事をいかに接続させるか、日々脳みそを沸騰させながら考えています。
――:ゲームクリエイターの採用に携わられてきた中で、過去と現在で人材の流れや採用市場のトレンドに変化はあるのでしょうか?
私もまだまだ若輩者なので、それほど大きなトレンドを見てきたわけではありません。ただ、モバイルゲーム市場に関しては、5年スパンで過去を振り返ってみると、人材の流れがタコツボ化してきており、個々のキャリア開発の難易度が上がっていると感じています。
モバイルゲーム市場勃興期、Mobageや他社のプラットフォームがぐんぐん伸びていた時期は、他業界から優秀な人材がゲーム業界に集まってきて、経験はないけれど熱意と意欲で業界を盛り上げた。DGT代表の川口もまさにその時代のチャレンジャーの一人です。今、市場としては成熟期を迎え、まだ伸びてはいるもののやや市場成長が鈍化してきた中で、他業界から人材が集まるのではなく、ゲーム業界内で人が行き来するサイクル(タコツボ化)が強くなっているんじゃないかと。
さらに、ゲーム開発の複雑性・難易度が増す中で、どの企業も必然的に採用観点では実績・経験を重視し、経験がないことをやってもらう前提での採用・アサインメントはあまりしていないと強く感じます。また、未経験者の中途採用はもとより、採用から能力発揮までのリードタイムが長い新卒採用の採用数も絞っている企業が多いと聞きます。
採用戦略あるいは人事戦略は事業戦略に紐づくべきものなので、各社とも事業に対して最適な形があるべきですし、実績重視の採用ポリシーを否定するつもりはありませんが、チャレンジ機会が減ってきている中で、いち個人としてはキャリア形成の難易度が高まっていると言わざるを得ないでしょう。
――:事業環境の変化に伴って人材の流れも変わっていっているのですね。そういった環境下でDGTはどういった人事ポリシーを掲げているのでしょうか?
我々は、そういった事業環境においても、意志をもってチャレンジアサインをする方針です。
幸い、DGTは大規模/長期運営タイトルを複数抱えていて、安定した成果・業績を発揮し続けていることもあり、まだ経験したことがないチャレンジにも取り組んでもらいやすい環境だと思います。
ブラウザタイトル・アプリタイトル問わず業界でも有数の規模感のタイトルを運営しているので、一個一個のチャレンジがプレイヤーに対してインパクトの大きい良質な"打席"となっており、ゲームクリエイターが一皮向けるチャンスとなっています。
"打席"に積極的に立ってもらえる環境を用意できているからこそ、"原石"を磨き上げて優秀なゲームクリエイターを輩出し続けていくことに、ある種の使命感も持っています。
また、市場成長は踊り場を迎えていますが、相変わらずプレイヤーの嗜好性やトレンドは目まぐるしく変化しているので、変化に適応できる人材の採用や未知の業務へのアサインメントによって、変化に適応できる組織を作ることは、いわばDGTなりの生存戦略ともいえます。
――:人材の実績やスキルよりも成長力や適応力を重視して採用するということは、人材が成長するような環境がDGTにはあるということでしょうか。
DGTとしては代表の川口がお話した通り(関連記事)、"おもしろさの創出"と"仕組み化"という方針を取っています。
まず、前者の"おもしろさの創出"という観点で、「アイデアベースで少しロジックが飛んでいるけれどおもしろそう」というチャレンジを積極的に後押ししているので、自身で企画や考えを生み出していく"打席数"が多いと思います。
さらに、そういった取り組みを、"仕組み化"することで、再現性が高い状態に持っていきます。元々DeNAグループは、ゲーム運営においてしっかりロジックを立ててPDCAを回していく力が強いので、成果の再現性を生み出せていると思います。
そして"多くの打席に立つ"、 "仕組みと型を身に付ける"という2つの観点から、ゲームクリエイターとして力を付ける上で非常に良い環境だと考えています。
また、アサインメントの方針、つまり「誰をどこに配属するか」を緻密に検討しています。例えばプランナーなら、「我々はプレイヤーにどういう体験を届けたいのか」という点をゼロベースで考えられるプランナーと一緒に働いてもらうことで、育てていくというイメージです。
2019年に10周年を迎えるような大規模なブラウザタイトルもいくつかありますが、得てして「このゲームってこういう風に楽しむものだよね」というように過去に規定されたUXをベースに企画を検討してしまいがちです。もちろん、長年楽しんでいただいてきたUXは尊重すべきなのですが、我々が何よりも大事にすべきことはプレイヤーに飽きずに楽しみ続けていただくことです。そのためにも新しい体験・驚きを届け続けることは非常に重要です。
10年間積み重ねてきたこと、是とされてきたUXに関しても見直して、過去の運営以上に高い熱量で、いまのプレイヤーが求めているUXとは何かというところをゼロから考える。長期運営タイトルでも新規の機能開発をしたり、これまでとはまったく切り口の違うコラボ企画を立てたりする。そういう事をプレイヤー目線で誠実に考えて実行できるプランナーと一緒に動いてもらうことで、UXベースで企画を考えられる良いプランナーが育つという土壌があると思います。
――:そういった成長力・適応力を持った人材を実際に採用した後で、実施している育成の取り組みなどはありますか。
採用させていただくときに、「現在の事業のみならず、1年後、2年後に何をお任せしていくのか?」「その方のキャリアはどう積み上がっているのか?」という議論が当たり前のように開発側のマネージャーと採用チームの間で活発に議論されます。
そこからどういう風に育成していくかという観点で言うと、やはり1on1など、マネージャーがしっかりキャリアに寄り添うという体制と文化ができているのは大きいと思います。これは意外とできていない企業も多いという話は聞きます。
1on1の場は週に1回だったり2週に1回設けていて、そこでは業務の相談をすることもありますが、例えば今後のキャリアの話など、目の前の業務とは離れたアジェンダでディスカッションする場としても活用しています。そういう場が長期的なキャリア形成にも繋がっているんじゃないかなと思います。
その点について、最近良いなと思ったのが、DGTのデザイン部の取り組みです。キャリア形成を支援するようなマネジメントをされていないデザイナーの方がこの業界には多いなと感じます。DGTのデザイン部のマネージャー陣もそこに課題を感じていたので、メンバーにポートフォリオを作成してもらい、成果物を元に今後のスキルアップの検討をする取り組みを始めました。
普段の業務上の成果物だけではなく、過去も含めて、「自身は何を作ってきて何が作れるのか」を作品で示してもらう。その成果物を元にマネージャー陣と「次はこういうものを作れるようにしましょう」、「こういうスキルを得られるようになりましょう」という話をして、スキルをしっかり見た上で今後のキャリアを一緒に考えるのです。
Will-Can-Mustの中で、デザイナーをはじめ成果物で評価されるメンバーは往々にしてCanとMustだけでアサインメントが決まるため、結構同じ仕事を任され続けるケースが多いと思います。
我々は、そこにWillをしっかり加えた上でアサインメントを決めるようにしています。結局のところ、メンバーのキャリアを一緒に作っていかないと、DGTとしてもトレンドの変化に適応できなくなるので、先を見越して意識的にキャリア形成支援の仕組みを作っています。
――:その他、人を育てる上でDGTならではの工夫や取り組みはありますか。
これはどの会社でもやっているかもしれませんが、徹底度という意味でDGTならではだと思うのは目標設定です。
半期に1回目標を設定して、その半期の間に何をどこまでやるのか決めて、途中で変わったならアップデートする。期が終わったらその目標に対しての結果はどうだったのか振り返る。目標設定にマネージャーが徹底的に寄り添うので、新しく入ったメンバーには驚かれるケースが多いです。なので、なぜそこまで徹底するのか、その意味合いをメンバーに理解してもらうところから始めています。
――:メンバーのキャリアアップ、成長のためにマネージャーがしっかり寄り添っている会社はなかなかないですよね。
マネジメントの基礎力を強化して、組織として当たり前のことをちゃんとやる。そういうまっとうなことをできていない組織も多い業界なのかなとは採用担当の立場から見て感じているので、DGTの育成文化はこれからも大事にしたいです。
――:お話を聞いていると、DGTは採用することがゴールではなく、採用してどんなキャリアを歩んでもらうのかを大切にされているんだという印象を受けました。
私もそこは意識しているところです。人事界隈では「年間で何人採用できました」、という成功エピソードをよく耳にします。事業成功のために人員計画・採用計画を確実にコントロールすることは非常に重要ですが、そこが採用担当としてのゴールではないと思っています。究極的に言えば、事業成功を経て、そこに関わるメンバーだったり、世の中の方々が幸せになるというところが我々のゴールなんです。
採用計画の達成は事業成功からはまだまだ遠くにあります。採用したメンバーにどの様に事業貢献してもらうかが重要です。そのため、採用活動においても"見極め"と"アトラクト"を適切に実施するのみならず、"コミットメント"を引き出すことを強く意識しています。
たとえ優秀な人材がDGTに入社したいと言ってくれていても、その人が「なぜDGTで輝けるか?」を互いに納得できるまで内定を出さないこともあります。その際は、DGTのビジョンのみならず課題もさらけ出して、ご自身でも改めて「なぜ自分がDGTにjoinするのか」「DGTを通じて世の中にどんな"Delight"を提供したいのか」のセルフチェックをしていただくようにしています。
――:徳田さんが人事として大事にしているスタンスは何でしょう?
個人的に意識していることは、鳥の目、虫の目、魚の目という、3つのビューです。高い視点から市場や会社全体を俯瞰して全体最適な意思決定をするための鳥の目、事業上の小さな変化要因や人の感情の機微を細部まで捉える虫の目、そして事業や組織の大きな流れを読む魚の目という3つの目で物事を見ることです。
鳥の目、虫の目は意識されている方も多いと思うのですが、難しいのが魚の目なんです。例えばスマホシフト・アプリシフトなど、業界にとって大きくドラスティックな変化は誰が見ても明らかなので皆が必死に適応しようとしますが、ジワジワとした変化というのは意外と気付けなかったりするんです。
ヒト・モノ・カネ・情報と括られる様々なリソースの中でも配分の最適化に一番時間を要するのはヒトと組織だと思いますし、だからこそ人事としてそういうジワジワとした流れの変化を一生懸命観察して、先を見通せるようになろうと強く意識しています。
――:人事の立場からDGTをどのようにしていきたいかという今後のビジョンがあれば教えてください。
採用や労務といった機能別に活動するのではなく、事業成功から逆算して組織全体をコーディネートするような人事体制を作っていきたいと考えています。
その結果DGTがあらゆる方面でもっとプレゼンスを発揮して、プレイヤーからはDGTの運営しているゲームだから楽しい、他社からは運営だったらDGTに任せたい・DGTの人材が欲しい、採用候補者からはDGTのゲーム運営に携わりたい・DGTの運営を学びたいと、より一層思われている状態まで成長させられたら、自分としても達成感があるんじゃないかなと思ってます。
――:では最後に徳田さんが今後DGTで一緒に働きたいと思う人材について教えてください。
一言で言うならば、ピュアなモチベーションを持っている人材です。DGTには、自身が作り上げたものをプレイヤーに届けたいというピュアなモチベーションに突き動かされているメンバーが非常に多いです。
DGTはゲーム業界未経験の人材も受け入れていますが、違う業界から激動のゲーム業界に飛び込んでくるときってそれなりに不安を抱いたと思うのです。それを乗り越えてDGTにやってきたメンバー達は、じゃあ何故それを乗り越えられるかというと、ゲームを筆頭に、何かしらのエンタメに心を震わされたり、生活に彩りが生まれたりという経験が原体験としてあると思うんです。
その自分たちと同じような体験をシンプルに世の中のお客様に提供したいというゲームクリエイターのピュアなモチベーションが事業を動かしていると思っています。
私自身、日常的にゲームに限らずエンタメサービスに接する中で、そのサービスの価値と複雑性にいつも驚かされますし、それを生み出しているクリエイターの知性と情熱に心の底からの敬意を持っています。
だからこそ、彼らを応援したいという気持ちがすごく強いですし、夢中になってプレイヤーに何かを届けるための企画やデザイン、開発に没頭しているメンバー達を見ていると、そういうピュアで熱量が高いメンバーをもっと集めたいし、彼らがもっと没頭できる組織や環境を作らなければいけないと思います。そこがやりがいであり、自分の中のモチベーションにもなっていますね。
▼DGT特集バックナンバー▼
・【DGT特集Vol.1】ゲーム運営に特化したDeNAの子会社"DeNA Games Tokyo"…ユーザーファーストな運営を実現するための"おもしろさの創出×仕組み化"とは?
・【DGT特集Vol.2】ゲームトレンドの変化に適応できる人材を採用・育成するための取り組み…採用マネージャーが語るDGTの人材戦略
・【DGT特集Vol.3】大切なのは言語やスキルではなく"おもしろさに関与する"姿勢…技術部部長が語るゲーム運営エンジニアに必要なこと
・【DGT特集Vol.4】いいプランナーの条件は「おもしろい体験作り」と「プレイヤーと真剣に向き合う姿勢」…優秀なプランナーを育成するためのDGTの取り組みと環境に迫る
「DGT特集」と題し、DeNA Games Tokyoのキーマン達へのインタビューを実施する。今回は、Vol.1の川口俊代表取締役社長に続き、採用・広報チームマネージャーの徳田悠輔氏だ。
事業環境がスピーディーに変化していくモバイルゲーム市場において、トレンドの変化に適応できるゲームクリエイターを採用・育成するためにDGTが大切にしていること、取り組んでいることについてお話を伺った。
株式会社DeNA Games Tokyo
採用・広報チーム マネージャー
徳田 悠輔 氏
■人材がタコツボ化するゲーム業界におけるDGTの人材戦略
――:まずは徳田さんのこれまでの経歴について教えてください。
新卒でDeNAに入社して、新卒育成・新卒採用・ゲーム事業の中途採用等を担当した後、2018年からDGTの採用・広報マネージャーを務めています。
採用担当としては、プランナーやデザイナー、エンジニアなどの開発側の人材から、マーケッターやアナリスト、PMまでゲーム業界の人材採用は一通り経験してきました。
現在はプレイングマネージャーとして活動しているので、いち採用担当として直接候補者の方とコミュニケーションを取ることもあれば、採用・広報活動の戦略であったり方針に関しても責任を担っています。また、DGTの事業特性上、スケジュール通りに運営しているタイトルを移管しなければならないので、採用活動の重要度が高いです。常日頃からDGT代表の川口や開発側の部長陣とも密にコミュニケーションを取りながら、事業と人事をいかに接続させるか、日々脳みそを沸騰させながら考えています。
――:ゲームクリエイターの採用に携わられてきた中で、過去と現在で人材の流れや採用市場のトレンドに変化はあるのでしょうか?
私もまだまだ若輩者なので、それほど大きなトレンドを見てきたわけではありません。ただ、モバイルゲーム市場に関しては、5年スパンで過去を振り返ってみると、人材の流れがタコツボ化してきており、個々のキャリア開発の難易度が上がっていると感じています。
モバイルゲーム市場勃興期、Mobageや他社のプラットフォームがぐんぐん伸びていた時期は、他業界から優秀な人材がゲーム業界に集まってきて、経験はないけれど熱意と意欲で業界を盛り上げた。DGT代表の川口もまさにその時代のチャレンジャーの一人です。今、市場としては成熟期を迎え、まだ伸びてはいるもののやや市場成長が鈍化してきた中で、他業界から人材が集まるのではなく、ゲーム業界内で人が行き来するサイクル(タコツボ化)が強くなっているんじゃないかと。
さらに、ゲーム開発の複雑性・難易度が増す中で、どの企業も必然的に採用観点では実績・経験を重視し、経験がないことをやってもらう前提での採用・アサインメントはあまりしていないと強く感じます。また、未経験者の中途採用はもとより、採用から能力発揮までのリードタイムが長い新卒採用の採用数も絞っている企業が多いと聞きます。
採用戦略あるいは人事戦略は事業戦略に紐づくべきものなので、各社とも事業に対して最適な形があるべきですし、実績重視の採用ポリシーを否定するつもりはありませんが、チャレンジ機会が減ってきている中で、いち個人としてはキャリア形成の難易度が高まっていると言わざるを得ないでしょう。
――:事業環境の変化に伴って人材の流れも変わっていっているのですね。そういった環境下でDGTはどういった人事ポリシーを掲げているのでしょうか?
我々は、そういった事業環境においても、意志をもってチャレンジアサインをする方針です。
幸い、DGTは大規模/長期運営タイトルを複数抱えていて、安定した成果・業績を発揮し続けていることもあり、まだ経験したことがないチャレンジにも取り組んでもらいやすい環境だと思います。
ブラウザタイトル・アプリタイトル問わず業界でも有数の規模感のタイトルを運営しているので、一個一個のチャレンジがプレイヤーに対してインパクトの大きい良質な"打席"となっており、ゲームクリエイターが一皮向けるチャンスとなっています。
"打席"に積極的に立ってもらえる環境を用意できているからこそ、"原石"を磨き上げて優秀なゲームクリエイターを輩出し続けていくことに、ある種の使命感も持っています。
また、市場成長は踊り場を迎えていますが、相変わらずプレイヤーの嗜好性やトレンドは目まぐるしく変化しているので、変化に適応できる人材の採用や未知の業務へのアサインメントによって、変化に適応できる組織を作ることは、いわばDGTなりの生存戦略ともいえます。
■成長のキーワードは"おもしろさの創出"と"仕組み化"
――:人材の実績やスキルよりも成長力や適応力を重視して採用するということは、人材が成長するような環境がDGTにはあるということでしょうか。
DGTとしては代表の川口がお話した通り(関連記事)、"おもしろさの創出"と"仕組み化"という方針を取っています。
まず、前者の"おもしろさの創出"という観点で、「アイデアベースで少しロジックが飛んでいるけれどおもしろそう」というチャレンジを積極的に後押ししているので、自身で企画や考えを生み出していく"打席数"が多いと思います。
さらに、そういった取り組みを、"仕組み化"することで、再現性が高い状態に持っていきます。元々DeNAグループは、ゲーム運営においてしっかりロジックを立ててPDCAを回していく力が強いので、成果の再現性を生み出せていると思います。
そして"多くの打席に立つ"、 "仕組みと型を身に付ける"という2つの観点から、ゲームクリエイターとして力を付ける上で非常に良い環境だと考えています。
また、アサインメントの方針、つまり「誰をどこに配属するか」を緻密に検討しています。例えばプランナーなら、「我々はプレイヤーにどういう体験を届けたいのか」という点をゼロベースで考えられるプランナーと一緒に働いてもらうことで、育てていくというイメージです。
2019年に10周年を迎えるような大規模なブラウザタイトルもいくつかありますが、得てして「このゲームってこういう風に楽しむものだよね」というように過去に規定されたUXをベースに企画を検討してしまいがちです。もちろん、長年楽しんでいただいてきたUXは尊重すべきなのですが、我々が何よりも大事にすべきことはプレイヤーに飽きずに楽しみ続けていただくことです。そのためにも新しい体験・驚きを届け続けることは非常に重要です。
10年間積み重ねてきたこと、是とされてきたUXに関しても見直して、過去の運営以上に高い熱量で、いまのプレイヤーが求めているUXとは何かというところをゼロから考える。長期運営タイトルでも新規の機能開発をしたり、これまでとはまったく切り口の違うコラボ企画を立てたりする。そういう事をプレイヤー目線で誠実に考えて実行できるプランナーと一緒に動いてもらうことで、UXベースで企画を考えられる良いプランナーが育つという土壌があると思います。
■メンバーに寄り添いキャリア形成を支援することで、トレンドの変化に適応していく
――:そういった成長力・適応力を持った人材を実際に採用した後で、実施している育成の取り組みなどはありますか。
採用させていただくときに、「現在の事業のみならず、1年後、2年後に何をお任せしていくのか?」「その方のキャリアはどう積み上がっているのか?」という議論が当たり前のように開発側のマネージャーと採用チームの間で活発に議論されます。
そこからどういう風に育成していくかという観点で言うと、やはり1on1など、マネージャーがしっかりキャリアに寄り添うという体制と文化ができているのは大きいと思います。これは意外とできていない企業も多いという話は聞きます。
1on1の場は週に1回だったり2週に1回設けていて、そこでは業務の相談をすることもありますが、例えば今後のキャリアの話など、目の前の業務とは離れたアジェンダでディスカッションする場としても活用しています。そういう場が長期的なキャリア形成にも繋がっているんじゃないかなと思います。
その点について、最近良いなと思ったのが、DGTのデザイン部の取り組みです。キャリア形成を支援するようなマネジメントをされていないデザイナーの方がこの業界には多いなと感じます。DGTのデザイン部のマネージャー陣もそこに課題を感じていたので、メンバーにポートフォリオを作成してもらい、成果物を元に今後のスキルアップの検討をする取り組みを始めました。
普段の業務上の成果物だけではなく、過去も含めて、「自身は何を作ってきて何が作れるのか」を作品で示してもらう。その成果物を元にマネージャー陣と「次はこういうものを作れるようにしましょう」、「こういうスキルを得られるようになりましょう」という話をして、スキルをしっかり見た上で今後のキャリアを一緒に考えるのです。
Will-Can-Mustの中で、デザイナーをはじめ成果物で評価されるメンバーは往々にしてCanとMustだけでアサインメントが決まるため、結構同じ仕事を任され続けるケースが多いと思います。
我々は、そこにWillをしっかり加えた上でアサインメントを決めるようにしています。結局のところ、メンバーのキャリアを一緒に作っていかないと、DGTとしてもトレンドの変化に適応できなくなるので、先を見越して意識的にキャリア形成支援の仕組みを作っています。
――:その他、人を育てる上でDGTならではの工夫や取り組みはありますか。
これはどの会社でもやっているかもしれませんが、徹底度という意味でDGTならではだと思うのは目標設定です。
半期に1回目標を設定して、その半期の間に何をどこまでやるのか決めて、途中で変わったならアップデートする。期が終わったらその目標に対しての結果はどうだったのか振り返る。目標設定にマネージャーが徹底的に寄り添うので、新しく入ったメンバーには驚かれるケースが多いです。なので、なぜそこまで徹底するのか、その意味合いをメンバーに理解してもらうところから始めています。
――:メンバーのキャリアアップ、成長のためにマネージャーがしっかり寄り添っている会社はなかなかないですよね。
マネジメントの基礎力を強化して、組織として当たり前のことをちゃんとやる。そういうまっとうなことをできていない組織も多い業界なのかなとは採用担当の立場から見て感じているので、DGTの育成文化はこれからも大事にしたいです。
■事業を通じて世の中に"Delight"を届ける、それが採用活動の究極のゴール
――:お話を聞いていると、DGTは採用することがゴールではなく、採用してどんなキャリアを歩んでもらうのかを大切にされているんだという印象を受けました。
私もそこは意識しているところです。人事界隈では「年間で何人採用できました」、という成功エピソードをよく耳にします。事業成功のために人員計画・採用計画を確実にコントロールすることは非常に重要ですが、そこが採用担当としてのゴールではないと思っています。究極的に言えば、事業成功を経て、そこに関わるメンバーだったり、世の中の方々が幸せになるというところが我々のゴールなんです。
採用計画の達成は事業成功からはまだまだ遠くにあります。採用したメンバーにどの様に事業貢献してもらうかが重要です。そのため、採用活動においても"見極め"と"アトラクト"を適切に実施するのみならず、"コミットメント"を引き出すことを強く意識しています。
たとえ優秀な人材がDGTに入社したいと言ってくれていても、その人が「なぜDGTで輝けるか?」を互いに納得できるまで内定を出さないこともあります。その際は、DGTのビジョンのみならず課題もさらけ出して、ご自身でも改めて「なぜ自分がDGTにjoinするのか」「DGTを通じて世の中にどんな"Delight"を提供したいのか」のセルフチェックをしていただくようにしています。
――:徳田さんが人事として大事にしているスタンスは何でしょう?
個人的に意識していることは、鳥の目、虫の目、魚の目という、3つのビューです。高い視点から市場や会社全体を俯瞰して全体最適な意思決定をするための鳥の目、事業上の小さな変化要因や人の感情の機微を細部まで捉える虫の目、そして事業や組織の大きな流れを読む魚の目という3つの目で物事を見ることです。
鳥の目、虫の目は意識されている方も多いと思うのですが、難しいのが魚の目なんです。例えばスマホシフト・アプリシフトなど、業界にとって大きくドラスティックな変化は誰が見ても明らかなので皆が必死に適応しようとしますが、ジワジワとした変化というのは意外と気付けなかったりするんです。
ヒト・モノ・カネ・情報と括られる様々なリソースの中でも配分の最適化に一番時間を要するのはヒトと組織だと思いますし、だからこそ人事としてそういうジワジワとした流れの変化を一生懸命観察して、先を見通せるようになろうと強く意識しています。
――:人事の立場からDGTをどのようにしていきたいかという今後のビジョンがあれば教えてください。
採用や労務といった機能別に活動するのではなく、事業成功から逆算して組織全体をコーディネートするような人事体制を作っていきたいと考えています。
その結果DGTがあらゆる方面でもっとプレゼンスを発揮して、プレイヤーからはDGTの運営しているゲームだから楽しい、他社からは運営だったらDGTに任せたい・DGTの人材が欲しい、採用候補者からはDGTのゲーム運営に携わりたい・DGTの運営を学びたいと、より一層思われている状態まで成長させられたら、自分としても達成感があるんじゃないかなと思ってます。
――:では最後に徳田さんが今後DGTで一緒に働きたいと思う人材について教えてください。
一言で言うならば、ピュアなモチベーションを持っている人材です。DGTには、自身が作り上げたものをプレイヤーに届けたいというピュアなモチベーションに突き動かされているメンバーが非常に多いです。
DGTはゲーム業界未経験の人材も受け入れていますが、違う業界から激動のゲーム業界に飛び込んでくるときってそれなりに不安を抱いたと思うのです。それを乗り越えてDGTにやってきたメンバー達は、じゃあ何故それを乗り越えられるかというと、ゲームを筆頭に、何かしらのエンタメに心を震わされたり、生活に彩りが生まれたりという経験が原体験としてあると思うんです。
その自分たちと同じような体験をシンプルに世の中のお客様に提供したいというゲームクリエイターのピュアなモチベーションが事業を動かしていると思っています。
私自身、日常的にゲームに限らずエンタメサービスに接する中で、そのサービスの価値と複雑性にいつも驚かされますし、それを生み出しているクリエイターの知性と情熱に心の底からの敬意を持っています。
だからこそ、彼らを応援したいという気持ちがすごく強いですし、夢中になってプレイヤーに何かを届けるための企画やデザイン、開発に没頭しているメンバー達を見ていると、そういうピュアで熱量が高いメンバーをもっと集めたいし、彼らがもっと没頭できる組織や環境を作らなければいけないと思います。そこがやりがいであり、自分の中のモチベーションにもなっていますね。
▼DGT特集バックナンバー▼
・【DGT特集Vol.1】ゲーム運営に特化したDeNAの子会社"DeNA Games Tokyo"…ユーザーファーストな運営を実現するための"おもしろさの創出×仕組み化"とは?
・【DGT特集Vol.2】ゲームトレンドの変化に適応できる人材を採用・育成するための取り組み…採用マネージャーが語るDGTの人材戦略
・【DGT特集Vol.3】大切なのは言語やスキルではなく"おもしろさに関与する"姿勢…技術部部長が語るゲーム運営エンジニアに必要なこと
・【DGT特集Vol.4】いいプランナーの条件は「おもしろい体験作り」と「プレイヤーと真剣に向き合う姿勢」…優秀なプランナーを育成するためのDGTの取り組みと環境に迫る
会社情報
- 会社名
- DeNA Games Tokyo
- 設立
- 2015年4月
- 代表者
- 代表取締役社長 川口 俊