【サイバーエージェント3Q決算】藤田社長「下方修正したからこそ全社一丸で取り組めた」 3四半期連続の増益、AbemaTVもWAU1000万突破
サイバーエージェント<4751>は、本日(7月24日)、第3四半期(2019年4~6月)の決算説明会をYoutubeなどでライブ配信を行なった。当初は、質疑応答などを受け付けるテレフォンカンファレンス(テレカン)もあわせて行うとしていたが、7月18日の時点でテレカンを中止とし、ライブ配信のみを行うとした。
第3四半期(4~6月)の業績は、売上高が前四半期比(QonQ)で3.1%減の1136億円、営業利益が同9.8%増の94億円と減収・増益となった。藤田晋社長(写真)は「下方修正を行なった後に推し進めた全社的なコストの見直しが功を奏した。とても順調な四半期だった」と振り返った。
また、注力事業としていたAbemaTVについても、開局当初の目標である1000万WAU(週間アクティブユーザー数)を突破した。「(目標を達成したから)すぐに黒字転換を達成できるというものではないが、規模拡大とともに、マネタイズに向けて徐々に本腰を入れていきたい」と語った。
このほか、営業利益を200億円から290億円に上方修正した。下方修正から半年後ということで、藤田社長は「マッチポンプに映るかもしれない」が、「半年前に下方修正しなければ、スピード感を持ってコスト削減に取り組むことができなかった」と述べ、市場関係者に理解を求めた。
決算の概況を見ていこう。
■全社的なコスト削減が奏功し増益を達成
全体を見ていくと、売上高がQonQで3.1%減の1136億円だった。けん引役であったネット広告でブランド広告主などの新規開拓を最優先で取り組んだため、トップラインが伸び悩んでいるとのことだった。第4四半期から新規開拓した顧客の取引高を増やしていきたいとの考えを示した。
営業利益は同9.8%増の94億円だった。売上高が前四半期比で減少したものの、全社的なコストの見直しが奏功し、販管費を15億円以上減らすことに成功し、全体として増益を達成した。「大規模なキャンペーンを行うことで全社一丸でスピード感を持って行うことができた」という。
例年、前四半期(1~3月)において、年度末の需要期を迎える広告事業と、年始や周年をゲーム事業が収益を伸ばし、その次の四半期は反動で売上と利益を落とす傾向にあった。さらに4月の新卒の社員が大量入社も利益を圧迫したが、今年は例年と違っていたことがわかる。
すでに触れたように2019年9月通期の業績予想を上方修正した。売上高と最終利益は変更しないものの、営業利益を200億円から290億円、経常利益を190億円から285億円に引き上げた。通期予想に対する進捗率は75%を上回っており、達成はおろか上ブレとなる可能性もありそうだ。
続いてセグメント別に見ていこう。
■ブランド広告主の開拓が進み今後のけん引役に
ネット広告は、売上高が前年同期比で7.9%増の653億円、同8.5%増の51億円と増収増益だった。すでに触れたようにブランド広告主など新規開拓を最優先で取り組んだことが「会社全体のトップラインが伸びづらい要因だった」(藤田社長)が、徐々に成果が出てきた。
ブランド広告主については、メーカーや自動車などの受注が顕著に伸びているという。「この半年から1年にかけて、新規でブランド広告主の開拓を行なってきた。その成果としてメーカーや自動車などブランド広告主からの受注が取れるようになってきた」とのこと。
新規開拓したブランド広告主については、第4四半期以降、取引高をさらに増やし、売上をさらに伸ばしていく考え。今後のトップラインのけん引役として期待しているようだ。
■ゲーム事業はコスト適正化と好調な既存タイトルで増益
ゲームの収益について、売上高が前四半期比4.2%減の382億円、営業利益が同12.0%増の83億円とQonQで減収増益となったことを明らかにした。売上はQonQでこそ減収だが、前年同期比では7.5%増だった。
主力タイトルが周年を迎えた次の四半期ということで反動減が予想されたものの、四半期ベースで過去3番目の売上となったほか、2ケタの増益を達成したという。既存の主力タイトルが好調に推移したことに加え、コスト適正化などが奏功したという。
なお、新作ついては、2019年内は5タイトルを提供する予定だ。藤田社長は「現在の市場環境を見ると、新作をヒットさせる難易度がさらに高くなっているが、新しいものを当てたい」と述べるにとどめ、個別のタイトルへの言及は特に行わなかった。
■目標達成しマネタイズを徐々に進めるAbemaTV
メディア事業については、アメーバピグの終了発表を受けて、"課金"売上が低下したほか、広告の季節要因なども受けて前四半期比では減収減益だったものの、注力事業である「AbemaTV」については開局当初の目標である1000万WAUに到達した。
山里亮太さんと蒼井優さんの結婚会見、那須川天心選手と亀田興毅さんと試合、宮迫博之さんと田村亮さんの会見を中継した際、WAUが1000万を突破したという。とりわけ、宮迫博之さんと田村亮さんの会見では1330万と過去最高を大きく更新することになった。
藤田社長は「Yahoo!」のモデルに倣い、AbemaTVを企画したと述べた。「Yahoo!」では、「トピックス」を見てから、他のコンテンツを見に行く人が多いが、AbemaTVについてもニュースを軸にしてドラマやスポーツ、アニメなどのコンテンツを見に行くようになっているとした。
今回、1000万WAUを達成したことで、すぐに黒字化を達成できるものではないとしたものの、引き続き規模を拡大させつつ、収益化に本腰を入れていきたい、と述べた。
このほか、独自コンテンツの放送などもあって、広告収入だけでなく、月額課金の会員数が44万8000人に到達。さらに競輪の中継と車券の販売など周辺ビジネスからの収益も立ち上がっているとし、引き続きマネタイズを加速していく考えだ。
(編集部・木村英彦)
会社情報
- 会社名
- 株式会社サイバーエージェント
- 設立
- 1998年3月
- 代表者
- 代表取締役 藤田 晋
- 決算期
- 9月
- 直近業績
- 売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 4751