この秋に開催された東京ゲームショウ2019への初出展や、先日開かれたネットワーキングパーティなど、開発からIP、多岐にわたる企業アライアンスを目指すべく、いま国内で積極的な姿勢を見せているIGG。
今回、そんなIGGの取り組みについて日本法人のキーマン二人にインタビューを実施。同社代表作『ロードモバイル』におけるローカライズやコミュニケーション作りなどの取り組み、日本市場での戦術や、2020年1月に配信を予定している新作タイトルについて、さらにグローバルで活躍する同社が考える海外展開で重要なポイントを聞いた。
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■『ロードモバイル』日本展開で注力したポイント
IGG
Asia Pacific統括
IGG Japanカントリーマネージャー
Choy Wai Cheong 氏(写真左)
マーケティング 兼 ビジネスディベロップメントマネージャー
森岡夢信 氏(写真右)
――:本日はよろしくお願いします。まずはお二人のIGGでのポジションについてお聞かせください。
Choy Wai Cheong氏(以下、Choy) Asia Pacificの統括をやっていて、日本ではカントリーマネージャーというポジションです。基本的に日本と東南アジアをメインに事業全般を見ています。前職はメタップスで海外事業の責任者をしていました。IGGには昨年9月からの入社になります。
森岡夢信氏(以下、森岡) 元々広告代理店におりまして、2年半前にIGGに入りました。当初はマーケティング職でしたが、今は日本のパブリッシング事業を見ています。僕個人としては全体の管理をしつつ、アライアンスに注力し始めています。その流れで先日のネットワーキングパーティも実施しました。アライアンスに関してはIP、パブリッシング案件などがあります。
――:2016年に日本で『ロードモバイル』がリリースされました。ローンチ時に注力した事など、日本での展開を振り返っていかがでしょう?
Choy:IGGの日本支社の設立は2015年で、その翌年に『ロードモバイル』がリリースされましたが、当初日本に運営拠点がなく開発拠点だけだったんです。
森岡:逆オフショア開発みたいなイメージですね。運営については、2016年にロードモバイルをリリースした時に1~2人からスタートしました。
――:なるほど。実際に日本でリリースしてみて、ユーザーの反応はどうでしたか?
森岡:『ロードモバイル』以前に『キャッスルクラッシュ』をリリースしましたが、日本では厳しい状況でした。その当時はもちろん日本支社もなく、100%本部でやっていたんです。それもあって、『ロードモバイル』ではちゃんと日本に拠点を置いて、リリースのタイミングで少人数ながら日本人を雇ってやり始めました。
Choy:それによって数字も結構右肩上がりだったので、ある意味予想より反応は良かったという印象です。そこからしっかりとした運営チームを作って、どんどん規模を大きくしていきました。
――:グローバル展開をする中で、日本と他の国とで違うと感じることはありますか?
森岡:分かりやすい所だと、まずCSの文字量が全然違います。中国は返信が2行で済む所を、日本は10行にしなければならない。冒頭の挨拶から丁寧な言い回しをしなければいけない、という重要な所がわかっていなかった。「何で10行も書くの? 2行でも伝わるでしょ」と。でも、その8行にすごい差があると僕らは感じる所があり、そのギャップはあります。
Choy:SNSなど日々ユーザーさんとコミュニケーションをとって仲良くなるというやり方が、日本と海外で違うという気がしますね。海外のSNSは内容が記事っぽいですし、VIPとは仲良くなるけどそうじゃなければ、という直接的な感じがします。でも、我々は全ての人と平等にコミュニケーションを通じて仲良くなったり、ユーザーさん同士をつないだりして信頼を得ています。
――:その他、『ロードモバイル』を日本でリリースする際に意識されたことはありますか?
森岡:ローカライズに関しては、他の国よりも日本が一番意識しました。文字の翻訳については、他の国だともしかしたら現地の言葉があっても英語で受け入れられる国もあるんです。英語のタイトルのほうがグローバルタイトルっぽいという理由から。
ただ、日本はそういうことすると継続率が落ちたりしますし、ちょっとした翻訳ミス等で一番刺されるのが日本だったりするんです。そうしたミスは『ロードモバイル』のリリース時点でかなり気をつけました。
でも、これは今流れが変わっているなと思っています。海外タイトルが日本市場でリリースされ始めた初期の翻訳って、結構変なものがあったと思うんです。ゲームを出す前にローカライズを100%まで上げるコストは結構しんどくて、だったら6~7割の完成度のほうが楽なんです。残り3割は敢えてやらず、始めは6~7割で出して数字が良ければ注力する、というのが今の主流のような気がします。
ただ、『ロードモバイル』が出た当時はまだその手法は不安と言うか、そういう成功事例もそこまでなかったので、僕らはちゃんとローカライズしてリリースしました。
――:当時はいわゆる海外タイトルがまだ受け入れられていない状況だったので、ある程度ローカライズは必要だったと。
Choy:3~4年前までは、外国のゲームは日本市場にあまりなかったですし、続くかどうかそれすらわかりませんでした。そこから徐々に日本ユーザーとの信頼関係をある程度築いた事、最近では海外のゲームも受け入れられていると思います。翻訳が多少おかしくても、ゲームが面白ければOKという。
――:TGS2019にも出展されましたが、それもユーザーに対してのアピールという意図があったのでしょうか?
森岡:TGSも、先日開催したネットワーキングパーティもそうですが、日本でのプレゼンスをもっと高めたいという思いがあります。今は『ロードモバイル』だけですが、もっと色々なタイトルを出して、日本全体でIGGの価値を高めるというのが、IGG全体としてかなり注力している部分です。
▲11月に開催されたIGG主催によるネットワーキングパーティの様子。多くのゲーム、エンタメ企業が集まっていた。
Choy:ユーザー認知とプレゼンスを上げるという目的がありますね。あと、今までIGGは自社開発、自社運営に注力してきましたが、これからは他社の製品もパブリッシングすることも可能です。
森岡:日本には素晴らしいクリエイターさんやIPがたくさんあるので、それをパブリッシングすることでIGGに新しい文化を入れたいなと思っています。
Choy:IGG Japanとしての付加価値を高めたいという考えは間違いなくありますね。逆にそれを我々が本部にプッシュをして、もっとグローバルにやっていこうと起案、提案しているところです。
■新作と今後のタイトルの方向性
――:今後リリース予定の新作タイトルについてお聞かせください。
森岡:日本向けの和風グラフィックのパズルRPGとSLGをミックスしたようなジャンルの新作を準備しています。パズルRPGがベースにあって、SLGの建築、街づくりの要素を入れています。メイドインジャパンのIGGにとって象徴的なタイトルとなります。
Choy:もちろんPvP機能も備わっています。気軽に遊ぶこともできるし、ガッツリやり込むことができる歯応えのあるゲームです。
森岡:IGGのタイトルは、小さい市場規模の数カ国がソフトローンチの国になっています。国ごとに4段階のフェーズを決めていて、日本は通常第3~4フェーズですが、今回は日本で開発したゲームなので第2~3フェーズになります。配信は2020年1月を予定しており、事前登録はつい先日スタートしています。
森岡:そうですね。UIやグラフィックは完全に日本向けです。また、この新作も日本だけでなく全世界で配信します。これがうまくいけば、日本のUIやグラフィックでも全世界で戦える、という一つの証明になるのではないかなと思っています。
――:その他、IGGタイトルについて、マーケティングや運営についてどういう風に展開していきたいと考えていますか?
Choy:タイトルのジャンルに関しては、我々は今までSLG、RTSにフォーカスしていましたが、パズルRPG、サンドボックス、FPSなど色々なジャンルに挑戦したいです。もちろんSLG、RTSも引き続きやっていきたいと思っています。
■日本でのアライアンスに注力するIGGのグローバル展開
――:今後、BD、アライアンスの部分に注力していくということですが、どのようなビジョンをお持ちですか?
森岡:海外に向けて、僕らと一緒になってチャレンジしてもらいたいですね。日本の二次元タイトルは中国ではかなり受け入れられていますが、中国以外でもヒットしている国があったりするので、そういうところをもっと一緒に見つけていきたいです。
IGGは世界に16の支社があり、各地にローカライズ、運営、マーケティングのメンバーがいます。ローカライズだけしたらとりあえず出してみて数字を見る、というやり方もできます。地域を絞ってしまうとその国で出してみて次どうしようとなってしまいますが、IGGと組むことでグローバル全体を見て、戦略を一緒に考えられたらいいなと思っています。そこがIGGと組むメリットだと思います。
――:実際、どの国でヒットするかは配信してみないと分かりませんからね。
Choy:そうなんです。意外な国で当たったりするので、北米で失敗したから他の国を全部あきらめてしまうのではなく、グローバルな視点でチャレンジしてもらいたいです。そうすれば、どの国ならヒットするというものが見えてくると思います。
――:グローバル展開しているからこそ、色々な国の傾向が見えて、その国のエッセンスを入れたものを試せて、それをうまく広げていけば良いと。
森岡:グローバルで戦う戦略は色々あります。恐らく日本だとそこまで深く追求されていることってあまりないと思うので、そういった部分もパートナーさんと一緒にお話できればと思います。
――:今は日本でもグローバル展開は肝になっていますが、実際にやろうと思ってもどうすればいいのかわからない部分もありますね。グローバル展開の難しさはどういうところでしょうか?
Choy:ローカライズ、カルチャライズです。言語だけでなく、例えば金額も重要ですね。
森岡:内部的な観点ですと、一番はコミュニケーションです。各支社とのやりとりが重要であり、課題なんです。結構プロジェクトの責任者が自分の考えでその国の事を決めてしまいがちになるんです。でもその国の事は現地の人じゃないとわからない。だから、どれだけコミュニケーションをとってその国の事を知るかというところが一番大事ですし、そこをクリア―できればうまく回ります。
――:日本企業はグローバル展開でなかなかうまくいかないイメージですが、何が原因なのでしょうか?
森岡:色々あると思いますが、やはりコミュニケーションが大きな要因だと考えてます。グローバルコミュニケーションはとにかく至る所で誤解が生まれているので、毎回市場背景の説明とともにしっかりコミュニケーションの時間を取ることが大事です。
また、前段でも話したように世界のユーザーの嗜好は変わってきています。今まで世界で受けると考えられていなかった、パズルRPGや放置系RPG、日本風グラフィックのRPGが世界50や100カ国以上でセールスランキングの上位に食い込んでます。以前あまりうまくいかなかったとしてもまた受ける可能性は十分にあると思います。
完成度が低くてもとにかく出してみて数値を見てから注力するというやり方でもリスクが少なかったりします。日本の感覚で他の国も見てしまうと、かなりハードルが高く感じてしまいますが、実際出てみるとそうでもないところもあるんです。
Choy:大事なのはスピードとクオリティ。両方がベストではありますが。出してみてすぐ軌道修正できるかどうかの決断も重要です。
――:そういったコミュニケーションや判断基準もIGGと一緒にやることで見えてくると。
森岡:そうですね。コミュニケーションについては中国人と日本人が直接やりとりすると喧嘩になりやすいので、そこは僕らがうまいこと間に入って中和します(笑)
Choy:コミュニケーションのカルチャライズですね。これは本当に重要なんです。メールひとつとっても意味が違って誤解が生まれることがあるので、そこを読み解ける人がいないといけません。
森岡:だいたい誤解ですれ違っていきますね。同じ国籍の人間同士でもそういうことがありますから。
Choy:ですからIGGでは採用する際に言語能力に加えコミュニケーション能力も見ています。
森岡:日本人は言いたいことを100%言えないで会話が終わってしまうことが良くあるんですが、それをグローバルでやってしまうと本当に誤解につながる危険があります。だから僕らは100%相手の考えを聞き出して、こちらも100%伝える、しかも気持ちよく会話するという状況を作るように意識しています。
こちらが伝えきるまえに話が終わりそうになったら、ちょっと待ってと(笑) 僕もネイティブではないのでたまに言葉に詰まることはありますが、それでも言い切るまでは話をさせてもらいます。
Choy:これはもう日々の課題ですね。今年は社内的にもコミュニケーションというキーワードが重視されています。
――:そういう意味でグローバル展開では現地に法人を立てたほうが良いと。
森岡:そう思いますね。カジュアルゲームなら話は変わってきますが、しっかりと運営するゲームを持ってくるには必要です。
――:それでは最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
森岡:IGGと一緒に海外に向けてもっとチャレンジしていきましょうということを一番伝えたいですね。最初はご相談からでもかまいませんので、そういったお話ができるとうれしいです。
Choy:IGGにはグローバル展開の土台がありますし、どんな案件でも大歓迎です。ケースバイケースでお気軽にご相談ください。今後は新しいジャンルにもチャレンジしていきますのでご期待ください。
――:ありがとうございました。
国内スマホゲーム企業では海外進出というのは至上命題の一つと言えるだろう。しかし国内のマーケットと比べても異なる点が多く、「新しい挑戦」となり、一企業で成功するには難しいと言える。
パートナーを組むとしても、どの会社と組むのか、また協力会社の理解はプロジェクトの成否を分ける重要な要素になる。インタビューを通して、IGGの考えとパートナー企業への強い敬意や理解を感じることができたのがとても印象的だった。
先日のネットワーキングパーティの際には、来日した同社CTOにも話をきくことができた。IGGが描く未来などにも触れられているので、興味のある人は以下の記事を参照してほしい。
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