【対談インタビュー】新卒以外でも業界未経験者は入り込めるのか?―今のゲーム業界へ就職するには(提供: QualiArts × クリーク・アンド・リバー社)
クリーク・アンド・リバー社がゲーム業界未経験者の就職支援を目的としたクリエイティブスキル講座を運営する『クリエイティブアカデミー』。その卒業生を積極採用しているゲーム企業が、『オルタナティブガールズ2』などを手がける株式会社QualiArtsだ。
業界全体としての開発水準の向上に伴い、採用動向においても即戦力を求められることが多いゲーム企業だが、業界未経験者を採用する狙いはどこにあるのか。
本インタビューでは、『クリエイティブアカデミー』の責任者であるクリーク・アンド・リバー社の佐藤浩平と、同社で社員YouTuberとしても活動するエージェントのハッシーがインタビュアーとして、QualiArtsのクリエイティブ責任者である庄司 拓弥氏と3DCGディレクターの海老沼 宏之氏にて対談を行った。
“業界未経験者”を採用することに対する考え方や求めるもの、また実際のクリエイティブアカデミー卒業生の活躍、さらには成長の秘訣などについて紹介していく。
写真左から
株式会社QualiArts
クリエイティブ責任者
庄司 拓弥氏
3Dエビテックラボ 3DCGディレクター
海老沼 宏之氏
クリーク・アンド・リバー社
クリエイティブアカデミー責任者
佐藤浩平
YouTuber/エージェント
ハッシー
―:未経験者を無料で短期育成していく試み「クリエイティブアカデミー」に賛同いただきありがとうございます。現在、御社では卒業生(以下:アカデミー生)が多数お世話になっており、御社は採用実績トップクラスです!
海老沼氏(以下、海老沼):そうなんですか!
庄司氏(以下、庄司):もっと優先して紹介してほしいくらいです(笑)。
―コロナ禍でリモートワークが推進され、“育成”というものが難しくなりつつあるかと思いますが、御社の場合はいかがですか?
海老沼:そうですね、苦労しています。
庄司:そもそも若手の受け入れが難しくなりましたね。
―やはり現場がそういう状況なんですね。しかし、そんな中でも御社は積極的に採用してくださっていますが、未経験者採用についてどのようにお考えですか?
海老沼:未経験者に限ったことではないのですが、社風的に0から1を作り上げていく会社のため、自分からどんどん意見を言ったりするような、能動的な動きが求められる傾向があり、積極性がある方はマッチするので、そういう意味では相性が合えば基本的に前向きです。
■とにかくマインドが重要
―とはいえスキルも重要ではないですか?
海老沼:当社としてはスキルというよりはマインドセット重視なんです。アカデミー生については“これからの方(成長していく方)”というのがわかっているので、初めの時点でスキルを求めるということはしていないです。どちらかというとガッツや、ベテランにはない若手ならではの良さを期待しています。
―つまりそれは“伸びしろを重視して採用”していただいているということだと思うのですが、具体的に作品や採用にあたっての面談などいろいろな“伸びしろを測るモノ・機会”がある中で、特にどういった部分を見られているのですか?
海老沼:正直、作品は2割くらいしか見ていないです(笑)。
庄司:僕も事前に作品を見ないで面談に臨むこともあります(笑)。
海老沼:なぜかと言うと、作品も大事ではあるんですけど、結局現場に来たら全く違うことをやることになるんですよね。だから極端なことを言うとMayaがきちんと扱えていれば十分なんです。
でもアカデミー生の場合はそれにプラスして“1つのものにきちんと時間をかけてこだわって良いものを作る”という経験をしっかりと積めているのでそこがまた良いですね。それは作品を見たらわかりますし、面談でもよく伝わってきます。
庄司:そうですね。
―作品の比重がそこまで低いというのは驚きです…!過程がとても大切なんですね。
海老沼:こだわる姿勢というのは作品や姿勢からだけではなくて、これまでのご経歴などからも読み取れます。違う業界からクリエイティブの世界に情熱を持って飛び込んでくる方というのは、やっぱり1つのものが長続きしている方が多いですよね。
転々とアルバイトをしている方などは『飽きっぽいのかな』という印象を受けてしまいます。全く関係ない業界だとしても、1つのことを突き詰めてからアカデミーに飛び込まれた方は、人生をかけてチャレンジをしようとしているんだろうなという印象を受けます。
庄司:海老沼も他業界からこの業界に来ていますし、僕も一度サイバーエージェントを辞めて他の業界に行っていたことがあるからこそ、気持ちがわかるところもあるんですよね。
今やっていることを辞めてリスクを負ってでもチャレンジしようという気持ちが。そのほうがすごく勉強もしますし、ハングリーにもなれるんですよね。アカデミーの方々って短期集中でやっているのでその期間は人生を掛けてチャレンジしてるじゃないですか、本気っていうか、そういう姿勢がとても重要だと思います。
―なるほど。逆にキャリアチェンジをしてきた人の方が覚悟が決まっていたりするんですね。
庄司:本当にそうですね。とにかくチャンスに飢えているんです。
海老沼:そういう子の方が頑張ってくれるんじゃないかと思いますし、そういうところを期待して採用しているというのもあります。
■クリエイティブアカデミー卒業生の活躍
―アカデミー生の印象として、入社後の活躍はいかがですか?
庄司:実際に時間の使い方とかも上手で、良い意味で時間を使うことを惜しまないというか、やはり他の子とは違いますね。
海老沼:資料整理とか、少し業務外のことをお願いしても『やります!やらせてください!』と積極的に取り組んでくれます。なかなかベテランクラスになるとそういうのもないですし、とても助かっています。
庄司:貪欲な方が多いので、周りにもいい刺激を与えてくれています。
―ありがとうございます!具体的に、御社で初めて採用いただいたアカデミー生2名が、入社から約1年が経ちますが、いかがですか?教えるのに苦労された点などありますか?
海老沼:未経験だからという理由で苦労したことは特にありません。プロジェクト全体が新しいことにチャレンジしている状況というのもあって、新卒や若手の中途の方と何ら変わりなく、みんなでがんばっています。
そういった中で重要となってくるのがどこまで食らいついていけるかというところですが、彼らはそこがしっかりできていますし、やりながらどんどん成長していますね。
―ありがとうございます。彼らの良い点を挙げるとしたらどこですか?
海老沼:“前向き”ですね。ここが一番良いです。たとえばゲーム開発の中には資料の収集や整理といった雑務も発生することがあって、そういった業務に対して『モデリング以外の仕事はやりたくない』と嫌がる方も中にはいるんですけど、彼らはきちんとやってくれます。
良い意味で業界のことを知らないからこそ、何でも吸収できるんだろうなと思います。
―そういった姿勢や人柄を評価してくださっているんですね。アカデミーでの育成時にもその点は重要視しているのでとても嬉しいです。
■スマホゲーム市場は成長が早い!!
―今後の採用についてはどのようにお考えですか?
海老沼:PS5の発売もあり、今後また転職希望者がコンシューマ系に流れていきそうな気配があるので、アカデミー生含め積極的に採用していきたいです。できる人はどうしてもコンシューマに流れがちなので…
庄司:たしかにコンシューマはわかりやすくて魅力的なタイトルが多いので、憧れるのはわかるんですけどね…でもぜひアカデミー生にもスマートフォンを推してください!成長できるよって(笑)!
―実際に現場でご活躍されているお二人から見て、コンシューマとスマホゲームの違いや、スマホゲームの良さは何でしょうか?
海老沼:コンシューマタイトルはやはり開発規模が大きく、人数も何百人といるので1人の作業領域が狭くなってしまうんですね。ひたすら同じような種類のモデルやモーションを1年作り続けるといったことも実際にあります。新人だとさらに小さな業務担当になることも多いです。
庄司:ビックタイトルをやっていましたという転職希望の方にもよくお会いしますが、どこを担当していたかで全然変わってきますね。
―なるほど。タイトルの大きさよりも実際の担当業務が重要ということですね。
海老沼:そういった意味では、スマホゲームは“やった感”は非常に大きいと思います。
庄司:結構、『え!こんなのやらせてもらえるんですか?!』っていうリアクションもよく見ますね(笑)。
海老沼:できる人にはどんどんいろんなことを任せているので、若手でもガッツがあればあるほどチャンスは舞い込んできやすいと思います。
コンシューマだと上が詰まっていてメイン業務はベテラン層で完結してしまうことが多く、若手は少なくとも3年は細かい作業で修業を積まなきゃいけない…というケースが多いです。
それもそれで良いこともありますが、成長スピードという観点ではスマホの方が早いかもしれないです。
―最速でメインモデルなどを任せた、というような例はありますか?
庄司:あります。先ほど話題に上がった入社から1年のアカデミー生が、CEDEC発表用のモデルを作ってくれました。
海老沼:最終ルックなどはベテランが調整をしましたが、ベースなどは彼がしっかりやってくれました。
▲アカデミー生がベース担当した3Dモデル
―あんなに重要なものを…!
庄司:しかも、これは彼がいてくれたからここまでできたものだったんです。当時は佳境の開発プロジェクトとCEDECの準備を並行して進めなければならない状況で…。ただでさえ通常業務でいっぱいで誰も手が空いていない中、休日返上覚悟で彼が率先して取り組んでくれて。『こんなのやらせてもらって良いんですか⁉』ってキラキラしていましたよ。
―それはかわいく思えますね(笑)
庄司:もうかわいくて仕方ないですね(笑)。
海老沼:そういう積極性やタフさはやっぱり大事ですね。
―採用の際に人柄重視とはいえスキルありき…というケースは非常に多いので、こうして本気で人柄を重視してくださるのは貴重です。きっとこの記事を読んだやる気にあふれた応募者が殺到しますね
庄司:大歓迎です!
■“サラリーマンクリエイター”になるな
―未経験から業界に入るには、タフさやハングリー精神が重要とのことでしたが、入社した後1~2年で特に注力すべきことは何でしょうか?
庄司:作業に没頭するのも大事なんですけど、ちょっと意識が高い人と話すことですかね。現場で教えてくれる人や直属の上司だけじゃなくて、別のチームだったり自分とは違うことをしている人の目標や仕事に興味を持つというのも大切だと思います。
―でも、お忙しい中あまり話しかけられると大変ではないですか?
庄司:僕、逆に自分から話しかけますね。向こうは緊張しますけど(笑)。
―大先輩ですもんね。でもそこに飛び込んでいくのが大事ということですね。
庄司:ほとんどの子がやれないんですよね。でもやった人だけがチャンスをつくれるので。たとえばプロデューサーとかもっと言えば社長とかにグイグイ話しかけに行く子とかいないじゃないですか。
でも話しかけられたら『おっ』と思うし、普段なかなか視界にも入っていない可能性も高いから『こんなやついたんだ』って認識してもらうきっかけにもなりますよね。
海老沼:僕はまた少し違うんですけど、やっぱり足元が大事かなと思います。入社前は入社するためにいろんな努力をしてきたと思うんですけど、入れたからといって浮足立つのではなくて、これまでと同じように地道に努力してほしい。
言われたことをただこなす“サラリーマンクリエイター”にならずに、貪欲に取り組んでいくことで自信にもつながると思います。
―なるほど!これからクリエイターを目指す方も、今活躍されている若手の方たちにもとても参考になるお話ですね。アカデミー生にもこの記事はぜひ見るように伝えたいと思います! 本日は本当に貴重なお話をいただきありがとうございました!
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Quali Arts 採用情報
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クリエイティブアカデミー
■ハッシーのゲーム業界研究所はこちら
会社情報
- 会社名
- 株式会社クリーク・アンド・リバー社
- 設立
- 1990年3月
- 代表者
- 代表取締役会長CEO 井川 幸広/代表取締役社長COO 黒崎 淳
- 決算期
- 2月
- 直近業績
- 売上高497億9900万円、営業利益41億300万円、経常利益41億3700万円、最終利益26億5800万円(2024年2月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 4763
会社情報
- 会社名
- 株式会社QualiArts
- 設立
- 2016年10月
- 代表者
- 代表取締役社長 辻岡 義立