2021年の振り返り…ゲームアプリの海外進出を成功させるために必要な施策とは? Facebookとの連携や最新のソリューションの有効活用法を紹介
iOSのアップデートにより、ゲームアプリ業界にも大きな変化がもたらされた2021年、市場は海外から日本、日本から海外というクロスボーダーの成功が事業発展の一つのキーであったことは多くの人が認識するところと言えよう。
そこで、下半期に多くの反響を残した、ゲーム業界向けのセミナーの中から、9月16日に行われたものを紹介。
ゲーム企業向けに、実施されたこのセミナーは、マーケットトレンドに合わせたクリエイティブやコミュニティの活用法について紹介する内容のセッションがオンライン上で行われた。ゲストスピーカーとして、WFSとVoodooを含む3社が参加。
セミナーでは、AppsFlyerによる最新のFacebookとの連携や計測、ソリューションについて紹介が行われたほか、海外展開を行うための組織体制、UA(ユーザー獲得)戦略においてどのようなマーケティングが行われているのか説明が行われた。本稿では、セミナーの模様についてお届けする。
■海外進出成功のためのFacebook活用戦略
まずはAppsFlyerの大谷龍弘氏が、2020年にダウンロードされた9000のゲームアプリ(3ヶ月で3000インストール数を超えるタイトル)について、リサーチ結果を紹介した。
2019年と2020年でゲームの成長率を比較すると、ミッドコアと言われるゲームのジャンルが2020年中で最も成長していることが分かる。
コロナ禍の巣ごもり需要でのユーザーを幅広く獲得できたことから、ボードゲームやカジュアルゲームなど比較的ライトユーザー層が増加しているようだ。
インストール数の国別シェアと成長率について2019年と2020年で比較すると、アメリカやイギリス、日本、韓国のようなTier1市場でのインストール数は軒並み減少。
一方で、インドが2019年と比べて25%インストール数が上昇し、アメリカを抜いてインストール数世界1位に。そのほか、南米やインドネシアなどのエマージング・マーケットの成長率が上昇する結果となった。
インド市場のジャンル別の成長率については、全体のトレンドに反してRPG、アーケードゲーム、シミュレーションゲームの需要が非常に高まっている。インドのユーザー単位のARPU自体は未だ低い状況が続いているが、2020年のアプリ内課金収益が前年比で3倍の成長を見せた。
ジャンル別のグローバルトレンドについては、RPGなどのハード系のゲームユーザーの課金率が約10%と、2020年のトレンドは、ジャンル問わず通年を通して課金率はやや右肩上がり、または横ばいといった状況だ。アプリにおける定着率や継続率は、減少傾向にあった。
大谷氏は最後に、「全体の施策の見直しやゲームコミュニティの構築、またはオウンドメディアを通じたユーザーへの継続的なインタラクションが非常に重要なテーマになってくる」と話し、セッションをまとめた。
続いて、Facebookの新井陽介氏がゲーム配信のプラットフォーム「Facebook Gaming」について紹介。新井氏は世界のモバイルゲーム市場は日本の約6.2倍だというデータを提示し、「(日本企業は)海外進出を行うタイミング」にあると説明する。
グローバル戦略について、Facebook Gamingでは機械学習を用いた「グローバル配信」、「クリエイティブのローカライズ」、「コミュニティの活用」の3点を用意しているという。
グローバル配信について新井氏は、多くの国々の中から価値のあるユーザーをより効率的にポテンシャルユーザーを獲得するために、全世界でテスト配信を行うことを勧める。海外配信について、Facebook Gamingには3つのソリューションがあり、その1つ目となるのが「グローバル/地域ターゲット設定」。
この機能により広告主は、各国ごとにキャンペーンを作るのではなく、グローバル各国に対して一括で広告配信が可能に。レポート上で各国の配信パフォーマンスを見ることができるため、パフォーマンス効率の良い国のみを切り出して個別に投資を行うといった運用が可能となっている。
2つ目が、「多国間類似オーディエンス」。拡張配信機能で、Facebookに蓄積されたカスタムデータを元に、ユーザーを自動的に選び出す機能だ。
3つ目が「ダイナミック言語最適化」。広告内のテキストを各国ユーザーの言語設定を元に最適な言語に自動翻訳し、ユーザーにとってより関連性の高い内容に表示することが可能に。これにより、グローバル配信をより簡単かつスケーラブルにできるようになった。
クリエイティブのローカライズについて新井氏は、Facebookが推奨しているアプローチである「Big catch solution」を紹介。本ソリューションは、ゲームの特徴とゲーマーの主要なモチベーションを組み合わせることで、新たなクリエイティブを作成する手法だ。
多くのクリエイティブの用意を求められる海外配信においては、出来る限りクリエイティブを作成することが重要だという。テストを行うことで、様々な国で受け入れられやすいクリエイティブの訴求ポイントを見つけやすくできるとのことだ。
新型コロナウィルスの影響により、Facebook内でのゲームコミュニティの数が増えており、現在Facebook内には約100万のゲーミンググループ、約3.5億人のアクティブゲームユーザーがいるという。
コミュニティをさらに広げていくために、Facebook内ではインフルエンサーを活用する事例が増えているとのこと。ブランドコンテンツ広告のように、Facebook内でインフルエンサーとの協業を推進するプロダクトもあるそうだ。
Facebookユーザーが多い海外では、積極的にFacebookページを活用してコミュニティを作ることで、さらにその中でのユーザーとのエンゲージメントを図るという事例が増えていると新井氏は続けた。
■ゲームアプリが海外進出で成功するために必要な施策とは
続いて、ゲームアプリのグローバル展開について、WFSの加藤耕輔氏、VoodooのBen Fox氏よりクロストークが行われた。
●登壇者情報
・WFS
加藤耕輔氏
・Voodoo
Ben Fox氏
ユーザー獲得(UA)について、「グローバルにUAを行う場合には、データファーストな意思決定を大切にし、様々な国や地域で出稿をした上でパフォーマンスをみて戦略的に判断していくのが大切だ」と加藤氏は言う。プランニングに関しては、AppsFlyerの「パフォーマンスインデックス」を活用しているとのこと。
多くのハイパーカジュアルゲームをリリースしているVoodooもWFSと同様、まずは様々な国々にタイトルをリリースしてデータをチェックするといった、データファーストのアプローチを行っているそうだ。
続いて、運用について「複数の国や地域、言語でUAをしていくときには、キャンペーンの設計として、どうやってリージョンを切り配信していくかが、最初の課題としてあがる。結果的には最適化の観点では、言語でリージョンを切るのがいいと考えている」と加藤氏は言う。WFSで配信されているタイトルは「ロールプレイングゲーム」が中心となっており、ハイパーカジュアルゲームとの違いとして、物語性が強く15秒の広告クリエイティブで全ての魅力を伝えるのが難しい。そのためゲームの物語性が評価され、エンゲージメントが高い国に、どんどん注力していくことが基本的な戦略だと続ける。
Ben氏は、「ハイパーカジュアル=広告を出してヒットするような時代から変わりつつあり、どんどんミッドコア風なアウトゲーム要素やRPG的な運用の導入を検討する必要とされるようなフェーズに入っているのではないか」として、「プラットフォーム側も多種多様になっているため、媒体ごとにタイトルを分けていく必要も出てくるのではないか」と話す。
クリエイティブのローカライズについて加藤氏は、台湾や香港では日本と同じような内容が好まれるとコメント。韓国では北米向けのクリエイティブの評判が高いなど、「同じゲームにも関わらず、地域や言語によって、好みのクリエイティブが違うのは興味深い」と振り返る。
WFSでは、インハウスで広告用に描き下ろしたアニメーションが入ったクリエイティブも展開している。アニメーション入りのクリエイティブはユーザーからの反応が良い傾向にあり、現在は他にも3Dアバターを活用した広告など様々なクリエイティブを配信しているとのこと。「国ごとにローカライズしながら、様々な訴求軸で見せ方のバリエーションを増やして進めている」と加藤氏は説明した。
ハイパーカジュアルのローカライズについて、基本的には社内で制作しているというBen氏。日本市場向けにローカライズのクリエイティブを作ったが期待していたほどの効果が無く、逆にコストがかかってしまったという失敗例を挙げ、力を入れる部分を見極めることも重要だと結論付けた。
■質疑応答
セミナーの最後には、スピーカーへの質疑応答が行われ、参加者からはグローバル展開における施策や考え方など多くの質問が寄せられた。やりとりについて、一部を紹介する。
——:グローバル展開を行う際の、チーム体制についてお聞かせください。
Ben:基本的にパリの本社とハイパーカジュアルディベロッパーが多いトルコ、日本、中国にチームを置いています。現在、マーケティングやマネタイズのチームは本社に集中していますが、今後は中国、日本のチームを増やしていきたいと考えています。ローカライズにあたっても、特にスピードを重視しています。
——:海外進出の際に、効果的だったプロモーションについて教えてください。
加藤:Facebookを利用するうえで、課金に関するデータを用いた最適化を行うことが、海外進出の近道になると思います。また国内と比べて、海外ではゲーム内動画広告が一般的なので「ゲーム内広告マネタイズ」も積極的に取り込むことによって、ARPUも改善できている状況です。
会社情報
- 会社名
- Meta(Facebook)
会社情報
- 会社名
- 株式会社WFS
- 設立
- 2014年2月
- 代表者
- 代表取締役社長 柳原 陽太