【インタビュー】TCGとMDがけん引し過去最高の売上・利益を達成 市場の変化を見据えた挑戦が花開く ブシロード橋本社長が第1四半期決算を振り返る

木村英彦 編集長
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ブシロード<7803>が11月12日に発表した第1四半期(2021年7~9月)の決算は、売上高104億8400万円、営業利益13億2100万円となり、過去最高水準となった。今回、橋本義賢社長(写真)にインタビューを行い、第1四半期決算を振り返ってもらった(決算の詳細はこちら)。


――: 6 月決算に移行してから、初めて12ヶ月まるまる入る期になります。そのスタートですけども、振り返っての感想をお願いいたします。

今回の四半期決算は、過去最高の売上と利益を出すことができました。ここ最近は、1 年半にわたって新型コロナのネガティブな影響を受けてきましたが、そういったものを打ち返すような内容になりました。

引き続き音楽ライブや舞台、プロレスが厳しい状況にあったことに変わりはありませんが、デジタル IP 事業、とりわけTCG(トレーディングカードゲーム) とMD(マーチャンダイジング) が非常に良かったですね。

 
――:どういった点がポジティブに働いたのでしょうか。

海外でブシロードIPも含めた日本アニメ作品に対する評価が高まっていることが背景にあります。これは今回の第1四半期だけに限った話ではなく、これまで1年半の期間を通じて、ずっと上がってきたものではありますが、アニメ関連のプロダクトのニーズ、市場が伸びています。

当社では「ヴァイスシュヴァルツ」が最も伸びました。いわゆるプラットフォーム型のコンテンツで、他社様も含めてアニメ作品を中心に様々なIP(知的財産)をお借りして商品展開を行っています。国内はもともと良い状況だったのですが、先ほどお話したような海外市場の変化もあって売上が大きく伸びました。

これまでの決算発表などでは、新型コロナのネガティブな影響ばかりが目立っていた当社でしたが、今回はとてもポジティブに働いたといえます。

 
――:MDに関してはどういった部分で良かったのでしょうか。

最近のMD事業については、他社様の IPによる売上が大きくなっております。イベントをIPホルダーさんと一緒にやらせていただいたり、OEMとして製品供給をさせていただいたり、といった展開を行ってきました。そういったことで数字を積み上げることができました。


――:先ほど海外でアニメ人気が、とお話をされていましたが、MDにも影響はあったんでしょうか。

MDについては国内がメインですが、海外についても新しい取り組みを始めました。たとえば、アメリカでの通販を開始し、海外でのグッズ展開にも力を入れ始めています。それ以外には、製造卸といって、中国で製造したグッズを日本を経由せずにそのまま中国で流通するといったビジネスも始めました。


――:海外のファンのなかには好きなコンテンツにお金を使いたいけど、その機会が少ないという声も聞きますね。その意味で海外での展開も期待できるのではないでしょうか。

ええ。そういう意味では、MD も海外でのアニメ人気の高まっているなかで少しですが、実績を残すことができました。これからもっと期待できると考えています。

 
――:これまでの決算発表では新型コロナでイベントにお客さんが人数を制限して入れざるを得ない状況でした。最近の新規感染者の減少で、もう一度、観客の上限を上げていこうという流れがありますが、プラスになると考えて良いんでしょうか。

確かにイベントの観客動員に関しては上限が緩和されてはきていますが、すぐにポジティブな要素として売上や利益につながってくるとは考えていません。現在は来場者が限られる中で、開催する回数を増やしているような状況です。

音楽ライブも舞台も実はコロナ前よりも開催本数は多くなっています。コンテンツを維持するため、というところもありますが、開催回数を増やせば、当然、原価もそれだけかかってきますので、採算自体は以前ほどではありません。

緊急事態宣言の影響下にあった第1四半期段階では、まだ数字としての実感はありません。足元の第 2四半期に入ってから、少し上向いてきているように感じますが、まだまだネガティブな要素が多いとみています。

日本の新型コロナの感染者数は劇的に減りましたが、海外の状況を見ると、まだまだ収束したとは言えない状況にあります。いまの日本は奇跡的な状況といえます。医療専門家の方々は、1月や2月に再び感染が拡大する可能性があると指摘されていますし、引き続き警戒しなくてはならないと考えています。

当社の場合は、音楽やプロレスなどリアルのイベントを基軸としたIPが多いです。「バンドリ!」しかり、「D4DJ」しかり、新日本プロレスもしかり、スターダムもしかり、です。カスタマー・エクスペリエンスの観点で言うと、コロナ以前のそれに比べるとどうしても落ちる傾向にあります。イベント中は声が出せないですし、マスクをしたままです。イベントに参加して思いっきり声を出して心の底から楽しめる状況にはありません。

カスタマー・エクスペリエンスの高さは、IPの価値にもつながってきます。当社は、この 1 年半にわたって、それが毀損されてきたような状況が続いてきました。

このままコロナが収束してくれたとしても、IPの価値が以前のような状況にすぐに回復するわけではないと考えています。新型コロナを経て、コンテンツへの接し方が変わってしまった部分もあるでしょうし、本格的な回復には少々時間がかかるとみています。コロナが収束すれば、それに伴って IP としての復活も遂げられると見ています。

 
――:この四半期の決算発表で、メタバースに関心を抱いている会社が増えてきたという印象ですが、ブシロードではいかがでしょうか。

新しい環境やテクノロジーに対しては常にウオッチを続けておりますので、その中に当社が取り組めるものがあればやっていきたいと考えています。ただ、我々はあくまでコンテンツ企業ですので、自分たちで配信する媒体やプラットフォームそのものを作り出すことになると難しいのではないかと思います。


――:利用できるプラットフォームやサービスがあれば…といったところでしょうか。ゲームに関してはいかがですか?

当社のようにリアルなイベントで、お客様を巻き込んでユーザーベースを作ってカスタマー・エクスペリエンスを高めていく戦略をとっている当社には、特にビハインドな状況が続いています。

これはインターネットの宿命のようなところがありますが、スマホゲーム市場は、中堅どころ以下のタイトルは軒並み厳しくなっているように思います。中国企業が台頭してきて、国内メーカーも強いところが限定されてきているようにみえます。

 
――:新型コロナ後の巣ごもり需要で恩恵を受けていたスマホゲーム会社がこの9月締めの決算では厳しいところが多く、その一方でコンソールゲームをメインとしている会社は総じて元気な状況です。ブシロードもコンソールを始めましたが、手応えはいかがですか。

我々もこの四半期で『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』のNintendo Switch版を発売して、コンソールゲームに進出しました。国内だけでなく、海外でもダウンロード販売を中心に伸びています。『小林さんちのメイドラゴン 炸裂!!ちょろゴン☆ブレス』も来年春の発売に向けて準備を進めています。『ガルパ』の今後のダウンロードコンテンツとともに期待をしています。


――:ありがとうございました。

株式会社ブシロード
http://bushiroad.com/
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会社情報

会社名
株式会社ブシロード
設立
2007年5月
代表者
代表取締役社長 木谷 高明
決算期
6月
直近業績
売上高487億9900万円、営業利益33億8500万円、経常利益45億300万円、最終利益20億5000万円(2023年6月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
7803
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