【連載】中山淳雄の「推しもオタクもグローバル」 ニューヨークのアニメの祭典Anime NYC is NOW#4 ファンの熱量の高さを感じた「新日本プロレスStrong Spirits」の出展

アニメイベントに突如出現したプロレスリングとゴング
アニメNYCの一角にプロレスリングを模したステージが構築され、2人の等身大のレスラー(棚橋選手、内藤選手)のスタンディーが並び、中央を陣取っているのは実際に試合でも使われているそのままのゴング。ニューヨーカーの反応はすこぶる良く、「Tanahashi!」「Naito!!」と積極的にステージに上がり、またプロレスに興味のないコスプレーヤーたちであっても次々にステージにあがり、躊躇いなくカーンと大きな音を鳴らす。

 ブシロード社がアニメNYCに出展するのは前回(2019年)以来の2回目。以前は「BanG Dream!」や「D4DJ」といった得意の音楽コンテンツを展示していたが、今回はずいぶんと趣向を変えてのプロレスでの出展。2022年初旬にリリースされる新日本プロレスのアプリゲーム「新日本プロレスStrong Spirits」の展示として、パブリッシャーであるブシロードが出展した形である。ゴングは実際に新日本プロレスのロサンゼルス道場から手持ちでもちこんだホンモノである。

本ゲームは2018年2月にブシロード社が開発会社を公募したところから端を発したプロジェクトである。開発会社としてドリコム社と協業で、2022年にアントニオ猪木が創業して以来の50周年という新日の記念すべきタイミングでリリースされるゲームアプリである。これまでライセンスアウトとしてのアプリゲームを出したこともあるが、数年かけた開発プロジェクトであり、投資規模も桁違いである。なにより1972年にアントニオ猪木が設立してから50周年という記念すべき2022年の事業としてのプロレスゲーム、日本語のみならず英語でも同時に全世界のアプリストアにリリース、実際のプロレス実写&入場映像&音楽を使った斬新な取り組みなども含めて、これまでとは比較にならない取り組みである。

ファンの声援が止まないプロレスパネル
アニメNYCではブースだけでなくパネルによる発表会も行われた。新日本の現役プロレスラーであるJay White選手(2021年にIWGPヘビー級やNEVER王座など新日本の4大シングルタイトル王座すべてを戴冠した史上初のレスラーとしても有名)を招へいしている。パネルルームには3-400人のプロレスファンが押し掛けた。

最初に登壇して口火を切ったのは、自身がCMLLやWWE、新日本でプロレスラーとして渡り歩いてきたAlex Koslov氏。下記動画にも出ているように、登場早々に「F*cking Awesome!(クソかっこいいぜ!)」「This is Awesome!」「Holy Shit!(超すげえ)」とファンが叫び続ける姿があまりに印象的である。ほかのパネルでは見られなかった声援・熱量である。記者である私自身が講演者となった今回のパネルだが、正直最初に出てきた言葉が「I’m so intimidate(めちゃくちゃビビってます)」というほど、ファンに圧倒される1時間であった。 

左から中山淳雄(著者、エグゼクティブプロデューサー)、Alex Koslov氏(MC役の元プロレスラー)、Jay White選手(現役の新日本プロレス所属レスラー)
 

Jay選手が水を飲むパフォーマンスですら、会場の叫びがエスカレートする熱狂ぶり

ゲームの内容として、Jay White選手自身の動画を使ったバトル画面、育成画面などが解説され、実際にリリース日に向けて内容のアップデートが行われた。Q&Aでも質問が寄せられた「ほかの団体の選手が使えるのか?」「ガチャを入れるのはどうなんだ?」「オンラインでPvP対戦があるのか?」「ほかの作品とコラボはないのか?」といった内容への回答については後日新日本のYoutubeにアップされる動画を見てもらいたい。 

Jay White選手とオカダ・カズチカ選手のバトル画面 

Jay White選手の育成画面

MSGの興奮を再び。熱量を育て、途絶えさせないためのイベント出展
パネルでも言及があったが、新日本はこのニューヨークでWorld Most Famous Avenue(世界一有名な会場)と言われるマディソン・スクウェア・ガーデン(MSG)を満杯にした経験がある。2019年4月に開催された興行では、16000枚が半年前の発表直後16分間でチケット完売するほど人気を博した。MSGで過去コンサートを主催した日本人アーティストは2012年のL'Arc〜en〜Cielが初めてのことで、その後X JAPANも一度行っているが、日本発のアーティスト・団体が会場を満席にした事例はこの新日本プロレスの1件以外には存在しない。この件を受け、新日本は北米展開の意欲を強め、2019年10月に米国法人を設立。だがその直後からコロナによって1年以上も試合が実現できない段階となり、ようやく有人興行が少しずつ始められた、というのがこの2021年夏~秋の状況である。

カバー社のホロライブプロダクションでも近い事例だが、北米において必ずしもメジャーではないジャンルにおいて、日本コンテンツが稀に強くその市場に遡及するケースがある。もちろんプロレスはWWEという年商10億ドルにもなる世界最大のスポーツ団体があるが、NBAやMLBのような各地域でチームが存在するわけでもない寡占状況において、かつWWEよりも古い歴史をもつ新日本の存在感は野球やサッカーのそれよりも北米で強く浸透している。現在も新日本プロレスワールドという動画配信サービスが10万人超のユーザーを抱え、半数近くが海外からのユーザーということも踏まえると、十分に北米を狙えるポジションにあると言えるだろう。

今回のブースやパネルは、そうした新日本のコンテンツをゲームも含めて、再び北米市場にリブートしていこうという意図あってのものである。リアルのイベントにおいて改めて実感したが、イベントはファンベースを「定量的(数字)」ではなく「定性的(ユーザータイプや熱量)」に捉えなおすために必要不可欠なプロセスである。海外向けにはデジタルでのサービスが中心となりがちだが、どうしても1万~数十万といった「数字」としてのユーザーベースとARPU(1ユーザーあたりの単価)だけを追ってしまう。だがその数字が、どういった客層のどんな情熱によって成り立つのか、それを推し量るチャンスは、地理的にも広大に広がった北米においては特にイベント以外に有効な手段は考えにくい。またファンにとっても年数回しかないリアルのイベント機会で、彼らのコミュニティが「固くなる」機会を模索している。

遠隔で無機質なデジタルサービスとデジタル広告による集客は、長く続きにくい。対照的に、直接的に有機的にサービスとユーザーを結びつけ、ユーザーをファンにしていくような特別な機会を演出するために、「イベント」は重要なマーケティング手段となる。ファンが数十人だとしても、彼らを代表としてどんな人種や年齢、性別や趣向の人々が、自分たちにとって一番大事な顧客なのか。それを知るために、イベント事業というのは今後も絶えることがないものだ、ということを今回のアニメNYCを通して再確認するところとなった。

パネルが終わっても、Jay選手との写真を熱望してステージに押し掛けるファン達

事前登録のQRコード(Pre-registrationの誤植はパネルそのまま)

新日本Strong Spiritsのバナーを掲げるコスプレーヤー達

株式会社ブシロード
http://bushiroad.com/
IPディベロッパー、それはIPに翼を授けること。 ~オンラインサービス充実へ~
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会社情報

会社名
株式会社ブシロード
設立
2007年5月
代表者
橋本義賢
決算期
7月
直近業績
売上高325億6900万円、営業利益3億4400万円、経常利益5億8300万円、最終損益2億8400万円の赤字(2021年6月期)
上場区分
東証マザーズ
証券コード
7803
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Re entertainment

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