【インタビュー】ブシロード橋本社長に聞く中間決算の総括 TCGは引き続き好調、音楽も復調に 『Shadowverse EVOLVE』『スターダム』『新日SS』が下期のポイントに
ブシロード<7803>が2月14日に発表した12月中間期(2021年7~12月)の決算は、売上高195億7400万円(前年同期比8.6%増)、営業利益17億0300万円(同977.9%増)、経常利益25億8100万円(同1493.3%増)、最終利益18億3700万円(前年同期は1億9100万円の損失)だった(前年同期比は前期上期との比較のため参考値)。今回、橋本義賢社長(写真)にインタビューを行い、今回の中間決算を振り返ってもらうとともに、下半期の注目ポイントについて話を聞いた(決算の詳細はこちら)。
――:よろしくお願いします。今回の四半期決算はどう評価されていますか。
第1四半期と比較して大きな変化はなく、まずまずの内容だったと評価しています。第2四半期の新しい動きとして、音楽事業でもライブの収益が回復してきたことがあげられます。この四半期に関しては、新型コロナが以前より落ち着いているタイミングだったことも大きいです。あとは大規模ライブを行わずに、比較的、小規模なライブを中心に展開する方針に切り替えたことも良かったと考えています。小刻みでもきちんと利益を出せる状況になりました。
これは第1四半期にもお話したことですが、ブシロード全体としては、自社IPの事業に加えて、他社様のIPを活用させていただく事業も強化しているところですが、その中で最初に立ち上がったのがTCGです。とりわけプラットフォーム型のコンテンツである「ヴァイスシュヴァルツ」が好調ですね。国内外ともに伸びています。またマーチャンダイジングでも他社IP活用型のビジネスがうまくいくようになってきました。
――:音楽ライブを小規模化させているというのは中止になったときのリスクが大きいということでしょうか。ドームライブなど中止になったら大変ですよね。
そうです。音楽ライブに関しては政府の指示で中止ということがありえますし、演者さんが万が一、新型コロナに感染してしまった場合に代わりに出られる人がいないと中止とせざるを得ません。あとは、お客様からの目線でも新型コロナの感染拡大している状況で、リアルのライブ会場に足を運ぶのは躊躇してしまうのではないかと思います。その意味で、大型のライブに関してはリスクが大きいと見ています。
――:TCGに関しては業界全体としても良い状況になっていますよね。
はい。業界全体として活性化しており、当社もそれなりの規模の結果を出せている状況と見ています。当社の場合は特に海外市場で伸びており、新しいお客様が増えている状況にあります。
――:海外ユーザーに関しては、どういったファン層が多いのでしょうか。
日本アニメのファンに購入いただいているようです。新型コロナの影響もあり、NetflixやDISNEY+などを通じて、日本のアニメを見る方が増えてきています。世界的に見ると、日本アニメのファンはこの1年で倍増といえるほど伸びたとみています。
当初は、ライトな方が多かったのですが、徐々にコアなファンにコンバージョンしてきたように思います。そういったことを背景に、半ばコレクションカードのような形で当社のTCGを買っていただいているようです。もちろん、プレイ人口も増えているので、コレクターからプレイヤーへのコンバージョンも徐々に進んでいます。
『ヴァイスシュヴァルツ』は、他社様のIPを活用したユニークなカードゲームとしていち早く出すことができました。業界でもキャラクターカードゲームとしては一定のシェアを確保できていますし、そこを強みとしてポジショニングできていると自負しています。以前は類似のカードゲームもあったのですが、いまはほぼなくなっています。当社で展開している『Reバース for you』が比較的類似といえるかもしれませんね。
――:『ヴァイスシュヴァルツ』に関しては歴史のあるタイトルですが、ここ最近で盛り上がった印象があるのですが…。
『ヴァイスシュヴァルツ』に関しては、1年以上前から強化する方針で取り組んでおりましたので、市場の盛り上がりとともに商品がうまく供給できており、売上の拡大につながっています。
――:少しネガティブなポイントになるかもしれませんが、最近、新型コロナでサプライチェーンの混乱が取り沙汰されています。この影響はあったのでしょうか。
もちろん、一定の影響は出ています。スケジュールの遅延が出たほか、配送費などの物流関係のコストも上がりました。自動車やハイテク産業のように部品不足で製品が作れない、物流が止まって市場に供給できなくなるほど深刻なものではありません。あくまでこの問題がなければ、もう少し利益が出ていたかもしれない、というレベルです。
――:この四半期決算での課題はどういったことがあったでしょうか。
ゲーム部門に関しては課題があると感じています。スマホゲーム市場での競争が厳しく、自社IPに関してはライブなどと密接に関連した音楽IPが多いので、新型コロナの影響で従前ほどの収益が期待しづらい状況にあります。音楽コンテンツに強いのは当社の特徴なので引き続き取り組みます。
その一方、新しい取り組みとして、スマホゲームだけでなく、コンソールゲームにも注力しています。昨年は『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』のNintendo Switch版を発売しました。自社IPだけでなく、他社様のIPもお借りして開発を行っており、『小林さんちのメイドラゴン 炸裂!!ちょろゴン☆ブレス』を今年の春に発売する予定です。
――:スマホゲームの会社ですと、ブロックチェーンやメタバースに関心を寄せているところが増えてきましたが、ブシロードはいかがでしょうか。
そもそもコンテンツ産業は、テクノロジーの動向に影響を受ける産業ですので、その動きにうまく対応していくという基本スタンスは、他社様と変わるところはないかと思います。ただ、いち早く市場に参入していこうとは考えていません。当社は、レッドオーシャンなトレンドに乗らないことが差別化戦略にもなっていますから。
もちろん、いくつかの仕込みはありますが、プラットフォーマーになろうとは考えていません。コンテンツというのは、色々なプラットフォームやメディアにコンバージョンして乗せていくことが大事だと考えていますから、市場の状況を見ながらじっくりと取り組んでも良いだろうと考えています。
――:スマホゲームの立ち上がりからこれまでの市場の動きを見ていると、コンテンツをしっかりと作って提供できれば、後発であってもユーザーから支持を得られると感じています。そういう状況を見ると必ずしも焦る必要はない、と。
はい。コンテンツに力があれば、多くのユーザーから支持を得られて高い売上と利益を出すことができます。個人的には、コンテンツ業界では、生産性を上げるために細かい業務改善に取り組むよりは、優れた作品を世の中に出す方がはるかに大事で、そちらのほうが如実に結果に現れやすいと思います。
――:下期の展望については。
『新日本プロレスSTRONG SPIRITS』という新しいスマホゲームを2月28日にリリースする予定です。世界同時リリースとなりますので、ぜひご期待いただきたいです。
女子プロレスの『スターダム』が非常に好調で、今期の目玉といえる事業になります。新型コロナは明らかに逆風といえるものですが、その中でも観客動員やグッズ売上などがかなり伸びている状況にあります。ここ最近、メディアなどで選手や団体の名前を目にする機会も徐々に増えてきたかと思います。
スターダムがグループに加わったころ、女子プロレスの市場規模は決して大きなものではありませんでしたが、所属選手とスタッフたちが頑張って自ら市場を作りながら事業として成長している状況にあります。いまは上昇気流に乗っています。
そして、『Shadowverse EVOLVE(シャドウバース エボルヴ)』についてもご注目いただきたいです。プロダクトは4月発売ですので、第4四半期からの収益貢献になりますが、非常に順調です。βテストを行っていますが、これまでの当社のカードゲームを上回る勢いを感じます。テストに参加したいという方が非常に多くいらっしゃって強い手応えを感じています。
――:いくつかショップの方にお話を聞きましたが、ゲーム性への評価が高く、力を入れたいというところが多いみたいですね。秋葉原界隈では発売後はしばらくの間、品薄になるのではないかという声も聞かれました。
それは嬉しい話ですね。Cygames様と当社で、得意分野をお互いシェアしながら進めていくプロジェクトです。お互いの良いところを引き出していくことで結果につながると考えています。
――:ありがとうございました。
会社情報
- 会社名
- 株式会社ブシロード
- 設立
- 2007年5月
- 代表者
- 代表取締役社長 木谷 高明
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高462億6200万円、営業利益8億8200万円、経常利益18億9800万円、最終利益8億400万円(2024年6月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 7803