ケイブ<3760>は、この日(6月3日)、でらゲーを買収することを明らかにした。今回の買収については、8月開催予定の定時株主総会に付議する予定。ゲームクリエイターの岡本吉起氏の親族である石井沙保里氏、岡本美香氏、岡本拓也氏より、全株式を総額50億2300万円で取得する。後述のようにでらゲー関係者を対象にしたストック・オプションの発行も付議する予定。
同社の第3四半期段階で保有していた現預金が10億円ほど。株式取得代金はすぐに支払うことはできず、何らかの手当が必要だが、新規のファイナンスは行わず、9月1日に代金の一部を支払い、残額は分割で払う。それに伴い、金利についても元本と合算して支払うとのこと。
ケイブは、1994年6月の設立以来、「怒首領蜂大往生」「虫姫さま」「ケツイ~絆地獄たち~」等のシューティングゲームのヒット作を生み出すほか、コンシューマーゲーム、モバイル公式コンテンツ、PCオンラインゲーム、モバイルブラウザゲーム、スマートフォンゲームアプリなどを提供してきた。
モバイルゲーム「ゴシックは魔法乙女」が長く収益の柱となっていたものの、経年による売上低下で業績が悪化した。新しい柱として「ロード・オブ・ダンジョン」や「三極ジャスティス」「デビルブック」をリリースしたが、いずれも早期の終了に追い込まれた。またゲーム領域以外の事業にも進出したが、大きな成果が得られないでいる状況にある。
業績については、2017年5月期以降5期連続で赤字を計上しており、2022年5月期も第3四半期累計(21年6月~22年2月)の連結決算は、売上高11億7900万円(前年同期比13.9%減)、営業損失7億2800万円(前年同期は5300万円)、経常損失7億2700万円(同5500万円)、最終損失7億3000万円(同6700万円)と苦戦を強いられている。
一方、でらゲーは、代表作「モンスターストライク」の開発を手掛けた、スマートフォンゲームの開発運営において豊富な実績を持つ、国内屈指のゲーム開発会社として知られている。直近の2021年3月期の業績は、売上高89億7400万円、営業利益13億5200万円、経常利益14億1000万円、最終利益4億3800万円だった。
今回、ケイブが開発を進めていた「東方Project」については、でらゲーからの出資で開発資金を確保できていたが、開発人員の確保が難しい状況にあったという。でらゲーの持つコンテンツと人材をグループに招くことで、業績、業容拡大を確実なものにするとの認識に至った、としている。
また、でらゲー自身も優秀な開発者が多く所属しているものの、他社からの引き抜きやより高い報酬を求めて転職者など、人材流出のリスクを感じていたという。今回、上場企業のグループに入ることで、ストック・オプションの付与など引き止め策やインセンティブ策の実施が可能になる。また、事業による統制管理の強化などのメリットもある。
ケイブでは、創業以来、様々なゲームジャンルにおいて培ってきたゲーム開発における技術と知見を、トップレベルのクリエイティブ集団であるでらゲーが有する企画力、クリエイティブ力、技術力と融合することで、スマートフォンゲーム開発運営におけるシナジー効果や今後の成長戦略を推進するための投資拡大を通じてグループの業績に大きなインパクトを与え、企業業績を大幅に増加させ、ひいては当社グループの株主価値の最大化に資する、としている。
なお、業績に与える影響としては、負ののれんが発生する見通しだという。買収される企業の純資産を下回る対価でM&Aが成立したとき、純資産との差額となる。 負ののれんは、発生した期に特別利益として計上する。その他業績に与える影響は精査中。
会社情報
- 会社名
- 株式会社ケイブ
- 設立
- 1994年6月
- 代表者
- 代表取締役社長 秋田 英好/代表取締役CFO 伊藤 裕章
- 決算期
- 5月
- 直近業績
- 売上高122億7400万円、営業利益18億7000万円、経常利益19億4300万円、最終利益14億4100万円(2024年5月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3760
会社情報
- 会社名
- 株式会社でらゲー
- 設立
- 2010年12月
- 代表者
- 代表取締役 家次 栄一