【決算レポート】"最高業績"で22年6月期を締めくくったブシロード、23年6月期は中期計画の売上1000億円達成に向けた"仕込みの年"に

ブシロード<7803>の2022年6月期 第4四半期(22年4月~22年6月)の連結決算は、売上高129億4200万円(前四半期比37.0%増)、営業利益14億2300万円(同439.1%増)、経常利益19億0400万円(同203.7%増)、最終利益14億7400万円(同655.9%増)と大幅な増収増益を達成した。決算期が変わったため、参考値だが、四半期として最高水準の売上、利益となった。

・売上高:129億4200万円(同37.0%増)
・営業利益:14億2300万円(同439.1%増)
・経常利益:19億0400万円(同203.7%増)
・最終利益:14億7400万円(同655.9%増)

トレーディングカード(TCG)を展開するデジタルIP事業が好調に推移し、大幅な増益となった。決算説明会に臨んだ木谷高明社長(写真)は、音楽ライブなどが新型コロナの影響を受けて苦戦する中、TCGを中心にシェア拡大に取り組んだ成果が出てきた、と明かした。

「新型コロナの影響でTCGの対戦は思うようにできないし、ショップにも行けない。そのなかでコレクション需要が伸びると考えた」という。海外で日本アニメの視聴習慣が広がったことを背景に、『ヴァイスシュヴァルツ』英語版が顕著な伸びをみせたそうだ。

さらに、J-LODlive補助金(コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金)1億8000万円のほか、為替相場の円安に伴い為替差益3億1300万円を営業外収益に計上したことも経常利益、最終利益を押し上げた。

続いて事業セグメント別の状況を見ていこう。


【デジタルIP】
・売上高:110億1500万円(同61.9%増)
・営業利益:14億2900万円(同625.3%増)

業績拡大を牽引したのはデジタルIPだ。特に好調だったのはTCG部門で、その売上は同75.1%増の52億9600万円と急拡大した。『ヴァイスシュヴァルツ』英語版が好調で、海外売上が伸びたとのこと。「(海外売上の)7~8割が北米、その多くがアメリカ」(木谷社長)になる。

また、モバイルゲームを中心とするゲーム部門も大きく伸びたが、「収益認識に関する会計基準」による顧客のアイテム見積もり利用期間の見直しを行い、繰り延べていた売上を計上したことが主な増収要因だという。

 ■TCG
・売上高:52億9600万円(同75.1%増)
「ヴァイスシュヴァルツ」における当四半期に発売した英語版の商品が好評を博し海外売上が増加した。四半期として過去最高の売上高を更新した。

■メディア
・売上高:4億2100万円(同23.7%減)
広告代理店事業や書籍関連の売上が減少し、軟調に推移した。

■MD
・売上高:11億5500万円(同11.1%増)
大型音楽ライブ開催によりライブグッズ売上が増加した。カプセルトイも前四半期に続き好調だった。

■ゲーム
・売上高:31億6100万円(同55.1%増)
「収益認識に関する会計基準」による顧客のアイテム見積もり利用期間の見直しを行い、繰り延べていた売上を計上した。

【ライブIP】
・売上高:28億2700万円(同6.9%増)
・営業損失:800万円(前四半期は6300万円の利益)

ライブIPについては赤字となった。音楽ライブに関しては、「『ライブを止めるな』ということで、半ば赤字覚悟でやっていた部分がある」とし、想定線であることを強調した。こうした活動は、J-LODliveの補助金収入につながっている部分がある。

■音楽部門
・売上高:12億6100万円(同22.7%増)
富士急ハイランドでの大型音楽ライブのほか、イベントや舞台、朗読劇を開催し売上を積み上げた。音楽・映像ソフトは「バンドリ!」、「D4DJ」など自社IPを中心に多数発売、デイリーセールスランキング1位獲得など堅調に推移した。

■スポーツ部門
・売上高:15億6500万円(同3.2%減)
「新日本プロレス」では、PPV(ペイ・パー・ビュー)などのコンテンツ売上が好調に推移するも、興行売上が伸び悩んだ。「スターダム」では、当四半期に開催した興行の中で満員となった大会もあり、グッズ売上なども含め全体的に好調だった。

 
【2022年6月通期の業績見通し】
2023年6月期の業績は、売上高500億円(前期比19.1%増)、営業利益35億円(同3.2%増)、経常利益35億円(同31.5%減)、最終利益23億円(同34.4%減)、EPS70.97円を見込む。

・売上高:500億円(同19.1%増)
・営業利益:35億円(同3.2%増)
・経常利益:35億円(同31.5%減)
・最終利益:23億円(同34.4%減)
・EPS:70.97円

この計画に対してはマーケットで評価が分かれたが、木谷社長は、計画については決算発表と同時に発表した中期計画の達成に向けた「仕込みの1年」に位置づけていると述べた。

主力のトレーディングカードゲームのさらなる成長や、ライブIP事業の復調などで増収が見込まれる一方、既存IPのテコ入れと再成長、新規IP・プロジェクトへの投資も行っていく。すでに発表済みの『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』の大規模なリニューアル計画もそれに含まれる。

「下降気味にあるIPを反転させるのはどうしても費用がかかるし、新規IPやプロジェクトを立ち上げるときも同様。特に復活は難しい」とリニューアル費用が大きくなる理由を明かした。さらに人件費やアニメも含めた広告宣伝費が増えるほか、ゲームアプリやカードの開発費やイベント開催費用も増える。

また、経常利益については、営業利益と同水準になると想定しているそうだ。円高に触れる可能性を想定し、前期に発生した為替差益が今期はなくなること、そして、J-LODの助成金が一部発生することから営業外収益と営業外費用で差し引きゼロになるとの見方を示した。

なお、2026年6月期を最終年度とする中期計画の業績の伸び方について聞かれると、「ホップ・ステップ・ジャンプ」ではなく、「ホップ・ステップ・ジャンプ・ジャンプ」というイメージを持っていると明かした。そして今期は「ホップ」の年だ。2023年における"仕込み"が中期経営計画の売上・利益目標の達成のカギを握る。

 

株式会社ブシロード
http://bushiroad.com/
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会社情報

会社名
株式会社ブシロード
設立
2007年5月
代表者
代表取締役社長 木谷 高明
決算期
6月
直近業績
売上高462億6200万円、営業利益8億8200万円、経常利益18億9800万円、最終利益8億400万円(2024年6月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
7803
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