【連載】中山淳雄の「推しもオタクもグローバル」第40回 ウルトラロングテール:第一世代の2.5次元俳優がみたタレントとファンの新しいコンタクト

中山淳雄 エンタメ社会学者&Re entertainment社長
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マンガ・アニメ・ゲームと演劇が一緒くたになった「2.5次元舞台」という言葉ができてどのくらいたつだろうか。テニスの王子様(テニミュ)や弱虫ペダルなど、特定の作品と強く結びついて大きく成長してきた2.5次元舞台は、同時にそこから有名になってきた「2.5次元俳優」という言葉も生み出した。今回はその2.5次元俳優の第一世代で業界を牽引してきた植田圭輔氏のインタビューとともに、WeshoWという1on1のデジタル握手会サービスを行ったイベントを取材した。舞台というアナログの世界にも、いまデジタルやリモートの概念は根付き始めており、海外ユーザーも引き込む新しいポテンシャルを感じさせた。

 

■ジュノンボーイコンテストからいきなり芝居の道に。千秋楽でぶっ倒れたデビュー戦。

――:自己紹介をお願いいたします。

植田圭輔と申します。1989年生まれの現在33歳です。17歳で俳優デビューして、舞台特に2.5次元作品に多数出演させてもらってます。様々な原作ものに出演して来ましたが、舞台「弱虫ペダル」シリーズ(2013年 - 2016年)は長く出演し、最近ですと舞台「鬼滅の刃」(2020年 - )もシリーズ通して出演してます。またTVアニメで主人公の声を務めた「王室教師ハイネ」(2017年 - )は、その後のミュージカル版でも主人公役で出演させて頂きました。


――:植田さんのデビューは主婦と生活社「JUNON BOY」でしたよね?

実は一度落ちてるんですよ笑。よくある話ですが、16歳の時に姉が勝手に応募して、言わなきゃいいのに「あ、書類選考で落ちてたんだけど」と言われて。僕は負けず嫌いなほうで、そう聞いちゃったら逆に燃えてしまって、じゃあ次回は自分でちゃんと申し込んでやる!と思って、写真もきちんと撮ったやつで送ったら、通過しました。

 
――:それが2006年第19回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストですね。植田さんは応募数13,940件のなかから、ファイナリストに選ばれます。武田真治さん、袴田吉彦さん、伊藤英明さん、小池鉄平さんなどを輩出してきた栄誉あるコンテストですよね。その後、すぐに俳優デビューですか?

はい、そうですね。僕の場合はちょっと珍しくて、決勝を見に来てた舞台の演出家から後日いきなり『少年陰陽師<歌絵巻> -この少年、晴明の後継につき-』(2007年10月@池袋サンシャイン)でミュージカル主演の役の打診を頂いたんですよ。でも何も経験のない高校生にいきなり主演は無理だろうというので、まずはその演出家が主催する劇団公演の『オサエロ』(2007年6月)という作品に出演させてもらって、それが本当の芝居デビューでした。


――:これって不思議なんですけど、学芸会でもないプロの芝居ですし、どうやってトレーニングってするものなんですか?植田さんはそういう経験もされてきたのでしょうか?

いや、僕は実は今まできちんとした芝居のトレーニングを受けず、完全に現場だけで学んできたパターンですね。サッカーやっていたんですが、芝居はそれこそ文化祭で学芸会的なお芝居をやったことはある、くらいでした。むっちゃくちゃ怒られながら、実戦だけで芝居を磨いてきた感じですね。


――:まだ高校生なわけですし、学校は通いながらですよね?しかも地元の大阪から通われていたんですか?

そうです、夜行バスにのって土日に東京にきて芝居をして、そのまま大阪かえって、というのを繰り返してましたね。


――:あれ、新幹線とかじゃないんですか??

お金なかったので笑。まだ駆け出しだから、そんなに支給してもらえたり、というのもあんまりないんですよ。


――:じゃあ高2~3で突然俳優掛け持ちの高校生になり、3か月単位で芝居3作こなし、卒業(2008年3月)するわけですね。その後は大学進学など考えなかったんですか?

いや、もうそれでハマってしまって芝居一本になっていくんです。最初の『オサエロ』で、当時16歳で何が起こってるかわけもわからず、人生初めて標準語で話させられて「なんか東京の言葉って気持ちわるいな~」みたいな感じでやってきました。そういえば、もう一番最初の舞台で、僕ぶっ倒れてるんですよ。


――:え、「オサエロ」の時ですか?それ、舞台も大惨事ですよね?

はい、千秋楽の時に疲労とストレスと脱水症状で芝居中に意識を失ってしまって、、、慣れないことをやってたこともありますし、なんとなく舐めてやっていたところを活いれられたり、まわりのサポートのなかでやってきましたが・・・一応その場はまわりの役者さんが機転きかせて事なきをえました。

そのあとの少年陰陽師の時は主役だったので、もうそれは厳しく厳しく指導いただいて笑。時代が時代なのでよく悪評がでるような「灰皿が投げこまれる」みたいなところまではいかなかったですけど、鬼のような演出家に鍛え上げられました笑。僕ってたぶんそういう環境のほうが燃えるタイプなんですよね。これはちゃんと役者の道極めてやろう!とその時に役者の道に生きることを決めてます。


――:役者じゃなかったらどんな道に進んでいたんですかね?

夢とか何もなかったんですよね~、ホントに笑。もう高校卒業したら公務員にでもなって、結婚して、一生安泰にでも暮らしたいな、くらいしかなかったんです。そうしたときに高いハードルを与えられて、なにくそと思ってやっているうちに、今に至ります笑。


――:2008年に上京してからはもう俳優一本でやってこられているんですね。

ずっとバイトしながらでしたけどね。舞台俳優って駆け出しのころは舞台のギャランティだけでは食えないので、ほとんどの人はバイトしながらです。僕も上京してしばらくは俳優の仕事で得られる歩合の仕組みなどもよくわからないなか、アルバイトと掛け持ちでひたすら小劇場の舞台のお仕事をしていますね。


――:舞台俳優にはその後のキャリアステップのようなものはあるんでしょうか?

よく言われるのは芝居しながらどんどん大きな作品に出て、テレビにも出れるようになってドラマ俳優になっていくコースですかね。でもそれって実力だけじゃなくて、運も必要ですし、事務所がどれだけ強く押せるところか次第みたいなところもあって、あまり選んで駆け上がっていくという感じでもないんですよ。どこの事務所に所属したか、で決まってくるかもしれませんね。


――:事務所が出演のための「枠」もってますもんね。もう「そのキャリア」を推進しやすい事務所に最初に入れるかどうか、という世界ですよね。植田さんの場合、2008年デビューから怒涛のように舞台の仕事が入り続けてますよね。下記がラインナップですが、並べただけでも・・・あの100以上ありますね。15年で100作品以上の舞台出演、そこにテレビドラマ、映画、、、思ってみると恐るべき仕事量ですね。
 

<舞台(主要なもののみ選出)>
・舞台『弱虫ペダル』シリーズ(真波山岳)
・舞台『K』シリーズ(八田美咲)
・ミュージカル「ヘタリア」シリーズ(日本)
・「おそ松さん on STAGE~six men's show time~」(チョロ松)
・劇団シャイニング fromうたの☆プリンスさまっ♪シリーズ(ショウ)
・ミュージカル『王室教師ハイネ』シリーズ(ハイネ)
・舞台『文豪ストレイドッグス』シリーズ(中原中也)
・舞台『火花 -Ghost of the Novelist-』(徳永)
・MANKAI STAGE『A3!』シリーズ(御影密)
・舞台『鬼滅の刃』シリーズ(我妻善逸)
・『ワールドトリガー the Stage』シリーズ(空閑遊真)
・舞台『ヴァニタスの手記』(ヴァニタス)
・舞台『東京リベンジャーズ』シリーズ(松野千冬)
など多数。


 

■2021年史上最高の239億円、コロナ後舞台演劇の2割弱を占める「2.5次元」市場が再活性 

――:役者としての同期はどんな方がいらっしゃるのでしょうか?競争意識などあったりするのでしょうか?

どうなんですかね。同期でいうと年は上ですが弱虫ペダルで一緒だった鈴木拡樹くん(1985年生まれ。2007年テレビドラマ『風魔の小次郎』で俳優デビュー)とかですかね。

あんまり同期とかは意識するほうじゃないんですよ。まあ、ドラマに決まったとか、テニミュに決まったとか大きな舞台にアサインされる話を聞くとこちらも負けてらんないなとヤル気にはなりますね。

 
――:植田さんが一番思い入れがある作品、というとどれですか?

どれも思い入れがあって1作に絞るのは本当に難しいんですよ。確かに思い入れが強いのは2013年から始まった舞台『弱虫ペダル』ですかね。 The WINNER(インターハイ編、2015年3月)の千秋楽の景色はこれまでと違って感じました。『火花〜Ghost of the Novelist〜』(2018年3月 - 5月)も印象深いですね。


――:難しかった役回りで言うと?

ミュージカル『王室教師ハイネ』(2017年9月)ですかね。公演前の4-6月クールでアニメも放送されていて、そこで初めてアニメの声優も務めたんですよ。舞台俳優の経験が思ったより通じなかったです。音響監督にかなり怒られて笑。怒られるのは嫌だけど、なんかかましてやりたい!と発奮して、週1回のアフレコのときに前回ダメ出しされたところは全部克服して次に臨む、みたいなことを繰り返してましたね。


――:芝居とひとくくりにいっても演劇も2.5次元もミュージカルもありますし、それにドラマ/アニメなんかでいくと、ずいぶん求められるものが違うんでしょうか?

ストレートな演劇は歌やダンスは必要なく純粋に芝居だけですが、ミュージカルになるとそれら全部が必要になる。ドラマになるとまた声の出し方や体の動かし方が違いますし。自分としては歌いたい、踊りたいというのがもともとあったわけじゃなくて、「芝居ができりゃ、文句はいわれないはず」みたいな一本気なところがあったんですが、色々やっているうちにそういったものが総合的に身につくようになりましたね。

結局は一つの役をいかに大事にできるか。常に並行して仕事が進むので空き時間をみつけながら、いかに愚直にその役の背景からセリフから表現までを再現できるか、ということなのかなと思います。


――:さきほどからお聞きしてると植田さん、わりと体育会系ですよね笑。毎回怒られたり、悔しいときに力発揮しそうなタイプですよね。

そうですね。他人がそういうことできたらめっちゃ恰好いいよな!ということに、全力で取り組むタイプなのかもしれないです。カッコつけなんですよね。


――:もともと1,200億円超あった舞台演劇市場ですが、03年「テニミュ(テニスの王子様ミュージカル)」をきっかけに2009年43億円まで拡大し、2010年にテニミュ1st終了とともに一時縮小して19億円に。2012年からは「ペダステ(弱虫ペダルミュージカル)」と「薄ミュ(薄桜鬼ミュージカル)」とともに再興していき、10年で100億どころか天井を突き抜けて2018年に226億円。2020年はさすがに1/3になりましたが、2021年は驚くべきことに239億円と過去最高規模にまで到達しています。もう舞台演劇市場の2割弱が「2.5次元」という時代になりました。こうした2.5次元ミュージカルに対する需要の拡大は、そのまま役者としての安定性にも影響していますか?


それは間違いないです。前まではバイトづけだった役者も、この2.5次元ミュージカル市場が大きくなっていくとともに、それなりに食えるようになってきました。最近だとそもそも「2.5次元俳優」というものを最初から目標にして業界に入ってくる人もでてきたくらいですから。


――:以前アニメライター30年の方に取材もしたんですが2007~10年ってアニメ・ゲームの文脈でも「女性ファンが発見された」タイミングでもあって、このあたりから女性向けのものがどんどん増えていくんですよ 。植田さんが2007年デビューして、そのまま演劇だけでなく2.5次元からアニメ・声優へと展開していく流れって、まさに「女性向け作品」の最初のウェーブとともにありますよね。

たしかに僕の世代が「2.5次元俳優第一世代」かもしれませんね。僕より上の先輩でいうと、「2.5次元俳優」って称されることは少なくて、やっぱりミュージカル俳優/舞台俳優とか違う呼ばれ方していましたし。


――:植田さんもアニメは見られるんですか?

はい、結構見ますよ。最近だと「その着せ替え人形は恋をする」とか「かぐや様は告らせたい」とか。


――:今回のWeshoWもそうですが、ファンとのつながりという意味では何か変わってきましたか?

僕自身は「いい芝居を見せることが一番のファンサービス」と思っている人間なので、この15年でそんなに接し方とかやり方が変わってきた感じじゃないんですよ。あんまり丁寧じゃなくて、、、舞台だと結構出待ちで行列で待っていただいたりしていて、他の役者さんをみてると名前を覚えたり1人1人サインに応対したりしているので凄いなとおもうんですが笑。僕は「また舞台見に来てくれよな!」の一言、みたいなタイプなので・・・笑

全員平等にしないといけないとか、ちょっとそういう面で気遣いが必要なものでもあるんですよね。


――:初期はブログなどもされてましたよね。

はい、ブログがコミュニケーションの主流だった時代ですので。文章は結構凝りたいほうなんですが、一度公演がおわってからすぐに感想いわなきゃ・・・と義務感が出てくると、だんだん楽しくやれなくなっちゃうんですよね。かなり文章の推敲に時間もかかってしまいますし。


――:それでTwitterのほうにシフトされるんですかね。植田さんの22万人フォロワーって舞台俳優でいうとかなり多いほうだと思うのですが。

22・・・とかでしたっけ?そうですね、途中からブログ更新のことが負担に感じ始めていたので、ある作品をきっかけにTwitter始めたらTwitterだと本当に短文の感想でいいから楽でしたよね。続けられるようになりました。


――:これは22万越えになるためにどう工夫したりとか、どんなことに心がけているとか…あります?笑

いや、ずーっとちょっとずつ増えてきたんですかね?わかりません笑。実は数字を追いかけるとかそういうの得意じゃなくて、自分でもどのくらいフォロワーがいるとかあんまり見てないんですよ。

 

■1on1のウルトラロングテール、WeshoWが実現した新しい「ファンとの距離」 

――:ファンとのつながり、という意味で今回は植田さんのWeshoWを実施されました。今回はWeshoWという仕組みが面白いので、サービスを提供しているE-Business社の顧問、大里さんにも話を伺ってます。

大里:こちらは私のほうから説明させていただきます。2022年10月2日に舞台制作をされているアニメイトグループのフロンティアワークスさんと植田さんのコラボ企画で、3年ぶりとなる植田さんのファンイベント「うえフェス」オンラインを開催しました。このイベントはリモートでファンミーティングができる仕組みとしてE-Business社のWeshoWを使っていただきました。

 

――:中山も、先ほど横で100人のファンと植田さんがお一人お一人と1分ずつオンラインでつないでお話されている様子を拝見させていただきました。これ、なんかすごい新鮮なサービスで新時代がきたなという感じがしました。改めてサービスの説明をお願いします。

大里:分かりやすく言うなら「自宅からつなげられる1対1の密室握手会」という感じでしょうか。これまではアイドルとファンとの交流は、ライブ会場や握手会会場等の現地に行って、長い時間並んで、数秒のおしゃべりをするという機会でしたが、WeshoWはそれを全てオンライン上で実現します。

E-business社はもともと15年近く大手企業向けのシステムベンダーをしている会社で、現在200名くらいの社員がいます。近年インバウンド向けのSaaS型のサービスをスタートしたのですが、ちょうどコロナになったときに「これまで握手会を主催してきた音楽レーベルや事務所がファンサービスの手段がなくなっている」という声を聞きつけて、“toC向けのサービスをつくろう"ということで開発したのがWeshoWです。


――:音楽配信サービスは2020年からZAIKO、イープラス、THE COOなどが立ち上げてかなり乱立しましたよね。そうしたなかで「1on1の対面会話サイト」というのは確かに珍しいですね。あまりほかにも事例はないような気がしますが。

大里:ほかでいうとWithLiveやSMEさんがだしているforTUNE meetsあたりでしょうか。WeshoWの特徴としては「グローバル」と「OEM」の2点があります。E-Business社が中国出身の花(か)社長が率いているだけあって、WeshoWはTencentの高い技術をベースに開発しています。それもあって、海外のファンに届けるという意味では(環境の厳しさもあって海外にアクセスできない動画配信・握手会アプリが多い日本市場において)、このWeshoWを使っていただくメリットがあるかなと思います。


――:実際に海外から参加されているユーザーさんもいらっしゃるのでしょうか?

大里:イベントによっては1割くらい海外の方だったりします。今回の植田さんのイベントも15%ぐらいの方が海外から来られました。

イベントを開催してみると、聞いた事ないような中国の奥地から参加するファンが居てびっくりします。我々が思ってもみなかったところに実は熱烈なファンがそれなりの母数いたりします。1on1デジタル握手会だからこそ、そのことを発見し、直接そのファンと会話することでタレントさん自身が感じ入ることもあります。どんなにマイナーなタレントさんであっても、実は深く熱心なファンの方が世界中にいるものなのだなという発見にもなりました。正に「ウルトラロングテール」です。今後国内向けの機能だけでなく、海外向けの、例えば自動翻訳とか、よりスムーズな越境コミュニケーションをサポートする機能を充実させていく予定です。


――:これまではCDの買った枚数でアイドルとの対面時間を買っていたわけですよね。実際にデジタル上でという出会いでも、価値はあるものでしょうか?

大里:明確にありました。まず、タレントさん側の負担が圧倒的に小さいです。日本全国・全世界のファンと1つの部屋から繋がるので、そこには物理的な危険も無いですし、移動もありません。ひと昔前では考えられなかったのですが、現在のテクノロジー環境が成せる事です。一方でファンはやはり“リアル"が圧倒的な価値なのかなと思っていたのですが、そうでもないです。リアル握手会の時は、現地に行って数時間並んで数秒というコミュニケーションですが、WeshoWであれば、買った分コードを入れてログイン、あと数人というタイミングで順番待ちを「自宅で」していればいいわけです。仕事の合間に参加して、元気を貰って仕事に戻る方もいらっしゃいます。ファン側の自由度は各段に上がりました。また、誰にも邪魔のされない1on1の空間ですから。その点は以前よりも付加価値が強まっていると思います。もちろんデジタルとはいえ何が起こるかわかりませんので、タレント側ユーザー側が安全に利用できるよう、機能と運営の両面で日々強化しています。
 

▲1分の1on1チケット4000円。100名限定枠に応募者400名が殺到したため、全員が参加できるオープニングトークを開催。


――:サービスはどのような会社さんが使われてますか?

大里:具体的な名前は出せないのですが、代表的なのは国民的女性アイドルグループ向けのオンライン握手会でしょうか。もともと開催していた、CD購入特典としてのリアル握手会を数10秒のアイドルとの「オンライン握手会」「2ショット写真会」「オンライン個別おしゃべり会」といった形にしてイベントをされています。CD購入の特典として申し込めるという仕組みですね。
アイドル以外にも、プロスポーツチーム、歌手、女優、インフルエンサー、大手メディアのオーディション等々、ファンを抱えるありとあらゆる方々のファンイベントで使われています。アフターコロナであっても、リアルとの併用施策として、イベントの実施数は増える一方です。

このサービスが難しいのは「自分の推しの握手会だけ参加したい」とニーズがピンポイントであるため、プラットフォーム化してもそこに握手会に参加したいファンがたまるわけでもないですし、大量のタレントの大量のイベントをとりそろえても意味がないんですよね。だからあくまで「いままでつながっていたファンとの、新しいファンサービスの1つとしてWeshoWも使う」というモデルです。


――:今回サービスを体験して「OEM」が結構重要な要素なのではないかとも感じます。そもそもファンにとっては「推し」以外は事務所すら余計なものという認識。「●●というプラットフォームにいって、クレジットカードも登録して・・・」というプロセスは“余計な手間"にしかなりません。1on1でタレントと接点をもてるビデオ電話、という感じで、“混ぜ物ナシの推しとの時間"という意味ではWeshoWのような「サービス名すら出さない、ファンクラブの一環サービス」という出し方は今後のサービスの考え方として重要になりそうな印象を受けました。

大里:私自身長くエンタメビジネスをしていて痛感したことがあって、コンテンツ業界って、会社間での囲い込み争いの歴史が長いせいか「このプラットフォームを誰が握っているのか」をすごく気にされるんです。いろいろとんとん拍子に話がすすんで、じゃあ使いましょうか!となったときに、「あ、これA社(競合)の出資が入ってるんですね。それだとちょっと…」と嫌煙されて逃げられてしまう事例もありました。

その意味ではE-businessやWeshoWはあくまでも黒子で、タレントさんやサービス側に全面に立って頂きます。今回、植田さん×フロンティアワークスさんの企画イベントとして開催され、WeshoWという言葉を覚えている方はほとんど居ないと思います。完全にタレント側・コンテンツ側の一部になるというのがWeshoWのいい所で大事な部分です。


――:しかし、1人1分でもファンとタレントのコミュニケーションには、色んなドラマがありますよね。冒頭から泣き出しちゃう方がいたりとか、これまで集めてきたコレクションを見せびらかす方がいたりとか・・・

大里:これまでのサービスではできなかったコミュニケーションですよね。ファンにとって神ともいえる推し本人に、直接自分の部屋=祭壇をみせて、いついつのライブグッズやこういったものまで揃えていますといった「本人への見せびらかし」ができる。話したい聞きたいサインがほしい、ではなく「自分がどれだけファンであるかを本人に伝えたい」というニーズが結構強いことがわかって、むしろ握手会を「自分は10年以上ファンで、、、最初の出会いは2006年のあの山梨県のライブで、、、」みたいなアイドル本人すら忘れてしまっているようなときからの“ファンヒストリー"をみせることができる。アイドル自身もこんなに「深い」ファンがいることを知って、モチベーションも上がるという構図でした。

 

■ファンビジネスの未来形

――:植田さんはWeshoWを使われて、どんな感想ですか?

いや、ちょっと感動しましたね。この2年間実はマスクを外して顔をあわせたことがなかったんですよ。お互いがマスクを外して、完全に1対1でファンの方お一人お一人と話せる、というのは新しいサービスでしたね。


――:結構登録の場所をたどると関東圏だけじゃなくて、大阪・愛媛から岩手・福島・北海道まで遠くのエリアからきているファンが多かった。それに海外の方もいらっしゃったというのはすごかったですね。

海外のファンと直接つながっているというのはとても印象的でした。どうしても時間が限られて100名限定の枠だったので、抽選から外れてしまった方々には申し訳ないのですが・・・。

俳優ってプレゼントとか出待ちとかありますけど、実はファンとの直接的なかかわりってかなり限定的なんですよ。でも今回話してみて思ったのは、1人1人で実は結構対応がバラバラなんですよね。自分からめちゃくちゃ話したいタイプなのか、こちらから語りかけてほしいタイプなのか、会話よりツーショットを残せることがうれしい人とか。いろんな気づきがありました。あとはネット接続がもっと安定すると、言うことなしですね(今回のイベントでは、接続問題で数名スタートが遅れたりといった支障があった)笑


――:最後に植田さんの今後についてお聞きしたいです。2.5次元俳優の第一世代として15年休みなく続けられてきました。このお仕事を続ける秘訣みたいなものってありますか?

なんですかね、僕の場合は負けず嫌いなんですよね。ただもう33歳になってきて、体力勝負な仕事なので確かに前のペースで続けるのは難しいと感じる瞬間もあります。ペース配分や自分の限界なども考えて、「この役は自分がやったほうがいいよな」と思える仕事を受けるようにしていったりしてますね。


――:どんな役を演じたいものなんですか?逆に言うと、こういうのは苦手でやれない!とか。

やれない役ってのはなくて、実は幅があるほうが好きですね。めっちゃくちゃしゃべる役をやったあとに(インタビュー直前の9月までは『鬼滅の刃』の善逸役をやっていた)、すごい静かな役に豹変できたりするほうが、役者としてスゲーッてなりません?


――:そういうところもさすがチャレンジャー型ですね!休みたかったりとかはないものなんでしょうか?

もう15年ずっとこの生活ですからね。僕の場合、無理してないんですよ。お芝居自体が生きがいみたいなものですし、こうしてインタビュー受けているのも仕事と思っている感じじゃなくて。ホントに好きで話してますし。


――:自然体なんですね。役者としての次の目標はあるのでしょうか?

この先も永く役者業をやっていきたいと思ってます。あと、自分自身が原案を考え、そして初めて演出家として参加する舞台が12月に公演されます。そうした「作る側」にもチャレンジしていきたいなと思ってます。

 

会社情報

会社名
Re entertainment
設立
2021年7月
代表者
中山淳雄
直近業績
エンタメ社会学者の中山淳雄氏が海外&事業家&研究者として追求してきた経験をもとに“エンターテイメントの再現性追求”を支援するコンサルティング事業を展開している。
上場区分
未上場
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