第10回:CPIテストのあとにやっていくこと
ハイパーカジュアルゲームを中心に開発やパブリッシングをしている「タツマキゲームズ株式会社」代表の畑佐(はたさ)と申します。今年も残すところあと僅かとなってきましたね!前回までのインタビュー記事は楽しんでいただけましたでしょうか。今回はこれまでの連載に内容を戻しつつ、あまり書けていなかった「CPIテストのその先」についてまとめていきたいと思います。
まずはとにかく低CPIを目指す!
いきなり出鼻をくじくようなことを書いてしまいますが、これからまとめる内容はあくまでもCPIテストを通過した後に実行していくべきことです。テスト通過前のプロトタイプに、あれこれと実装内容を増やしてしまったり、仕様や中身を考慮する時間が伸びてしまっては本末転倒です。兎にも角にもまずは「低CPIを出すこと」が先決です!プロトタイプのつくりは最小限にして、高速でCPIテストを回していきましょう!
“収益性”を検証するフェーズ
本題です。CPIテストで良い結果が得られたら、次に検証・改善していくのは「収益性」になります。ハイパーカジュアルゲームにおける収益源はほぼ全て広告収入になるため、それがどのくらいになるのかを測定し、もっと上がるように改善を進めていくフェーズになります。具体的にはプレイヤー1人あたりがゲームのプレイ開始からゲームを辞めてしまうまでにどれだけの広告収益をあげてくれるかどうか、つまり「LTV(LifeTime Value)」を上げていくという期間です。
ざっくりいうと、LTVはプレイヤー1人あたりがどのくらいそのゲーム内で広告を視聴してくれたかどうかによって決まります。基本的には、広告を視聴してくれる回数が多ければ多いほど基本的にLTVが上がっていくのでそれを目指していく、ということになります。
ただし、普段ハイカジをプレイされている皆様ならお分かりかと思いますが、極端に広告を出しすぎてもプレイヤーにとっての体験が大幅に損なわれてしまい、すぐにゲームを辞めてしまうことにもなりかねませんよね。ただひたすらに広告を見せまくれば良い、というわけではなく「より長く遊んでもらうゲームにする」ことと「プレイヤー体験と収益性のちょうどよい広告頻度を見つける」という2つのポイントで改善を進めていくことになります。
LTVはどのくらいを目指せば良い?
これはゲームによってまちまちなので一概には言えないですが、基本的にはCPIよりLTVが高くなればOKなので、CPIテストで出た結果をまずは目標値にするのが良いのではないかなと思います。
またLTVは通常1日だけではなく、プレイヤー1人あたり数日間の積算で考えますが、この期間はまずは7日間で見ておくのが良いのではないでしょうか。期間を長くするほどLTVはちょっとずつ積み上がっていきますが、検証期間をあまり長くしすぎてしまうと改善サイクルも遅くなってしまうため、1週間くらいで見ていくようにします。つまり、CPIテストの結果が$0.3だったなら7日間LTVで$0.3を上回ることを目標にする、といった感じですね!
具体的にやっていくこと
さてここからは「じゃあ実際はどんなことすればいいのよ!」というところをまとめていきます。冒頭で書いたようにこのフェーズでは大きく分けて「より長く遊びたくなるゲームにすること」と「ちょうどよい広告頻度を探すこと」の2つの観点があるので、それぞれ分けて書いてみたいと思います。
ですがその前に…このフェーズをすすめる上でものすご〜く大切なことをお伝えしておきます!それは「ABテスト」です。つまり新しい要素や機能を入れたり、内容を更新する際は感覚だけで行うのではなく、必ずデータを見て向上する事実が確認できたものだけを採用するということです。ハイカジはデータドリブンであることが大きな特徴の一つです。最終決定する際は人間の感覚に依る定性的な判断を排除し、必ず定量的なデータに基づいて決定するようにしましょう!
ABテストのやり方は色々ありますが、最もシンプルなものはGooglePlayStoreの「段階公開」の機能を使うことかなと思います。旧バージョンと新バージョンを50%ずつ公開しておき、アナリティクスツールをつかってそれぞれのバージョンを同じ期間で比較することで、プレイ時間や継続率がどう変わったかを確認して採用する実装内容を決めていく、というやり方です。
以下に記載する改善内容についてもABテストを実施して、確実に向上するものだけを採用していってください。ゲームジャンルによって相性の良いものや悪いものなど毎回違うので、ハイカジでABテストは欠かせないものになります!
①より長く遊びたくなるゲームにすること
1. レベル設計の最適化
レベルクリア型のゲームであればまず最初にやったほうが良いことです。アナリティクスツールを使って各レベルごとにどのくらいのプレイヤーが離脱しているかどうかをチェックし、特に離脱の多いレベルを抜いたり順番を入れ替えたりして、離脱のカーブがなるべく緩やかになるように調整します。後半のレベルを調整しても効果は薄いので10レベルくらいまでを目安にするのが良いです。
2. 最適化・軽量化
プロトタイプの段階ではスピード優先でつくっていたこともあり、アプリ容量の最適化や動作の軽量化の余地が沢山残されていると思います。しっかりと対策しておくことによってプレイ体験も向上するので、この段階で対応しておくのがおすすめです!これに関してはやったほうが確実にいいので、わざわざ最適化していないバージョンをABテストする必要はありません(笑)
3. 効果音や振動を入れる
ゲーム全体の体験向上を狙うことができる内容です。実際に端末の振動があるのとないのとではプレイ時間と継続率が大幅に向上した、という経験もありました。遊んでいるとあまり意識は行かない部分かもしれませんが、深層的なプレイフィールは確実に変化しそうですね。
4. とにかくコアゲームを磨く
このフェーズになると色々と新しい要素を足したくなりがちですが、まずはプロトタイプでつくりCPIが良かった「コアゲーム」を徹底的に磨くことをおすすめします。キャラクターの移動速度やカメラの角度、背景のアセットや操作の感度など調整すべき項目はたくさんあるはずです。思いつく限りをすべて検証し、徹底的に磨き上げてから新しい要素を足すことを検討しましょう!
②ちょうどよい広告頻度を探すこと
1. インタースティシャル広告の頻度をテストする
主にすべきことはコレだけです!インタースティシャル広告の表示は「レベルをクリアしたら何回に1回出す」といった実装ではなく「表示間隔(秒)と発火ポイント」で管理するように実装しましょう。例えば間隔を30秒に設定したら、その30秒を超えた状態で発火ポイントに到達したときに広告を表示する、ということになります。この間隔を10秒にするのか、20秒にするのか、色々変えて最適なバランスを見つけるのが大切な検証項目です。
2. 発火ポイントを増やしてみる
インステが表示される発火ポイントを増やしてみるのも効果的です。ただし各ストアのガイドラインに反した形で広告を表示すると、アプリがリジェクトされる可能性もあるので、あくまでもプレイヤーになるべく不快感を抱かせないタイミングを探っていくのが良いと思います!
実はあんまり効果がないこと
最後に、長く遊んでもらうためにと思いつきがちだけど実際はほぼ効果のないアップデート内容についても、私自身の経験をもとにしてまとめておきます(笑)
・プッシュ通知
実装や確認が大変な割に効果が薄いことがほとんどでした。テキストの内容を考えたり、どのタイミングで送るのが良いのかなど、考えたり疑うべき変数が多いこともネックで、最近はめっきり実装しなくなってしまいました(笑)そもそも通知を許可してくれる人も多くなさそうです…。
・ログインボーナス
大手パブリッシャーのハイカジタイトルに採用されていることが多いので入れれば継続率が上がりそうなイメージがありますが、実際に効いてくるのはかなり後半までやり込んだプレイヤーにだけという事がほとんどです。UIをつくったり、ちゃんと欲しくなる報酬を設計したり、実際に数日後まで正しく動作しているかの確認まで含めると、つくるのは大変な割に序盤の効果は薄いので入れるにしてもかなり後の方で良いと思います。
・スキンショップ
コレも基本的にほぼすべてのハイカジタイトルに入っていますが、同様に「やりこみプレイヤーの継続率を更に底上げする」効果になるので初期の改善アップデートでは入れる必要はないかなと思っています。開発コストとパフォーマンスのバランスの良いものから順次つくっていくようにしましょう!とにかくまずはコアゲームを磨くことからです!
今回のまとめ
いかがでしたでしょうか。CPIテストまでは各社同じような手法で進めていますが、テスト通過後の進め方はパブリッシャーによってかなり違いがあると認識しています。上記はあくまでも一例なので「こうじゃないとダメ!」というものではもちろんありません。各社が各々の状況やスタイルに合ったやり方で進めていくことが求められます。
ただ、やり方は違えど目指すところは「なるべく早くLTVがCPIを上回るところまでゲームを磨き上げる」というゴールです。この改善にあまり時間をかけすぎるのも良くはありません。2ヶ月くらいを目安にするのが良いのではないでしょうか。
収益化が見えてきたらグローバルローンチまではあと1歩のところまで来ています!CPIテストで見つけたダイヤの原石を速く着実に磨き上げ、世界中でスケールするゲームに仕上げていきましょう!
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タツマキゲームズではハイパーカジュアルのあらゆるご相談をお受けしております! ハイカジに興味を持ったり始めてみようかなという人を増やしたいと思っていますので、まずはお気軽にメールやTwitterでご連絡ください。この連載で書いてほしい内容なども大歓迎です。ホントに何でも聞いてください、包み隠さずお伝えします(笑)
メール:info@tatsumaki.games
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次回予告
次回は「ローンチ後の運用とハイカジアプリの寿命について」というテーマでまとめてみたいなと考えています。連載も残すところあと2回となりましたが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです!
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