gumi<3903>の2023年4月期 第3四半期(22年11月~23年1月)の連結決算は、売上高40億0500万円(前年同期比27.8%減)、営業利益7700万円(前年同期は3億4800万円の損失)、経常利益5500万円(同3億1700万円の損失)、最終利益2億7700万円(同7億7000万円の損失)だった。
・売上高:40億0500万円(同27.8%減)
・営業利益:7700万円(同3億4800万円の損失)
・経常利益:5500万円(同3億1700万円の損失)
・最終利益:2億7700万円(同7億7000万円の損失)
減収となったものの、大胆なコスト削減が奏功し、前四半期の水準には及ばない者の、営業利益、経常利益、最終利益はいずれも黒字に転換した。今回、第3四半期の決算の状況をみていこう。
【主な内容】
■売上高は既存主力タイトル中心に経年による減少
■営業利益は強烈なコスト削減で黒字転換達成
■業績の鍵をにぎる『アスタータタリクス』にアニプレックス参画
■メタバース事業は先行投資で赤字に
■23年4月期の業績見通しは非開示
■売上高は既存主力タイトル中心に経年による減少
まず、あらためて売上高からみていくと、同27.8%減の40億0500万円だった。前期に開始した複数タイトルの売上寄与があったものの、その他主力タイトルで配信期間の経過により売上が減少した、としている。
また、四半期別の売上推移を見ていくと、前年同期(21年11月~22年1月)の55億4900万円をピークとして、前四半期比でマイナスが続いていたが、ここにきて下げ止まりとなってきたようだ。
■営業利益は強烈なコスト削減で黒字転換達成
続いて営業利益について見ていこう。売上が低下すると営業利益はそれ以上に減るものだが、開発体制の適正化による人件費と外注費を中心に費用低減を行ったことで黒字転換を果たした。3四半期連続の黒字確保である。
売上が減る中、利益を確保するには、大きな費用削減が必要になる。売上原価は同32.6%減の31億3300万円、販売管理費は同36.4%減の7億9400万円と大幅に減らすことに成功した。なかなか見られない、強烈な削減といえよう。
売上原価の中身を見ると、売上に連動する支払い手数料や通信費が減ったほか、人件費が同16.4%減の8億5900万円、外注費が同34.3%減の8億3000万円となった。
続いて販売管理費をみると、広告宣伝費が同54.8%減の3億4400万円、人件費が同17.9%減の1億8200万円となった。広告宣伝費は『アスタータタリクス』の事前プロモーションを行ったが、既存ゲームの出稿を抑制したとのこと。
■今後の業績の鍵をにぎる『アスタータタリクス』にアニプレックス参画
下落基調だった売上も下げ止まりつつあり、目先の業績のカギは、新作シミュレーションRPG『アスタータタリクス』次第となりそうだ。
『アスタータタリクス』については、アニプレックスが参画するとのアナウンスがあった。これに伴い、垂直立ち上げに向けたプロモーション戦略の再策定を行うため、2023年4月期中のリリース予定から初夏に延期となることも発表となった。
リリース時期の延期は痛いが、プロモーションや有力IPとのコラボなど、アニプレックスの持つ豊富なコンテンツ展開のノウハウが入るとのことで、全体としてはプラスに働くことが期待される。
■メタバース事業は先行投資で赤字に
ブロックチェーンゲームを中心とするメタバース事業については、売上高は同98.6%増の9300万円と大きく伸びたものの、営業損失1億3300万円と前年同期700万円の利益計上から損失計上となった。
複数の有力チェーンにおけるノード運営とブロックチェーンコンテンツの開発・提供にかかる売上が寄与した一方で、将来の収益基盤の構築を図るためののブロックチェーンゲーム開発への投資を強化したため。
またブロックチェーンゲームやNFTなど「メタバース事業」におけるコンテンツ開発のパイプラインを公開し、新作ブロックチェーンゲームを6本を開発中であることも明らかにした。別途、4本の企画を行っているという。
同社では、『Brave Frontier(ブレイブフロンティア)』と『ファントム オブ キル』など、複数の自社オリジナルタイトルに加えて、世界に通じるIPを活用したタイトルについても開発しているという。
NFTについては開発中は1本、企画中は2本とした。有力IPを活用した、将来のゲーム化を見据えたNFT企画を進めているそうだ。
このほか、オーバースが手掛け、秋元康氏が総合プロデューサーを務める新規アイドルグループ創出プロジェクト、ウェブトゥーン開発会社への出資などもあるという。
なお、配信スケジュールについても公開し、『ファントム オブ キル』など5タイトルを来期(2024年4月期中)の夏以降にリリースし、翌年以降はモバイルオンラインゲームの開発パイプラインとのバランスを見つつ、年間3本程度の新規タイトルを配信したい、としている。
■23年4月期の業績見通しは非開示
最後に、2023年4月通期の業績見通しについては開示していない。グループを取り巻く事業環境は短期的な変化が激しいことから、業績の見通しを適正かつ合理的な数値の算出が困難であるため、と説明している。
以前、とあるモバイルゲーム会社で広告宣伝費を突然大きく削って、一四半期だけ利益確保したケースがあった。そして株価は大いに上がった。
市場では、新株予約権の権利行使を促すため、一時的にも黒字にする必要があったのではとの指摘もあった。そして広告宣伝費を大きく削った副作用かは定かではないが、売上も落としていき、現在も業績不振にあえいでいる。
同社の場合、リソースを新作モバイルゲームやメタバース事業に投下するなど、以前に比べてメリハリを付けた投資を行っているようで、その会社の事例とは大きく異なっているようにみえる。
会社情報
- 会社名
- 株式会社gumi
- 設立
- 2007年6月
- 代表者
- 川本 寛之
- 決算期
- 4月
- 直近業績
- 売上高120億6600万、営業損益50億4000万円の赤字、経常損益45億1400万円の赤字、最終損益59億3400万円の赤字(2024年4月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3903