スマートフォンで本格的なRPGが楽しめる『CARAVAN STORIES』や『剣と魔法のログレス いにしえの女神』、『陰の実力者になりたくて!マスターオブガーデン』等のタイトルを開発・運営する、Aiming<3911>の第二事業部。
通称「Team CARAVAN(チーム・キャラバン)」と呼ばれる同スタジオは2021年より事業部制を導入して以降、その組織の規模は拡大し続けており、直近では熊本県熊本市にTeamCARAVAN熊本ベースを新設することを明らかにしている。(関連記事)
そのTeam CARAVANの新たな展開として、グッドスマイルカンパニー所属の石原章弘氏と共同で完全オリジナル新作タイトルを開発中であるとの情報をキャッチ。石原氏とTeam CARAVANのキーマンに、同プロジェクト発足の経緯や作品のコンセプトについてインタビューした。
◆Team CARAVAN×石原章弘が仕掛ける超大作に迫る
『ストリームヒーロー!』プロジェクトメンバー
グッドスマイルカンパニー 石原章弘氏(写真中央)
バンダイナムコエンターテインメント在籍時に『アイドルマスター』シリーズの総合ディレクターを10年務め、その後、活動の場をグッドスマイルカンパニーに移す。
Aiming 第二事業部/企画五課/チーフ/リードプランナー 乙津敏輝氏(写真左)
Aiming入社8年目。同プロジェクトのリード役を務めるプランナー。
Aiming 第二事業部/企画五課/セクションチーフ/リードプランナー 齊藤公彦氏(写真右)
Aimingに新卒入社して11年目を迎える。同プロジェクトでは主にバトル周りの開発を担当。
――:一緒にゲームを開発してみて、Aimingという会社の印象はいかがでしょうか?
石原:「会社を辞めた人間が『あそこは良い会社だった』と言う会社は間違いなく良い会社」という自分の経験則があるんですが(笑)、たまたまAimingを辞めた方を数名知っていて、その人達が全員「Aimingはいい会社でした」と言っていたことを覚えていたんです。
実際にAimingの方々と会って話してみると「良いものを作ろう!」「ゲームを作ろう!」という、僕が昔に働いていたナムコ時代を思い出すような空気感があって好印象です。
ゲーム作りについて、僕は「あれっぽい既存のゲームを真似たものを作ろう」ということがスタートではなく、まずは「ユーザーに提供するテーマ」から考えるようにしています。だから制作方針は定めていても、具体的にどういうゲームにするのかを最初に決め込まないことが多いんです。
だから一緒に試作を作っていける会社さんじゃないと最終的に良いゲームは作れないので、面白いものが作れるまで試作を行う……というAimingのスタンスと相性が良いのかなと思っています。
――:ゲーム作りのスタンスやこだわりに共通する部分があったと。
石原:各社のリリースされたゲームを見ると、何となくその会社のポリシーはユーザーにも伝わるものだと思います。ここはグラフィック偏重だなとか、ここはユーザーへのサービス精神が半端なくてファンを大事にしているなとか、ここはコスト優先でとにかく早く作ってるだけだな……とか。
その中でTeamCARAVANの代表作でもある『キャラスト』は、リリース当時の業界の状況を考えても、ありえないボリューム感とスケールでリリースされていたので「ああ、ここは業界の最前線を目指してるんだな」というポリシーを感じ、共感が持てます。
――:Aimingサイドは今回のプロジェクトで石原さんと一緒にゲームを作ることについてどう思いましたか?
乙津:僕たちは石原さんが作ったゲームで遊んでいた世代なので、最初にプロジェクトの話を聞いた時のインパクトは大きかったです。
実際に開発を進める中で、石原さんは「こういうゲームを作りたいから力を貸してね」というより、「こういうテーマがあるんだけど、どんなゲームにするとフィットするのか一緒に考えよう」というスタイルなのですごく斬新ですね。最初に企画書を作るところから一緒にやらせていただきましたが、楽しく作業できました。
齊藤:過去に他社さんと一緒に開発を進めさせていただくことは何回かありましたが、その中でも一番やりやすいです。提案も通りやすくて考える事がすごい楽しいし、両者で議論を重ねてより良いゲームにするために作り直してたり。そういった作業自体は楽しいんですけど、その反面、失敗できないというプレッシャーはありますね。
――:今回のプロジェクトにおける役割分担は?
石原:大きく言うと原作開発ですかね。キャラクターや世界観、シナリオといった設定等はこちらで作って、それをAimingが具体的にゲームに落とし込むというイメージです。
ただAimingから「ゲームをこうしたいから設定もこうしたい」という提案もありますし、僕も「こういう仕様にしてほしい」と言うこともある。IP作品をゲーム化するわけではないので、まさにゼロから作りながらチームとして動いている感じですね。特にゲームIPはシステムと設定を擦り合わせながら作ったほうが確実に良いモノになりますから。
――:現在開発中の新作は完全オリジナルゲームとのことですが、どのような作品なのでしょうか?
石原:『ストリームヒーロー!』というタイトルで、タイトルにヒーローとついている通り、ジャンルでいえば一応ヒーローもののつもりで作っています。『ストリームヒーロー!』の世界ではヒーローがバトルを配信していて、フォロワーのコメントや人数によって一時的にパワーが強くなる。でも現実世界のSNSで起こるような、ヒーローの発言が大炎上してフォロワーが減ることが起こったり、フォロワーが少なかったけど、ある日突然バズってフォロワーが増える……などの、様々な「逆転要素」があるヒーローものというテーマで企画を進めています。
世界観については、江顔市という架空の大都市が舞台です。ゴッサムシティ的な感じですね。ただSNSでの「繋がり」をテーマの1つに組み込んでいるので嘘くさい住民しかいないと説得力がないな……と思い、江顔市の1-16区までの6万分の1スケールの細かい地図を地理人研究所さんという架空の地図を作られる第一人者の方に作ってもらいました。駅やスーパー、学校、この地域にはどれくらいの人口がいるという所まで設定しています。
▲かなり精巧につくられたMAP。
プレイヤーはこの江顔市を守るヒーロー達のチームリーダーとなって、街に出現する超進化生物というモンスターと戦っていく事になります。
――:世界観は結構現実的な要素も含まれていると。
石原:「世界観設定」「キャラクター設定」いずれかが、現実の延長線上にないとユーザーはなかなか対象コンテンツに共感できないものです。
僕はキャラクター設定を基本的にいつも「現実的で等身大」の設定にするので、今回は世界観の方をもう少しSF寄りにしようかなと最初は思っていたのですが、キャラがコンビニに行ってくじを大人買いするとか、そういったなんてことのない日常エピソードを作るには、結局世界観もある程度現実に寄せないとな……と思い、科学技術を少し発達していますが風景は大体2020年代くらいです。
――:ヒーローをテーマとして選んだ理由は?
石原:最初からヒーローものをやりたいと考えていたわけではなく、新しい企画を立ち上げる上でいつも「何をテーマにするのが良いか?」を考えます。グッスマに転職してしばらくは普通の人たちが潜在的にやりたい!と思っているものは何だろうなぁ……と色々考えていました。
ただ、まずは自分自身が面白いと思えるものでないと、企画に自信が持てないので、そもそも自分が面白いと思っているのものは何だろう……と改めて考えてみると、その時はYouTubeの動画ばっかり見ているなと思ったんです。ちなみにその時はスーツさんばかり見ていました(笑)
YouTuberの中には有名になりたい、お金持ちになりたいと欲望を丸出しにしている人もいて、実際に成功してお金持ちになって御殿を立てた人もいるじゃないですか?僕は超うらましいなぁ~と思う反面、素直にすごいなぁ~とも思うんです。結局、人が潜在的に見たいと思っているものは自分にも出来るかもしれないという夢と成功の物語だと考えると、閉塞感のある現代で見たい物語は「逆転の物語」なのかなと。
逆転というキーワードを広げていこうと考えて、逆転から逆算的に何かテーマがないかと思ったときに思いついたのがヒーローものでした。ピンチに陥るけど最後に一発逆転で勝利するというヒーローというテーマがマッチするなと思いました。
――:閉塞感からの逆転というものが『ストリームヒーロー!』のコンセプトということでしょうか。
石原:『ストリームヒーロー!』では自分が体験する物語として、ピンチに陥ってそれを乗り越えたり、成功したと思ったら失敗するというデコボコした道のりだけど、最後はいわゆる正義が勝つという流れ、逆転できる面白さみたいなものをゲームで上手く表現できればと思っています。自分自身がゲームの中で体験するという行為こそが、他メディアに対するゲームならではの優位性だと思っていますので。
齊藤:石原さんからは「ヒーローが戦うだけのゲームではなくて、あくまでもヒーローのゲーム」と言われています。例えばヒーローキャラクターが戦うだけで、戦闘シーンはカッコいいけどプレイヤー自身がヒーローらしいことを特にしているわけでもないゲームにするのではなく、『ストリームヒーロー!』ではプレイヤー自身もヒーローのバディとしてヒーローらしい事、それこそ逆転劇であったり賞賛を浴びるといった、ヒーローらしい体験ができるようにバトル周りを考えています。
石原:『ストリームヒーロー!』の世界には何万人もヒーロー活動をしているヒーローがいます。最初は配信しても視聴者やフォロワーが全然いないという、言わば底辺YouTuber的な設定ですが、本作はそういう現実的な底辺から度這い上がっていくというものを表現したいですし、そのほうがより逆転を体感できると思います。
乙津:バズったり、炎上したり、そういった紆余曲折のあるサクセスストーリーもテーマとしてはあるので、バトルを配信するという設定ともすごく相性が良いんです。
――:登場するヒーローはどういったビジュアルになっているんですか?
石原:等身大のキャラクター設定というところから考えているので、ビジュアルとして人間離れしたキャラクターはいません。衣装も自分達で準備しているという設定です。
▲プロジェクト初期段階で作成されたラフ。
――:『ストリームヒーロー!』の開発状況について教えてください。
石原:日々作業は進行していますが、まだまだ開発途中です。今作は全てフル3Dで作ろうと考えているので、かなりの大作になります。
実際、議論を重ねながら、まだ試作を続けています。面白いものを作るためのリファレンスというものは明確にないですし、逆にリファレンスがあっても引っ張られてしまう部分もあるので、キーワードからどこまで面白くなるのかを考えて作ったほうが絶対良い。そういう意味では、本当にゼロベースで作っている段階です。
――:ゼロベースからオリジナル作品を開発する上で大切していることはありますか?
石原:まずはチーム力。これも自分の経験に基づくものなんですけど、特にソーシャルゲームは運用まで含むと長い期間がかかるので、開発初期にチームメンバーがどこまで同じ気持ちを共有できているのかが重要なんです。
自分たちは何を作っているのか? 面白いものをどうやって作ろうと思っているのか? そういう気持ちがデザインであったりシナリオであったり、チーム全員に行き渡るとある程度上手くと思っています。最終的に僕がいなくなっても成立するのが理想ですね。
――:Aimingとはそういったチーム作りが出来ていると。
石原:まさに今、チーム作りの最中ですね。これは良い、これは違うと議論して、作っては作り直してという感じで一週間ごとに色々と変わっています。こういうゲームの作り方ができる環境は最近すごく貴重だったりします。
――:石原さんから見たAiming開発チームの魅力は?
石原:トップの高屋敷さんが、面白いものを作ったからといって売れるわけではないことも、面白くなかったら売れないことも分かっている。その上で絶対面白いものを作らなきゃダメという信念を持っている。だから中途半端なものを出してもダメだという方針がチームトップにあるのが魅力です。
今の時代、クオリティを追求するって本当に難しいんですけど、Aimingはものづくりに対する情熱があり、トップが妥協しないから他のメンバーも妥協しない。でもそういう部分がやはりゲーム作りにおいて大事だと思っています。
乙津:中途半端なものや、これでいいという先入観で作ったものを高屋敷さんに持っていくと、「本当にそれで勝てるの?」と言われて考え直すこともありますが、そういうクオリティに妥協しないスタンスの開発環境は一番大事ですね。
――:『ストリームヒーロー!』のプロジェクトに新たに参加するメンバーに求めるものは?
石原:最終的にはやはり熱意が大事になってくると思います。あと、ゲームは一人で作れないので、いかにみんなが同じ方向を向いているのかも大事です。単純に「良いゲームを作る」というゲーム作りの姿勢に賛同できるのであれば、入社しても絶対幸せになると思うので、そういう方は是非一緒にチャレンジお願いします!
齊藤:直近で新卒のメンバーが『ストリームヒーロー!』のチームに入ったのですが、他の新卒が研修している中で新しい仕様を考えたり即戦力として動いてもらっていて本人も楽しみながら作業しています。
私も乙津も、だいぶ若いですし、チーム全体でも若いメンバーが多いので、若い人がチャレンジできる環境だと思います。こういう機会は他社ではあまりないので、その部分も含めてゲームがすごい好きで熱量ある方と働きたいですね。
乙津:TeamCARAVANは高屋敷さんの方針もあって、やりたいと言ったらチャレンジさせてくれます。チャンスが回ってきやすいし、本当にゲームが面白くなる為なら、AIなどの新しい技術を取り入れてみたり、研究開発も活発にやらせてくれるスタンスなので、そういった意味でも興味がある方は良い環境だと思います。
あとは、完全オリジナルの新作を石原さんや高屋敷さんと一緒に作ったり、新しいコンテンツが生まれる瞬間に立ち合えるというのも魅力ですね。
――:では最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
石原:『ストリームヒーロー!』は制作開始から1年経ちますが、まだまだゲームをより良くしていくために試行錯誤しているフェーズです。ゲームを作りたいという方にとっては本当に今が良い時期だと思いますし、だからこそ多くの方に興味を持ってもらいたいです。仲間としてチームとして、一緒に良いものを作っていきましょう。
齊藤:この記事を読んで共感してくれた方とは一緒に頑張っていけると思うので、仲良く一緒に良いゲームを作っていきたいですね。
乙津:チャンスのある環境だと思いますので、「本当はこういうことがしたいのに」と思っていて僕らの話に共感してくれた方とはぜひ一緒に挑戦していきたいと思います。
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次回予告
次回のTeamCARAVAN企画は、2022年末にサービス開始し半年たった今も好調な『陰の実力者になりたくてマスターオブガーデン』の運営状況についてお届けする予定なので、お楽しみに!
会社情報
- 会社名
- 株式会社Aiming
- 設立
- 2011年5月
- 代表者
- 代表取締役社長 椎葉 忠志
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高181億9900万円、営業損益13億900万円の赤字、経常損益11億円の赤字、最終損益22億2700万円の赤字(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3911